衆院予算委中央公聴会 消費税増税 懸念次々 統計不正解明求める声も
衆院予算委員会は26日、中央公聴会を開きました。公述人からは、政府が10月に狙う消費税10%への増税について、消費低迷、経済への打撃を懸念する意見が相次ぎ、中止・見送りを求める声があがりました。さらに、厚生労働省の毎月勤労統計などの統計不正をめぐり、国の政策判断にかかわる重大問題として真相解明を行うべきだとの指摘が出されました。
立正大学客員教授の浦野広明氏は、負担能力に応じた税制などを提起し、消費税増税を「絶対にやるべきではない」と述べました。法政大学教授の上西充子氏は「10月の消費税増税は見送るべきだ」と主張。大和総研政策調査部長の鈴木準氏は、増税は必要としつつ、2014年の8%への増税で「(景気の)回復力が非常に弱まったのではないか」と述べました。
日本共産党の藤野保史議員は、食料品の値上げと増税が暮らしに与える影響について質問。浦野氏は、食料品にかかる税率として、日本の8%は欧州各国と比べても高いと紹介。「食料品(の値段)が上がり、消費税増税となれば、国民生活は破綻する状況になる」と指摘しました。
弁護士の明石順平氏は、毎月勤労統計調査の不正について、調査方法の変更などの結果、賃金の伸び率が過大に示されていたと指摘。18年の実質賃金の伸び率はマイナスとの試算を示し、厚労省の公表値について「真実に反し統計法違反になるのではないか」との認識を示しました。
上西氏は「経済統計のデータが信用ならない状況であれば、一国の経済のかじ取りの判断を誤ることにもつながる」と警鐘を鳴らしました。
日本共産党の宮本岳志議員は、統計不正の解明がないままでは予算決定を判断できないのではないかと質問。明石氏は「おっしゃる通りだ。統計が信頼できないということは、地面が壊れていくようなもの」と述べました。(赤旗2019/2/27)
動画 https://youtu.be/e6nhPFDFQv0
議事録
○宮本(岳)委員 四人の公述人の方々、本当に本日はありがとうございます。
日本共産党の宮本岳志です。
まず、鈴木先生にお伺いしたいんです。
鈴木先生は、日経新聞の十字路というのを事前に資料で読ませていただいていますが、「政策が効果をもつためには、人々が政府を信用する必要があるが、国の統計に対する信頼はその基盤である。」こうお書きになっています。きょうも、先ほど、統計の信頼性の回復は極めて重要だとおっしゃられました。私どもももちろん、ここが土台だと思うんですね。
それで、御承知のとおり、本委員会で議論している予算でありますけれども、予算は、当然、基幹統計の上に立って、政府の経済認識、景気判断、税、社会保障、増税にかかわる政策判断などの重要な基礎になっているわけでありますけれども、まず、これは科学的態度の問題として、これが明らかにならないまま当予算を決定していくというのはいかがなものかと。やはり、しっかり、ここのところの不正だとか、いいかげんなところを洗いざらい明らかにした上でないと、わからないままでは判断できないと私は思うんですが、先生はどうお考えですか。
○鈴木公述人 お答え申し上げます。
私、お話をいろいろ伺っておりまして、問題は唯一、東京都の五百人以上を全数調査していないにもかかわらず、そこをきちんと復元していなかったという、事実を知りたいという意味ではそこが唯一の問題でありまして、そこはきちんと、それを見直した数字が発表されておりますので。
その他のことについては、いろいろな情報が出ていて、それを考慮して判断しなければいけないという状況はいろいろなところにありますけれども、完璧な統計というのはないわけでありますので、そういう意味では、現状で何か、これで予算を認めることができないということは、私はちょっと、そういう立場ではございません。
○宮本(岳)委員 東京都の五百人以上のところの調査の仕方がおかしかったということは思うけれども、これで予算の評価が変わるというふうには思わないというお話でありました。
同じ質問を明石先生にしたいと思うんですが、まさに、予算も公聴会ということになりますと、大詰めということになるわけでありますけれども、私たちは、このままこの予算を判断するというのは科学的な立場に欠けると思うんですが、いかがでしょう。
○明石公述人 おっしゃるとおりで、統計が信頼できないということは、地面が壊れていくような感じになりますから、これはもう無理だと思いますね。
それで、先ほど、三分の一しか抽出しなかった問題というのが出てきましたけれども、私の資料の二ページをごらんいただければわかるとおり、再度御説明いたしますが、三分の一しか抽出していなかった、そしてそれをこっそり復元していたというのは問題の一部にすぎないわけですね。最も重要なのは、サンプルを一部入れかえて、そして、ベンチマークですね、一番影響が大きいのはベンチマークなんです。二千八十六円賃金が高くなっているんですが、そのうちの九百六十七円、〇・三七%、これがベンチマーク入れかえ、一番影響が大きいんですね。ここなんです。算出方法が違うものをそのまま比較しているという問題、これは全く別次元なんですね。
よく三分の一抽出問題というところばかり目が行ってしまって、国民の方々はみんな混同していると思うんですけれども、違います。サンプルを入れかえて、ベンチマークも新しいものにかえた、つまり賃金が高く出るベンチマークにかえたんですね。それをそのまま、さかのぼらずに前年と比較している、ここが一番の問題なんです。だから実態が見えない。
おっしゃるとおり、実態がわからないのに予算を組めるかといったら、私は普通に考えて無理だと思います。
以上です。
○宮本(岳)委員 先ほど来、統計がこういう形で不正な形になっていたことを誰も気づかなかったという話もありましたけれども、私は逆に、二十一年五カ月ぶりの賃金の上昇と言われたときに、国民や働く人たちの間では、それは一体どこにそんなものがあるのかと随分首をかしげて、それほどアベノミクスがうまくいっているんだろうかと思ってきましたけれども、改めて今日の実態が明らかになれば、その国民の実感の方がやはり近かったんじゃないかというふうに思うんですね。
これも、次に鈴木先生にお伺いするんですけれども、鈴木先生は、どうも、実質可処分所得を引き上げる必要があるということをおっしゃって、可処分所得が減って、消費を通じた経済の好循環が回りづらくなっているという経済認識を、これも日経新聞で、二〇一八年の四月の二十二日付であらわされています。
じゃ、一体なぜ実質可処分所得が引き上がらないのか、可処分所得が減って、消費を通じた経済の好循環がなぜ回りづらくなっているのか、これは先生、どうお考えになりますか。
○鈴木公述人 その記事がどういう文脈で私が申し上げたかあれですけれども、可処分所得が伸び悩んでいるということは、きょうも公述で申し上げましたように、一番の問題は、私は社会保険料がふえ続けていることだと思います。
医療保険、介護保険、これはある意味際限なく今保険料率は上がってきておりますので、これはきちんと、どこまで一体負担できるのかというところまで給付の水準を見きわめながら、もちろん上がっていかざるを得ないと思います、超高齢化ですから。しかし、年金は上限をきちんと法律で決めていただいたりしているわけでありますので、医療や介護についても、保険料負担をどこまで一体上げられるのかということについて国民的な議論をして、そうでないと、幾ら額面の賃金を上げても可処分所得はふえにくい、消費に回らないということではないかと思います。
○宮本(岳)委員 じゃ、これもまた同じような質問を明石公述人にお伺いするわけですけれども、今度の予算案は、ことし十月の消費税率一〇%の増税を前提に編成をされております。消費税に対する考え方はさまざまあるだろうと思うんですね。ただ、増税に賛成の人でも、この十月の引上げはやはりやめるべきだという声も随分多いと思うんですよ。
そこでお聞きしたいのは、消費税を増税できる経済情勢に本当にあるのか。まあ、そもそも統計の前提を欠くという話もあるんですけれども、ただ、現状が本当にそういう状況にあるのかどうか。
先生の方からも、実質民間最終消費がGDPの六割を占めるというお話があって、これがずっと下がり続けているわけですね。そのもとで一〇%の増税ということをやれば、とんでもない日本経済に悪影響があると私たちは思うんですが、先生の御所見をお伺いしたいと思います。
○明石公述人 おっしゃるとおりで、消費税を増税すれば、その分物価に上乗せされますから、実質賃金がまた落ちます。
加えますと、実質可処分所得が低迷している原因も、これは物価が上がっているから。社会保険料も影響していると思いますが、社会保険料などを含めた実収入で見ても、やはり下がっているんですね。下がっているというのは、アベノミクス前より下なんです。
これは、先ほど来強調させていただいているとおり、物価が急に上がったからですね。増税に円安をかぶせたから。それが、六年たっても全然賃金は追いついていないんです、そこに。だから、消費が低迷しているということですね。だから、増税したらそこに追い打ちをかける結果になるのは、これは間違いないです。
以上です。
○宮本(岳)委員 増税すれば今の景気に追い打ちをかけることは間違いない、こういう御判断だと思います。
きょうは、小出公述人にもおいでいただいていて、日々、中小企業、現場の経済をごらんになっていると思うんですけれども、先ほど、国民の感覚はさほど外れていなかった、数字は随分、二十一年ぶりと聞かされても、どうかなという感じがやはりあったということを私は申し上げたんですが、この十月から消費税を上げて、あなたが日ごろごらんになっているような中小企業、地場の産業にとって、私は非常に大きな影響があると思うんですが、実感としてはいかがですか。
○小出公述人 先ほど申し上げましたとおり、私、二十年近く現場の最前線で中小企業や小規模事業者の相談に当たっているわけです。恐らく、相談した企業の数からいうと、日本で一番その手の相談を受けている人間だというふうに自負しておるんですけれども、この数年の中で、明らかに相談の質が変わってきたというふうに考えております。
と申しますのは、リーマン・ショック以降の非常に厳しい状況の中で、資金繰りも本当にどん詰まったような状態の相談が多く見られた中で、最近はこれが極めて減っております。非常に前向きな相談がふえてきたというのが実感でございます。
ですから、明らかに、我々、現場感で見てみると、中小企業や小規模事業者の経営実態というのは以前よりも改善されているのではないかというのは最前線で感じておるところでございます。
消費税の増税につきましても、実は、前回のときにはかなりその件に関して危惧する意見というのが多かったように思いますけれども、最近の相談の中には、その辺のところをあらかじめ受け入れて、それがある前提でどうするかというような相談が多いような感じがしております。
以上です。
○宮本(岳)委員 随分改善してきたという実感が語られたわけですね。
小出さんはもともと静岡銀行におられたというお話でございましたが、私、この間、実はサブリースという業態について研究もし、予算委員会でも取り上げてきたんです。
同じく静岡県に本社を置く銀行で、スルガ銀行という銀行がありまして、この銀行が随分、サブリースという不動産の貸付けにのめり込んで、悪質なことをやったという事件がこの間ございました。
ただ、これ、一時期はもうとにかく、金融庁長官を先頭に、ここがやっているのはすばらしいことなんだ、リスクをとって目ききでいけ、こういうことを言うたことがありまして、ただ、そういう結果が、非常に裏腹なことにこの場合はなったわけですね。
そういう点で、私、少しお伺いしたいんですけれども、そのようなものにならないための保証というのはどこにあるとお考えか。つまり、本当に実態として目ききだというのと、あるいは、そういうものばかりじゃない、いろんな悪質なものが、後で化けの皮が剥がれてみたら全然違っていたということがあるじゃないですか、それは一体、どこでどう見分けるのか。それはどうお感じになっていますか。
○小出公述人 元金融マンの立場からしてみますと、今回のスルガ銀行の問題というのは、あるはずもないような事件だったと思うんですね。
つまり、書類の改ざんを承知した上で融資をするというのは、もうあるはずもないようなことが起きてしまったということだったと思うんです。だから、基本的な金融機関としてのあるべき姿というのを極めて逸脱した行為ではなかったのかなというふうに感じております。ですから、あるべき姿を普通にやっておれば、こんな問題というのは多分起きなかったんだろうと思っています。
サブリースの問題についても、要は、度を越したような融資でなければ、あれは手法としてはありだったと思うんですね。ですから、そこのところを、やはりルールを踏み越したような形にならないような管理監督を強めていくということが金融監督当局も求められているのかもしれません。
○宮本(岳)委員 私も、サブリースというものをちゃんとやはり法的に規制してルールをつくるべきだということを、繰り返し申し上げてきたわけなんです。
この予算委員会、中央公聴会ということになれば、この後いよいよ議論は大詰めということになりますけれども、きょうお伺いした中でも、また御意見をお伺いした中でも、統計そのものがどうであったかということはまだまだ解明がされていない、こういうことも出されました。
もう一度、お二人の参考人、鈴木先生と、そして明石先生にお伺いしたいんですが、やはり予算はきちっと議論を尽くして採決をするというのが当たり前のことだと思うんですけれども、ぜひその点についてどうお考えか順々にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
○鈴木公述人 繰り返しになりますけれども、今出されている情報というのは、統計を使う側がきちんとそしゃくをして、どういう判断をするかという、情報は出されているというふうに思いますので、ぜひ国会で議論を尽くしていただいて、採決をとっていただきたいというふうに思います。
○明石公述人 私は、議論の大前提として、出すべきものを出して、それで議論が尽くされるべきだと思っております。
先ほど申し上げましたが、参考値の実質賃金伸び率、簡単に出せるものがなぜか出てこない。そういう状態で、前提を欠いていますから、議論を尽くすということもできないのではないか、そういうふうに思っています。
以上です。
○宮本(岳)委員 ありがとうございました。
これで終わらせていただきます。