NHK受信料 「懲罰的」徴収に変質
放送法改定案 宮本岳志氏が批判
衆院委
日本共産党の宮本岳志議員は19日の衆院総務委員会で、放送法改定案について、NHKの予算編成に政府の介入を招くことや、受信料を懲罰的な徴収へと変質させるものなどと反対しました。
法案は、NHKの受信料値下げのため「還元目的積立金制度」を作り、還元原資を確保するとしています。積立金額は「総務省令で定める」ため、宮本氏は「政府がNHK予算の内容に恒常的に口出しできる仕組みを作ることになる」と指摘。金子恭之総務相は「(NHKに)一定の裁量の余地を認めている」と、NHKの裁量に制限がかかることを認めました。宮本氏は「国が予算に口出しし、公共放送たるNHKの自主・自律を奪う改悪だ」と批判しました。
法案では、受信契約に応じない人を対象に「割増金」制度を導入します。金子総務相は「(不払い者への)不公平感でさらなる不払いを招く」ことを避けるためだと説明。宮本氏は「国民の理解と納得」に基づく受信料の徴収から「懲罰的」な徴収へと「受信料の性格を大きく変えてしまうものだ」と告発しました。
委員会では、性格の異なる放送法と電波法の改定案を「外資規制」の一点でまとめ、一つの法案として採決。宮本氏は反対討論で「十分な議論を避けようという姑息(こそく)な政府の姿勢を示すものだ」と法案審議のあり方自体を厳しく批判しました。改定案は自民、公明、立民などの賛成多数で可決しました。
(しんぶん赤旗2022年4月20日)
電波利用料
開発支援に使うな
宮本岳志氏 原点は共益費
電波利用料の使途を拡大し、企業の技術開発を支援する電波法改定案が21日の衆院本会議で放送法改定案と一括で採決され、賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。
法案は、外部機関に交付した補助金で企業の技術開発を支援する仕組みを創設。当面、次世代移動通信システム(ビヨンド5G)開発に使われ、同システムで事業を行う大手携帯電話事業者も支援対象となります。
日本共産党の宮本岳志議員は19日の衆院総務委員会で、国民が電波を使いやすくするために使う電波利用料を、国際競争力強化を目的とした企業の開発支援に使うべきではないと主張。「ビヨンド5Gで国際競争力を取り戻すのが狙いではないか」と指摘すると、総務省の田原康生国際戦略局長は「総合的な取り組みで強化につながる」と認めました。
宮本氏が「2030年ごろの実用化後も研究開発に充てられるか」とただすと、総務省の二宮清治総合通信基盤局長は「続けていく」と答えました。
宮本氏は「使途が限られた利用料の見直しを議論しないまま別財布をつくることは問題だ」とし、利用者の共益費としての原点に立ち返るべきだと批判。金子恭之総務相は「批判があることは承知している。対応したい」と述べました。
(しんぶん赤旗2022年4月29日)
動画 https://youtu.be/iU9e0I9xiTo
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず冒頭、どうしても大臣に確認をしたいと思います。
昨年、総務省職員が、国家公務員倫理法に違反する利害関係者である通信事業者及び衛星基幹放送事業者との会食を行っていたことが明らかになりました。さらに、放送事業者が過去に外資規制に違反していたことまで明らかになりました。それが昨年の国会で放送法一部改正案が審議未了、廃案になった原因の一つであると伺っております。
昨年三月、総務省は、外部有識者から構成される情報通信行政検証委員会を立ち上げ、検証を行い、昨年十月、最終報告書が取りまとめられております。
大臣は、当然この最終報告書の内容を真摯に受け止めておられますね。
○金子(恭)国務大臣 宮本委員から御指摘をいただきました情報通信行政検証委員会の最終報告書につきましては、総務省として、正面から重く受け止めております。
報告書で指摘された事項については、これまでもしっかりと対応してきておりますが、国民からの信頼回復を図るため、引き続き全力で取り組んでまいります。
○宮本(岳)委員 今大臣が真摯に受け止めるとおっしゃった報告書では、会食等は正当化される余地はないが、会食等によって行政がゆがめられたと認めるに足りる事情は確認できなかったと述べられております。なるほど、会食によって行政がゆがめられたとは認められないわけですけれども、会食等は正当化される余地はないと明確に書いております。
ところが、昨年の六月八日、当委員会で、我が党の本村伸子議員の質問に対して当時の武田大臣は、「会食というものは決して悪いものではないんです。これは、コミュニケーションを図る上でも、外交においても、非常に重要な役割を担うわけですね。」という驚くべき答弁を行っております。
大臣に確認しますけれども、会食は、報告書が言うように正当化される余地はないのか、それとも、武田前大臣が言うように決して悪いものではないのか、どちらだと思いますか。
○原政府参考人 お答え申し上げます。
会食につきまして、昨年、今御指摘のあった議論があったわけでございます。
私ども、そういうことで、より自ら身を律するということでございまして、会食については、国のルールでは一万円を超えるところだけ届けるとなっておりますが、私ども、利害関係者との会食は全て原則届けなさいというルールにしております。
それから、異動ごとに、私も含めてでありますが、自分がどういう人が利害関係者であるということを必ず認識しなさい、それから、それを相手方の事業者にも、この人は利害関係者、そういうことで徹底して、ルールの透明化を図った上で、やはり情報通信、激しく世の中は動いておりますので、意見交換は必要である、自ら律しながら意見交換をする、そういうルールの下でやるということで、今、大臣からも御指示いただきまして、引き続きしっかりと取り組んでいる、こういう状況でございます。
○宮本(岳)委員 武田大臣は冒頭、「私、価値観が合わない部分があるんですけれども、」と、そこまでおっしゃっていますから、私はこのときの武田大臣の答弁は撤回されるべきものだと思っております。
さて、この法案では、NHKの受信料値下げのための還元目的積立金制度をつくります。
放送を巡る諸課題に関する検討会の下にある公共放送の在り方に関する検討分科会の二〇二〇年の九月三十日の第九回会議で、突然、NHK前田会長が、私は値下げの原資を明確にすることが必要だと思うと述べられ、剰余金が出た場合には、剰余金の中から一定額を値下げのための勘定に利用し、一定額がたまったところで視聴者に還元する、受信料還元に関する勘定科目の新設が必要だと思っていますと発言されました。
NHKは、その後、二〇二一年度から二〇二三年度の経営計画で、コスト圧縮による二〇二三年度の黒字、財政安定のための繰越金の取崩し、建設積立資産の見直しで、還元原資の七百億円を確保することを打ち出されました。
このような還元原資も示した値下げというものをこれまでNHKは行ったことはございますか、前田会長。
○松坂参考人 お答えいたします。
今委員御指摘のような、還元原資を示して値下げというような形の値下げは過去にはやっておりません。
○宮本(岳)委員 やっていないんですね。
二〇二〇年九月十六日の菅政権発足直後のことでありますけれども、これは当時の菅首相の意向を酌んでの発言だったのではありませんか、前田会長。
○松坂参考人 お答えいたします。
委員御指摘のようなことはございません。
値下げについては、二〇二三年度に予定しておるんですけれども、二〇二一年度から二三年度までの今の経営計画の策定過程でだんだんと検討を進めてきたものです。
経営計画の策定に当たっては、スリムで強靱な新しいNHKを目指す構造改革を柱とし、二〇二〇年に実施した受信料値下げの影響などで当面は赤字となることも予想されていましたが、改革を着実に進めることで収支を改善して黒字化し、原資を確保できる場合には値下げを行うことを視野に入れておりました。
そして、二〇二〇年の六月から七月の経営委員会では、三か年の支出削減、収支について検討しました。この時点で、構造改革によって支出削減を進めることで、経営計画の期間内に黒字化は可能と判断しました。
これを受けまして、また、九月三十日に行われました、先ほど御指摘がありました放送を巡る諸課題に関する検討会の分科会で、会長が、値下げの原資を明確にするために、剰余金が一定額たまったところで視聴者に還元する、還元目的の科目を新設する制度変更を要望いたしました。
そして、二〇二〇年十一月十日の経営委員会では、構造改革による支出規模の見直しや、受信料の値下げに向けた原資を積み立てる還元目的積立金ですけれども、この新たな科目の設定について検討を行い、この科目について設置に向けて検討を進めますというふうにしております。
そして、十二月二十二日の委員会では、執行部から経営委員会に対して受信料の値下げを実施することを示し、このときに、計画中に値下げを行う方針ですという案を出しました。
これを受けまして、二〇二一年一月十三日の委員会では、値下げの原資について具体的な金額を示して審議を行い、二〇二三年度の値下げを含む中期経営計画、二〇二三年度中に値下げを行う方針ですということを明らかにしたわけです。
○宮本(岳)委員 長々と述べられましたけれども、二〇二一年一月十三日、NHKが受信料を値下げする中期経営計画を発表したら、その直後の十八日には、菅義偉首相が施政方針演説で、月額で一割を超える思い切った受信料の引下げにつなげると宣言をいたしました。
NHKは、二〇二〇年八月の会見では受信料は三年間据え置くと説明しておられましただけに、僅か五か月後の大きな方針転換の裏には、政権の意向があると誰もが考えたのは当然のことだと思います。
しかも、今回の法案でつくる値下げの仕組みは、これまでの値下げと性格が異なります。受信料の自動値下げシステムが法律に組み込まれるということになります。しかも、政府、総務省の意向が大きく反映するわけであります。
総務省に確認をいたします。
法案の内容ですけれども、改正案七十三条の二に定める還元目的積立金は、総務省令で定めるところに反し、自らの勝手な計算で算出した額を積み立てることが許されておりますか。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
還元目的積立金の制度は、NHKが財政の安定の観点等から必要な資金を留保した上で、還元目的積立金の積立てを行うこととしております。
この財政の安定の観点から必要となる資金の額については、総務省令で定めるところにより計算をして、剰余金のうち一定の額を留保する仕組みとすることとしており、その額を超えて剰余金を留保することは制度上想定しておりません。
なお、本制度については、総務大臣の認可を受けて還元目的積立金を還元以外の目的に取り崩すこと、あるいは、合理的な理由を国会に提出することを前提に、積立金による還元を行わない収支予算を作成することが可能である等、状況の変化に柔軟に対応することが可能な仕組みとなっております。
○宮本(岳)委員 いやいや、そんなことは分かっているんですね。
これはつまり、先ほど言われたところでありますが、収支差金がゼロを上回るときは、当該上回る額のうち総務省令で定めるところにより計算した額をと。もちろん、それとは別建ての様々な措置が取れることは分かっているんですよ。しかし、基本形は、総務省令で定めるところにより計算した額を還元目的積立金として積み立てなければならない、こう法律で定めるわけですね。
大臣、これはつまり、政府がNHK予算の内容に恒久的に口出しできる仕組みを初めてつくるということになるんじゃありませんか。
○金子(恭)国務大臣 お答え申し上げます。
御指摘の還元目的積立金の制度は、もう御案内のとおり、NHKが事業の中で生じた剰余金について、その一部を受信料の引下げに充てなければならないこととするものでございます。
本制度においては、受信料の額は、業務に必要な費用に見合う収入を確保する、いわゆる収支相償に基づき算定されるものであることから、適正水準を上回る剰余金については、受信料の引下げによって国民・視聴者の皆様に還元するべきであるとの考え方に基づき導入するものでございます。
他方で、本制度については、合理的な理由がある場合は、剰余金を必ずしも受信料の引下げに充てる必要はなく、NHKの一定の裁量の余地を認める柔軟な仕組みとしており、政府によるNHK予算に対する不当な介入との御指摘は当たらないと考えております。
また、毎年度のNHKの収支予算については、これまでどおり国会から承認をいただく必要があり、その基本的な枠組みについて何ら変更はございません。
○宮本(岳)委員 いやいや、一定の裁量の余地があるというけれども、これまでは、総務大臣は、意見を付しても、個別の予算の内容に口出しできない仕組みだったわけですよ。しかし、今回は明瞭に、総務省令で定めるところにより計算すると法に書くわけですから、これは、国が初めてNHKの経営計画や予算に口出しできる仕組みをつくり、公共放送たるNHKの自主性、自律性を奪う、こういう危険があるということを指摘せざるを得ないわけであります。
続いて、受信契約の締結に応じない者を対象とする割増金制度について聞きたいと思います。
受信料契約は、受益者負担の原則とは異なる特殊な負担金、こうされておりますね。視聴者・国民の理解なしには成り立たない制度、これが受信料だと思います。しかし、割増金で本当に正しく制度が理解されていくのか、極めて疑問であります。
そもそも、未契約一七%と報告されておりますけれども、その未契約者、未契約の国民がなぜ締結に応じられないのか、どういう理由から応じないと認識しておられるのか、総務省、お答えいただけますか。NHKでもいいですよ。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
現在未契約の方がNHKと契約をしていただけない理由として、例えば、NHKを見ていないのでNHKと契約を結ぶ必要がないとの考えによるものが多いのではないかと考えております。
NHKの受信料は、公共放送が、豊かで、かつ、よい放送番組を放送するという社会的使命を果たすために、必要な財源を広く国民・視聴者の皆様に公平に御負担いただくための特殊な負担金であり、NHKの放送を受信することができる受信設備を設置した方々に公平に負担していただく、そういうことを国民の皆様に御理解いただくことが必要であるものと認識しております。
○宮本(岳)委員 そのとおりなんですね。
先ほど、受益者負担の原則と異なる特殊な負担金、私も申し上げました。つまり、見ていないから払わないという論は誤解でありまして、御覧になっていなくても、国民がみんなで支えようという、本来、制度なんですね。でも、それはまだまだ知られていない、御理解いただけていない。
ですから、私たちは、あくまで、そういうことを御説明して、納得していただいて、そして納得の上で払っていただく、納めていただくというのが本来の受信料の精神だと思っております。
この間、NHKが強引な営業を行って、こじれたというケースも私は耳にするんですね。この割増金、つまり、鉄道のきせると同じ通常料金の三倍程度というものを想定して、いざとなったら三倍払わないかぬようになりますよというふうに物事を進めるというのは、かえって先ほどの御説明であったような理解を進めることにならないんじゃないか。理解を求めていかないといけないときに割増金をちらつかせれば、強制してくるのがNHKだと理解されてしまう。
これでは逆に制度の理解につながらないのではないですか。総務大臣、いかがですか。そう思われませんか。
○金子(恭)国務大臣 現在、NHKの放送を視聴することができる受信設備を設置した方のうち、約二割の方が受信料を支払っておらず、受信料を支払っている方との間で負担の不公平が生じている状況でございます。
こうした不公平感は、更なる未契約や受信料の不払いを招き、ひいては受信料制度の在り方そのものに影響を与える可能性があると考えられることから、本法案において、御指摘の割増金制度を法定化することとしたものでございます。
他方で、受信料の支払い率の向上に向けて、NHKが、国民・視聴者の皆様から十分な理解が得られるよう、引き続き丁寧な説明に努める必要があることは当然であり、本法案によってその方針が変わるものではございません。
このように、NHKによる国民・視聴者の理解を得る努力と相まって、制度の実効性を高めることにより、更なる受信料の公平な負担が進むことを期待しているところでございます。
○宮本(岳)委員 いや、不公平感ということをおっしゃるんですけれども、要するに、受益者負担じゃないんだ、見なくてもみんなで公平に負担するんだ、この精神は、逆に言えば、見ていないのに不公平だというのは通りませんよという話なんですよ。
だから、元々受信料というのは非常にきれいな話で、みんなに納得してもらわなあかん話なんですよ。それを、払うている人もおるのにあんたが払うていなかったために不公平やという論を持ち出したら、見てもいないのに不公平だと言われてしまうんですよ。本当にちゃんと理解してもらうということを努めなければ進まないということを、はっきり申し上げておきたいと思います。
今回の法改正で放送に総務省が介入する懸念は、NHKだけではありません。外資規制違反への対応をめぐっても大きな懸念がございます。
本法案では、外資規制の実効性確保のための整備を行うとともに、違反があったときの是正措置も整備をいたします。その際、違反の状況や受信者の利益に及ぼす影響等を勘案し、必要があると認めるときは、直ちに免許の取消しではなく、期間を定めて違反の是正を求めることとなります。
では、違反の状況や受信者の利益に及ぼす影響等を勘案するのは誰なんですか、この法律で。
○吉田政府参考人 外資規制に違反した場合に是正措置を適用するときに、受信者の利益に及ぼす影響等について勘案することとされておりますけれども、その勘案を行うのは総務省でございます。
○宮本(岳)委員 総務省なんですね。
第百三条二項の三では「その他総務省令で定める事項」となっておりまして、やはりここでも総務省のさじ加減が出てまいります。
大体、放送事業者の株の売買情報を総務省が余さずつかむことはできません。ですから、放送事業者から聞き取るしかないんですね。しかし、聞き取りだけでは分からない場合もあるでしょう。そうすると、結局、放送事業者の自主自律は脅かさないとおっしゃっても、放送内容で判断することになると思うんですね。外国性の放送が流れているという情報が寄せられた場合、総務省としてはどのようにそれを確認するんですか。
○吉田政府参考人 是正措置を講ずるに当たりまして、番組内容について判断することは想定しておりません。
本法案では、放送事業者等が外資規制に違反した場合、当該違反に係る放送事業者に対して、期間を定めて違反の是正を促す措置を講ずることができることとしていますが、それに当たっては、違反することとなった状況や、認定又は免許を取り消すこと又は取り消さないことが受信者の利益に及ぼす影響などを勘案することとしています。
このうち、取り消さないことが受信者の利益に及ぼす影響については、議決権を保有する外国人等の意図、例えば、経済的利益の追求にあるのか、事業者の経営判断への影響力の行使にあるのかといった意図を勘案することを想定しております。
したがいまして、番組内容について判断し、その勘案事項の判断に当たって、番組内容について見るということは想定しておりません。
○宮本(岳)委員 でも、それを判断するのも総務省なんですね。
放送の政府からの独立というのは放送行政の大原則、これはもうお分かりのとおりでありますけれども、先ほど答弁にありましたけれども、議院内閣制とは関係ありません。どういう政府の制度であろうが、その政府と放送事業との間に独立性を保障しなければならない、こういう話なんですね。
電波法についても幾つか論点があるんですけれども、今日は、電波利用料を次世代通信規格、ビヨンド5G、いわゆる6Gの技術開発支援のために使う新たな仕組みについて聞きたいと思います。
電波利用料を使ったビヨンド5G研究開発促進事業というものは、どんな研究開発に支援していくのか、お答えいただけますか。
○田原政府参考人 お答え申し上げます。
電波利用料を使った研究開発事業でございますけれども、これは電波利用共益事務の一環ということでございますので、電波の有効利用に資する技術の研究開発に取り組んでいくという形になります。
○宮本(岳)委員 ビヨンド5G技術開発については、国立研究開発法人情報通信研究機構、既に出ておりますNICTが行っているビヨンド5G研究開発促進事業の基金事業というものがありますけれども、なぜ新たに補助金の事業を追加するのか、また、追加してよい根拠はどこにあるのか、お答えいただけますか。
○田原政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、研究開発法人情報通信研究機構におきましては、従来からビヨンド5Gに係る研究開発を行っているところでございます。
これは、一昨年、補正予算により造成した基金、及び一般財源による補正予算により、先ほども御答弁させていただきましたが、ネットワーク技術の研究開発、これには無線技術の関係も含まれます、こういったものについて取り組んできているところでございます。
これに加えてという形になりますけれども、今般、電波利用料を用いた形での補助という形で実施するわけでございますけれども、ビヨンド5Gの実現に当たりましては電波の一層の有効利用が必要であるということで、そうした観点から、電波利用料も用いて、ビヨンド5Gの研究開発を更に加速していくということが必要であると判断したところでございます。
○宮本(岳)委員 この事業で研究開発の支援を受ける対象者は誰になるのか。携帯電話事業者など、ビヨンド5Gを活用して事業を行う者ももちろん対象になると思いますが、いかがですか。
○田原政府参考人 お答え申し上げます。
研究開発の事業そのものの受益ということでございますが、今回、外部の機関に補助を出す、その補助を受けた外部の機関が委託研究をするという形になります。
その対象でございますけれども、携帯電話事業者も含まれるかと思いますけれども、そのほかに、大学あるいはメーカー等の民間企業等が広く含まれる形になると考えております。
○宮本(岳)委員 先ほどもそういう話題が出ていましたけれども、KDDI、これは五兆三千百二十六億円ですよね、売上げ。ソフトバンク五兆二千五十五億円、NTTドコモ四兆七千二百五十二億円、楽天グループ一兆四千五百五十五億円、二〇二〇年度の売上高です。この四社で総額十六兆七千億円という売上げのある業界なんですよ。
携帯電話事業者は、事業を継続しようと思えば、次世代の通信技術に対して当然技術開発を行っていくでしょう。また、それだけの体力もあると思うんですね。
日本の企業が5Gでは国際的な市場でのシェアが低いと聞きました。ビヨンド5Gではもう一度国際競争力を取り戻す、これが実は狙いなんじゃないですか、目的なんじゃないですか。
○田原政府参考人 お答え申し上げます。
ビヨンド5Gの研究開発の促進事業全体につきましては、先ほども御答弁させていただきましたとおり、電波利用料によるもののほか、一般財源による施策が含まれております。
そうしたものを総合的に取り組むことで国際競争力の強化というものにつながるというふうに考えておりますが、電波利用料を用いた電波利用共益事務としての取組については、電波の有効利用、電波利用技術の高度化というものに焦点を当てた取組になるというところでございます。
○宮本(岳)委員 そう言うんですけれども、昨年八月にまとめられたデジタル変革時代の電波政策懇談会の報告書では、ビヨンド5Gの要素技術をいち早く確立することが重要だ、そうした研究開発の成果をビジネス展開につなげるためのツールとして、知的財産の取得あるいは国際標準化を戦略的に推進する必要がある、こう書いてあります。
そもそも、標準化のための研究開発は、国際競争力の強化が視野にあると言わざるを得ません。電波利用料を使った技術開発は、これまでも総務省が直接委託する形で行ってまいりました。しかし、今回は新たな仕組み、つまり、外部の執行機関に一旦補助金を交付し、そこから企業の研究開発の支援を行うというものです。
今回の説明はビヨンド5Gの研究開発促進のためだと言うけれども、二〇三〇年頃にビヨンド5Gが実用化された後はまた新たに別の研究開発にも充てることができる、こういうことですね。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の電波利用料の研究開発への使途につきましては、周波数を効率的に利用する技術、周波数の共同利用を促進する技術、高い周波数への移行を促進する技術として、おおむね五年以内に開発すべき技術に関する無線設備の技術基準の策定に向けて実施するものでございまして、御指摘のビヨンド5G以降の事案につきましても、こういった考え方に基づいて、必要な研究開発は続けていくものと考えてございます。
○宮本(岳)委員 できるんですよ、やろうと思えば。
これは、まさに電波利用料の累積の繰越金をこういうところに使っていこう、たまっている金をいかに使うかというのが目的なんです。使途が限られた電波利用料の在り方を見直す議論をしないまま、こうやって別財布のような新たな支出の仕組みをつくることが問題だと思います。
大臣、最後に、もうこれで終わりますが、もう一度共益費たる原点に、電波利用料の原点に立ち返るべきではないですか。
○金子(恭)国務大臣 お答え申し上げます。
これまでも局長からお話を申し上げましたとおり、我々も、そういう御批判もあることは存じ上げますけれども、しっかりと対応させていただきたいと思います。
○宮本(岳)委員 以上で終わります。
反対討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表し、電波法及び放送法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
まず、放送法についてです。
第一に、還元目的積立金制度を創設する問題です。これは、経営の効率化によって生じた繰越金のうち、総務省令に基づき計算した金額を除いて、受信料値下げの原資に充てるものであります。これは質疑で明らかにしたように、NHKの予算編成に政府、総務省の介入を招き、NHKの自律性を毀損させるものであり、極めて重大です。
第二に、受信料契約の締結に応じない者を対象に割増金制度を導入することです。鉄道の不正乗車を参考に約三倍の額が想定されていますが、懲罰的なやり方では視聴者・国民の理解と納得は得られず、公共放送としての在り方に重大な支障を与えかねません。
第三に、NHKグループの事業の効率化の方策として、NHKが中間持ち株会社に出資できるようにすることも重大です。コストダウンや効率化ありきで子会社、関連会社を支配するやり方を取るべきではありません。
続いて、電波法についてです。
新たに外部の執行機関に対して電波利用料を使った補助金を交付し、それによって企業の技術開発の支援を行う仕組みを創設するとしています。
電波利用料は、電波利用の免許を受けた者から徴収する共益費としての性格を有し、国民が広く電波を利用しやすくするための施策に使われるべきです。しかし、この補助金によって支援を受けるのはビヨンド5Gの技術開発を行う企業であり、国際競争力の強化を目指すものです。これは電波利用料の性格を超えたものであり、看過できません。
以上のことから反対です。
最後に、今回の放送法改正案、電波法改正案は、いずれも重大な内容であり、全く性格の異なる二つの法案です。それにもかかわらず、外資規制の一点でこれをまとめ、一つの法案として提出したことは、十分な議論を避けようというこそくな政府の姿勢を示すものであり、極めて問題です。
なお、日本維新の会提出の情報通信行政の改革の推進に関する法律案については、電波オークションのデメリットへの具体的な対策が示されていないことから、反対といたします。