教職員定数増こそ必要
宮本岳志議員「教特法改定やめよ」
衆院文科委
衆院文部科学委員会は8日、教育公務員特例法と教育職員免許法を一括で見直して教員免許更新制廃止と引き換えに研修履歴の記録を義務づける改定案を、日本共産党以外の会派の賛成で可決しました。共産党の宮本岳志議員は、改定は更新制廃止のための教免法だけでよく、新たな管理・統制につながる教特法改定は撤回すべきだと主張。自主的・自律的な研修や教職員定数増こそ必要だと訴えました。
教特法改定案は、研修履歴の記録を教育委員会に義務づけるとともに、記録をもとに人事評価のための面談の場で校長が教師に指導助言するよう求めています。
宮本氏が指導助言の名でパワハラが起きる危険性をただしたのに対し、藤原章夫総合教育政策局長は「パワハラにならないような形で取り組んでいくことが必要だ」と述べるにとどまり、危険があることは否定できませんでした。
宮本氏は、期待される水準の研修を受けていない教員に職務命令で受講させることもあると末松信介文科相が述べたことをあげ、「最終的には職務命令で強制的に研修を押し付けるのか」と批判。末松氏は「そういう気持ちはまったくない」「最後の最後まで言っても聞いてくれない、良識を持っているとは思えない先生には」などと述べ、職務命令の対象を極力限定する考えを示しました。
宮本氏は「『対話と奨励』というなら最後の最後まで対話し納得してもらうのが筋だ」と主張しました。
(しんぶん赤旗2022年4月9日)
動画 https://youtu.be/u-N3nY2CL4U
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
教育公務員特例法及び教職員免許法の一部を改正する法律案について質問いたします。
冒頭に一問、午前中の吉川委員の質疑を聞いていて、私も一問、問いたいと思います。
現行免許更新制に基づいて既に免許が失効していて、今回の法改正を受けて新たに再授与を受けることは可能ということでありますけれども、免許状の取得に必要な単位の修得状況など、審査を行う上で必要な書類を求めるとされておりました。
単位を修得した大学が合併したり廃止されたりして既になくなっている場合には、これはどのようにすればよいのでしょうか。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
一般的に、大学を設置する学校法人が解散したような場合であって他の法人と合併する場合などは、解散する学校法人の残余財産とともに、学籍簿等の管理を承継する他の学校法人等に学力に関する証明書の発行事務も引き継がれるものと考えております。
極めて例外的なケースとして、承継する学校法人等が現れなかった場合、円滑な学生等の転学等を進めるために必要な支援を行う観点から、文部科学省が学籍簿等を引き継いでいることがあり、この場合、文部科学省において学力に関する証明書を発行しているケースもございます。
このようなことから、学力に関する証明書については引き続き発行が可能な状態になっているものと認識をしております。
○宮本(岳)委員 文部科学省に引き継いでいると。ですから、文部科学省に相談していただけば大丈夫だということだと思います。
ただ、そのためにも、先ほど吉川さんがおっしゃいましたけれども、一々、元々免許を持っておられたことはもう分かっているわけですから、教育委員会で、失効した先生が元々持っておられたことが確認できるんだったら再授与できるようにしていただく方がよっぽど手続的には簡単だと、改めて私の方からも申し上げておきたいと思います。
さて、大きな議論であります、大臣。
今日は全く逆に聞いてみたいと思うんですが、教育公務員特例法の改正をせずに、教職員免許法の改正のみ、すなわち免許更新制の廃止のみにした場合、何か不都合なことは生じますか。
○末松国務大臣 不都合が生じるかという宮本先生の御質問でございますが、変化の激しい時代におきまして、これからの教師の学びの姿として、教師一人一人の置かれた状況に照らして適切な現状把握と具体的な目標設定を行っていく上で、個別最適で協働的な学びが行われることが必要であるとは考えてございます。
このため、過去に教師が何を学んできたかを客観的に記録することを義務づけるとともに、これを基に教師の資質向上に対しまして指導助言等を行うという管理職の役割を明確にするため、教育公務員特例法を改正することが必要であると考えております。
今回の法案で義務づける研修の記録は、一人一人の教師が自身の学びを振り返りつつ、現状の把握と適切な目標設定を行うため必要不可欠なもの、いわば学びの足跡でありまして、主体的で個別最適な学びを実現する上でのベースとなるものでございます。
加えて、私自身も教師とも話合いをやりまして、かなり、幹部、行政の、教育長なり教師とも話をしたんですけれども、やはり、先生、自分が学んできた履歴というのはやはり知りたいと。これは、今ここに使いました学びの足跡という言葉をその先生もおっしゃっておられたわけです。加えて、この前、先生、質問が終わるときにちょっと申し上げたんですけれども、やはり自分を研修を通じて高めたい、自分を高めたいという御希望と同時に、授業はうまくやりたいということもおっしゃっていましたので、そういう意味では、私は、今回、免許の更新制の廃止と同時に、研修やってくる、この研修制度については期待を持ってもいいんじゃないか、私はそういうふうに思ってこの法律を提案申し上げているところでございます。
○宮本(岳)委員 いや、もちろん、高めたいという、自主的で一人一人が自発的な研修、私たち、大事だと思っています。
でも、それならまた逆に聞くことになるんですが、今回の法案、施行期日を見ますと、教員免許の更新制の廃止は今年の七月一日ですよ。その他の研修制度など、教特法については来年の四月の一日施行となっていますね。
七月から四月までの間には九か月という期間があるわけですけれども、もしも免許更新制を廃止して何もしなければ何か不都合や混乱が生じるというのであれば、この九か月間というのは一体なぜ放置できるのかということになりますね。この九か月間、別に混乱など生じない、こういうことでいいですね。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
今回の法案では、施行日を二つに分けているところでございます。
まず、新たな研修の仕組みは、教育委員会に研修記録の作成や指導助言等の法的義務を課すものでございますけれども、各教育委員会における準備期間を考慮し、令和五年四月一日施行といたしております。
その一方で、教員免許更新制の廃止につきましては令和四年七月一日施行といたしました。これは、仮に研修関係の規定と合わせて令和五年四月一日施行とすると、法案成立後も相当数の教員は翌年三月までに更新講習を受けなければならなくなるということになるためでございます。国会の御意思として示されたにもかかわらず、こうした状況を生み出してしまうということは適当ではないという考えの下、施行日を七月一日としたところでございます。
○宮本(岳)委員 いや、答えになっていないんですよ。
混乱は生じるんですか。局長。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
免許更新制をこの度発展的に解消して新しい研修制度に移行していくという内容でございますけれども、その趣旨とするところは、教師の個別最適な学び、協働的な学びを進めていくということが大事なところでございまして、それを担保する手段として、研修履歴の記録、それから指導助言という制度を義務づけるということを考えているわけでございまして、そうしたものをやっていくことで、トータルで教師の資質向上が図られていくという観点で、そういう提案をさせていただいているところでございます。
○宮本(岳)委員 答弁になっていないですよ。
混乱するわけないじゃないですか。七月一日に更新制がなくなったって、九か月間、別に事が起こるわけではないんです。ならば、教特法の改正など全く必要ない。
我が党は、後ほど、法案第一条を削除する修正案の提案を予定しております。
私は、一昨日も、全ての混乱の大本はボタンのかけ違えにあると指摘をいたしました。教員免許更新制は失敗であったと認め、一旦ボタンを全部外さないから、混乱に混乱を重ねる結果になるんです。
そして、教特法改正案の中身として、どうしてもただしておかなければならない問題は、一昨日委員会でも議論になった、職務命令に基づく研修の強制の問題であります。
牧委員の質問の、資質向上に関する指導助言というのが、特定の研修だとか指導方法などの押しつけ、パワハラにつながることのないような対策が講じられているかという問いに、藤原総合教育政策局長は、管理職等から一方的に指導するのではなく、対話の中で行われていくことが基本なので、パワハラにつながるものではないと答弁されました。対話だからパワハラにつながらないという説明は理解に苦しむんですね。
そもそも、パワハラというものは、上司と部下の対話、言葉のやり取りの中でこそ起こり得るんじゃないですか、藤原さん。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
先般の質疑の中で、職務命令により研修を受講させることが考えられる場合ということで申し上げたものが三つあったわけでございますけれども、そのうちの一つで……(宮本(岳)委員「パワハラ」と呼ぶ)はい。ICT活用指導などについて、再三受講を促してもなお、相当の期間にわたり合理的理由なく研修を受講しない場合ということを申し上げたところでございます。
研修は、教師の自主的、主体的な学びを進めていくという観点で行っていくことが基本であろうというふうに考えておりまして、対話をしていく中でも、そうした、パワハラにならないような形で取り組んでいくことが必要であるというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 質問を聞いているんですか、本当に。パワハラにならないようにするというのは当然のことですけれども、対話だからパワハラがないという答弁はおかしいでしょうということを申し上げたんです。
時間がありませんから、確認しておかなければならないことがたくさんあります。
次に、これも前回、牧委員が、中教審の審議まとめに「特定の教師が任命権者や服務監督権者・学校管理職等の期待する水準の研修を受けているとは到底認められない場合」という言葉が出てくるが、それはどういう場合かと問うたのに対して、総合教育政策局長は、到底認められない場合をガイドラインで示したいと述べるとともに、一、例えば、合理的な理由なく法定研修や教育委員会が定めた教員研修計画に基づく全教員を対象にした研修等に参加しない場合、第二、特段の支障がないにもかかわらず必要な校内研修に参加しない場合、第三、例えばICT活用指導力など特定分野の資質の向上に強い必要性が認められるにもかかわらず、管理職等が受講を促してもなお、相当期間にわたり合理的な理由なく研修を受講しない場合という三つをお示しになりました。
一つ目の法定研修や全教員を対象にした研修、二つ目の必要な校内研修は職務としての研修、こういうことでありますが、三つ目の、特定分野の資質の向上に強い必然性が認められる研修は、これは性格が異なると思うんですね。
これは、職務命令を行う範囲を広げる、こういうことですか、局長。
○藤原政府参考人 お答えいたします。
ICTの研修といったものは、今でも各教育委員会や学校現場で、日常の授業観察などを通じて得られた情報などを踏まえて、教育委員会や校長等の判断の下、個々の教師に対し職務としての研修が行われているものと承知をしております。
このICT活用指導力を例示をいたしましたのは、今後改正する指針において、中教審での教師に求められる資質、能力の再定義の議論を踏まえ、学習指導や生徒指導等に加え、特別な配慮、支援が必要な子供への対応、ICT、データ利活用等を資質、能力の柱として明記することを検討していることから、これからの教師に共通的に求められる資質、能力を代表するものとしてお示しをしたものでございます。
○宮本(岳)委員 いやいや、第一や第二は、それはあなた方の言い分でいえば、それはそういうものでしょう。でも、三つ目は違うんじゃないですか。
大臣は、審議まとめが発表された昨年十一月十六日の会見で、期待される水準の研修を受けているとは到底認められない場合ですね、認められない場合には、やむを得ない場合には、職務命令を通じて研修を受講させる必要が出てくることもあるかもしれない、こうおっしゃいました。
大臣、これは、対話と奨励というような言葉とは裏腹に、最終的には職務命令で強制的に教員に研修を押しつけようということになるんじゃないですか、大臣。
○末松国務大臣 先生、そういう気持ちは全くございません。
やはり、対話ですから、きちっと管理職が教員と向き合ってキャッチボールを続けなきゃいけない、私はそういう表現をしております。
それで、このICTの活用指導力につきましても、今、ICT支援員であるとか、GIGAスクール運営支援センターにしても、やはり、その使い方が分からないという先生がおられるから、あるいは生徒もおられるから助けを求めるということですから、当然ICTを先生方は知ってもらわないけない、その研修の場に来てくれないといったら、これはこれでやはり問題だ、私はそのように考えております。
もう大分時間もたっておりますので、先生がおっしゃる趣旨につきましては、余りにも性善的過ぎるということでありましたら、私、御意見として受け止めておきたいと思います。性善的に過ぎるんじゃないかということでしたら、それは御意見としてしっかり受け止めておきたいと思います。
○宮本(岳)委員 いや、性善的に過ぎると、性善的だとおっしゃるのであれば、大臣のおっしゃることがですね、強制しない、やはり対話と奨励でやるというのであれば、最後の最後まで対話を行い、納得してもらうのが筋だと私は思うんですよ。大臣も、多く存在するとは考えないというのであれば、先ほどおっしゃったガイドラインから、三つ目の項目は除外すべきではないですか。
○末松国務大臣 やむを得ない、もう最後の最後まで行っても言うことを聞いてくれない、これはもう良識を持っている先生と思えない状態の場合は、職務命令を出さないとこれは成り立たないと思うんですね、私、社会も。そのことを申し上げたいわけです。
○宮本(岳)委員 対話と奨励とおっしゃるけれども、結局、最後は職務命令、懲戒処分で強制するということになるんです。これでは、教職員の主体性など全く守られる保証はありません。これら全ての矛盾の原因はあなた方に反省がないことに尽きると言わなければなりません。
そのような法案には到底賛成することはできないと申し上げて、私の質問を終わります。
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教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案に対する修正案
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○宮本(岳)委員 ただいま議題となりました教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。
教員免許更新制は、二〇〇七年に導入したものでありますが、我が党は、当時から一貫して、免許更新制に反対してきました。今回、政府も免許更新制の破綻を認めざるを得ず、法改正を行うものと理解しております。
しかしながら、政府原案は、単に免許更新制を廃止するだけではなく、教育職員の研修の強化につながる施策も併せて導入するものであります。この部分には到底賛成できません。自主的、自律的な研修を行うことができる環境の整備、教職員の定数改善、労働環境の改善、教員の処遇の改善など、実施すべき施策は山積しているのであります。
そこで、免許更新制の導入が誤りだったことを明確にし、二〇〇七年以前の状態に単に戻すという趣旨を明確にするため、次のような修正案を提出することといたしました。
すなわち、政府原案のうち、教育公務員特例法の改正部分を削除し、これに伴い、法律の題名を教育職員免許法の一部を改正する法律とするものです。
以上が、本修正案の趣旨であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
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討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表して、我が党提出の修正案に賛成、内閣提出の教育公務員特例法等改正案に反対の討論を行います。
本法案は、新たな教師の学びの姿を実現するため、教員の研修履歴の記録管理と履歴を活用した指導助言を行うこととし、教員免許更新制を廃止するものです。
教員免許更新制はもはや制度的に破綻しており、何の条件もなく直ちに廃止するのが当然です。それにもかかわらず、発展的解消などと強弁し、教員個々人の研修記録の作成と指導助言の強化を持ち込んでいます。
管理職による指導助言は、国が策定する資質向上指針、その指針を参酌して都道府県教育委員会などが策定する教員の資質向上指標及び教員研修計画、新設される教員の研修記録に基づき進められ、期首面談や期末面談など人事評価の面談において行うことまで想定されています。研修についての対話と奨励を人事評価の場で行えば、教育委員会、管理職の意に沿う研修を受けなければならないという圧迫感、義務感、忖度につながり、事実上の強制になりかねません。
また、中教審審議まとめにおいて、職務命令に基づく研修の受講、場合によっては懲戒処分を講じることも求めていることに言及しており、これは自主的、自律的な研修と矛盾するもので、重大です。
そもそも指針、指標及び研修計画は、二〇一六年の法改正によって導入されたもので、我が党は、自主的であるべき教員の研修を、文部科学大臣の指針の下に置き、管理、統制するものとして反対しました。本法案は、十年に一度の更新講習と引換えに、研修制度を通じて管理、統制を強めるものであり、原則的な問題を含んでいることから、断じて賛成できません。
なお、立憲民主党・無所属提案の修正案については、見解を異にしており、残念ながら賛成することはできません。
行うべきは、制度的に破綻している教員免許更新制を廃止し、自主的、自律的な研修を行うことができる教職員数の定数改善や処遇の改善など、労働環境を整備することであると申し上げて、討論を終わります。