ウェブ利用者保護を
宮本岳志氏 情報規制後退を批判
電気通信事業法改定案が13日に衆院本会議で賛成多数で可決されました。12日の衆院総務委員会で日本共産党の宮本岳志議員は、有線ブロードバンドをユニバーサルサービスとするものの、あまねく国民に利用を保障するものではないと指摘し、ウェブ利用者保護のための閲覧情報等の規制強化についても経済団体の意見で後退させたとして反対しました。
新たなユニバーサルサービスとして総務省は、全世帯をカバーしない有線を対象としますが、来年度中に全ての居住地域をカバーする無線ブロードバンドは対象外とします。
宮本氏は、「ユニバーサルサービスだから基金で支えていたが、いつの間にか基金の対象をユニバーサルサービスとした」と批判し、有線がないところや事業者が撤退した後は誰が担うのかと質問。総務省の二宮清治総合通信基盤局長は「無線が担う」と答弁。宮本氏はつじつまが合わないと批判しました。
また宮本氏は、総務省が利用者保護について経済団体の意見で、インターネットサイトの閲覧履歴を保存するクッキーや広告IDを対象外とした問題を追及し、「政府が利用者保護への揺るがぬ姿勢を示すことが重要だ」と主張。金子恭之総務相は「制度の不断の見直しに取り組む」と述べるにとどめました。
(しんぶん赤旗2022年5月25日)
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
四月二十八日の参考人質疑でも紹介したとおり、私は、二〇〇〇年の第百五十回臨時国会に提出され成立した高度情報通信ネットワーク社会形成基本法、いわゆるIT基本法の審議に当たってまいりました。
二十二年前の審議で、私は、そもそも情報技術は民主主義と密接な関わりを持っていることを示した上で、インターネットの普及が、民主主義の発展にも文化の向上にも大きな寄与をすることができる一方、新たな社会的格差を拡大する可能性も持っていることを指摘し、だからこそ、新しい技術を国民全体のものにし、民主主義の発展や文化の向上に役立てるための本格的な取組が求められると主張いたしました。
本法案で問われているのも、依然として、この二つの論点。つまり、全ての国民のアクセス権、ユニバーサルサービスの保障と、安心、安全の環境整備、個人情報の保護であります。
では、まず一つ目の、ユニバーサルサービスについて聞きます。
法案では、有線ブロードバンドサービスを基礎的電気通信役務とし、七条で、基礎的電気通信役務とは、国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべきものと規定されております。
法文上は、あまねく日本全国における提供というわけですけれども、政府の有線ブロードバンドの整備目標は一〇〇%とはなっておりません。二〇二二年三月末で九九・七%の見込みのものを、二〇二七年度末までに九九・九%、今後、残った十七万世帯のうち十二万世帯の整備を進めるけれども、五万世帯余りは未整備で残るという話であります。
これは、冒頭、大臣にちょっとお伺いしたいんですが、これでどこがあまねくと言えるのか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○金子(恭)国務大臣 お答え申し上げます。
一〇〇%というのはなかなか、いろいろな意味で難しいと思いますが、そういう意味では、文字どおりあまねくというような形で、それを目標に今取り組んでいるところでございます。
○宮本(岳)委員 いやいや、九九・九%、つまり五万世帯は残るという話なので聞いているんですね。これはユニバーサルサービスとは私は言えないと思います。
国民生活に不可欠なものであり、全国で公平に安定して確保され、国民の誰もが利用できる料金と条件で提供されるべきサービス、これがユニバーサルサービスの定義でありますけれども、本来、電気通信事業では、固定電話それから公衆電話は、電気通信事業法によって提供の義務が定められており、NTT東西は、ユニバーサルサービスとして、村や離島も含めた全ての市町村を対象にサービスを提供しなければならない、こうなっておりますね。
総合通信基盤局長に聞きます。
確認しますけれども、今回の有線ブロードバンドのユニバーサルサービスは、固定電話と同じユニバーサルサービスと理解してよろしいですか。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
今委員御指摘の、電話のユニバーサルサービスと今回のブロードバンドサービスの、基礎的電気通信役務とすること、これが同義かという御質問かと思いますけれども、電話の場合とブロードバンドの場合では、そもそもの置かれている状況が違っておりますので、ブロードバンドサービスにつきましては、複数の事業者が競争しながらそのサービスエリアを拡大し、その下で一定のサービスの維持を図り、九九・九%、御指摘の水準までしっかりと高めていく、そういうものでございますので、元々の置かれている状況が違いますので、規律も変わってくると思います。
○宮本(岳)委員 同じなんですか。ユニバーサルサービスファンドでやっているのと同じことをやってくれるんですか。答えてください。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
今申し上げましたとおり、電話とブロードバンドサービスにつきましては、その置かれている環境、これまでの整備の状況も違いますので、それに応じた差異はあるものと承知をしております。
○宮本(岳)委員 言えないじゃないか、同じだということを。言えないでしょう、何度聞いたって。違うのは分かっているんですよ。
それから、複数の事業者が競争しているのは固定電話だって一緒なんですよ、それは。それでもNTTにそういう義務を負わせているわけだから、全くそれは違うんですよね。
一方、一昨日の質疑で二宮局長は、無線ブロードバンドサービスのうち4Gにつきましては、現時点で既に居住地域の九九・九九%以上をカバーしておりまして、来年度中には全ての居住地域をカバーする見込みでございますと答弁いたしました。
4G無線ブロードバンドサービスが既に九九・九九%以上をカバーし、来年度中には一〇〇%になるのであれば、なぜ有線ブロードバンドにこだわって、利用者負担による年間二百三十億円もの交付金制度をつくってまで進める必要があるのか。二宮局長、お答えください。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
今回の改正は、デジタル社会形成基本法において、全ての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現が基本理念として掲げられたことを踏まえまして、テレワーク、遠隔教育、遠隔医療などのデジタル技術のメリットを、原則として全ての国民が、地理的な制約にかかわらず享受できる環境を実現することを目指すものでございます。
こうしたデジタル技術は、他の社会インフラの不足を補う側面を有しており、活力ある地方を実現していく上で、地方においてこそ必要とされるものであると認識をしております。
このような観点から、今回の改正で基礎的電気通信役務として位置づけるブロードバンドサービスは、テレワークなどのサービスを継続的、安定的に利用する上で適切な通信手段となり得るものである必要があると考えております。
具体的に申し上げますと、大容量の動画を送信可能か、リアルタイムかつ双方向でのやり取りが可能か、定額料金で原則無制限に利用可能かという三点を総合的に考慮いたしまして、ブロードバンドサービスのうち、FTTHとHFC方式のCATVインターネットを指定することを想定しているものでございます。
委員御指摘のとおり、4Gの携帯ブロードバンドサービスについては、現時点で既に居住地域の九九・九九%以上をカバーしており、事業者間の競争を通じた自主的な取組により、来年度中には全ての居住地域をカバーする見込みでございます。
このような4Gの携帯ブロードバンドサービスも、移動時などにおける通信手段として極めて重要なものでございますが、その一方、先ほど申し上げました通信速度、遅延の程度、料金体系という点で、テレワーク、遠隔教育、遠隔医療などのサービスを継続的、安定的に利用するための手段としては必ずしも十分ではないと考えられます。
このため、今回の改正では、FTTHなどの有線ブロードバンドサービスを基礎的電気通信役務として位置づけ、不採算地域を含め、原則として日本全国でその継続的、安定的な提供を確保することを目指すものでございます。
○宮本(岳)委員 端的に答えてくださいよ。
ちょっと重ねて聞くんですけれども、二〇二七年に有線ブロードバンドの世帯カバー率で九九・九%を目指すというわけですから、二〇二四年三月末の時点では到底九九・九%もいかないと思うんですね。一方、4G無線ブロードバンドサービスは、来年度中には全ての居住地域をカバーすることになります。そうすると、来年度中には、有線ブロードバンドはつながらないが、無線ブロードバンドならばつながる世帯が生まれることになります。
聞きますけれども、この世帯は、ブロードバンド接続に関するユニバーサルサービスは確保されたと考えるのか、それとも、ユニバーサルサービスは確保されていないと考えるのか、どちらですか。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたとおり、スピードとか双方向性とか料金とか、こういったことを総合的に考慮した上で、有線ブロードバンドサービスのうちのFTTH等を想定しておりますので、お尋ねの御質問につきましては、ユニバーサルサービスは確保されている状態ではないというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 それはちょっと理解不能なんですね。
なぜそれが、無線といえどもブロードバンドサービスなんですけれども、それがなぜユニバーサルサービスに含まれないんですか。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど来申し上げていますとおり、基礎的電気通信役務、今回の電気通信事業法改正の後、確保いたします基礎的電気通信役務の基準に合致をしないものでございますので、お尋ねの状況は、ユニバーサルサービスが達成されているという状況ではございません。
○宮本(岳)委員 二宮さんは、前回の質疑で、無線ブロードバンドサービスにつきましては、今後普及が見込まれる5Gを含め、一般に、基地局までの光ファイバー網が維持されていれば、無線部分の維持費用は大きな負担にならないと考えている、このため、無線ブロードバンドサービスについては、あえて交付金制度による支援対象とする必要はないことから、現時点での想定といたしましては、基礎的電気通信役務としては位置づけないこととしていると答弁をされたんですね。覚えているでしょう。
私は、これは極めて不可解な答弁だと思います。つまり、交付金制度による支援対象とするのに必要ないからユニバーサルサービスではないという説明こそ、おかしいんじゃないですかね。
先ほど述べたように、固定電話や公衆電話は電気通信事業法によって提供の義務が定められており、NTT東西は、ユニバーサルサービスとして、村や離島を含めた全ての市町村を対象にサービスを提供しなければなりません。交付金とか支援制度などない時代からユニバーサルサービスというものはあったわけですね、御承知のとおりだと思いますが。
ところが、そこに競争原理を導入した結果、ユニバーサルサービスのコストを支え切れなくなって、現在では、NTT以外の通信事業者がユニバーサルサービス料として通信回線ごとに徴収した負担金を基金にして、NTT東西のユニバーサルサービス提供に伴う赤字分を補填するという基金方式を取っております。
本来は、ユニバーサルサービスを支えるためにユニバーサルサービス基金をつくったという順序だったはずなのに、いつの間にか、ユニバーサルの基金で支えるものをユニバーサルサービスと呼ぶという本末転倒のロジックになっていると、私はこのあなたの答弁を聞いたわけであります。
だから、無線ブロードバンドサービスについては、来年度中には全ての居住地域をカバーし、ユニバーサルにサービスが提供できるのだが、交付金制度による支援対象とする必要はないから、現時点でユニバーサルサービスに位置づけないという珍妙な結果になっているんじゃないかと思うんですが、これはどちらが答えていただけますか。大臣でもいいし、局長でもいいんですけれども、そうじゃないんですか。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
有線ブロードバンドサービスを提供する事業者は、現在、特殊会社であるNTT東西等を別とすれば、一般の民間企業でございまして、このような事業者に対して不採算地域におけるサービス提供を法的に義務づけることは、憲法が保障する営業の自由等との関係で困難であるというふうに考えております。
このため、今回の改正では、有線ブロードバンドサービスを提供する事業者に対して交付金制度の利用を義務づけることや不採算地域からの撤退を禁止することまではしておらず、改正法の施行後も、有線ブロードバンドサービスを提供する事業者が、交付金制度を利用せず、不採算地域から撤退することは制度上可能でございます。(宮本(岳)委員「答弁になっていないじゃないか。速記を止めてください」と呼ぶ)
○赤羽委員長 そうしたら、宮本岳志さん、もう一度。
○宮本(岳)委員 今の、答弁なの。今の答弁で終わりですか。
○二宮政府参考人 失礼いたしました。
引き続きでございますが、その一方、今回の法改正により新たな交付金制度が創設されれば、有線ブロードバンドサービスの収支が赤字の事業者は、不採算地域における有線ブロードバンドサービスの提供について、交付金による支援が受けられるようになります。
その結果、委員御指摘のような、不採算地域において交付金制度による支援を受けつつも、有線ブロードバンドサービスの提供が維持できなくなるような事態が生ずる可能性は、現時点での見通しとしては低いものと考えており、少なくとも、当該地域の自治体が有線ブロードバンドサービスの提供を希望しているような地域については、サービスの継続的、安定的な提供が将来にわたって確保されることとなると考えております。
○宮本(岳)委員 かみ合っていないですね、答弁が。
いや、私は、元々、有線ブロードバンドをユニバーサルサービスにするという話から始まるものですから、九九・七%を九九・九%にする話なんだ、広げたい話なんだと思っておりました。
ところが、既に無線なら九九・九九%いっていて、そして来年度中には一〇〇%になるんだという答弁が出ました。それを何でわざわざやるのかといろいろ聞いてみたら、結局は、既に維持できなくなってくることが予想される民間のブロードバンド事業者を救い、支えるために必要なのだという説明が、この前の答弁でも、局長からそういう答弁が出ております。
試算されている経費は二百三十億円でありますけれども、計算の考え方で示されているのは、FTTHの平均料金である月額五千円を超えて経費、費用がかかる町、字を対象として算定したとされております。
一方で、地方財政措置の対象となっている条件不利地域を抱える五百二十四自治体へのアンケートを見ますと、百四十二自治体から回答があって、約十二・四億円の赤字と示されております。全自治体から回答を取ったわけではないけれども、かなり開きがあるんですね、十二・四億円の赤字に対して、二百三十億円というのは。
あっさり、少子高齢化の進展と人口減少の下で赤字を支える制度、そう言うのであれば、ユニバーサルサービスなどという言葉を使わずに赤字補填制度と言うべきだと思いますけれども、そうするんだったら、一体今どれだけの赤字が想定されるのかということをはっきり数字で出してもらわなきゃなりません。この数字、言えますか、局長。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のアンケートの調査につきましては、令和元年度に行った情報通信基盤の整備、維持管理に関する調査研究の中で実施をしたものでございます。情報通信基盤の維持管理に係る項目について、回答のあった百四十二自治体におけるサービス提供、運営を通じた収入及び支出、経常的支出や臨時支出でございますが、それぞれの合計を基に算出したものでございます。
これは自治体が公設でブロードバンドサービスを提供している場合に限った数字でありまして、かつ、アンケートに回答のあった一部の自治体に限った数字であることから、日本全国における不採算地域での有線ブロードバンドの維持に必要な金額を算出する上で、直接の参考となるものではございません。
その一方で、御指摘の二百三十億円という試算は、現時点での一定の仮定の下ではありますが、日本全国における不採算地域で有線ブロードバンドを維持した場合の額を推計したものでございます。
なお、本試算は、人口減少の進展等の要因により、不採算地域でブロードバンドサービスを提供する事業者の赤字額が将来的に増加していくことを前提としたものであり、制度の運用開始のタイミングで年間二百三十億円の交付金が発生するということを見込んだものではございません。
○宮本(岳)委員 今の説明だと、多めに見ているという話なんですよね。別に、二百三十億と積み上げて考えたものじゃないということなんですよ。
それで、それだけやってなお採算が合わない、利益が確保できないというときに、これは固定電話のユニバーサルサービスと全然違うところで、交付金さえもらわなければ撤退できるんですよ。なくなるんですよ、それはね。
では、撤退するとなったときに、それでもそこに住んでいる人がブロードバンドが必要だったら一体どうしてくれるんですか、局長。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
今回の交付金制度の導入によりまして、今委員御指摘の地方における、不採算地域におけるサービス提供について、交付金を渡すことによりましてその維持を図るということを想定しているものでございます。
様々、人口減少とかによりまして、最終的な地方自治体のニーズもないような、そういった極限的な自治体が生じたような場合には撤退することはあり得ますけれども、先ほど委員も御指摘のように、携帯ブロードバンドサービスにつきましては一〇〇%、4Gでありますが、提供をされることになりますので、そういった極限的な場合には、携帯ブロードバンドサービスを御利用いただくということかと思います。
○宮本(岳)委員 いや、語るに落ちているんですよ。
安定性に難があると先ほど答弁した無線ブロードバンドでやってくれという話に最後はなるんでしょう。全然話が、つじつまが合っていないじゃないですか。だから、このようなものは、私たちは、到底ユニバーサルサービスと呼ぶに当たらないと言わざるを得ないと思っております。
では次に、二つ目の論点、安心、安全の環境整備、個人情報の保護について聞きます。
インターネットは、社会の利便性も生み出しました。国民生活にも大きな変化をもたらしました。一方で、四月二十八日の参考人質疑で、大橋参考人も、弊害を生んだと述べられました。森参考人も、看過し難いデメリット、影の部分が生まれたと指摘をされました。お二人とも総務省の電気通信事業ガバナンス検討会の委員であります。
インターネットで、様々なコンテンツ等の運営には、企業が掲載するデジタル広告料や、あるいは、その広告を閲覧した利用者が物品やサービスを購入することで、利用者は無料でサービスを受けることができる、簡単に言えばこういうシステムになっていると思います。
一方で、こうしたインターネットの仕組みにおいて、利用者が知りたいキーワードを打ち込んで検索をし、閲覧する。閲覧の履歴がクッキーにひもづけられ、第三者に送信される。受け取った第三者は、様々な情報からその利用者をプロファイリングし、利用者の興味や趣味や嗜好、主張といった、利用者に合った広告を狙い撃ちのように表示する、いわゆるターゲット広告の手法が問題になっております。参考人のお二人が示された懸念の一つは、そういうことだと思います。
利用者に関する情報、利用者関連情報というのは一体何か。いわゆるウェブ閲覧情報などのクッキーや広告IDなどにひもづく識別情報ということでよろしいですか、局長。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
特定利用者情報の範囲につきましては、本法案では、適正な取扱いの対象としている特定利用者情報は、利用者に関する情報であって、通信の秘密に該当する情報のほか、契約等をする利用者を識別することができる情報としているところでございます。
○宮本(岳)委員 本法案ではと言って聞いていないですよ、僕。僕が聞いたのは、利用者に関する情報というのは一般的に何かと聞いているんですよ。それを、あなたが言ったような範囲に狭めているから、これから問題にするんじゃないですか。そうでしょう。
ウェブの閲覧情報などのクッキーや広告IDも含みますね。
○二宮政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の利用者の情報という、その言葉の使い方によると思いますけれども、クッキーも含めた個人に関する情報ということには当たるのではないかと思っております。
○宮本(岳)委員 では、なぜ当初、制限なく全ての識別子を対象としたんですか。
○二宮政府参考人 今回の法案におきます特定利用者情報につきましては、先ほど申し上げましたとおり、通信の秘密に該当する情報のほか、契約等をする利用者を識別することができる情報としておりますが、これにつきましては、当初、電気通信事業ガバナンス検討会において、契約等を行わない利用者を識別することができる情報も含めて適正な取扱いの対象とするべきとの御議論はありましたけれども、この対象となる情報が不明瞭という御指摘を踏まえまして、検討会において最終的に取りまとめられた報告書に基づくこととしたものでございます。
○宮本(岳)委員 一月十四日の第十六回検討会で、森委員が、適正な取扱い規律の適用対象となる利用者情報からクッキーや広告IDにひもづく情報が外れたのは残念だと述べておられます。
サードパーティークッキーや広告IDなど識別子の外部への送信について、法案では、原則として通知、公表でよいとしております。通知や公表であれば、現状でも、ほとんど多くのウェブサイトでは既にやられていることであります。
十二月十四日の段階では、利用者に確認の機会を適切な方法で与える規律を設けることが適当ではないかと述べていたものが、通知、公表を原則にすることになった。この通知、公表を原則とすることが確認の機会を適切な方法で与えたと言える、こう考えているということですか。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
今回の法案におきましては、利用者の確認の機会を与える手法として、通知、公表のみならず、同意、オプトアウトを、三つオプションを示しておるところでございます。
この通知、公表につきましても、今後、利用者の実態、事業者のビジネスの実態も踏まえまして、より有効に確認ができるような、そういった方法を、関係事業者ともすり合わせながら、しっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 いやいや、十二月の会議から一月の会議の間で変わったことは、もう議論でみんな、各党ほとんどの人たちが変わったことを言っているので、同じだという話は今更通らないと思うんですけれどもね。
それで、当初の報告書案が示されたのは、昨年末の十二月十四日に開かれた第十三回電気通信事業ガバナンス検討会だと思います。
パブリックコメントに付す予定の検討会報告書案が示されたのは、今年の一月十四日の第十六回でありますけれども、その間に一体誰からヒアリングをしたか、答えていただけますか。
○二宮政府参考人 お答えいたします。
昨年十二月二十八日に開催をした第十四回会合では、経済同友会、新経済連盟、日本経済団体連合会の三者からヒアリングを実施いたしました。
また、本年一月十一日に開催をした第十五回の会合では、主婦連合会や全国消費生活相談員協会などの消費者団体四者のほか、在日米国商工会議所、日本インターネットプロバイダー協会の計六者からヒアリングを実施いたしました。
○宮本(岳)委員 第十六回の検討会で配付された資料、「事業者等ヒアリングにおける主なご意見と考え方」を見ると、新経連が、法律でネット利用企業やデジタルサービスに広範な網をかけると萎縮効果でビジネス展開に大きな支障を来す、こういう意見を出しましたね。それに対して、全ての電気通信事業者を対象とする規律は将来的な課題としたい、まずは大きな影響のある事業者から必要最小限の規律の対象とするとの考えを示しております。
ほかにも、在日米国商工会議所がクラウド事業者への規制に異を唱えると、将来的な課題とすることが考えられるなどと答えております。
電気通信役務利用者情報について、経団連や新経連、在日米国商工会議所から、電気通信事業法の規律範囲を逸脱すると異論が相次ぐと、保護すべき情報の範囲については、一、通信の秘密に該当する情報、二、契約の締結や利用者登録をした当該利用者の情報に限定するなど、後退をさせていることが分かります。
結局、経済界からの圧力に屈して、当初の目的から外れ、問題となったクッキーや広告IDについては対象外とした。
こうした経済界からの圧力に屈した姿勢は、今に始まったことじゃないんですね。
二〇〇八年から日本でも提供を開始されたグーグル社のストリートビューサービスをめぐって、これがプライバシーや肖像権の侵害であり、防犯上からも問題があるとされて、ユーザーから問題のある画像の削除申請が大量に寄せられたということがございました。地方議会からも多数の意見書が上がり、当委員会でもその議論がされたということが議事録に残っております。
利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会の第一次提言、それを検討した提言が出ておりますけれども、この二十四ページ、六、「おわりに」の最後で、総務省はインターネット地図情報サービスについて、どうすることが必要だと述べておりますか。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の報告書の終わりの部分に、「総務省においても、引き続き道路周辺映像サービスについては注視していくことが必要である。」と記述されてございます。
○宮本(岳)委員 引き続き注視していく、事実上問題なしと、この時点、二〇〇九年の時点でそういう結論になっているんですね。
聞きますけれども、この研究会のインターネット地図情報サービスワーキンググループには、グーグル社が入っていたのではありませんか、二宮局長。
○二宮政府参考人 お答え申し上げます。
有識者、また、御指摘の事業者、グーグル社も含め、入ってございます。
○宮本(岳)委員 この報告書の最後に、インターネット地図情報サービスワーキンググループの構成員一覧が載っていますよ。グーグル株式会社ポリシーカウンシルの藤田一夫さんが構成員で加わっております。
つまり、インターネット地図情報サービスについてどう規制するかという議論に、まさにそのグーグルの代表を入れて議論すれば、注視するという結論になるのは当然であって、このときも全然、規律に向かっていないわけですね。
次に、サードパーティークッキーを利用した広告事業者が集めたウェブの閲覧履歴等の提供が問題になった、いわゆるリクナビ事件について聞きたいと思います。
今日は、個人情報保護委員会にも来ていただいております。
二〇一九年十二月四日に、個人情報保護委員会は、リクナビを運営するリクルートキャリア社と親会社のリクルート社に勧告を行いました。この事件の概要について、端的に説明していただけますか。
○佐脇政府参考人 お答えいたします。
リクナビの事案でございますが、第一に、リクナビ運営者は、個人情報保護法第二十三条で定められております安全管理措置を適切に講じておらず、また、同法二十七条に求められております必要な本人同意を得ずに個人データを第三者に提供しておりました。
第二に、リクナビ運営者は、個人情報である氏名の代わりに、それ単独では個人情報とならないクッキーを利用いたしまして、受け取る側の採用企業側では特定の個人が識別できることを知りながら、自らにおいては個人データに当たらないといたしまして、採用企業に提供することについての本人の同意を得ずに、本人に関する情報を採用企業に提供しておりました。
その結果、採用企業においては、本人が知らないままに個人データとして利用できるようになっていたもので、妥当性を欠く不適切なサービスというふうに認定をしてございます。
それに対しまして、適正に個人の権利利益を保護するという姿勢に欠けていたと考えられるものですから、私ども個人情報保護委員会は、この運営者に対し、組織体制を見直し、経営陣を始めとして全社的な意識改革を求める勧告を行ったところでございます。
○宮本(岳)委員 改めて個人情報保護委員会に確認しますが、クッキーとひもづいた情報について、これを保有する事業者においては個人情報に該当しない場合であっても、当該情報の提供先において特定の個人を識別することができる場合には、当該提供先においては個人情報に該当し得るという理解でよろしいですね。
○佐脇政府参考人 御認識のとおりです。
○宮本(岳)委員 提供元ではクッキーや広告IDにひもづいた非個人情報であっても、提供先では個人情報になるということであります。
それが理由の一つとなり、個人情報保護法が改正をされました。
本委員会でも議論になった、ケンブリッジ・アナリティカ問題を始めとするターゲット広告、サードパーティークッキーの問題が国民、利用者の不安を高め、本法案も準備されたはずであります。しかし、結論は、今回もやはり現状追認と言わざるを得ません。
デジタル広告の市場規模が既に二兆円を超えているということは、先ほど来、立憲民主党の議員の質疑でも出されました。前年比でも二二・八%の伸びですから、一二二・八%に市場規模が伸びているということであります。この二兆円を超えるデジタル広告業界の市場とその利益を守るために、消費者保護やプライバシー保護を犠牲にしたと言わざるを得ません。
そもそも、日本の主要ブラウザー、グーグルクロームやアップルサファリは、既にサードパーティークッキーの自主規制を始めております。また、自主規制する方向を打ち出しております。
それは当然の話でありまして、EUでは、GDPR、一般データ保護規則を守らなければビジネスができないからであります。これはグローバル企業ならみんな分かっていることですね。あなた方もそれが分かっているから、当初、利用者保護の側面を中心に、EU並みの規制を考えたんでしょう。しかし、経済団体や事業者の意見を聞いた途端に後退させられてしまった。検討会議の座長を務められた大橋弘東大副学長が、じくじたる思いと述べられたのも、そういう経緯を踏まえたものだと思います。
先日、私に御意見を寄せられたある専門家は、このことについて、総務省は下手くそだと語っておられました。
国民がネットの世界にどうしても不安が拭えないのは、個人情報が守られるのか、プライバシーは大丈夫かということだ。したがって、今必要なのは、政府は、総務省は徹底的に利用者保護の立場に立ち切りますというメッセージだった。EU並みのプライバシー保護の規制を徹底し、安心、安全で世界に引けを取らないという旗印を立てるべきだった。ところが、やはり腰砕けになってしまった。中途半端は逆効果だ。政府は最後は事業者になびく、利用者や消費者を守ってくれるとは限らないという逆のメッセージを出す結果となってしまった。大臣は繰り返し一歩前進とおっしゃるけれども、逆効果だという意見も出ているわけですね。
大臣、我が党は今、優しく強い経済ということを申し上げております。経済界の利益を守ることが我が国の経済にとってプラスになると思って数々の大企業の優遇策をやってきたけれども、それが格差を広げ、国民の消費購買力が下がってしまった。その結果、経済はうまく回らなくなりました。優しいことは弱いことで、強くなるには厳しい競争ということではなく、実は、安心、安全、優しいことこそ、回り回って強い経済をつくることになる、私たちはそう考えます。
今回の法律でも、やはり、事業者の意見によって後退したというのは愚の骨頂であって、政府が利用者保護への揺るがぬ決意を示してこそ、市場参加が広がり、結果として強い経済に結びつくというふうに思います。
一言だけ大臣の御意見を聞いて、私の質問を終わります。
○金子(恭)国務大臣 宮本委員には、先ほどから、非常に、法律の根幹に関わることから含めて、世界で様々な体系がございます、基準がございます。そういうことまで引き合いの中で、御意見を賜ったわけであります。
再三御答弁申し上げておりますが、この法律案は、本年二月の電気通信事業ガバナンス検討会の報告書等を踏まえたものでありますが、本報告書を取りまとめる過程において、事業者団体のみならず、消費者団体、経済団体など、様々な関係者の御意見を聞いてまいりました。何らかの圧力に屈したということを先ほどおっしゃっておりましたけれども、丁寧に各団体の御意見を聞きながら検討を進めてきたものでございます。
その結果、検討の過程で様々な御意見をいただいたものの、電気通信事業ガバナンス検討会や先日の参考人質疑においても、有識者の皆さんから、今、宮本委員が、私が再三お話をしている、新たなルール形成に向けた第一歩を踏み出していただいた、利用者保護に向けては一歩前進であるなど、本法案を評価する旨の御意見を多くいただいたということで私は認識をしております。
総務省としましても、宮本委員を含め、様々な懸念、御意見をお伺いしておりますので、そういう御意見を十分踏まえた上で、利用者が安心して利用できる通信サービスの確保に向けて、本法案を実効性のある制度としていくとともに、変化の激しい情報通信分野の動向を注視しながら、制度の不断の見直しに取り組んでまいりたいと思います。
反対討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表し、電気通信事業法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
第一に、本法案は、有線ブロードバンドを基礎的電気通信役務、あまねく日本全国における提供が確保されるべき役務として位置づけますが、加入電話等既に位置づけられた役務のような義務づけ、保障の仕組みはないものであり、反対です。また、事業者の経営判断で撤退もあり得るものです。サービス維持のための交付金の負担は、国民に価格転嫁されることも予想されています。
国が進めてきた競争政策では、整備が条件不利地域に行き届かず、自治体の負担を強いるものであったことに総括もなく、テレワークや遠隔教育などデジタル活用の増加を想定する政府の政策を進め、民間事業者が提供を担うに当たっての費用補填を行うための制度設計でしかありません。このようなものをユニバーサルサービスと呼ぶことはできません。
第二に、本法案は、利用者情報の取扱いの制度整備について、安心、安全な利用環境確保をないがしろにして、事業者の都合を優先するものとなっていて、問題です。
クッキーや広告IDなどの利用者関連情報の外部送信は、当初、事前同意又は事後的拒否の仕組み、いわゆるオプトアウトの二択を検討していましたが、経済団体、事業者の反発を受け、本法案は、外部提供の事実の利用者への通知、公表の義務づけ、事前同意取得、オプトアウトは選択肢にとどめる規定となり、後退したものとなっています。
利用者関連情報の適切な取扱いの確保の規制の対象は、サービス提供のための契約若しくは登録を行っている利用者の利益に及ぼす影響が大きい事業者と限定され、範囲を狭めるものとなっています。利用者一千万人以上の電気通信事業者を想定していますが、これでは、メタやLINEといったSNS大手、グーグルなど検索大手の二十から三十社に限定されることになります。
また、LINEの個人情報漏えいで問題となった利用者情報の情報保管先の設置国名公表の義務づけも見送られており、重大です。
以上、指摘して、討論といたします。
なお、立憲民主党提出の修正案については、より利用者保護を高める措置を講ずるものであり、賛成といたします。