本分科会は平成二十六年二月二十四日(月曜日)委員会において、設置することに決した。
二月二十五日
本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
あかま二郎君 大島 理森君
薗浦健太郎君 萩生田光一君
玉木雄一郎君 中山 成彬君
宮本 岳志君
二月二十五日
萩生田光一君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成二十六年二月二十六日(水曜日)
午前九時開議
出席分科員
主査 萩生田光一君
あかま二郎君 小林 史明君
小松 裕君 薗浦健太郎君
船橋 利実君 堀井 学君
八木 哲也君 玉木雄一郎君
細野 豪志君 渡辺 周君
椎木 保君 田沼 隆志君
中山 成彬君 宮沢 隆仁君
宮本 岳志君
兼務 小川 淳也君 兼務 坂本祐之輔君
兼務 伊佐 進一君 兼務 岡本 三成君
兼務 佐藤 英道君 兼務 中島 克仁君
兼務 井出 庸生君 兼務 畑 浩治君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
復興副大臣 谷 公一君
文部科学副大臣 西川 京子君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
文部科学大臣政務官 上野 通子君
厚生労働大臣政務官 高鳥 修一君
政府参考人
(内閣官房2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室長代理)
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 久保 公人君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 岩渕 豊君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 麻田千穗子君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 杵渕 正巳君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 水嶋 光一君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君
政府参考人
(文部科学省生涯学習政策局長) 清木 孝悦君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 前川 喜平君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 吉田 大輔君
政府参考人
(文部科学省科学技術・学術政策局長) 川上 伸昭君
政府参考人
(文部科学省研究振興局長) 小松親次郎君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 田中 敏君
政府参考人
(文部科学省国際統括官) 加藤 重治君
政府参考人
(文化庁次長) 河村 潤子君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房総括審議官) 生田 正之君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 高島 泉君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 鈴木 俊彦君
政府参考人
(経済産業省大臣官房地域経済産業審議官) 加藤 洋一君
政府参考人
(資源エネルギー庁廃炉基盤整備総合調整官) 藤原 正彦君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 佐藤 憲雄君
政府参考人
(国土交通省総合政策局次長) 奈良平博史君
参考人
(東京電力株式会社常務執行役) 増田 祐治君
文部科学委員会専門員 久留 正敏君
予算委員会専門員 石崎 貴俊君
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分科員の異動
二月二十六日
辞任 補欠選任
大島 理森君 小林 史明君
薗浦健太郎君 小松 裕君
玉木雄一郎君 細野 豪志君
中山 成彬君 田沼 隆志君
宮本 岳志君 高橋千鶴子君
同日
辞任 補欠選任
小林 史明君 堀井 学君
小松 裕君 船橋 利実君
細野 豪志君 山井 和則君
田沼 隆志君 宮沢 隆仁君
高橋千鶴子君 笠井 亮君
同日
辞任 補欠選任
船橋 利実君 薗浦健太郎君
堀井 学君 八木 哲也君
山井 和則君 玉木雄一郎君
宮沢 隆仁君 河野 正美君
笠井 亮君 塩川 鉄也君
同日
辞任 補欠選任
八木 哲也君 大島 理森君
玉木雄一郎君 中川 正春君
河野 正美君 阪口 直人君
塩川 鉄也君 高橋千鶴子君
同日
辞任 補欠選任
中川 正春君 渡辺 周君
阪口 直人君 三宅 博君
高橋千鶴子君 穀田 恵二君
同日
辞任 補欠選任
渡辺 周君 玉木雄一郎君
三宅 博君 椎木 保君
穀田 恵二君 赤嶺 政賢君
同日
辞任 補欠選任
椎木 保君 西田 譲君
赤嶺 政賢君 佐々木憲昭君
同日
辞任 補欠選任
西田 譲君 中山 成彬君
佐々木憲昭君 宮本 岳志君
同日
第一分科員坂本祐之輔君、第三分科員小川淳也君、第五分科員伊佐進一君、岡本三成君、佐藤英道君、第七分科員井出庸生君、畑浩治君及び第八分科員中島克仁君が本分科兼務となった。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
平成二十六年度一般会計予算
平成二十六年度特別会計予算
平成二十六年度政府関係機関予算
(文部科学省所管)
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○宮本分科員 日本共産党の宮本岳志です。
奈良県において、ランドマークというべき若草山にモノレールを設置するという計画が大きな問題となっております。きょうはそれについて質問をいたします。
奈良公園も若草山も、大変貴重な文化遺産としての価値を持つ日本の宝だと思うんですね。それを維持するために、先人たちもさまざまな努力を行い、政府も格別の配慮を払うように取り組んでまいりました。
若草山を含む奈良公園は国指定の名勝であり、若草山の奥に広がる春日山原始林は、一九九八年に日本で九件目の世界文化遺産として登録をされました。
まず、このことを確認したいと思います。文化庁。
○河村政府参考人 若草山を含む奈良公園は、明治十三年、一八八〇年に太政官の内務卿、伊藤博文の開設認可によって設置されたものでございます。その後、史跡名勝天然記念物保存法が成立した後、大正十一年、一九二二年に名勝奈良公園として指定されております。
春日山原始林は、世界文化遺産、古都奈良の文化財の一部として平成十年に登録をされております。
○宮本分科員 国指定の名勝であり、世界文化遺産にも登録をされております。同時に、きょうは国交省にも来ていただいておりますが、若草山は古都保存法による特別保存地区でございますね。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
昭和四十一年に制定をされました古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法、いわゆる古都保存法でございますが、この中で、奈良県奈良市につきましては、我が国往時の政治、文化の中心等として歴史上重要な地位を有する古都として定められております。
また、この法律に基づきまして、御指摘のございました若草山を含む春日山一帯につきましては、春日山歴史的風土特別保存地区として定められているところでございます。
○宮本分科員 若草山モノレール計画は、今お話があったように、国の名勝であり歴史的風土特別保存地区にも指定されており、さらに世界遺産春日山原始林に隣接するバッファーゾーン、緩衝地帯という二重、三重の制限がかかる場所、そこにモノレールをつくる、これが許されるかどうかが問われる問題であります。
文化庁に聞きますけれども、文化財保護法では、名勝あるいは史跡、天然記念物の現状を変更し、またはその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失、毀損、衰亡させた場合、どのように定めがございますか。
○河村政府参考人 文化財保護法の規定では、その第百九十六条第一項において、「史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。」となっております。また、同条第二項において、「前項に規定する者が当該史跡名勝天然記念物の所有者であるときは、二年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」というふうに規定いたしております。
○宮本分科員 文化財保護法というものは、今答弁のあった、刑事罰まで定めて、名勝や史跡を保存することを求めております。
では、聞きますけれども、名勝に指定されている場所に後からモノレールなどの移動施設が実際に建設された例が過去にあったかどうか、文化庁、お答えいただけますか。
○河村政府参考人 私どもの承知する限りでは、名勝として指定された後に、モノレール、ロープウエー、エスカレーターが設置されたという事案は存じていないところでございます。
○宮本分科員 文部科学省の史跡名勝天然記念物指定基準によりますと、「わが国のすぐれた国土美として欠くことのできないものであつて、その自然的なものにおいては、風致景観の優秀なもの」等とされております。安易な現状の変更が許されないことは当然のことだと言わなければなりません。
では、次に、国土交通省にお聞きしたい。
古都保存法に基づいて、国において奈良市歴史的風土保存計画というものが定められております。この計画では、歴史的風土の特性に応ずる行為の規制の大綱というものが地区別に定められておりますけれども、春日山地区の大綱では何に重点を置くと定められておりますか。
○佐藤政府参考人 奈良市歴史的風土保存計画におきましては、地区別の歴史的風土の特性に応ずる行為の規制の大綱として、春日山地区については以下のように定められております。「本地区の歴史的風土保存の主体は、春日大社、興福寺、東大寺等の歴史的建造物と一体となる奈良公園の自然的環境の保存にあり、背景となる春日山、御蓋山、若草山等の丘陵とその稜線における建築物その他の工作物の新築等、土地形質の変更、木竹の伐採等の規制に重点をおくものとする。また、春日奥山周遊道路沿道の石仏等の歴史的資産と一体となる原始林については、森林美の保存に重点をおくものとする。」このように定められているところでございます。
○宮本分科員 若草山等の丘陵とその稜線における建築物その他の工作物の新築等の規制に重点を置く、こう定められているわけですね。
古都保存法第三条では、「国及び地方公共団体は、古都における歴史的風土が適切に保存されるように、この法律の趣旨の徹底を図り、かつ、この法律の適正な執行に努めなければならない。」と、国と地方自治体にその任務を定めておりまして、このような計画は古都保存法に照らしても許されないということは明瞭だと思います。
さらに、世界遺産条約との関係です。
ユネスコ世界遺産センターのキショー・ラオ・センター長は、奈良県の住民団体がモノレール計画の中止勧告を日本政府に出すよう求めたのに対し、住民団体の懸念などを共有すること、世界遺産条約履行のための作業指針百七十四条に基づき住民団体の懸念の内容を確認するため、奈良県と、締約国、日本政府にコメントを求めると一月二十日に回答をいたしました。
モノレール計画には世界遺産センターも重大な関心を持つに至った、政府はこのことを知っておりますか、また、それをどう受けとめておりますか、文化庁。
○河村政府参考人 お答えをいたします。
ことしの二月十三日付で、ユネスコ世界遺産センター長名で、我が国のユネスコ代表部大使に対して、古都奈良の文化財の保全状況についてといたしまして、若草山におけるモノレール計画について情報提供を求める旨のレターが出されております。このレターを外務省経由で文化庁で最近受け取っております。
現在、その照会内容に関する事実関係の把握に努めているところでございまして、今後、しかるべくユネスコに対して回答を行ってまいりたいと存じます。
○宮本分科員 ユネスコの諮問機関であるイコモスの日本での拠点である日本イコモス国内委員会、この組織が、ことし一月、委員長声明を出して、この計画について強い懸念を表明しております。
声明では、文化遺産を破壊するに等しい、こういたしまして、この計画が進めば、危機遺産に登録されてしまうおそれもありますと述べております。危機遺産とは、世界遺産のうち深刻な危機にさらされ、緊急の救済措置が必要とされる物件を示すわけですね。
今回の奈良県による若草山のモノレール設置計画というのは、バッファーゾーン、緩衝地帯に設置するという計画が既に公表されております。
そこで、世界遺産条約との関係を聞くんですが、世界遺産条約履行のための作業指針、ガイドライン百三条は、このバッファーゾーン、緩衝地帯についてどのように定めてありますか、文化庁。
○河村政府参考人 御質問の緩衝地帯、バッファーゾーンでございますが、世界遺産条約履行のための作業指針では、資産を適切に保存するために必要な場合は、緩衝地帯、バッファーゾーンを設定することと規定されています。
○宮本分科員 同じくガイドラインの百四条には、緩衝地帯は、推薦資産の効果的な保護を目的とすると明記されております。ここにモノレールが建設されれば、資産が効果的に保護されないことになるのは明らかだと言わなければなりません。
この計画は、実は二月十九日に奈良市議会でも取り上げられ、市の文化財課長が、国際イコモスは、世界遺産条約の履行に関する助言や遺産の保全状況を監視するなどの役割を果たすユネスコ世界遺産委員会の諮問機関の一つでありますから、その日本国内の委員会による当該の懸念表明は重く受けとめるべきものであると考えている、示された懸念が現実のものとなり、危機遺産登録、さらには登録抹消などといった事態にならぬよう、慎重な対応が必要であろうと考えると答弁をしております。
そこで、国交省にお伺いするんですが、先ほどの古都保存法第八条の「特別保存地区内における行為の制限」、つまり、このモノレール建設を含めて行為をさまざまに制限する規定ですけれども、ここで知事の許可という形で書かれているものは、今、奈良市長に委任をされていると思うんです。モノレールの建設計画の許可権限は奈良市長にある、間違いないですね。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
歴史的風土特別保存地区におけます工作物の新築等につきましては、古都保存法第八条第一項に基づきまして府県知事の許可を受ける必要があるわけでございますが、奈良県内の古都におきましては、奈良県事務処理の特例に関する条例によりまして、当該許可事務は市町村が処理することとされておりまして、御質問の若草山における行為の許可については奈良市が行うこととなっております。
○宮本分科員 奈良市長が許可しなければ進められない、そして、奈良市は慎重な対応を約束しているわけです。国内法との関係でも、世界遺産条約との関係でも、何重にも非常な慎重さが求められる場所にモノレールをつくろうというこの無謀な計画に、今、さまざまな立場の人たちから厳しい懸念と批判の声が上がっております。
奈良新聞は、昨年十月十日付の記事で、利便重視は時代に逆行する考えだ、第一に観光客ががっかりしよう、千古の神域に隣接する場所で遊園地まがいの乗り物は不要だと報道をいたしました。
県が設置した奈良公園地区整備検討委員会の場でも、委員から、モノレールそのものが景観を壊す主体になっているのではないかという意見が出されております。
著名な脚本家の小山内美江子さんも、若草山にモノレールは似合いません、外国からの観光客もびっくりするでしょう、わざわざお金をかけて他県からの笑い物にならないでくださいとのメッセージを寄せられました。
文化庁、これは余りにもこの計画は問題が大きいんじゃないですか。
○河村政府参考人 個々の御指摘についてお答えできるものではございませんけれども、名勝奈良公園へのモノレールの設置については、景観への負の影響というものが生じることがないように、奈良県に対しては、慎重に検討、対応すべきであるということをお伝えしております。
○宮本分科員 ここで、ちょっと大臣に事前にお渡ししているものについて御感想を聞きたいんです。
小説家の志賀直哉が、昭和十三年に、奈良を去るに当たって書き残した「置土産」と題する一文に次のようなくだりがあるんです。
東京の日比谷公園、上野公園、浅草公園、大阪の天王寺公園、中之島公園、皆公園にちがひないが、奈良公園を同じ公園の呼名で云ふのは少し間違つてゐるやうな気がして来た。或る広ささへあれば何所にでも作れる公園と奈良のやうな千何百年の歴史を持ち、更にそれ以前からの原始林をひかへてゐる自然の庭のやうな公園は一緒にならない。
色々な施設は一たん作つて了ふと、今度それを撤廃しようと思つても却々撤廃出来ないものだ。
新しく何か作る時はかういふ悔いを残さぬやう余程考へて貰ひたい。悪かつたら去ればいいと云ふ風には行かぬものだ。
こう述べておりました。
このときは道路建設の計画のようでありますけれども、これはまさに大臣、この指摘はそのとおりだと思われませんか。
○下村国務大臣 志賀直哉は、昭和の初期に奈良市内に居を構え、そこから美しい若草山の姿を見たとのことであります。
御質問の文章には、奈良をこよなく愛した志賀直哉が奈良公園に対して抱いていた思いがあらわれておりまして、文化財を大切にしたいという気持ちは共感するものがあります。
○宮本分科員 まさに共感するという御答弁もいただきました。
奈良県は、モノレール建設計画に当たり、環境影響調査の中間報告で、若草山にモノレールを設置しても、環境や景観などの面ではほとんど影響がないとしております。中でも景観については、「主要な眺望点から、施設は視認できないと予測されます。」との報告書を出しました。
そこで、これも大臣に事前にお渡しをしている地図と写真を見ていただきたいんですね。
奈良県の市民団体が、モノレールの山頂駅建設予定地点に、駅舎と見立てた目印を立てて、実際に市内各地からどれぐらい見えるかを、見えないというのは本当かどうかを検証したわけです。
この写真二の、駅舎に見立てた横断幕、これを資料一の地図でAと記号が打たれた若草山の駅舎建設予定地に掲げました。これが市内各地からどう見えるかということを、見えるか見えないかということをみんなで調べて地図に落としたのが、この資料一の地図であります。赤い点が、よく見えたという地点、青い点が、何とか見えたというものであります。例えばB地点、Bと記号が打たれた地点では、資料三の写真のように、そしてCと打たれた地点では、資料四の写真のように、四の方は小さいですが、確かに見えております。写真に撮ると小さくなってしまうんですが、確かに見えている。大臣もごらんになれますね。
○下村国務大臣 今お示しいただいた写真だけでは、奈良公園の景観にどの程度の影響があるかどうかを判断することは、ちょっと難しいかなというふうに思います。
若草山は、文化財保護法に基づいて指定された名勝奈良公園の指定地区内でありまして、今回のモノレールのような施設を設置する場合は、文化財保護法第百二十五条に基づいて、文化庁長官の許可が必要となる場所でございます。
奈良県から文化庁に対しては、本計画の実施についての具体的な相談は受けておりませんが、もし相談があれば、名勝としての風致景観上の価値に影響を与えることがないよう対応することが必要と考えます。
○宮本分科員 当然慎重な対応が求められるわけですが、これは実は長い歴史のある問題でもあるんですね、大臣。
ここに、奈良県が発行した名勝奈良公園保存管理・活用計画というものがございます。この保存管理・活用計画の資料の七十二ページには、若草山について、「大正から昭和期にかけての奈良公園整備の充実とともに、若草山に登頂、これを眺望台として「ふるさと奈良」の風光を賞せしめるという観光開発が計画され、ケーブルカーの運行やエスカレーターの設置等の検討がなされた」と。
調べてみると、何度もそういうことが検討されているんですが、これも文化庁に確認しますが、このような計画は、その後、どのような結末に至りましたか。
○河村政府参考人 奈良県が作成をしております名勝奈良公園保存管理・活用計画の中に、お話のありました、大正期から昭和期にかけての状況が述べられておりますけれども、それによりますと、「ケーブルカーの運行やエスカレーターの設置等の検討がなされたが、風致破壊や自然保護への影響、また資金調達等の理由により実現には至らなかった。」となっております。
○宮本分科員 ことごとく実現には至らなかったんですね。
大正十一年に、若草山に登山鉄道を敷設する申請が出されております。それも、きょうは歴史的な文書を少し調べてまいりました。
この大正十一年の申請については、大正十四年十二月十五日付で、当時の鉄道大臣が、鉄道敷設の件聞き届けがたし、こういう却下を申し渡しております。さらに、昭和二年、ここでも再び奈良県知事から、遊覧登山用鋼索鉄道、つまり、これはケーブルカーのことでありますけれども、これの申請が出されたのに対して、国は、当時の内務大臣官房地理課長名で答えておりまして、右は名勝保存上適当ならず同意いたしがたく候と却下をいたしております。
このように、文化財保護の法整備や、景観や環境保護、そういう観点がまだまだ不十分だった戦前ですら、これは名勝保存上適当ならずと却下してきたというのが歴史なんですね。
現行文化財保護法の第百二十一条では、「管理が適当でないため史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、衰亡し、又は盗み取られるおそれがあると認めるときは、文化庁長官は、管理団体、所有者又は管理責任者に対し、管理方法の改善、保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。」と定められております。
文化庁、こういう観点に立って、奈良県が進めている若草山におけるモノレール設置計画に対して、文化庁としてやはり厳しく指導すべきだと私は考えますけれども、文化庁の御答弁をいただきたいと思います。
○河村政府参考人 お話に出ておりますように、若草山は名勝奈良公園の指定地内でございますので、名勝としての価値が保存される必要があると存じます。
奈良県から具体的な内容をお聞きしながら、慎重に検討し、名勝の保存に支障がないように適切な対応に心がけてまいりたいと存じます。
○宮本分科員 順調な答弁をいただきましたので、少し早目に終わりそうでありますけれども。
奈良県が進めている若草山モノレールの計画は、どこから見ても無謀な計画だと私は思います。名勝奈良公園の若草山でこんな計画を許せば、全国の文化財の破壊が進みかねない、国の文化財保護行政の権威が失墜する事態にもなりかねない。政府は、世界遺産センターからも対応を求められているわけですから、これは受け身でなく、名勝、天然記念物、世界遺産保護のために手だてを尽くして、若草山のモノレール計画をぜひともやめさせるために役割を発揮していただきたいというふうに思っております。
最後に、きょうのこの論戦をお聞きになっての文部科学大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
○下村国務大臣 この件は今初めてお聞きしたことでありまして、また、奈良県からも相談がないということでありますので、先ほどの河村次長の答弁のように対応するのが適切であるというふうに思います。
○宮本分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。
以上で質問を終わります。