マイナ未取得に“罰”告発
衆院委で宮本岳志議員 政府の責任追及
日本共産党の宮本岳志議員は14日の衆院総務委員会で、岡山県備前市が来年度から、保育料や給食費、学用品費の無償化について、世帯全員のマイナンバーカード取得を条件とする方針である問題を取り上げ、「任意の制度であるにもかかわらず、マイナンバーカードを取得しない人や世帯にペナルティーを科すことは許されない」と批判しました。
宮本氏は、備前市の方針に反対する署名が広がり、同市外も含めすでに同市の人口を超える4万3000人分の署名が寄せられていると指摘。保育料や給食費などの負担は年間55万円を超えており、「マイナンバーカードを事実上強制するために、子育て世帯に55万円ものペナルティーを押し付ける。これを『自治体の判断だ』と言って放置したのでは、『異次元』と呼ばれる少子化対策は進まない」と批判しました。
松本剛明総務相は「自治体独自の施策については、各自治体の自主的な判断により取り組むことが基本だ」と述べるだけでした。
また政府は、地方に配る地方交付税の増額分の配分に、自治体ごとのマイナンバーカード交付率を反映させる方針です。宮本氏は、カードの交付率を上げるほど交付税の「割増率も上がるという制度になっている」と批判。備前市は1月末時点で交付率が岡山県内トップであるものの、「この上積み分を逃す手はない」という趣旨の説明をしていると述べ、「子育て施策の後退を生んでいる。見直すべきだ」と迫りました。
(しんぶん赤旗 2023年2月15日)
動画 https://youtu.be/qH_pVKHTZnE
配布資料 20230214総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
松本大臣の所信に対して質問をいたします。
異常な物価高騰の下、実質賃金も年金も減っておりまして、国民生活は極めて深刻な状態です。
地方自治法一条の二は、地方自治体の役割について、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」と定めております。
今、この生活危機から住民の命と暮らしを守ることこそ、地方自治体の一番の仕事だと思います。賃金がなかなか上がらず、子育て世帯の所得が苦しいときに、市町村は、この地方自治法の精神に立って、独自に様々な子育て支援策を実施してまいりました。
大臣の地元姫路市でも、例えば、乳幼児や子供医療の助成制度は中学校三年生まで、給食費についても、多子世帯という条件はつけつつも、子育ての経済的負担を軽減し、安心して子育てできる環境の整備により少子化対策に寄与するために、同一世帯の第三子以降については中学校まで無償化としております。
大臣ももちろん、岸田内閣の一員として、次元の異なる少子化対策の推進に共に責任を負っていると私は考えますが、まず松本大臣の基本的認識をお伺いしたい。
○松本国務大臣 委員おっしゃったように、私も内閣の一員でありますし、政府全体として取り組むという意味では、総務省としても政府全体であるというふうに思っておりますが、総務省として、子供政策の強化は我が国にとって重要かつ緊急を要する取組であるということは、御指摘のとおりかというふうに思います。
御承知のとおり、現在、総務省も構成員となっている、こども政策の強化に関する関係府省会議において議論が進められているところでありますが、子供政策の多くは、これも今お話がありましたとおり、住民に身近な地方自治体を通じて提供されており、地方が現場として果たす役割は大変大きいため、その強化に当たっては、国と地方が協力して取り組んでいくことが重要だと考えております。
総務省としては、地方の意見や実情を十分に踏まえて連携しつつ、関係府省とも連携しながら、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 当然のことだと思うんですね。
しかし、これに逆行する事態が生まれております。既に先日の当委員会でも議論になった岡山県備前市の状況であります。
備前市は、独自の子育て支援策として、二〇一六年から三歳児未満の保育料の無償化を行っており、昨年、二〇二二年からは、小中学校の給食費や、理科等の授業で使う学用品費の一部を無償にする取組も行っております。
ところが、資料一と二を見ていただきたい。昨年十二月十六日付で、備前市の教育庁教育振興部が出した二通の通知であります。来年度、二〇二三年度から、これまで市が分け隔てなく子育て支援として行ってきた保育料や給食費、学用品費の無償化を受けるためには、今後は世帯の全員がマイナンバーカードを取得していることを条件とするという内容なんですね。
これは、岸田内閣が進める異次元の少子化対策という方向に全く逆行する事態ではないかと私はこの通知を受け止めたんですが、総務大臣、御感想をお伺いできますか。
○松本国務大臣 感想ということでございますが、各地方が独自に展開をされている政策につきましては、マイナンバーカードの関連の有無にかかわらず、それぞれの地方が議会や住民の声を聞いて、それぞれ御判断をいただくものというふうに考えておりまして、本件備前市につきましては、私どもは、現在検討中というふうに聞いているところでありますが、住民の声、議会などの議論も踏まえて、十分に丁寧に検討をいただいた上、御判断をいただくものというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 先日、私は現地へ行って、直接備前市当局からも事情を聞かせていただいてまいりました。同時に、こういう動きに対して、マイナンバーカードの取得状況による子育て支援策への差別の持込み、これはやめてほしいということで、署名運動の先頭に立っている市民の皆さんからも直接お話をお伺いしてまいりました。
備前市では、市民の間に日増しに反対署名が広がって、この町は人口三万二千人の町なんですけれども、お父さんたち、お母さんたちが先頭に立って、市の内外から、市内だけじゃないですよ、市の内外から既に四万三千筆のまさに人口を超える署名が寄せられているというふうにお伺いをいたしました。
私がお話を伺ったお母さんは、子育て支援が充実しているということで移住してきたけれども、マイナンバーカードの取得の有無で子供施策に差別を持ち込むなんて許せないと語っておられました。
備前市は、岡山県下でも既に一番マイナンバーカードの普及が進んでいる自治体だと認識しております。ですから、署名をしてくださる市民は既にマイナンバーカードを作ったという人が圧倒的らしいんですけれども、自分は作ったけれども、この制度はおかしいじゃないか、署名に協力すると。圧倒的多数の市民は、そういうやり方で進めるのはおかしい、マイナンバーに反対じゃないんだ、自分も作ったんだ、しかし、この施策は賛成できないという声が多いというふうに現場で聞いてまいりました。
今日は、内閣府の子ども・子育て本部に来ていただいております。二〇一九年十月からの幼児教育、保育の無償化の実施に当たり二〇一七年度に実施した調査で、私立保育所等のゼロ歳から二歳児の保育料の全国平均値、三歳以上は無償になっておりますから、今回この措置によって有償化に戻されるのはゼロ歳から二歳児までということになろうと思いますけれども、ゼロ歳から二歳児の保育料の全国平均値は月額で幾らになっておりますか。
○北波政府参考人 お答えいたします。
今御指摘ありました令和元年、二〇一九年十月から幼児教育、保育の無償化を実施するに当たりまして、平成二十九年度、二〇一七年度に保育料に関して地方自治体に調査を実施したところでございます。
この調査結果につきましては、地方単独事業による支援等は加味されていないというふうなことですので、若干、保護者が実際に負担している金額とは異なるものであることに留意する必要はございます。御指摘ありました私立の保育所等のゼロから二歳児の国基準での保育料の全国の月額平均値につきましては、約四万二千円となっております。
○宮本(岳)委員 四万二千円なんですね。保育料は、世帯の収入や保育園に通う子供の人数、自治体によって違うので、一概には言えませんけれども、これしかないんです。これ以降にもっと正確にとか調べたものはないので、取りあえず、今、月額四万二千円なんですね、出ている額は。これは、単純に十二か月を掛ければ、約五十万円ということになります。
それから、給食費無償化も外すという話ですから、これは一体どれぐらいになるか。備前市の給食費は、一食当たり、小学校で二百八十五円、中学校で三百三十円。これは調べてまいりました。年間に換算いたしますと、およそ五万五千円から六万円ほどになります。
保育料で五十万円、それから給食費ならば五万から六万と。両方、そういうお子さんをお持ちであれば、五十五万円を超える額になる。この負担が、マイナンバーカードを世帯全員取得したかどうかの有無で差が生じる。
物価高騰の中で、新年度から新たな負担が生じることになれば、市民の暮らしは大打撃だと言わなければなりません。コロナ禍と物価高騰で市民の暮らしが大変になっているときに、マイナンバーカードを事実上強制するために、子育て世代に五十五万円ものペナルティーを押しつける。これを、自治体の判断だ、こういって放置しておいたのでは、異次元と呼ばれる少子化対策は進まないと言わざるを得ないんですが、大臣、そうは思われませんか。
○松本国務大臣 是非やはり子供政策を推進する必要があるということはおっしゃるとおりでありますが、できるだけ繰り返しを避けて申し上げますが、御案内のとおり、平成十一年の地方分権一括法の制定以降、国と地方の関係は対等かつ協力の関係にあると認識しておりまして、自治体独自の施策については、各自治体の自主的な判断により取り組むことが基本であるというのが、私どもの考え方でございます。
○宮本(岳)委員 さあ、自治体の自主的な判断で始まった話であるかをこれから議論したいと思うんですね。
先日の当委員会で、吉川自治行政局長は、立憲民主党のおおつき委員の質問に対して、「カードを取得していない方に対して特定のサービスを停止したり、自治体に対して特定のサービスを停止するよう要請したことはございません。」こうはっきり答弁されました。
自治行政局長、間違いないですね。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
マイナンバーカードは、地方のDXの基盤となるツールであり、カードの利便性の向上を図りつつ、その普及促進に取り組んでいるところでありまして、御指摘のような、カードを取得していない方に対して特定のサービスを停止したり、自治体に対して特定のサービスを停止するよう要請したことはございません。
○宮本(岳)委員 いや、そうおっしゃる割には、マイナンバーカードを世帯全員が取得していなければ、五十五万円もの負担が新たに生じる、こういう事態が起こっているから聞いているんですよ。
この備前市の事例、どこが、カードを取得していない方に対して特定のサービスを停止したり、自治体に対して特定のサービスを停止するよう要請したことはないと言えるのか、分かるように御説明いただけますか、局長。
○吉川政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、カードを取得していない方に対して特定のサービスを停止するよう自治体に要請したことはございませんが、マイナンバーカードの普及促進に当たって、自治体が個別にどのような政策を展開するかについては、各自治体において、住民の御意見や議会での議論などを踏まえ、十分検討の上、御判断いただくものと考えております。
○宮本(岳)委員 それはあれですか、自治体に対して停止せよと言ったことはないけれども、自主的にカードを取得しない方に対して特定のサービスを停止してもらっても構わないということをおっしゃっているわけですね。
○吉川政府参考人 総務省といたしましては、各自治体において、住民の皆様にデジタル化のメリットを享受していただけるように、カードの普及促進や利便性の向上に取り組んでいただきたいと考えておりまして、そのように各団体にも要請をさせていただいているところでございます。
○宮本(岳)委員 いや、カードのメリットを説明したり、サービスの享受、こんないいことがありますよと説明していることが悪いと言っているんじゃないんですよ。あなたが説明するように、カードを作らないことによって特定のサービスを停止することはないと言いながら、そういうことを要請した覚えはないとおっしゃるか知らないけれども、自治体が総務省の意向を忖度というんですか、おもんぱかるというんですか、それを受け止めて、自主的に特定のサービスを停止することについては構わないということなんですね。お答えください。
○吉川政府参考人 繰り返しになりますが、特定のサービスを停止するよう自治体に要請したことはございません。自治体が個別に政策を展開するに当たってカードの取得の有無を考慮するかどうかといった点は、各自治体において丁寧に御検討いただくべきものと考えております。
○宮本(岳)委員 それは、停止するように要請していたら大問題ですよね。そういうことはやっていないと言うんでしょうから、それは要請はしていないんでしょう。しかし、問題は、こういうことが起こったときにあなた方がどう受け止めるかということが今大問題だと思うんですね。
現地に行って説明を求めました。備前市の説明はこういうものでした。無償化策をひとまず廃止して、ゼロベースで見直し、改めて、マイナンバーカードを世帯全員取得している家庭への特典として無償措置を行うことを検討していると。一旦下げた上で、今までどおりの部分は特典にするんだという話ですね。
しかし、ひとまず廃止して、ゼロベースで見直し、改めて、マイナンバーカードを世帯全員作っている家庭への特典として無償措置を行うという、私はへ理屈だと思うんですけれども、こういうものが出てきているのには、私は、総務省の説明、つまり、マイナスはしませんよ、プラス、インセンティブはやるけれどもペナルティーはやりませんとおっしゃるけれども、こういう逆転の話をすれば、結局同じことなんですね。インセンティブを与えるがペナルティーはしないと言ってみても、一旦行政サービスの水準を引き下げておいて、そして、マイナンバーカードを取得した者にもう一度元の行政サービスをインセンティブだといって与えれば、結果としたらペナルティーと同じ結果になるんですよ、これは。
そうなれば、幾ら自治行政局長が、カードを取得していない方に対して特定のサービスは停止したり、自治体に対してそれを要請したことはないと答弁してみても、ほとんど意味のない、やろうと思えばこういうやり方を取れば幾らでも、カードを作っていない人に特定のサービスを切り下げるということができることになるんですけれども、そうじゃないですか、局長。
○吉川政府参考人 各自治体において、マイナンバーカードを取得している方にどのようなサービスを提供するかにつきましては、住民の御意見、議会での議論などを踏まえ、十分検討の上判断するとともに、住民に対して事業内容や効果等についてしっかりと説明責任を果たしていただきたいと考えております。
○宮本(岳)委員 あかんなという声が議場でもつぶやかれておりますけれども、やはり、特定のサービスを停止したりすることはないと答弁されるんだったら、そういう状況があると聞いたら、それはちょっと趣旨と違うんですよという説明をしてもらわなきゃなりません、自治体に対しても。
もちろん、大臣がおっしゃるとおりで、地方分権改革をやっていますから押しつけたりはできない、また、するのは間違いだと思いますけれども、しかし、助言なり様々な情報提供をする必要がある。あなた自身がここで、特定のサービスを停止したりすることはないと答弁しているんですから、国はそういう立場ですよということを伝えていただく必要があると思うんですね。
なぜ不利益変更が許されないか。あくまでこれは任意の制度だからであります。任意の制度であるにもかかわらず、マイナンバーカードを取得しない人や世帯にペナルティーをすることが許されないのは当然だと思うんですね。ですから、より根本的なところをデジタル庁に聞きたいと思うんです。
なぜマイナンバー法はカードの取得を任意にしているのか、強制することを避けた理由は何か、お答えいただけますか。
○内山政府参考人 お答えいたします。
マイナンバーカードは、安全、安心なデジタル社会のパスポートとして御利用いただいているものであり、厳格な本人確認の下で交付する必要がございます。
このため、カードに必要な顔写真を御本人が撮影して申請していただくとともに、交付又は申請の際に市町村職員による対面での本人確認を必要としていることから、その取得を義務化せず、申請によることとしたところでございまして、現段階では義務化は難しいと考えてございます。
○宮本(岳)委員 確かに、昨年五月二十七日の予算委員会で、岸田首相は、同じ趣旨を問われまして、今の二点ですね、一つ、カードに顔写真を表示する、二つ、対面での厳格な本人確認が必要である、この二つの理由を挙げて、義務化することを控えて任意の制度にしたと答弁をしております。
この二つ目の、対面での厳格な本人確認ができない人、不可能な人がおられるというのは分かりやすいんですけれども、一つ目の、カードに顔写真を表示するということがなぜ義務化を控える理由になるのか。デジタル庁、重ねてお答えいただけますか。
○内山政府参考人 お答えいたします。
先ほどと繰り返しになりますけれども、カードに必要な顔写真を御本人が撮影して申請いただくということになってございます。そういうことから、行政側からいわば一方的に、勝手に交付することができないという性質から、申請によることとされてございます。
○宮本(岳)委員 念のために、重ねて、今日は個人情報保護委員会に来ていただいております。
顔写真は、個人情報保護法上、個人識別情報に位置づけられていると思いますが、間違いないですね。
○山澄政府参考人 お答え申し上げます。
個人情報保護法におきまして、個人情報の定義といたしましては、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる記述等により特定の個人を識別することができるものという定義がされておりまして、特定の個人を識別することができるような顔写真につきましては個人情報に該当いたします。
○宮本(岳)委員 顔写真を提出することに拒否感がある人に無理やり顔写真を提出させることはできない。また、当然のことだが、様々な理由で対面での厳格な本人確認ができない人にカードを強制することはできません。
そもそも、二〇二一年三月十七日に、内閣委員会におけるデジタル社会形成基本法案の審議で、我が党の塩川鉄也議員の質問に答えて、当時の平井卓也担当大臣は、デジタル社会の形成は、デジタルの活用によって、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことを可能とすることで、多様な幸せを実現するために行うものであって、こういう趣旨を踏まえると、個人がデジタル機器を利用しない生活様式や選択も当然尊重されるものと考えていると答弁されました。
デジタル庁、この平井大臣の答弁は今でも生きておりますね。
○山本政府参考人 お答えいたします。
御指摘いただいた答弁にもございましたけれども、デジタル社会の形成は、デジタルの活用により、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことを可能とするものでございまして、多様な幸せを実現するために行うものであり、このことを踏まえれば、個人がデジタル機器を利用しない生活様式や選択も当然に尊重されるものと考えております。
その上で、そうした方々に対しても、行政や民間のサービス提供者側でのデジタル活用や、デジタル推進委員など周囲の方々からの支援を通じまして、利便の高まる社会を目指してまいることが重要であると考えておりまして、このような考え方の下、誰一人取り残されないデジタル社会に向けて取り組むこととしております。
○宮本(岳)委員 選択を可能とすることで多様な幸せを実現するために行うものであって、個人がデジタル機器を利用しない生活様式や選択も当然尊重される、まさに憲法十三条の個人の尊厳原理を尊重する立場なんですね。
国がライフスタイルを決めるということ、これは許されません。松本大臣も総務省も当然、個人がデジタル機器やマイナンバーカードを利用しない生活様式や選択というものも尊重されるべきだ、これはお認めになりますね、大臣。
○松本国務大臣 私も、昨年十一月の所信でも、アナログの人間のためのデジタルというふうに申し上げさせていただいてまいりました。
当時の平井大臣がこのように御答弁をされておられることについては、私も尊重してまいりたいと思っております。
○宮本(岳)委員 当然の立場だと思いますね。
前回も議論になりましたけれども、だからこそ、二〇一八年二月二十日の当委員会で、山崎重孝自治行政局長は、自分の意思で必要と思われた場合に、申請に基づいて交付される、つまり、申請主義であり、あくまでも任意の制度だと述べた上で、目標を掲げることは適当ではないと答弁したのは当然のことでありました。
ところが、前回の質疑で吉川自治行政局長は、それは大昔の答弁であったかのように語り、二〇二〇年十二月に閣議決定されたデジタル・ガバメント実行計画を始めとする累次の閣議決定に基づき、一〇〇%目標を持って進めるのは当然であるかのように答弁をされました。
吉川自治行政局長、閣議決定後の今日では、個人がデジタル機器やマイナンバーカードを利用しない生活様式や選択を尊重する必要はなくなったということですか。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
マイナンバーカードはデジタル社会の基盤となるツールでありまして、安全、安心で利便性の高いデジタル社会をできる限り早期に実現する観点から、累次の閣議決定において政府目標を立て、その普及促進に取り組んでいるところでございます。
平井大臣の答弁で言われていることにつきましては、私ももちろん尊重する立場でございます。
○宮本(岳)委員 尊重したことになっていないから聞いているんですけれどもね。
基盤だ基盤だと言って、全員が持たないと前に進まないかのようなことを言うんだけれども、しかし、そういうものを持たないという生活様式も尊重されなきゃならないわけですよ。
自治行政局長は、前回の質疑でも、総務省の立場は、マイナンバーカード普及促進のため、自治体との間の連絡体制を確立し、国の施策の最新情報を始め、申請促進や利便性向上に係る全国の先進的な取組事例をきめ細かく提供するとともに、それぞれの自治体における現状や課題をよく伺った上で丁寧に助言するなど、自治体の取組をしっかりと後押ししていくというものでございます、こういう答弁をされました。
では、その総務省の、自治体の取組をしっかり後押ししていくという政策がどのような結果を生んでいるかを見てみたいと思うんです。
資料三は、二月十二日付の山陽新聞であります。「マイナ取得限定に波紋」という見出しがあり、リードには、「背景にはカード普及を交付金の支給要件とする国の誘導策もある。」と書いております。記事には、赤線部、「政府は「デジタル田園都市国家構想交付金」についてカードの普及状況を受給要件とし、」と書かれておりますけれども、これは内閣府の所管の交付金だと思います。内閣府、これは事実ですね。
○布施田政府参考人 お答えいたします。
令和四年度第二次補正予算において、デジタル田園都市国家構想交付金を創設し、昨年十二月に募集の事務連絡を発出しているところでございます。
マイナンバーカードの普及が進んだ自治体においては、地域のデジタル化に係る取組をより一層強力に展開できると考えられることから、交付金の対象の一部の、全国的なモデルケースとなるようなデジタルを活用した先進的な取組につきまして、申請率が昨年十一月末の全国平均交付率以上、かつ、全住民への交付を目標として掲げていることを申請条件としております。
一方で、デジタル実装のための計画策定などを主内容としない取組については、普及状況は考慮してございません。また、デジタル活用の優良モデルを横展開する取組などについては、普及状況は申請要件ではなく、勘案事項としているところでございます。
○宮本(岳)委員 いやいや、カードの普及状況を受給要件として進めていることも事実ですね。もう一度。
○布施田政府参考人 マイナンバーカードの普及が進んだ自治体においては、地域のデジタル化に係る取組をより一層強力に展開できると考えられることから、交付金の対象の一部の、全国的なモデルケースとなる先進的な取組につきまして、申請率は昨年十一月末の全国平均交付率以上、かつ、全住民への交付を目標として掲げていることを申請条件としております。
○宮本(岳)委員 結果として金がかかるから、それを補填するという説明。この後の地方交付税でもするんですけれども、実態は違うんですよ。実態は、幾らそれに金がかかることが分かって、計算の上その額が出たのかと聞いても、何も必要経費から出ていないんですよ。事実上は、このお金を取るためにみんなが血道を上げている。メディアだって、そう報じているわけですよ。
じゃ、地方交付税について論じましょう。資料四を見ていただきたい。
地域デジタル社会推進費の増額分、マイナンバーカード利活用特別分五百億円について、マイナンバーカードの交付率に応じて割増しする算定方式の説明資料です。右の方に割増しのイメージ図がついております。
資料三にもあるとおり、記事にもあるとおり、備前市のカード交付率は一月末時点で七二・九%であり、岡山県内でトップとなっております。既に上位三分の一に入っているのは間違いないと思われるのに、なぜまだここまで更に強引に進めるのかと私は不思議に思っていたんですね。
そうしたら、このグラフにちゃんと答えがあるんですよ。赤の折れ線グラフを見ていただくと、三分の一を超えても、交付率が上がれば上がるほど更に上乗せ、割増しが上がることになっている。
これは総務省に確認します、財政局。上位三分の一を超えても、更に一〇〇%に向かって交付率を上げれば上げるほど割増し率も上がるという制度になっております。事実ですね。
○原政府参考人 お答えいたします。
マイナンバーカードの交付率の普通交付税への反映につきましては、五百億円増額いたします。その中で、カード交付率も活用するということにしております。
これは、カードの普及に伴いまして、住民サービスを向上するための財政需要を的確に反映するということで交付率を用いるものでございます。
御指摘の、マイナンバーカードの交付率が高い、上位三分の一の市町村が達している交付率以上の市町村については、カードを利活用した取組に係る財政需要が多く生じると想定されることから、当該市町村のカードの交付率に応じた割増し率により交付税を算定することと予定しております。
このため、カード交付率が上位三分の一の市町村が達している交付率以上の市町村については、カード交付率が高い市町村ほど高い割増し率に算定することを予定しておりますが、これはあくまでも財政需要の適切な反映という観点で行うものでございます。
○宮本(岳)委員 そういう説明が通るかどうか、またやりましょう。それは、追ってやりましょう。
大臣、私に対しても、備前市当局は、全員無償化に制度を続けられるなら、それにこしたことはないと言いながら、これまでの子供、子育て施策の予算一億六千万円が財政的に負担であり、厳しい財政状況を考えれば、この上積み分を逃す手はないという趣旨の説明をいたしました。
結局、あなた方がインセンティブと位置づけ、自治体の取組をしっかりと後押ししていくなどと説明している施策が、逆に、子育て施策の後退を生んでいるじゃないですか。このようなやり方こそ見直すべきだと私は思います。
先ほど議論がありました、政策評価をして、必要であれば軌道修正する。大臣もそうおっしゃった。こういうものこそ軌道修正が必要じゃないですか、大臣。
○松本国務大臣 まず、交付率へのマイナンバーカードの普及率の反映は、インセンティブではなく、想定される財政需要に対応するものだということを是非御理解をいただきたいと思っております。
また、マイナンバーカードの普及については、利便性を向上させることで、例えば、今幾つかの自治体で進めていただいている書かない窓口などのように、やはり、マイナンバーカードを持つと大変便利であるということを実感していただくことを通して、より多くの方にマイナンバーカードを持っていただくようになっていただきたいということで、私どもも、政策でありますので、このマイナンバーカードの普及についても、普及の目標というのを掲げて、前へ進んできておるというふうに理解をいたしております。
繰り返しになりますが、今、備前市の政策について御議論をいただいたところでありますが、子供政策への対応について、マイナンバーカードの保有をもって対象とするかしないかというふうな政策をお取りになっていること、これも検討中と承知していますが、そういうふうなことが伝わってきているということに対して、これを導入したことについて、メディアの方の論評について私どもコメントする立場にありませんけれども、備前市さんがこの政策を採用するのかどうかも含めて、繰り返しになりますが、今、私ども総務省としては、対等、協力の立場からしますと、住民の皆様のお声、議会の議論を踏まえて、十分に丁寧に検討いただいて御判断をいただくものというふうに申し上げたいと思います。
○宮本(岳)委員 もう時間が来ましたから終わりますけれども、マイナンバーの制度設計に関わった中央大学の石井夏生利教授は、昨年十月十五日の朝日新聞インタビュー記事で、元々マイナンバー制度をつくるときにカードがなくてもいいように制度をつくっています、カードの取得を制度運用の条件にすると、取得しない人が制度から漏れてしまい、国民全員に割り振られる番号制度の趣旨を実現できなくなります、また、個人情報保護の面でも国民からの不安が拭えないと考えられていました、さらに、カードを作るためには、本人確認のために行政窓口に来てもらう必要もあります……
○浮島委員長 申合せの時間が経過しておりますので、おまとめください。
○宮本(岳)委員 そういった諸々の事情があり、カードを必須にはしませんでしたと述べています。
そもそも、強制や義務化は、憲法が認める基本的人権、個人の尊厳の保障にも反することを厳しく指摘して、私の質問を終わります。