原発ゼロ 政治決断を 宮本岳志氏 洋上風力発電法案可決
衆院国土交通委員会で21日、洋上風力発電の整備を促進する海洋再生エネルギー法案が全会一致で可決されました。同法案は、洋上風力発電事業の普及に向け、現在全国一律になっていない一般海域の占用ルールを規定し、事業者が参入しやすい条件を整えるものです。
採決に先立つ質疑で宮本岳志議員は、漁業者との協議と調整は丁寧に行われるのかと質問。宮腰光寛内閣府海洋政策担当相は「関係者の意見を適切に伺い、協議会も活用しつつ後押しをしていきたい」と答え、漁業権買い取りなど無理やり進めるようなことは全く想定していないと述べました。
宮本氏は、洋上風力発電の整備に伴う環境への影響について、事前のアセスだけでなく事後の調査も行うべきだと指摘。和田篤也環境省大臣官房政策立案総括審議官は、重大な環境影響が生じないよう、事後調査でも科学的データ整備に努めると述べました。
さらに宮本氏は、日本の再生可能エネルギー比率の目標が2030年に22~24%であるのに対し、イギリス44%、中国は2015年度すでに24・1%と日本の目標を上回っていることを紹介し、日本の目標は低すぎると批判。原発政策を改めないからであり、洋上風力発電を進めるために原発ゼロの政治決断をすべきだと主張しました。
( 赤旗2018年11月28日)
動画 https://www.youtube.com/watch?v=bDv09V1dTys
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
前回の質疑で、台風二十一号が関西国際空港を襲ってきたことし九月四日に、フランス資本から乗り込んできた関西エアポートの副社長はどこにいたのかという私の問いに、蝦名航空局長は答えられませんでした。
その後、調べて、この方の出張の行き先はわかりましたか。
○蝦名政府参考人 お答え申し上げます。
先日の御質問を踏まえて確認をさせていただきました。九月四日における関西エアポート副社長の出張先につきましては、フランスであるとのことでございます。
○宮本(岳)委員 フランスです。前回指摘したとおり、紛れもなく海外におられました。
前日には気象庁が警鐘を乱打し、同日午前十一時八分には警報が出て、空港機能が麻痺する強烈な台風が関空を襲っていたときに、空港管理を第一義的に担っている関西エアポートのトップ二人が、ともに現場で陣頭指揮をとらないばかりか、社長は東京・霞が関に、副社長は何とフランスにいたということであります。話にならない。改めて、空港の安全がコンセッション事業者任せでいいのか、真剣な検討を求めておきたいと思います。
それでは、法案についてただしたい。
まず、私がよくわからないのは、なぜこの法案が当委員会で審議されなければならないのかということであります。
本法案は、さきの通常国会では内閣委員会に付託をされました。ところが、今国会では当委員会に付託をされております。それは国会の判断ということでありましょうけれども、通常国会に提出された法案と今回の法案とで、国交大臣にかかわる条文が新たに加わっております。それは何条のどういう規定であるか、国土交通大臣、お答えいただけますか。
○石井国務大臣 法案の第二十七条でございますが、国土交通大臣が基地となる港湾に関する情報提供を行う規定を新たに盛り込んだところでございます。
○宮本(岳)委員 この条文が加わったということも、当委員会に付託して宮腰大臣とともに石井大臣が所管する理由、こう考えてよろしいですか、石井大臣。
○石井国務大臣 法案の主管は宮腰大臣と承知しておりますが、私あるいは経産大臣は共管の立場というふうに理解をしております。
○宮本(岳)委員 そこで少しまた不思議に思うんですけれども、では、情報提供の条文が加わったから情報提供するわけでもなかろうと思うんです。
この条文がなければ、国土交通大臣はここで言われるような情報提供をしないつもりだったのか、前回の法案のときにはそういうことはやらないおつもりであったのか、いかがですか。
○石井国務大臣 通常国会に提出した法案では、基地港湾の情報提供については明示的に規定されていなかったことから、発電事業者から、国による情報提供の要望が出されたところでありまして、それに応えて新たに条文を設けたところであります。
○宮本(岳)委員 当然、情報提供は前々からおやりになるつもりであっただろうと思います。情報提供は大事です。しっかり取り組んでいただきたいというふうに思います。
では次に、利害関係者との調整について聞きたいと思うんですね。
風力発電設備を整備しようとする海洋には、もともと漁業を営んでいたり海運業を営んでいたりする方々がいらっしゃいます。その権利や利害、意見がぶつかり合った場合、利害関係者を含む者で構成する協議会を設けて調整する仕組みになっております。
では、我が国の洋上風力発電で、既に実証研究、実証事業ですね、先ほどから議論がありましたが、行っているところで、比較的順調だと言われている着床式の風車、これらは海岸からどれくらいの距離の海域で実証研究をしているか。これは内閣府でいいんですかね、お答えいただけますか。
○重田政府参考人 現在行われております洋上風力の実証事業のうち、着床式は千葉県銚子沖と北九州港内の二基でございます。これらの沿岸からの距離でございますが、千葉県銚子沖が約三・一キロメートル、北九州沖が約一・四キロメートルでございます。
○宮本(岳)委員 この法案で整備される風力発電設備は、まずは着床式からだと思われます。
着床式は、一般的に、海岸に近く水深も浅い方が当然コストも安く採算がとりやすい、こう私は思いますけれども、これはそうですね。間違いないですね。
○重田政府参考人 先生御指摘のように、沿岸から距離が近いほどケーブルやメンテナンスにかかる費用は安くなるというふうに想定されております。そのとおりでございます。
○宮本(岳)委員 当然のことながら、沿岸から近く水深が浅い方がコストも安く採算がとりやすいと思うんですね。
そうしますと、当然、漁業権との権利、利害の調整が必要となってまいります。
私たちは、全国海区漁業調整委員会連合会の浜本俊策会長にもお話をお伺いいたしました。浜本会長によりますと、漁業権は、通常、沿岸三から五キロでの権利、沖合で問題が発生するとすれば、底びき網漁などの漁場に設置する場合だろう、話合いが大事だとのことでありました。
そこで聞くんですけれども、第九条第一項には、「経済産業大臣、国土交通大臣及び関係都道府県知事は、海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域の指定及び海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域における海洋再生可能エネルギー発電事業の実施に関し必要な協議を行うための協議会を組織することができる。」こういう規定がございます。
この規定、条文は、できる規定になっておりますけれども、このような漁業権との協議と調整は丁寧に行われるのか、できるとなっておりますが、やらない場合というのがあるのかどうか、いかがですか。これは宮腰大臣、いかがですか。
○宮腰国務大臣 本法案は、法案第三条の基本理念にありますように、海洋再生可能エネルギー発電事業者と漁業者や地方自治体等々の関係者との調和を重んずるというのが基本的な考え方であります。
その上で、本法案におきましては、洋上風力発電の導入が漁業へ及ぼす影響をなるべく小さくし、共存共栄が可能となるよう、漁業などとの調整を含め、関係機関との調整に係る所要の手続を定めております。
制度の運用に当たりましては、利害関係者の方々にも参加いただく協議会等も活用いたしまして、関係漁業者の皆様の御理解のもと事業が進められるよう、国としても、関係者の意見を適切に伺いつつ、後押しをしてまいりたいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 丁寧に進めていきたいという大臣の姿勢は、よく理解をいたしました。
ただ、私、驚くべき文書を発見いたしました。きょうはこれを資料におつけしたんですけれども、去る十月二十三日に開催された第三十六回国家戦略特区諮問会議の議事要旨であります。
赤線部、これは八田達夫大阪大学名誉教授の発言であります。「これはすぐできるとは言いませんが、例えば、漁業権を水産資源の保護の義務を課した財産権にした上で、有能な漁民や会社が漁業権を買い取ることができるというようなシステムにすると、日本の漁業の生産性を大いに引き上げます。」と述べた上で、「それだけでなく、漁業権の改革は、今問題になっている洋上風力の推進の大きな障害を取り除きます。」と述べているわけですね。
念のために宮腰大臣に伺うんですけれども、漁業権を洋上風力発電推進の大きな障害と見て、企業が漁業権を買い取る制度を導入して無理やりに進めるというようなことは、よもやお考えではないと思うんですが、よろしいでしょうか。
○宮腰国務大臣 漁業権は、戦後、国が買い取って許可漁業権にしたという大きな歴史があります。今回のこの洋上風力の関係で、国による漁業権の買取り、既にもう漁業権は許可漁業権であるわけですから、買取りなどということは全く想定をしておりません。
○宮本(岳)委員 しっかり、漁業権との関係、漁業関係者との丁寧な協議ということをお願いしておきたいというふうに思います。
次に、環境省の取組についても聞きたいと思います。
本法案では、整備促進区域の指定に当たって、あらかじめ環境大臣に協議するとの規定が置かれ、その協議の中で、生物多様性の保全や、そのためのゾーニングなどが協議されることとされております。
しかし、区域指定の前提となる基本方針の策定過程には、環境大臣の関与についての規定は明文上はありません。基本方針の案は、第七条第四項で、総理が作成するということになっておりますけれども、この段階にも環境大臣はかかわっていくことになるのかどうか、環境省からお答えいただけますでしょうか。
○和田政府参考人 お答えいたします。
本法案におけます基本方針策定に当たりましては、内閣総理大臣が基本方針の案を策定し、閣議の決定を求めなければならないことになってございます。
本方針におきましては、海洋環境の保全等に関する事項を定めることとなっておりまして、こうした観点から、環境大臣も協議を受けた上で決定することとなります。
○宮本(岳)委員 基本方針の案の作成の段階で、環境大臣の御意見もしっかり反映するようにしていただきたいと思うんですね。
同時に、洋上風力発電の整備に伴う環境への影響については、まだまだ未知の部分が多いと思うんですね。しかも、区域によってその影響のあらわれ方はまちまちだというふうに思います。
今後、洋上風力発電の整備に伴う環境への影響については、事前のアセスというだけでなく、事後の調査もしっかり行って、事後どういう影響があるかということをつかむ必要があると思うんですが、環境省、これはいかがでしょうか。
○和田政府参考人 お答えいたします。
環境省におきましては、平成三十年度より、一般海域等におけます環境基礎情報等の収集、整理に取り組んでいるところでございます。海鳥、海洋生物、藻場の分布情報等の整備、更新を実施しているところでございます。
委員御指摘の事後調査などの時点で貴重な情報源として活用していくことも十分想定しながら、引き続き、洋上風力発電事業における重大な環境影響が生じることのないよう、科学的データ整備に努めてまいりたいと思います。
○宮本(岳)委員 海洋の環境をしっかり守るために調査に取り組んでいただく、今おっしゃったことをしっかり進めていただきたいというふうに思います。
さて、洋上風力発電の整備を思い切って促進しようというのが本法案の狙いでありますし、私どもももちろんそれに対して賛成いたしますけれども、この洋上風力発電が普及してどんどんどんどん再生可能エネルギーがふえていけば、エネルギーの中での原発の占める割合はどんどんどんどん減少して、果たしてゼロになるのか。これは経産省にちょっとお答えいただけますか。
○小澤政府参考人 お答えいたします。
原発依存度を可能な限り低減するという考え方のもと、徹底した省エネルギー、そして再生可能エネルギーの最大限の導入に取り組む、これが政府の一貫した方針でございます。
一方、単一の完璧なエネルギー源がない現状におきましては、スリーEプラスS、すなわち安全性の確保を大前提に、経済性、気候変動の問題に配慮しながらエネルギーの安定供給を達成していくことが重要となります。
また、停電等のない持続的、安定的な電力供給を考えた場合、風力や太陽光は供給に変動性がございまして、その克服が引き続き課題である一方、原子力といったベースロードとなる電源は重要な役割を担うと考えます。
こうした観点から、エネルギーの安定供給のためには原子力も欠かすことができない選択肢であるというように考えてございます。
○宮本(岳)委員 原子力も欠かすことのできないエネルギー源であるということを今おっしゃいました。
エネルギーミックス二〇三〇で目標数値が決まっていると思うんですけれども、ベースロード電源、再生可能エネルギーについてお答えいただけますか。
○小澤政府参考人 お答えいたします。
この夏に策定いたしました第五次エネルギー基本計画の中でも、委員御指摘の二〇三〇年のエネルギーミックス、この確実な実現を進めるということにしてございます。
その中で、二〇三〇年エネルギーミックスの中では、再生可能エネルギー、これを電源構成の中で二二から二四%、そして原子力につきましては二〇から二二%、この確実な実現を目指すということにしてございます。
なお、再生可能エネルギー、二二から二二%、これはキャップではなくて、これにとどまらない導入を追求していくということにしてございます。
まずは、このエネルギーミックス、二二から二四%の確実な実現、これを目指し、さらに、それにとどまらない導入を図っていくということが大事だというように思ってございます。
○宮本(岳)委員 いやいや、二二から二四にとどまらないと言っていただくわけですけれども、キャップではないと言っていただくわけですけれども、原子力の方も二〇三〇年には二〇から二二、これを目標に掲げてやるんですよね。
現在稼働中の原発は九基でありますけれども、それで今エネルギーに占める割合は三%というふうに聞いております。
この二〇三〇年、二〇から二二%という目標は、原発が何基稼働している計算になりますか。
○小澤政府参考人 お答えいたします。
一定の仮定計算のもとでの条件でございますけれども、そのもとで、二〇三〇年、原子力発電の割合を二〇から二二%を想定した場合には、原子力発電所三十基程度の稼働が必要ということを見込んでございます。
○宮本(岳)委員 今九基のものを、そして三%のものを、これから三十基まで、一定の仮定を置いてですけれども、動かしていく。そして、二〇から二二%までふやしていく。これでどうして、原発依存度を可能な限り低減するという、冒頭述べたような話になるのか、全く理解に苦しみます。
これから再エネの割合を本気になってふやそうというのであれば、原発は三%から直ちにゼロにすることを求めたいというふうに思うんです。
そこで、日本の再生可能エネルギーの目標なんですが、二二から二四と先ほどおっしゃられた、キャップではないとおっしゃられたんですが、これはやはり外国に比べても低過ぎると私は思うんですね。
イギリス、フランス、ドイツの同年度の目標数値はどうなっているか、お答えいただけますか。
○松山政府参考人 お答え申し上げます。
今先生からお配りいただいております発電比率にございますように、ドイツは現状では三〇%、スペインが三五%、イギリスが二五%となってございます。
ドイツで申し上げますと、これを更に、五〇%を八〇%まで引き上げていくというような長期的な目標を持っているのは承知してございます。
日本について申し上げますと、先ほど答弁申し上げましたけれども……(宮本(岳)委員「フランスやイギリスは、目標」と呼ぶ)済みません、今手元に長期目標の具体的な数字をお持ちしておりません。また後日でもお届けしますけれども、ドイツは将来的に五〇%を八〇%という数値目標を持ってございます。
○宮本(岳)委員 私が配った資料に出ているじゃないか。私が配った資料を見て答えてください。イギリス、フランスの目標、再エネ導入目標。
○松山政府参考人 失礼いたしました。
先生がお配りいただきましたものに書いてございます数字を申し上げたいと思います。
イギリスについて申し上げますと、二〇三〇年の目標が四四%、ドイツで申し上げますと、二〇二五年に四〇から四五%、二〇三五年に五五から六〇%、スペインについて申し上げますと、二〇二〇年という段階で四〇%といったような目標になってございます。
○宮本(岳)委員 だから、歴然と低いんですね。
きょうこの資料の二で、今読んでいただいたものを配っておりますけれども、中国は、目標値は二〇二〇年、一五%となっておりますけれども、二〇一五年度の実績で既に二四・一%。日本が二〇三〇年に掲げている目標をもう既に上回っております。だから、中国なんていうのはおくれているんだろうと思っている方々もいらっしゃるかもわかりませんが、そんなことはない。この取組では、日本は非常に恥ずかしい状況なんですね。
なぜこれがこんなことになっているのか。私は、やはり、原子力発電というものをきっぱりゼロにという決断をしないからここがやはり引き上がっていかないんじゃないかと言わざるを得ないというふうに思っております。
私、ちょっと調べてみたんですが、今手元に、二〇一五年の日本風力発電協会の資料を見ますと、風力発電機の国産メーカーのシェア三位以内に日立製作所と三菱重工が入っているんですが、間違いないですね。
○松山政府参考人 お答え申し上げます。
日本の国産の風車メーカーについて申しますと、今、大規模な事業者で申し上げますと、日立が製造を行っております。三菱重工につきましては、現在、ヴェスタス社との提携のもとでの製造を行ってございます。
○宮本(岳)委員 二〇一五年の時点でいえば、三菱重工、その何とかという会社と合併する前ですよ。合併した後もやっているでしょう、三菱重工。
○松山政府参考人 御指摘はそのとおりでございます。
○宮本(岳)委員 御承知のとおり、日立製作所と三菱重工といえば、同時に原発メーカーでもあります。
風力発電を思い切って進めて、もう原発はやめようというのであればよくわかる話なんですが、これらのメーカーは風力発電機も原発も両方つくっているわけですね。
なぜこんな中途半端なことになるのか、その理由は明らかです。あなた方政府が、ベストミックス比率などといって、結局、原発政策を改めようとしないからです。政府が両方やると言うから、メーカーも両方やっているんです。
本気で洋上風力発電を進めたいのであれば、きっぱり原発ゼロの政治決断を行うべきであるということを申し上げて、私の質問を終わります。