建築士法 建築士の高齢化で指摘 宮本岳志氏 労働条件改善こそ
改正建築士法が8日の参院本会議で全会一致で成立しました。
自民党など6会派が衆院で共同提案した同改正法は一級建築士免許の受験要件とされていた2年以上の実務経験を、免許登録の要件へと変更し、受験機会を拡大します。
宮本岳志議員は4日の衆院国土交通委員会での採決に先立って発言し、50代以上が65%を占めるなど一級建築士の高齢化の原因として、設計事務所の長時間労働や低賃金など労働条件の劣悪さを指摘。労働条件を改善してこそ建築士志望の若者は増えると強調しました。提案者も、労働条件や長時間労働が「原因の一つ」だと認めました。
今年に入って、大阪北部地震によるブロック塀倒壊、KYB社などのオイルダンパー(油など粘性流動体を利用した免震装置)のデータ偽装など、建築物への安全・安心を揺るがす事件が相次いでいます。
宮本氏は、役割が一層重要になっている一級建築士の能力・適性が担保されるべきだと強調。改正法が受験の門戸を広げることで、一級建築士の技量低下につながらないかとただしました。提案者の本村賢太郎議員(無所属の会)は、受験機会は拡大しても「能力や適性は担保される」と答弁しました。(赤旗2018年12月14日)
トラック運送 規制緩和路線転換を 宮本岳志氏 改正運送事業法が成立
改正貨物自動車運送事業法(自民党など6会派が衆院で共同提案)が8日の参院本会議で全会一致の賛成で成立しました。
同改正法は、悪質なトラック事業者の排除、過積載などの違法行為を強いる荷主への対策強化、運賃ダンピング防止に資する標準的運賃の告示制度導入などを定めています。
宮本岳志議員は4日、衆院国土交通委員会での採決に先立ち、トラック労働者の過労死ライン超の長時間労働を認めている改善基準告示の見直しが「働き方改革」関連法の付帯決議に明記されていると指摘し、より強力に政府に迫るべきだと質問。提案者のうち、盛山正仁議員(自民党)は、同改正法成立で「進んでいくと考える」と答弁。津村啓介議員(国民民主党)も「丁寧なきめ細かい議論を進めたい」と答えました。
宮本氏は、対策が強化される荷主には、着荷主(受け取り荷主)が含まれ、時限措置の標準的運賃の告示が期間内に実施されることを提案者に確認させた上で、トラック運送事業をめぐる問題の大本には1990年施行の物流2法(貨物自動車運送事業法、貨物運送取扱事業法)による規制緩和路線があり、その総括と反省が必要だと主張しました。(赤旗2018年12月14日)
動画 https://youtu.be/ODJrLj8uT48
議事録
(建築士法)
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
確認的な質疑的発言をさせていただきます。
建築物の安全、安心のために、建築士、とりわけ一級建築士の役割は大きいと思います。ところが、建築士の高齢化が進んでいるということを聞きます。
国土交通省の資料によれば、設計事務所に所属している一級建築士のうち、五十代以上が六五%に上るのに対し、二十代は一%のみ。一級建築士の高齢化は顕著だと言わなければなりません。
この一級建築士の高齢化は、一級建築士試験の受験者の急減と高齢化が影響しております。一級建築士試験の受験者数は、二〇〇七年から二〇一七年までの十年間で四万六千二百四人から三万一千六十一人へと三分の二に急減いたしました。一方で、受験者の平均年齢は、三十二・四七歳から三十四・八二歳へ、二・三五歳も上昇しております。試験受験者の急減と高齢化を放置すれば、将来、一級建築士の人材確保が困難になりかねません。
そこで、国交省に確認しますが、事務所所属の一級建築士が高齢化していることと、一級建築士試験の受験者が急減し高齢化していること、この原因をどう考えておりますか。
○石田政府参考人 お答え申し上げます。
まず最初に、建築士事務所に所属しております建築士の高齢化につきましては、建築士の試験の合格率自体には大きな変化がございませんが、一級建築士試験の受験者数が大幅に減少した結果、かつて昭和六十年代には年間七千人ほどおられた合格者数が現在は四千人程度まで減少し、新たに建築士となる若い世代が減少したこと、また、受験者の年齢につきましても、先ほど御指摘がありましたとおり年齢が上昇していること、これらが主な原因であると理解しております。
また、そういう受験者の減少、高齢化に関しましては、平成十七年に発覚いたしました構造計算書偽装問題を受けた制度改正などによりまして、大学などの卒業後の実務経験のカウントが厳格化されたことから、受験で必要な実務経験を満たすための期間が長期化していること、また、このため、卒業後相当の期間を経てからのペーパー上の受験となりますので、実務を行いながら受験を準備する負担が重くなっていること、そういったことから、受験を諦める方が増加するとともに受験者の平均年齢も上昇しているというふうに関係の団体からも伺っておりますし、国交省としても同様の見解を持っているところでございます。
○宮本(岳)委員 私も、この間、建築士関係団体の皆様から話をお伺いいたしました。
二〇〇八年の建築士法改正に伴う実務経験要件を満たすために、建築士試験の受験準備が大変だという話を何度もお聞きをいたしました。しかし、話をよく聞きますと、実務経験として設計事務所に勤務した方が、労働条件が厳しくてとても受験勉強などできないという現状があるという話も聞くわけですね。
これは、建築士が働く設計事務所で労働条件が劣悪なところがあるということでありまして、そうなると、試験制度だけを変えても建築士の高齢化は変わらないのではないか。例えば、試験に合格した後、実務経験をした者でも、その後、一級建築士として免許登録しないことになりはしないかという懸念もあります。
そこで、提案者にお伺いするんですが、設計事務所の長時間労働や低賃金など労働条件が悪いことこそ、高齢化や受験者減少の原因として検討すべきではないか、試験制度にとどまらずこの点を改善してこそ、一級建築士になりたいという若者がふえるのではないかと思いますが、提案者、いかがでしょうか。
○盛山委員 建築士は、医師、弁護士、公認会計士などの他の国家資格と比べ、平均年齢が高いにもかかわらず、労働時間は長く、賃金は低い傾向にあります。特に、建築士試験受験者の主要な年齢層となる二十代中盤から三十代前半の時期は、長時間の勤務を行っている実態があると承知しているところです。
こうしたことを踏まえますと、宮本委員が御指摘のとおり、建築士の高齢化、受験者数の減少は、試験制度だけではなく、労働条件あるいは長時間労働も原因の一つであると考えているところでございます。
今回は、建築士試験の受験資格の見直しをお願いしているものでございますが、それだけで全てが解決すると我々考えているものではありませんが、解決の一つの手段になると考えております。
将来の建築士を安定的かつ継続的に確保するためには、さきの通常国会で働き方改革法も成立したところでございますが、建築士の労働条件等を改善し、魅力的な建築士業界としていくことが重要であると考えておりまして、国土交通省あるいは関係の政府、そして業界において改善がなされることを期待しているものでございます。
○宮本(岳)委員 政府が進められている働き方改革法に対する評価はさまざまでありますけれども、ぜひ、今御発言にあったように、労働条件の改善をしっかり進めていただきたい。
ことしになってから、大阪北部地震では、小学校のブロック塀倒壊で生徒が犠牲となる痛ましい事件がございました。KYBや川金ホールディングスによる免震オイルダンパーのデータ偽装事件もございました。昨今、建築物の安全、安心に対する信頼が大きく揺らいでおります。
その中で、ブロック塀の安全点検を行う問合せ先として設計士団体も入っております。耐震偽装やレオパレス21社のような違法建築で不正を発見し、告発されている建築士の方もいらっしゃいます。建築物の安全、安心を確保するために、専門家としての一級建築士の役割はますます大きくなっていると思います。したがって、その能力、適性はしっかり担保される必要があるのは言うまでもありません。
では、今度の法案で受験者の門戸を広げることになるわけですけれども、一級建築士の能力や適性は担保されるか、建築士の技量が低下して、建築物の安全、安心への信頼が低下することにつながらないか、提案者に御説明いただきたいと思います。
○もとむら委員 今回の改正法案は、現在、建築士試験を受験する際の要件となっている建築に関する実務の経験について、免許を受ける際の要件に改めるものであります。
これによりまして、建築に関する実務の経験について、建築士試験の前後にかかわらず、免許を受ける際までに積んでいればよいこととなり、建築士試験の受験機会は拡大しますが、建築士として免許を受ける際の要件は改正前と基本的に変わらないため、新たに建築士となる者の能力や適性は担保されるものと考えております。
○宮本(岳)委員 しっかり担保していただきたいというふうに思います。
大学卒業後すぐに一級建築士試験を受験できることにいたしますと、人格形成期でもある大学の四年間が、ともすれば受験予備校のようにならないかという懸念もございます。この点にも十分配慮すべきだと考えます。
そして、今後の建築士制度が建築物の安全、安心のために一層資するものとなるように、法律をつくって終わりではなく、その後の運用もしっかり国会で議論すべきだということを申し述べて、発言といたします。
(貨物自動車法)
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
貨物自動車運送事業法改正案を起草したいとの話を伺ってから、私も事業者団体や労働組合などからいろいろと御意見をお伺いいたしました。その上で幾つか確認をしたいと思います。
まず、改善基準告示の見直しについて伺いたい。
今度の法案は、参入規制の強化や荷主対策の深度化、標準的な運賃の告示制度の導入など、トラック労働者の労働条件の改善につながり得る内容が盛り込まれておりますけれども、直接改善する項目はありません。トラック労働者の労働条件を改善するためには、過労死ラインを超える長時間労働を認めている改善基準告示の見直しと法制化が欠かせないと考えます。
働き方改革関連法案の附帯決議、これは残念ながら、私たちはこの附帯決議に参加しておりませんけれども、この中では、第二で、改善基準告示の見直しがうたわれております。
本法案が働き方改革関連法施行を念頭に置いた措置を講じるというのであれば、改善基準告示の見直しについても、より強力に政府に迫っていく必要があると思いますが、これは盛山提案者、そして津村提案者、御両人にお伺いしたいと思います。
○盛山委員 今議員が御指摘されましたが、改善基準告示につきましては、我々自民党も共同提案しました働き方改革法の、衆議院では五月の厚生労働委員会でございました、参議院では六月の厚生労働委員会でございましたが、この両院の附帯決議におきまして、平成三十六年度からの時間外労働の上限規制の適用までの間に見直しの検討を進めること、総拘束時間等の改善について速やかに検討を開始すること、見直しに当たっては、トラック運転者について、早朝、深夜の勤務、交代制勤務、宿泊を伴う勤務など多様な勤務実態等の業務の特性を十分に踏まえて、勤務実態等に応じた基準を定めることとされているところであります。
この両院の附帯決議の趣旨を踏まえまして、所管であります厚生労働省を中心に、国土交通省その他関係省庁とも連携をして、実態を踏まえながら、長時間労働の是正が進むよう、改善基準告示の見直しの検討が進められていくもの、この法案が通れば進んでいくものと考えているところでございます。
○津村委員 国民民主党の発議者として答弁させていただきます。
改善基準告示の見直しに関しましては、今、盛山委員からも御紹介がございましたけれども、働き方改革関連法案の参議院審議の際の附帯決議におきまして、「トラック運転者について、早朝・深夜の勤務、交代制勤務、宿泊を伴う勤務など多様な勤務実態や危険物の配送などその業務の特性を十分に踏まえて、労働政策審議会において検討し、勤務実態等に応じた基準を定めること。」といたしております。
働き方改革関連法の施行後五年の猶予の間に、改善基準告示のあり方について、トラック運転従事者の実情、業務の特性を検証しながら、労働者、事業者双方の多様な意見を十分に聞いて、労働政策審議会でしっかりと議論を行っていくことが望ましいと思料しております。
私は国民民主党の発議者でございますが、この参議院の審議の附帯決議をめぐる議論、非常に各党重要な議論をされたというふうに思っております。この附帯決議の趣旨をしっかりと生かしていくために、我々がこれからの五年間やらなければいけないことはたくさんあるわけですけれども、物流、トラック運送業が日本経済の極めて重要な柱であるということを十分認識して、丁寧なきめ細かい議論を進めていきたいというふうに思っております。
ぜひよろしくお願いします。
○宮本(岳)委員 トラック労働者を始めバスやタクシーなど自動車運送事業の労働者が過酷な労働を強いられている大もとに改善基準告示があるのであって、早期にその見直しと法制化が必要であることを指摘しておきたいと思います。
次に、荷主対策について聞きたいと思うんです。
今度の法案では、荷主には元請事業者も含まれると承知しておりますけれども、着荷主も含まれるのか、この点、発議者に確認したいと思います。
○盛山委員 トラック運送業におきましては、発荷主側だけでなく、着荷主側で荷待ち時間あるいは追加的な附帯業務が発生するところも多いということで、宮本委員が御指摘のとおりでございます。また、他の運送事業者に部分的に運送業務を委託することなども多々行っているところでございます。
このため、トラック運送業の働き方改革を進める上では、元請事業者や発荷主に加えまして、着荷主についても理解、協力を得ることが重要であると考えています。
現行法におきましても、例えば、貨物自動車運送事業法第六十四条の荷主勧告制度においては、荷主に勧告を行う際の要件については、違反行為が荷主の指示に基づき行われたことが明らかであるとき、その他当該違反行為が主として荷主の行為に起因するものであると認められるときなどと規定されているところであり、元請事業者、発荷主、着荷主のいずれの行為についても適用対象となっているところです。
今般の改正により追加されます第六十三条の二の荷主の配慮義務や、附則第一条の二の関係行政機関の長との協力による荷主への働きかけなどの規定につきましても、これらの荷主については、元請事業者や発荷主だけではなく、着荷主を含めてしっかりと運用していただく必要があるものと考えているところであります。
○宮本(岳)委員 しっかりと運用していただきたいと思うんですね。
次に、運賃の告示について聞きたいと思うんです。
標準的な運賃の告示制度の導入ですけれども、法案はできる規定になっておりますが、時限措置の期間内に必ず告示をするのか。これは国土交通省自動車局長に聞きたいと思います。
○奥田政府参考人 お答え申し上げます。
トラック運送業におきましては、中小事業者が大半を占めておりまして、荷主に対する交渉力が弱いことなどから、必要なコストに見合った対価を収受しにくい状況にあるところでございますが、その機能を維持していくためには、法令を遵守しつつ持続的に運営することができるよう、適正な対価を収受できる環境を整えることが重要でございます。
今般の改正におきましては、さきの通常国会で成立いたしました働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律に基づきまして、トラック運送業について、平成三十六年度から時間外労働の限度時間の設定がされること等を踏まえ、トラック運送業がその機能を持続的に維持していくに当たっては、法令を遵守して運営を行っていく際の参考となる運賃を示すことが効果的であるとの趣旨により、平成三十五年度末までの時限措置として標準的な運賃の告示制度が設けられたものと理解をいたしております。
標準的な運賃の具体的な設定の方法等につきましては今後検討することとなりますが、条文の趣旨に沿うことができるよう適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 条文の趣旨に沿うことができるよう適切に対処したいというのは、告示をしていただけるということでいいのかどうか。これはちょっと自民党の提案者に確認しておきたいと思います。
○盛山委員 この法案が成立しました暁には、当然そのような対応がとられるものと我々は期待しているところでございます。
○宮本(岳)委員 幾つか確認をしてまいりましたけれども、私どもは、そもそも、こういう事態に立ち至った原点である一九九〇年の物流二法というものについての総括と反省が必要だというふうに考えております。
本来であれば、事業者、労働者、荷主などを本委員会にお招きをして、しっかりこの間のトラック事業の現状やトラック労働者の労働条件について御発言もいただいて、もっと時間をとった審議が必要であると考えておりました。
また、荷主勧告制度ということも発議者から出されましたけれども、無理な着時間指定や過積載を取引条件とする、荷主に不当な行為が指摘された場合には勧告制度がある、こう言うわけですけれども、荷主勧告というのが発せられたのは過去一度もないわけですね。だから、過去一度もないものに勧告制度を強化しても、法改正の効果があらわれないということも考えられます。
こうした実態を国民の前に明らかにしてこそ法案の実効性も確保できると考えますし、そういう点では、今後ともしっかりこの議論を進めることを求めて、質疑的な発言を終わりたいと思います。