奨学金 滞納者に厳しい取り立て
一括返還請求やめよ
宮本岳志議員迫る
日本共産党の宮本岳志議員は15日の衆院文部科学委員会で、支払い能力のない奨学金貸与者への一括請求取り立てをやめるよう訴え、給付型奨学金の拡充を求めました。
宮本氏は、日本学生支援機構が奨学金滞納者に丁寧な説明なく「支払い能力あるにもかかわらず」「返済を著しく怠った」とみなし、法的措置を含めた一括返還を求める対応は「極めて不誠実だ」と批判。文科省の増子宏高等教育局長は、一括請求前にしおりなどでわかりやすく知らせると答弁しました。
宮本氏は「一括返還請求の扱いも解釈も変えるつもりはないのか」と迫りました。
宮本氏は、年間登録料170ユーロ(約2万2千円)のみで、返済不要の奨学金が最高73万円給付されるフランスの事例に学生らが「夢のような話だ」と反応したことを紹介。「フランスの制度は低・高収入者も一律に無償であり『逆進性』との批判がある」と強弁した増子高等教育局長に対し、「日本の高学費の問題は、党派を超えて議論してきたことだ。高等教育局長たる人がなんという答弁だ」と厳しく批判しました。
宮本氏は、根本的な制度の見直しと給付型奨学金の拡充を重ねて求めました。
(しんぶん赤旗2022年4月16日)
配付資料 20220415文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
私は、かつて、九年前、二〇一三年十一月二十七日の衆議院文部科学委員会で、夜間中学の問題を取り上げ、この場にもおられる下村博文当時の文部科学大臣と議論をいたしました。
実は、このときの質問に先立って、当時の小渕優子文部科学委員長や義家弘介現委員長、当時の萩生田光一自民党筆頭理事、野党筆頭で今も当委員会にいらっしゃる笠浩史委員、公明党の浮島智子理事や、今日もこの場におられる吉川元委員や山本ともひろ理事、そして馳浩さんなども一緒に、委員会として、足立区の足立第四中学校の夜間中学の視察にも出かけました。
あのとき、私の質問に対して下村文科大臣が、「それぞれの県内の生徒をこの夜間中学に対応できるようなことを市町村じゃなくて都道府県が考えれば、十分可能性はあるのではないか」と答弁されて、夜間中学の問題が動き始めたわけであります。
末松文部科学大臣も、昨年十一月の九日、東京都の江戸川区立小松川第二中学校を視察され、教育の原点であると感じましたと述べられたと聞きました。
夜間中学校に関する大臣の認識はどのようなものか、まずお聞かせいただきたい。
○末松国務大臣 お答え申し上げます。
夜間中学、我が国又は本国において義務教育を修了できなかった方、不登校など様々な事情により十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した方などに対して、教育を受ける機会を保障する重要な役割を果たしているものと考えております。
先生おっしゃいましたように、昨年十一月に、小松川の第二中学校夜間学級、お伺いをさせていただきました。若手の先生からは、生徒の学びたい意欲が強く、一人一人に応じた教材研究に励んでいると。不登校だった生徒からは、ここで勉強したいと自分で決めて、笑顔で通った、ここに入ってよかった、学校は楽しい場所だと知ったという声を直接お聞きをしました。私も、教育の原点と思っておりますのですけれども。
特に、中学校のときにいじめに遭って、学校に行かなくなって不登校になった、そして、高等学校に行ったんですけれども、ついていけないのでまた行かなくなった、そのときに、自分の意思でもって、お母さんと相談して、夜間中学でもう一度きちっと学び直しをしようという卒業生の方がおられたんですけれども、懇談会のときに出てこられたんですけれども、また、文部大臣室にお見えになったんですけれども、やはり人生を大きく変えたなというところで、立派に成長されておられる姿を拝見しました。
また、八十二歳のお年寄りの方が、やはり義務教育を修了されていなかったので、一生懸命掛け算を計算して、せめて計算だけでもできる人間でありたいということで、一生懸命取り組んでおられる様子を見まして、外国人の方もおられましたけれども、感心なり感動いたしたところでございます。
○宮本(岳)委員 政府として、全ての都道府県や指定都市に少なくとも一つは夜間中学が設置されるよう促進する、こうされております。
現時点での夜間中学の設置、検討状況はどうなっているか、初等中等教育局長、お答えください。
○伯井政府参考人 お答えいたします。
令和四年四月時点で、十五都道府県三十四市区、計四十校の夜間中学校が全国に設置されております。
特に、この四月には、新たに、北海道札幌市の星友館中学校、神奈川県相模原市の大野南中学校分校、香川県三豊市の高瀬中学校、福岡県福岡市の福岡きぼう中学校の四校が開校しているという状況でございます。
○宮本(岳)委員 増えてきていることはよいことだと思います。しかし、全ての都道府県、指定都市に少なくとも一つという状況にはまだ距離があると言わなければなりません。
文科省としてどのような支援を行っておりますか。
○伯井政府参考人 文部科学省といたしましては、この令和四年度予算におきましても、夜間中学校における教育活動充実のための委託事業のほか、夜間中学の更なる設置促進を図るという観点から、新設準備、運営に係る補助事業を計上しております。
また、平成二十九年の義務教育費国庫負担法改正によりまして、都道府県が設置する夜間中学校の教職員給与費についても国庫負担の対象としております。
全都道府県、指定都市に少なくとも一校設置されるという目標を掲げておりますので、設置に向けた自治体の取組を更に促してまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 夜間中学の設置が進まない要因として、夜間中学を必要とする人がいることが見えにくく、行政がニーズを把握できていないとか、設置のために何をしたらいいのか自治体が分かっておられないという指摘があります。
そこで、ニーズ調査の支援などを予算で行っているというわけでありますけれども、設置に向けて動き出すことが重要だと考えます。ニーズ調査を行っている都道府県、指定都市はどれぐらいございますか。
○伯井政府参考人 令和元年度に行いました夜間中学校等に関する実態調査では、全都道府県、指定都市教育委員会に対して、夜間中学の新設に向けた検討、準備の状況として、御指摘ありましたように、ニーズ調査の実施ということについてもお尋ねをいたしました。
その結果、四十七都道府県のうち二十八自治体、二十政令指定都市のうち三自治体から、ニーズ調査を実施しているという回答があったというのが現状でございます。
○宮本(岳)委員 二〇二〇年十月に実施された国勢調査において、学歴に関して、小中学校を分離して回答することといたしましたが、その結果が今年五月には公表されると聞きました。こうした実態が明らかになれば、夜間中学の必要性は増すことになると思います。
全ての都道府県、指定都市に少なくとも一つの夜間中学というならば、まずはそのニーズを全ての都道府県、指定都市で把握することが必要だと思います。しっかり、自治体に、ニーズを把握するように、情報提供を含めて行っていくことを求めたいと思います。
さて、先ほども答弁があったように、夜間中学は、この四月開校も含めて、十五都道府県三十四市区に四十校となっておりますけれども、現在、何校、何%で給食が実施されておりますか。
○伯井政府参考人 お答えいたします。
夜間中学は、先ほど言ったように四十校ございます。現状において給食を実施しているということで、この四月十四日時点でどうかということをちょっと昨日調べさせていただきまして、そのうち回答があったのが実は四十校中三十六校でございますが、その三十六校のうち、給食を実施している夜間中学校は十三校でございます。
○宮本(岳)委員 かつては、大阪市内の三つの夜間中学を始め、私が最初に夜間中学をお訪ねした岸和田市立岸城中学校など、ほとんどで補食給食がございました。今ではそれは廃止をされてしまっております。しかし、手厚い自校調理の完全給食を実施している夜間中学もあるんです。
資料一を見ていただきたい。当委員会が九年前に視察をした足立区立第四中学校の四月の給食献立表であります。四月十五日、今日の献立、主食はかきたまうどん、おかずにはニギスの石垣揚げ、いそあえ、デザートに草だんごまでついております。
資料二は、同じく東京の大田区立糀谷中学校夜間学級の献立表。今日は、カレーライスとツナサラダ、果物、こうなっております。
昨日調べていただいた夜間中学の給食一食当たりの平均費用でありますけれども、これは幾らぐらいになっておりますか。
○伯井政府参考人 給食を実施している先ほどの十三校ですけれども、その中で完全給食を実施しているところは、一食当たりの平均が三百十九円、補食給食の場合は一食当たり平均百十五円、ミルク給食五十三円、パンとミルクの提供をしているところは平均百三十六円という結果でございました。
○宮本(岳)委員 私は、先ほどの足立区の四中及び大田区の糀谷中学校の給食費を、我が党区議会議員団を通じて問い合わせました。答えは、足立四中三百四十八円、糀谷中学三百四十円でございました。
一方で、二〇〇八年度をもって補食給食をやめてしまった大阪市についても問い合わせましたが、当時の費用は、パンとミルクで八十八円、果物が三十円、ジャムやバターが十四円、当時で一食百三十二円という回答を得ました。
大臣、夜間中学は午後五時半から授業が始まって、午後九時までの授業時間を考えれば、やはりパンとミルクぐらいは食べさせてあげたいというのが人情だと思うんですね。僅か一食百三十六円とか、これぐらいは国がお金を出してでも生徒さんたちに食べてもらいたいと私は思いますけれども、大臣、いかがですか。
○末松国務大臣 私が訪問しました小松川第二中学校夜間学級ですけれども、給食は出ておりました。
義務教育諸学校における給食の実施は、もう先生御承知のとおり、学校給食法の規定によりまして、努力義務とされております。第四条に書いております。
その上で、夜間あるいは昼間を問わず、給食等を実施をするかどうかは、給食費への支援を行うかどうかにつきましては、地域や生徒の実情を踏まえて、設置者である各自治体において適切に判断されるべきものであると考えてございます。
文部科学省におきましては、様々な機会を通しまして、夜間中学を含めた学校給食の意義等は周知をすることにしておりますので、関係者の理解を求めてまいりたいと考えてございます。
○宮本(岳)委員 まあ、教育の原点だとおっしゃるのであれば、それぐらいはやっていただきたいと思います。
次に、本年四月より成年年齢が引き下げられることとなりました。これに伴う対応について、いわゆるアダルトビデオ出演強要問題についても対応を求める声が数多く寄せられております。
今年三月三十一日、政府は「アダルトビデオ」出演強要問題緊急対策パッケージを決定をいたしました。同時に、四月は若年層の性暴力被害予防月間ということで、資料三におつけをいたしました、こういうチラシも配っているとのことです。この同じデザインのポスターもございまして、私の部屋にも張り出させていただきました。
改めて、配付資料三の赤の下線部を見ていただきたい。成年年齢の引下げに関わって、「十八歳、十九歳の方は、未成年であることを理由とした契約の取り消しができなくなります。」と書いてあります。もちろん、これを周知して注意喚起するのは当然であり、大事なことでありますけれども、ただ、それだけだと、詐欺的手法で既に契約をさせられてしまった被害者は、このポスターを見て、逆に、そうか、取り消せないんだと泣き寝入りをしてしまうのではないかという不安も残ります。
そこで、今日は内閣府に来ていただいております。もちろん、下には「一人で悩まず相談してください。」とあり、たとえ成人であっても望まない性的な行為は性暴力である旨も書かれております。これは、十八歳になったら契約を慎重にするよう呼びかけるとともに、たとえ契約してしまった場合でもためらわずに相談してほしいという趣旨のものだと私は思いますが、間違いないですね。
○林政府参考人 お答え申し上げます。
アダルトビデオへの出演に関する被害の問題は、被害者の心身や私生活に長期間にわたって悪影響を与える重大な人権侵害であり、あってはならないことと認識しております。
御指摘の件でございますが、まさに「一人で悩まず相談してください。」ということで、このリーフレットの一番下にありますように、内閣府では、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター、こちらは全都道府県五十二か所に設置されております。「はやくワンストップ」、シャープ八八九一という短縮番号も設けまして、ここで相談をするようにということで、こうしたポスター、リーフレット、チラシなどを、大学、また文科省を通じて、教育委員会を通じて高校等にも周知を依頼をしたというところでございます。
このワンストップ支援センターは、緊急避妊薬の処方や証拠の採取などの医療的な支援のほかに、弁護士を紹介するなどの法的な支援も行っておりまして、地域における被害者支援の中核的な役割を担っております。
先ほど委員御指摘のとおり、私ども行政府として、できることは全てやるという観点から、三月に緊急対策パッケージを、関係省庁の局長を招集して決定をしたところでございまして、その中の柱の一つとして、被害者保護に係る各種法制度の運用強化というのを掲げまして、各種法制度を周知をいたしまして、対応を強化するために、このワンストップ支援センターに対しても、弁護士相談や弁護士紹介の法的支援を更に積極的に進めるよう周知をし、指示をしたところでございます。
引き続き、関係省庁と連携して取り組んでまいります。
○宮本(岳)委員 今、高校生世代をAV搾取から守ろうと、超党派で新たな立法化を検討する動きも始まっております。私たちもしっかりと必要な法整備に取り組んでいきたいと思っております。
同じく、成人年齢が引き下げられるのを受けて、大手銀行の三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行は、カードローンについて、二十歳以上が利用可能とする現在の条件を維持することにしたと報じられております。
カードローンは、無担保で数百万円を借りることができ、返済能力を上回る貸付けにつながりかねないという懸念があるためで、みずほ銀行は、過大な債務を負うことがないよう十分な配慮が必要で、今回のタイミングでの十八歳への引下げは見送ったとしております。
一方、カードローンは多くの消費者金融業者も手がけておりまして、成人年齢の引下げに合わせて、金融庁と日本貸金業協会が、業者に対して、二十歳未満に貸付けを行う場合には、金額にかかわらず、収入の状況を示す書類を確認するよう求めているとも報じられました。
私は、三月二日、本委員会の質疑の中で、奨学金の一括請求の問題を取り上げ、日本学生支援機構法施行令第五条第五項には、支払い能力があるにもかかわらず割賦金の返済を著しく怠ったと認められるときはとあるが、日本学生支援機構が丁寧な説明のないまま法的措置を取るという極めて不誠実な対応を明らかにし、改善を求めました。末松文科大臣も、分かりやすい通知文書となるよう努めたいと述べられました。
現在の検討状況、進捗はどうなっているか、高等教育局長にお答えいただきたい。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
先般の先生からの御指摘を踏まえまして、丁寧な説明を図るとの観点から、奨学金の貸与を受ける学生及び返還者に、必読、重要として示しております「奨学生のしおり」というものがございます。そういう資料や、延滞者への通知文書に、御指摘いただいた日本学生支援機構法施行令第五条第五項に関する一括請求を含め、分かりやすく記載するよう、現在作業を進めているところでございます。
文科省といたしましては、奨学金に関して、利用者目線で、丁寧で分かりやすい説明に努めるとともに、特に、厳しい経済状況などで奨学金の返済が困難な方には、一括請求に至る前に、返済期限猶予や減額返還制度を利用していただけるよう周知を図るなど、丁寧な対応に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 あの質問後にも、月々三万二千円の支払いをしてきたにもかかわらず、支払い能力があるにもかかわらずという説明なく、いきなり五十八万円の一括請求をされた、こういう相談なども寄せられております。早急な対応が求められると思うんです。
丁寧で分かりやすい説明となるよう改善すると言う一方で、文部科学省の説明は、督促を受けても、返還期限の猶予等の手続などの連絡がなく、延滞を続けている者を、これまでどおり、支払い能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠った者とみなすという説明の繰り返しでありました。
これはつまり、宮本に指摘されたから、言葉だけは施行令五条五項どおり正確に書き込むが、扱いも解釈も変えるつもりはさらさらない、今までどおり、一括返還を求め、裁判に訴えるということですか、高等局長。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
学生支援機構の返還金の回収につきましては、先生御案内のとおり、まず、延滞三か月までについては、本人に対し督促をし、その過程で、返還者への通知のたびに、返済制度がありますよという案内もしておりますし、さらに、延滞三か月以上の場合、その際には、個人信用情報機関に登録をさせていただくということになります。また、延滞九か月以上、そういう場合になって初めて法的措置ということになりますが、返済者への通知のたびに救済制度の案内をするというきめ細かい対応はしているということは事実でございます。
○宮本(岳)委員 先ほど、成人年齢の十八歳への引下げに関して、金融庁と日本貸金業協会が、業者に対して、二十歳未満に貸付けを行う場合には、金額にかかわらず、収入の状況を示す書類を確認するよう求めているという報道を紹介いたしました。
聞きますけれども、日本学生支援機構は、学生への奨学金の貸与に当たって、本人の収入の状況を示す書類を確認しておりますか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
本人というよりも、親の所得の、収入の確認をしているということでございます。
○宮本(岳)委員 それは、本人は、大半は無収入の学生ですから、本人の収入の確認などしようがないんですね。担保も取っていないんです。将来の収入の保証もなく、担保も取らずに数百万円の貸付けを行うのは、この事業が貸金業ではなく奨学のための制度、奨学金だからこそなんです。しかし、そうであるならば、貸すのではなく給付するのが奨学金の当たり前の姿だと、私は下村大臣当時から繰り返し求めてまいりました。
配付資料四を見ていただきたい。
国立国会図書館の調査室が私に提出した資料であります。特に、赤線を引いたフランスを見ていただきたい。憲法により、公教育は無償とされている。しかし、年間登録料を名目として年額百七十ユーロ、約二万二千円の支払いが必要とあります。一方で、奨学金は年額で十三万四千円から七十三万八千円が給付される。これは返済の必要のない給付型奨学金です。
先日、私は、地元の大阪経済大学の学生たちと対話をいたしました。大阪経済大学は、大阪の私立大学の中でも、授業料だけなら年間七十五万円と、最も安い大学の一つです。それでも、フランスの年間学費二万二千円、奨学金は返済の必要なく七十三万円、二万二千円払っても七十万円以上余り、月六万円程度のお金を国からもらいながら大学に通っているんだよと話すと、それは本当の話ですかと驚き、同じ地球上に存在する話だとは思えない、夢のような話ですという反応がありました。
大臣、こういう学生の反応を聞いて、今日の日本の高等教育の非常識な高学費を恥ずかしいとお感じになりませんか。
○末松国務大臣 先生、よく言われますヨーロッパの大学と日本の今までの大学、運営してきた在り方というのは異なることがございます。
一般的に、高等教育を受ける場合は誰が払うべきかといったら、やはり親と答える方もかなり多いと。今ちょっと手持ち資料はございませんので、そう答える方も多くて、社会の実態はヨーロッパとはちょっと異なる面があろうかと思うんです。
それで、日本学生支援機構の奨学金事業は、貸与した学生からの返金が次世代の学生への奨学金の原資となるため、支払い能力がある方からはしっかりと返還をいただくことが重要であるというふうに考えてはおります。
一方で、所得が低いなど経済的な返還が困難な方につきましては、返還期限猶予制度などの利用を可能としております。
延滞後一切連絡がない方については支払い能力がないと判断することになれば、年収が高い方も返還を免れるなどのモラルハザードを引き起こしかねませんので、日本学生支援機構では、返還者からの情報提供がなければ返還者の経済状況を把握できませんので、返還に困難を抱えている方については早期に相談をいただくように考えているところでございます。
先生おっしゃるようにお寒いかどうかということにつきましては、ちょっとこれは一概には申し上げられにくいんですけれども、精いっぱい、修学支援制度、この貸与型、対応はしてきておりますので、私は大きな支えにはなっていると思ってございます。
○宮本(岳)委員 返還金を原資にして貸すから借りたものは返してもらわないかぬという話は、もう前々から何百回と聞いてきたんです。ただ、それは給付型奨学金がなかったですから、なるほど、世の中の奨学金はみんな返さないかぬかった時代の話でありまして、今は給付型の奨学金をやっているわけですね。つまり、奨学金は必ずみんなが返すかというと、返さなくていいという話が存在しているわけですから、私は事情が変わってきていると思います。
昨日知ったんですが、私の秘書さんも、学生時代に一年間フランスに留学をしておられたと。もちろん学費は無償の上、留学生にも年間三十万円程度の返済の必要のない給付奨学金がもらえたと御本人が語っておられましたから、間違いないことだと思うんですね。
それを、日本の大学や専門学校の学費は世界でも非常識に高い上、奨学金も圧倒的多数は貸与型の借金、それも多数はいまだに利子付借金なんですよ。おまけに、返済が滞ったら、本人の収入や支払い能力を調べることさえせず、督促を受けても延滞を続けているというだけで消費者金融以上の厳しい取立てを行う。これは一体どういう了見なのかと言わなければなりません。消費者金融はちゃんと本人の収入状況を確認せいと言っているんですけれども、確認していないんですからね、というような状況になっている。これは一体どういう了見なのかと言わなければなりません。高等局長、お答えいただけますか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
日本でも、先生御案内のとおり、令和二年度から修学支援新制度ということで、低所得世帯については手厚く支援するということになっています。
先生、フランスを引き合いに出しましたが、フランスの無償制度については、収入が高い人も低い人も同じように無償ということで、逆進性だという批判があるというふうな話も実は出ていると聞いています、それがいいかどうかは別といたしまして。また、フランスの場合は国立大学がほとんどでございまして、税制も付加価値税が二〇%ということで、日本となかなか単純には比較できないのではないかというふうに考えております。
いずれにしましても、学生の修学支援については引き続き検討が必要だというふうに考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 逆進性だなんという話、どこにあるんですか。
先ほどの少人数学級と同じで、大学の学費が高過ぎて、経済的困難で学べないという学生が出ることは大変問題だと、党派を超えてそんな議論をやってきましたよ。そんな、不公平だとか逆進性だと、少なくとも、この文部科学委員会の議論の中で聞いたことはありません。本当にひどい話だと。
財務省が言うなら分かるけれども、高等教育局長たるものが何たる答弁をするんですか。いや、もういいですよ、もう答弁してしまったんだから。
資料を見ていただきたい。
日本学生支援機構は分かっているんです、滞納している方々がどんな状況になって、資料五ですね、最後。済みません、五を見ていただきたい。分かっているんです。この表を見ていただいたら、これは学生支援機構が自ら取り組んだ調査結果でありますけれども、この太い線から上が年収三百万円以下という方々であります。
それで、滞納している理由を本人の低所得と回答した方の年収を見ると、三百万円未満が八二・三%、滞納者全体で見ても七割は年収三百万円に満たないということをちゃんと支援機構は分かっている、自らのアンケート結果で。年収三百万円未満というのは、自ら支払い能力がないということを認め、返済猶予が認められる水準なんですね。
ですから、先ほど、モラルハザードが生じると大臣も答弁されました。なるほど、九百万円を超えていても滞納している人がいますから、この方々にとっては、これ、見逃したらモラルハザードになるでしょう。しかし、そんな方は〇・三%とか〇・何%じゃありませんか。一%にも満たない高額な方々を逃がしてはならないと、七割の人は三百万円を下回っていて、実際は返済能力がないにもかかわらず、とにかく大きな網をかけて全部一括返済を求めている。こんなむごいやり方はないと思うんですね。
私は、文言の修正で済む問題ではない、根本的に正すべきだと思いますが、最後に文科大臣の御答弁を求めて、質問を終わりたいと思います。
○末松国務大臣 先生、最初お認めになったとおり、年収が九百万円の方が十三人おられて、そのうちお二人は低所得だと言い張っておられるということは非常に矛盾した話ですけれども。ただ、年収三百万円未満だったらモラルハザードはないではないかと言われるんですけれども、ただ、やはり、お借りになって、返済をされた方も、始めた方もおられます。
私、前も申し上げたんですけれども、震災で、阪神のときでしたけれども、災害援護資金貸付金でも、二千円でも、一生懸命少額返済をされ続けておられる方というのは、やはり公平に対応しておりますので、その点については是非理解をいただきたいんですけれども、制度そのものについてはよりよい制度に改めていく、その必要性は重要だと考えてございます。
ちょっとなかなか、先生のお気持ちはよく分かりますが、答えられるのは、難しいですね、先生。
○宮本(岳)委員 今は給付型奨学金が始まっていますからね。全員が返さねばならぬということではなくなってきていますので、しっかりと、みんなが安心して学業を続けられるようにお願いをいたします。
以上で終わります。ありがとうございました。