日本共産党議員の国会質問 土地所有者権利奪う 宮本岳氏、特措法案に反対 衆院委で可決
衆院国土交通委員会は23日、所有者不明の土地利用を進める特別措置法案を賛成多数で可決しました。日本共産党は、憲法29条の財産権に基づく土地所有者の手続保障の権利が不当に奪われるとして反対しました。
同法案は、道路などの公共事業の際に行う土地収用法の手続きを簡素化し、収用委員会による裁決を都道府県知事の裁定に代える特例などを盛り込んでいます。
宮本岳志議員は、法案の目的が公共事業を進めるコストと時間を省くことだと指摘。住民合意のない公共事業で、安易に所有者不明土地とされる危惧があると批判しました。
宮本氏は、事業者である都道府県知事が裁定者になった場合、客観性が保てないとただしました。国交省土地・建設産業局の田村計局長は「事業の担当と異なる部署が裁定を担当することで一定の客観性・中立性が担保される」と答弁。宮本氏は、担保にならないと反論しました。
22日の参考人質疑では、公共事業改革市民会議の橋本良仁代表が、事業者と裁定者が知事である場合について「左手で答案用紙をつくって右手で解答を出してパスさせる、これでは何でもありとなる。極論だがそういう危険性がある」と述べています。
( 赤旗2018/5/29)
動画 https://youtu.be/Z0TTC_3IPIg
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
お二人の参考人には、私からも心からお礼を申し上げます。
まず、山野目参考人にお伺いしたいんです。
土地収用法が定める収用手続は、言うまでもなく、憲法二十九条が保障する土地所有権そのものを公共のために権利者の意に反してでも奪うという、最も財産権の侵害度が高い場合の手続だと思うんです。権利者に対する十分な手続保障があってこそ、公共目的で権利を奪うことが正当化されております。
現行法でも実は、不明裁決、土地収用法四十八条四項ただし書きの制度というのがありまして、収用委員会の手続を残したままで所有者不明土地の収用は可能であると思います。
また、国交省自身のデータでも、事業認定までの所有者探索の結果、登記簿だけでは所有者不明土地が二〇%あるのに対して、頑張って〇・四一%に下がる、こういうふうに判明しております。
これを合理化するための制度ということでありますけれども、そこまで努力されているという現状に鑑みて、やはり、これまで使われてきた、現状でもあるこの不明裁決という手続でなぜいけないのか。この点についてお伺いしたいと思います。
○山野目参考人 お尋ねありがとうございます。
ただいま議題としております法律案におきましては、御指摘のとおり、土地収用法の通常の規律とは異なる特例の提案を差し上げているところでございます。
法律案に盛り込まれている特例によりますと、起業者は、事業の認定がされてから一年以内に都道府県知事に対し、特定所有者不明土地の収用に限って、この特定所有者不明土地の収用について裁定を求めることができるとされておりますけれども、その際には、裁定の申請において、特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情をきちっと説明しなければならないものとされております。
それを受けた都道府県知事は、お話し申し上げているとおり、公告をし縦覧をした上で、最終的に適切でないと判断するときには、裁定申請を却下することもあり得るものでございます。
このような手順の用意の上に、特定所有者不明土地、すなわち、簡易なものを除き建築物が存在せず、現に利用されていない土地に限って対象とするものでありまして、個別性の強い建築物の補償や移転料、営業補償の算定を要しない局面に限定して、土地収用の制度、議員御指摘の不明裁決の制度の特例を用意しているところでございます。
御注意いただいておりますように、今後仮にこれが法律になります際には、その運用について、間違っても議員御指摘のような不適正な運営がないように政府としてしっかり運用していかなければなりませんし、国会としてもきちっと監視していただかなければいけないことはもとより当然であるというふうに考えますけれども、この制度それ自体は、昨年秋の国土審議会の土地政策分科会特別部会における調査審議の成果を反映して提案申し上げているものでありまして、それとして根拠があるのではないかというふうに理解しているところでございます。
○宮本(岳)委員 そういう御説明でありました。
ただ、私どもが気になりますのは、本法案の土地収用法の特例を見ますと、収用委員会にかわって、知事の裁定による収用手続が認められることになります。そのため、事業者の事業認定を事業者が行うという場合が出てくるわけですよ。
例えば、市町村が行う事業は都道府県知事が事業認定するわけでありますけれども、その都道府県知事が裁定すれば足りるという場面が出てきます。
ですから、裁定申請を却下もできると今話がありましたけれども、そういう場合は、みずからやりたい事業をみずから裁定するということになるわけでありまして、これは、こういう場面が出てきたときに、住民の声を無視して、利害関係人に何ら説明せずに事業が進められることになりはしないか。こういう心配を私たちは持っているわけです。
まずは橋本参考人と、そして山野目参考人に、端的に少しそういう心配についてお答えいただけますか。
○橋本参考人 ありがとうございます。
この今の委員の御指摘は、私が先ほど公述して、又は、御質問にお答えした内容と重複いたします。
基本的な考え方は、今宮本委員の言われた考え、そこに私は不安を持っている、感じている。先ほども、左手で答案用紙をつくって、右手で解答を出してパスさせる、これでは、全くある意味何でもありというふうになっちゃうという、これはちょっと極論ですけれども、そんなような危険性があるということを十分認識した上で今回の法案を審議していただきたいというふうに思うわけです。
○山野目参考人 どうもありがとうございます。
三つのことを申し上げます。
一つは、先ほどから申し上げております国土審議会における調査審議の経過の御紹介ということになります。
ただいま議員が御指摘いただいた、左から右というお話なんですけれども、裁定申請をする事業者が都道府県知事であり、また、裁定をするのがその都道府県知事であるというような局面があるのではないかというお話なんですが、その論点は、国会審議になってから議員のような御指摘をいただいて、それを聞いて初めて、えっ、そんな論点あるのという感じで、これはちょっと考えていませんでしたという、そういう話では恐らくないんだろうと思うんです。
国土審議会の調査審議の中でも私からも発言した経緯がありましたし、議事録を見ていただくとおわかりいただくことができますけれども、そういうふうになることがありますよね、都道府県知事が申請し、都道府県知事が裁定する、これについて問題はありませんかということをそこにいた国土交通省の事務局にもただして、調査審議が進められました。
そこでの議論はまた議事録を見ていただければよろしいんですけれども、従来の土地収用法の運用の中でも、裁定とか、それから審査請求なんかの局面で、しょっちゅうではないんですけれども、今のように、求める人と判断する人が同じになるという局面が全くないわけではございません。そこについて、決定的な何か従来の運用の中で問題事案が指摘されていたというふうにも認識しておりません。
そういうふうな調査審議を経て、ここのところはそういうふうに仕組むということでまいりましょうというふうに進めたものを政府が独断でその内容を変えたのではなくて、答申の内容を反映したものを本日法案として提案申し上げているということです。
二点目ですけれども、では、具体的には事案の処理としてはどういうイメージになるのかといいますと、都道府県知事が出したものを都道府県知事が裁定するというお話なんですけれども、都道府県にはたくさんの職員の方が働いておられるし、部局が分かれております。事業を行おうとする部局が判断して使わせてほしいというふうに言い、しかし、別の部局の人たちがまた一生懸命、本当にそれで大丈夫なのかということを審査して、それぞれの権限を行使する都道府県知事を補佐するものでありまして、そういうふうにしていただくことになるんだろうと思います。
そこのところ、同じ都道府県の県庁の建物の中で働いているから何かいいかげんにやっているんじゃないかというふうに言ったら、それはそこの都道府県の職員の皆さんにも失礼な話なので、それは少なくとも今までの運用を見ると、一生懸命やっていただいているんだろうと思います。
三点目、今後の土地収用制度の改革を視野に置いてということで申し上げるとすれば、確かに、しかしそういうふうには申し上げましたけれども、そのことについて今後の運用の中で問題が出てくるのであれば、やはりそれは、この法律案のこの場所だけではなくて、土地収用法一般について考えてみるべき課題が横たわっているということなのかもしれません。
そこは国会においても厳しく見ていっていただきたいと思うんですが、ただ、それは単に同じ人になっているからいけないとかいいかげんになるじゃないかという話ではなくて、主体が違っていても、橋本参考人がずっといろいろな土地収用の事案で辛苦をなめておられて、また、強くおっしゃっておられるその問題は、何か名義人を分ければ済むという話ではないんだろうと思うんです。
そこはもう議員は見抜いておられて、しかしなお指摘しておられるんだと思いますけれども、御検討いただくのであれば、そこの抜本まで立ち返って、多分この法律案の審議の場所ではなくて、また改めて御検討いただくことになるのではないかというふうに感ずるものでございます。
○宮本(岳)委員 従来もないわけではない、おっしゃるとおりだと思うんですけれども、だからこそ厳格な土地収用手続というものが、それが煩雑であっても、時間がかかってもやってきた。それを要するに合理化する、簡素にするということに問題はありはしないかという御指摘を申し上げているわけです。
それで橋本参考人にお伺いするんですけれども、先ほど来、リニアということも出てまいりました。百万トンの土を処理する上でこれが使われるのではないかという危惧も参考人から出されました。
それで、今こういう手続がないからこそ、相当頑張って〇・四一まで調べてということをやっているんだけれども、これからはややもすると、この手続ができた、では所有者不明のところは、もうこの手続もあることだから、そういう場所にどんどん活用しようじゃないかというような使われ方はしはしないか、こういう危惧を随分持っているわけですが、橋本参考人はどのようにお考えでしょうか。
○橋本参考人 この問題については、かなり現地に行って、特に長野県の大鹿村とか、それから中川村、そして豊丘村、飯田市、リニアの通る沿線ルートです、ここから大量の搬出土が出ます。この地帯が物すごい崖崩れがあったり、三六災害というか、何百人という人が大鹿では死んでいるんだよね。今でも河川のところは土砂崩れがもう絶え間なく起こっている。活断層もあって非常に悪いところ。これは地元の人もよく知っている。
私が一番危惧するのは、この法案が通ったときに、不明者の土地というのは出てきます。それから地権者がわかっている土地もです。その地権者も、賛成ばかりじゃなくて、反対の人が出たとする。この反対の人は別にしてこれは収用委員会にかける、賛成の人はそっちはパスするというふうに国土交通省の職員の方からレクチャーを受けました。そうすると、その部分を使ってもう工事が始まっちゃう。こういう心配が、収用委員会にかかったのは時間はもっとかかるから、そっちはそっちでやっていくということが僕は十分できちゃうんじゃないかと。
それで本当に心配しているのは、地権者だけの問題じゃないんです、これは。搬出土が渦高く十数メートルから二十メートル積んだ百万立米以上のやつが流れ出るのは地権者のところから出るかもしれないけれども、それは、下流の人が住んでいるところ、ここに被害が及ぶ。だからこの人たちの権利はどうするのということで、今地元ではてんやわんやなんです。
こういった問題をクリアにしないと今回の法案というのは、それだけではよしとするわけにはいかないというのが私の主張です。
以上です。
○宮本(岳)委員 ありがとうございます。
私どもは、地域福利増進事業の創設や所有者探索の合理化ということには反対はいたしません。賛成であります。これからまだまだその課題は多いということを山野目参考人もおっしゃいました。
しかし、そういう課題を本当に進めていく上では、私は、今、現場の職員の数というのは圧倒的に足りないんじゃないかとこう思うんです。毎年、国会でも、この法務局の職員の方々の数をしっかりと確保する、ふやしてほしいと。これは、請願、珍しく全会派一致で法務省に関しては採択されたりするテーマなんですけれども。
こういうことを本当に、この法律にかかわらず、さらに、先ほどからおっしゃっていたような、一層しっかりと検討していく、進めていく上では職員ももっときちっとふやしていく必要があると思うんですが、最後に山野目参考人の御意見をお伺いして質問を終わりたいと思います。
○山野目参考人 議員におかれましては、ただいまその法務局の職員のことを案じていただきまして、本当にありがとうございます。心から感ずるところでございますけれども、法務局の職員を減らすのをやめていただきたいと考えます。
今まででも、不動産登記の事務、人権擁護、供託、戸籍にかかわる事務をするのに手いっぱいの状態が続いていました。しかし、この所有者所在不明土地問題、それから相続登記の推進という新しい課題に、これからもちろん政府一丸となって、関係閣僚会議で決められておりますとおり、進めていきますけれども、恐らく、幾つかある最前線の一番典型的な最前線で奮闘していただくのはこの法務局の職員の方々なんです。間違っても過労死をするような方が出たりしてはいけませんし、きちっとした環境で適切な仕事をしていただくということについて引き続き立法府として御関心を抱いていただければ、本当に、まことにありがたいと感ずるものでございます。
○宮本(岳)委員 ありがとうございました。以上で終わらせていただきます。