統計不正 徹底解明を
宮本岳志氏 資料全面開示求める
日本共産党の宮本岳志議員は5日の衆院総務委員会で、厚生労働省の毎月勤労統計に続いて明らかになった国土交通省の統計不正問題の徹底解明を求めました。
宮本氏が、国交省の建設工事受注動態調査の不正処理問題と建築工事調査票の配布遅れは「組織的・構造的な問題だ」とただしました。統計委員会の椿広計委員長は「大変遺憾だ」とし、国交省がリカバリー(信頼回復)に全力を尽くすべきとの認識を示しました。
宮本氏は、国交省の検証委員会調査報告書での不適切な「合算処理」について、当時の課長補佐と係長の供述が食い違っていたり、2000年からの長期にわたるものだったのに組織的に把握していなかったと主張していることについて質問。椿委員長は「極めて由々しきことだ」とした上で「報告書の精査を進めており、未然防止措置を検討している」と答えました。
宮本氏が、問題発覚後の統計室内の議論で「合算処理をしない数値を公表すべき」と「合算処理をして公表すべき」という二つの意見が対立したため「折衷案を採用」したのは統計を真実から遠ざけるものだとただすと、椿委員長は「正しい数値に移行する経過措置と誤解されかねない」として「合算処理自体、合理的でない」と述べました。
宮本氏は、報告書の全面マスキングされた資料は全て開示すべきだと求めました。
(しんぶん赤旗2022年4月7日)
動画 https://youtu.be/5xBDTXFJQ5g
配付資料 20220405総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
私は、二月八日の当委員会で、統計委員会タスクフォースが一月十四日に発表した、国土交通省の建設工事受注動態統計調査をめぐる事案についての精査結果報告書を取り上げて質問いたしました。
その日は残念ながら統計委員会の出席がかなわなかったわけですけれども、本日は統計委員長に御出席をいただいております。
統計委員会の議事録などから委員長の発言を読ませていただきました。事案が発覚した直後、十二月二十四日の統計委員会で、椿委員長は、今回の事案が二〇一九年の毎月勤労統計をめぐる問題に次いで明らかになった、国民が信頼を失って協力していただけないような状況になることが最も危惧するところだと、危惧を表明されておられます。
公的統計への信頼にも関わる今回の事態を、椿委員長はどのように受け止めておられますか。
○椿参考人 御指摘のとおり、毎月勤労統計調査の不適切事案の発生を受けて、公的統計の信頼回復が既に大きな課題となっております。
統計委員会からの提言等に基づき、政府による各種の取組が行われている途上でございます。その中で今回のような問題が発生したことは大変遺憾であり、統計の品質確保という、公的統計の最も基本的かつ重要な問題が改めて浮き彫りになったと考えております。
統計委員会としては、国土交通省の検証委員会の報告書や、私どもの対応精査タスクフォースの報告書を踏まえて、専門的な精査を含め、公的統計全体の品質向上や、重大なリスク事案の発生防止、ひいては信頼性の確保に向けて、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 ところが、残念なことに、先日また、着工統計で調査票の配付遅れまで明らかになりました。委員長の、正直信じられない、統計自体が期日に公表できなくなるという一番大変なリスクが生じている、新聞上での報道ですが、こういう発言が報じられております。
繰り返される国交省の統計問題は、組織的問題、まさに構造的問題がそこに横たわっており、徹底的に解明することが急がれると思います。統計委員長の御認識をお伺いいたします。
○椿参考人 これも御指摘のとおり、三月二十八日の統計委員会で、国交省から、建築工事費調査についての調査票の配付が調査計画上の当初予定より遅れているとの報告がありました。
このように、当初の調査計画の実施に当たって、その進捗自体に遅れがあり、計画の修正を通じてリカバリーしなければならない事態になっているということは、私にはこれまで経験したことがない案件で、遺憾であるとともに、むしろ、率直に申し上げて、驚いたということがございます。
いずれにせよ、本統計調査については、スケジュールの遅れによって調査結果の利活用に支障が生じることがないようにするということが最重要と考えております。国交省において直ちにリカバリーに全力を尽くしていただきたいと考えている次第です。
統計委員会としても、国交省の当面の取組に対して、しっかり協力してまいりたいと思います。
○宮本(岳)委員 国交省の建設工事受注動態統計調査の不適切処理に係る検証委員会報告書では、合算処理について、開始時期は明らかではないものの、合算は、少なくとも建設受注統計調査が開始されたときには、本件統計室が都道府県に対して指示をしていたことが認められるとしております。
また、検証委員会報告書は、十八ページで、二〇一一年九月まで在籍した課長補佐やその後任の課長補佐は、説明会に出席しており、合算処理の説明を聞いていたと認められるが、係長以下の行う集計業務という意識から、耳を傾けて聞いていたことはなく、推計方法の変更の過程で合算処理は意識になかったなどと述べております。
しかし、その一方で、係長は、課長補佐も本件合算処理を認識しており、相談の上で本件合算処理を続けたと供述しており、供述が食い違っております。
二月八日の当委員会でどちらが事実なのかと国交省にただしましたが、国交省は、二人の供述が食い違っているということを繰り返すばかりでありました。しかも、奇妙なことには、供述が食い違っているにもかかわらず、わざわざなお書きを付して、作為的な意図は認められなかったとか、時の政権のために二重計上を生じさせたことは確認できなかったなどと書いております。
合算処理が少なくとも二〇〇〇年以降恒常的に行われてきたことを国交省が組織的に把握していたかどうかは決定的な問題であります。一月十九日の統計委員会では、委員会の、現時点まで、遅延提出された調査票の取扱いに関する対応方法についての内部での協議はなかったのかという質問に対して、国交省の回答は、報告書に記載された二〇一九年四月以降のことしか触れておりません。長期間行われてきた合算処理について触れられていないことに、私は非常に違和感を覚えました。
合算処理が二〇〇〇年から長期間にわたり組織的に把握されていなかったという国土交通省の主張について、統計委員会はどのように認識しておりますか。
○椿参考人 委員御指摘のとおりでございまして、我々は国交省の報告書というものを見たわけですけれども、合算処理に、人的及び物的余裕がなかったために、当該処理の是非を検討し、これを見直す機会もないままそれが継続され、室長ら幹部も現場任せにしていた、二重計上については、集計実務を担当する係長、係員はその気づきが得られず、さらに、推計方法の見直し過程で、係長以下と推計方法を検討していた補佐以上の間で十分な情報共有がなされず、その背景に分業意識があったとされております。
これは極めてゆゆしきことなんですけれども、統計委員会に置かれた公的統計品質向上のための特別検討チームでは、現在、この検証委員会の報告書について精査を進めておりまして、未然防止措置の在り方について検討をしているところでございます。
○宮本(岳)委員 今、椿委員長が触れられたように、国交省の報告書では、本件統計室は通常業務をこなすだけで手いっぱいとなっており、人的、物的余裕がなかったため、これを見直す機会もないまま続けられたなどとしております。
調べてみると、確かに、国交省全体の統計職員は、二〇〇一年度と二〇二一年度とでは半減以下という状況になっております。
人的確保は必要だと思います。しかし、確保されていないから統計を不正確なまま放置したなどというのは到底許されないと私は思いますが、改めて、統計委員長の御見解をお伺いいたします。
○椿参考人 質の高い統計を作成するために十分な質と量の統計職員を確保することはもちろん重要であり、このことも含めて統計委員会で議論していきたいと考えておりますけれども、議員御指摘のとおり、人員だけの問題として完結するものではなく、先ほども申し上げましたけれども、品質管理、品質マネジメントの観点からしっかりと課題を整理する必要があると考えます。
繰り返しになりますけれども、変化点管理というようなものをきちっと行う、それから、誤りの発見、対処、改善に向けて、誤りを不正としないようなリスク対応を確実に行う、そういうことをきちっと申し上げたいと思います。
このように、統計作成者が当たり前の基本を着実に実施する業務サイクルと、当たり前のことを確実に実施できる体制を構築し、誤りが発生したときは、誤りを直ちにまとめ、適切に対処していく。これを統計行政に定着させることが、将来的な重大なリスク事象の発生や重大なリスクへの進展を極力抑えていくことになると考えているところです。
○宮本(岳)委員 それで、ついに二〇一九年十一月には、国交省の不適切な合算処理が会計検査院の知れるところとなりました。
国交省報告書の二十四ページ以下に、その後の統計室での議論が記載されております。
二十五ページには、合算処理をしない数値を公表すべきという意見と、合算処理をして公表すべきという意見が対立したとされております。二〇二〇年一月下旬頃に、課長の判断により、過月分は前月分のみを入れるという、いわば折衷案を採用することに決まったなどと書いてあります。
二月八日の当委員会では、この課長判断の折衷案について、私は、これが折衷案になるのかと率直に統計委員会の立場を聞きました。
すると、国交省から具体的な内容の説明が行われておらず、判断を行うための材料を持ち合わせていないので、統計委員長としての回答は差し控えたいとの答弁がされました。また、まずは統計委員会に報告し、意見を確認していただいた方が適切だったとの椿委員長の言葉も伝えられました。
私は、国交省がこんな不適切な統計の扱いをしておきながら、それが発覚しても正直に統計委員会に報告することもせず、折衷案などと称して足して二で割るようなことをすれば、統計はますます真実から遠ざかると思います。
改めて椿委員長にお伺いしたい。国交省はどうすべきだったのか。
○椿参考人 これも議員の御指摘のとおりなんですけれども、特別検討チームにおいて精査中なので、統計委員会という組織としての評価は差し控えなければならないと考えています。
ただ、統計の専門家としてお答えするとすれば、この報告書であった先ほど紹介のあったような議論というものの中で、一定の統計的な観点からの検討や配慮はなされたものと推察しております。
しかしながら、折衷案は、数値変動を緩和しつつ、それまでの二重計上を含む誤った数値を正しい数値に順次移行させるための経過措置と誤解されかねないと考えているところです。
したがって、このような疑義を生じ得る可能性がある以上、この種の折衷案的処理を行う前に、まずは、二重計上があったことも含めて、適切な遡及処理と経過措置等を統計委員会に報告、相談していただくべきであったことは明らかだと考えております。
その上で、二重計上と本件合算処理承継状態が問題となっている中で、この種の折衷案を、合算する根拠も示されていないということから、合算的な処理自体は余り合理的なものではないというふうに考えている次第です。
○宮本(岳)委員 到底折衷案と呼べるものではなかったと思います。
この問題に対しては、統計委員会や総務省の対応も問題だと言わなければなりません。
統計委員会はタスクフォースを設置して、既にこの精査結果報告書をまとめておられます。
この三十二ページから三十三ページにかけて、二〇二一年八月、会計検査院報告に関連した取材対応に係る国土交通省からの照会対応について検討しております。
そこでは、職員は、当該取材対応概要メモ中のダブルカウントという文言を読み飛ばしたと主張するが、当該職員の本務である国交省の調査計画違反か否かという質問への回答に気を取られていたという結果であったとしても、注意を欠く不適切な対応であり、結果として、併任職員の立場を効果的に活用できなかったことは極めて残念であるとまで言っております。
把握できなかったことはやむを得ない面があるとも書かれておりますけれども、果たして読み飛ばしてもやむを得ないものなのか、取材対応概要メモやメールの内容を見てみないと、私たちも判断できません。
統計委員会タスクフォースも、エビデンス、いわゆる証拠を示したいと思うからこそ、詳細な資料をこの精査結果報告書にはつけたのだろうと思うんですけれども、ところが、マスキングがかかっていて全く読めない資料があります。しかも、事実上のノリ弁でありながら、黒く塗るのではなく、ぼかし処理がされております。
このような画像処理の技術的な提案は、統計委員会事務局、つまり、総務省の側から統計委員会に提案したと総務省は私に答えましたけれども、椿委員長、これは間違いないですね。
○椿参考人 タスクフォースにおきましては、まさに議員御指摘の箇所のように、報告書において少し厳しい指摘や評価を行ったものについては、その理解に資するために、判断根拠となった資料を示す必要があると考えました。
他方で、タスクフォースは、総務省職員の個人間のメールや、公表されていない資料や、正式な資料でないものは公表しないということを職員に伝えた上でヒアリングなどを行い、その結果、率直な反省材料や改善意見を頂戴したところです。したがって、そのまま報告書に添付するのは、タスクフォースとしては適当ではないと考えたところです。
そのような中で、ぼかし処理を行うことで報告書に添付することができないのかという技術的なアイデアがタスクフォースの事務局から提案され、これについて、タスクフォースとしても採用することとしたものでございます。
○宮本(岳)委員 提案が事務局からされたということが確認されました。
配付資料を見ていただきたい。
資料一は、二月八日にも配付したタスクフォース報告書の八十九ページ、九十ページに掲載された、画像処理された国交省のポンチ絵であります。
マスキングを外してみたら、このとおり、何の問題もない資料でございました。もちろん、若干の違いがあります。左側、ぼかしのかかったものは、参考資料十五の、昨年八月二十日付の国土交通省から経済統計審査官室への連絡メールに添付されていたもの、そして右側は、改めて、同じ資料の昨年十二月時点のものを、私が国土交通省から直接受け取ったものであります。
私は、この資料の八月二十日時点のものを国土交通省に要求しましたが、なぜか答えは、探索中である、特定できないというものでありました。
国土交通省、この統計委員会タスクフォース精査結果報告書の参考資料に添付されている資料が、なぜ特定すらされていないんですか。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
委員の御指摘の統計委員会のタスクフォースの報告書にあります参考資料でございますけれども、これは国土交通省が作成した資料であるということは考えてございます。
ただ、その資料が、国交省としては、どの資料が該当するのかときちんと特定する必要があるというふうに考えてございます。
○宮本(岳)委員 特定されていないんですね。
○大澤政府参考人 お答えいたします。
報告書についている参考資料をきちんと見て、照らし合わせて、きちんと合致させるというようなことでの確認というのはいたしておりません。
○宮本(岳)委員 統計委員長、タスクフォースがおつけになった資料を確認すら、特定すらできていないという答弁ですけれども、いいんですか。
○椿参考人 この点について、国土交通省の立場を明らかにすることは私自身のミッションではございませんけれども、先ほど御指定いただいたこのぼかし処理のものが、我々が見ている資料の中で、先ほどありましたように、時点が違っているという資料であるということは我々も承知しているところです。
○宮本(岳)委員 時点が違っていても、事実お持ちで、それに基づいて精査されたわけですね。それが、今頃、国土交通省は特定できません、探していますという答弁ですから、話にならないんですよ。提出できないというのと特定できないというのでは、天と地ほどの違いがあります。
配付資料二を見ていただきたい。
右側は、総務省の情報公開・個人情報保護審査会が、森友学園との土地取引に係る行政文書を不開示とした財務省の決定について、二〇一九年六月十七日に取り消すべきだとの判断を示し、二〇一九年十一月十八日に私に開示された財務省の私宛ての答弁書、つまり想定問答であります。
総務省の情報公開・個人情報保護審査会に確認いたしますが、二〇一九年六月十七日にそういう取り消すべきだとの判断をしたのは事実ですね。
○吉牟田政府参考人 お答えいたします。
委員のお尋ねにありました答申では、原処分の不開示決定について、理由提示の不備を理由として原処分を取り消すべきとの答申を行っておりますことは事実でございます。
○宮本(岳)委員 時間が来ましたけれども、配付資料の二の左側は、タスクフォース報告書九十二ページに参考資料として添付されている会計検査院特別検査対応の想定問答と思われるもので、同じく一言一句読めない処理が施されております。
想定問答というものもこういう形で開示をされているわけであり、そして、不開示決定が不適切であるので開示すべきという判断も出ているわけでありますから、私は、明らかにすべきだと思います。
明かすと今後の業務に影響があるなどと繰り返すんですけれども、開示されてみれば、何のために不開示にしているのか分からないような内容です。大体、統計データの不正など二度とあってはならないんですから、今後の業務に差し障るはずがないんです。直ちに開示することを求めて、私の質問を終わります。