子育て支援 拡充求める
衆院本会議 宮本岳志議員が質問
地方財政計画ほか2法案が審議入り
2023年度地方財政計画ほか2法案が14日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の宮本岳志議員は、異常な物価高騰のもとでも賃金は上がらず、年金は減らされるなどの深刻な生活危機から「住民の命とくらしを守ることこそ、地方自治体の一番の仕事だ」として、給食費無償化、子どもの医療費助成、保育環境の改善など子育て支援の抜本的な拡充を求めました。
宮本氏は、岸田内閣が「異次元の少子化対策」と言いながら、学校教育の無償化や子どもの医療費助成などを実際に支えているのは自治体の支援だと指摘。文部科学省が「約4400億円あれば国の責任で小中学校の学校給食を無償化できる」と説明していることを挙げ、憲法が定める義務教育無償化の原則からすれば「当然の施策だ」と訴えました。
永岡桂子文科相は「給食費の無償化は、自治体で適切に判断されるもの」などと自治体任せの答弁を繰り返しました。
宮本氏は子どもの医療費助成について、国が制度をつくらないばかりか、無償化を行う自治体に予算カットのペナルティーを科していることはありえないと批判。「ただちに国の制度を創設すべきだ」と迫りました。加藤勝信厚労相は「国の制度として実施することは、限られた財源の公平な配分などの観点から課題が多い」と述べました。
宮本氏はさらに、加藤厚労相が、保育士の配置基準が経済協力開発機構(OECD)諸国で最低水準であることを認めていると指摘し、「ただちに配置基準を見直すべきだ」と追及。加藤厚労相は「配置改善を図っていくことは重要な課題」としつつも「安定的な財源の確保と併せて検討が必要」と述べるにとどまりました。
(しんぶん赤旗 2023年2月15日)
動画 https://youtu.be/3SnlV5xm6lg
議事録
○宮本岳志君 私は、日本共産党を代表し、地方財政計画外二法案について質問いたします。(拍手)
異常な物価高騰の下、賃金は上がらず、年金は減らされ、国民生活は極めて深刻です。この生活危機から住民の命と暮らしを守ることこそ、地方自治体の一番の仕事です。地方自治法は自治体の役割を住民の福祉の増進を図ることとしていますが、総務大臣は、このことをどう認識し、自治体に対する国の責任をどのようにお考えか、答弁を求めます。
子育て支援に総力を挙げることは当然です。しかし、岸田内閣は、異次元の少子化対策などと言いながら、学校給食の無償化も、子供の医療費助成も、実際に支えているのは自治体の支援であり、その財源は自治体の努力によっているのではありませんか。
文部科学省は、約四千四百億円あれば国の責任で小中学校の学校給食を無償にできると明らかにしました。憲法が定める義務教育無償の原則に立つならば、当然の施策ではありませんか。答弁を求めます。
あわせて、高校、大学までの無償化は、国際条約上の責務です。全面無償化に踏み出すべきです。就学援助や高校、大学の給付型奨学金の対象拡大も強く求めます。
高過ぎる国民健康保険料の引下げ、子供にまで人頭税のように負担を求める均等割の仕組みの廃止は、切実な課題です。
子供の医療費助成は、既に半数の自治体が高校卒業まで実施、中学卒業までの実施自治体は実に九五%に上ります。それにもかかわらず、国は、子供の医療費助成の制度をつくらないばかりか、子供の医療費無料化を行う市町村に対して予算カットのペナルティーまで行っています。これが無駄遣いだというのでしょうか。異次元の少子化対策と言いながら、ペナルティーを残すなどあり得ません。直ちに国の制度を創設すべきではありませんか。
安心して過ごせる保育環境の実現と保育料の無償化も緊急の課題です。
厚労大臣は、保育士の配置基準がOECD諸国で最低水準であることを認めました。子供たちの安心、安全を確保し、現場の深刻な勤務実態を改めるため、直ちに配置基準を見直すべきではありませんか。保育料の無償化をどのように拡充するのですか。
コロナ禍が続く下で、医療の確保も切実な課題です。
地域医療構想の名での急性期病床の削減計画はきっぱり中止すべきです。そして、公立病院の統廃合と病床削減をやめることも強く求めます。
今回の地方財政計画で最大の問題は、マイナンバーカードの推進のために、国が自治体を手足のように使おうとしていることです。
ある自治体では、既に実現してきた保育料や給食費等の無償化を、世帯全員がカードを取得していなければ受けられなくする方針を打ち出しました。マイナンバーカードで子供たちを差別するのかと住民が立ち上がり、方針撤回を市に要請する署名が日増しに広がっています。総務大臣、政府がカードの普及率の引上げを自治体に迫ったことが、自治体と住民に大きな混乱を持ち込み、子育て支援策の後退さえ生み出しかねない結果になっていることへの自覚はありますか。
総務省は、カード推進を地方交付税の算定にまで関連させて自治体に迫ろうとしています。カード交付率上位を目指す、際限のないカードの普及競争に自治体を駆り立てようとしています。地方の固有の財源を国の政策推進に利用するなど、あってはならないことです。財源保障機能と財政調整機能という地方交付税の役割を根本からゆがめるものであり、断じて許されません。
総務大臣の明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
○国務大臣(松本剛明君) 宮本議員からの御質問にお答えをいたします。
まず、住民の福祉の増進について御質問いただきました。
地方自治体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、教育、福祉など広く住民生活に身近な行政サービスを担い、住民の福祉の増進に大変重要な役割を果たしております。
このような行政サービスを自治体が安定的に提供していけるよう、必要な一般財源総額を適切に確保することが重要と考えております。
御指摘の物価高騰への対応については、地方創生臨時交付金など、自治体の自由度が高い形で生活者支援等の取組の支援が行われていますが、令和五年度の地方財政計画においては、学校や福祉施設等の光熱費高騰への対応として、一般行政経費を七百億円増額しているところです。
今後とも、自治体が地域の実情に応じて、住民ニーズにきめ細やかに対応していくことができるよう、地方の声を伺いながら取り組んでまいります。
次に、地方団体独自の子育て支援について御質問いただきました。
子育て支援策全体については国費による取組も進めておりますが、現在、地方団体が実施している学校給食の無償化や子供医療費助成については、子育て支援策の重要性に鑑み、各地方団体が、様々な努力の上、地域の実情を踏まえ実施しているものと認識しております。
次に、公立病院の統廃合と病床削減について御質問いただきました。
持続可能な地域医療提供体制を確保することは重要であると認識しております。
そのため、総務省では、昨年三月に公立病院経営強化ガイドラインを策定し、機能分化、連携強化など、公立病院の経営強化を推進しています。
今回のガイドラインは、もとより、公立病院の統廃合と病床削減は前提としておりませんが、各地方自治体が、地域の実情を踏まえて、各公立病院の経営強化に主体的、積極的に取り組んでいただくことが医療の確保に資するものと考えております。
次に、マイナンバーカードの普及に向けた自治体への働きかけについてお尋ねがありました。
マイナンバーカードは地方のDXの基盤となるツールであり、その普及促進は、住民の方々の利便性向上と自治体職員の事務負担の軽減につながるものと考えております。
カードを取得していない方に対して特定のサービスを停止するよう自治体に要請したことはございませんが、マイナンバーカードの普及促進に当たって自治体が個別にどのような政策を展開するかについては、各自治体において、住民の御意見や議会での議論などを踏まえ、十分御検討の上、御判断いただきたいと考えております。
最後に、マイナンバーカード交付率の普通交付税の算定への反映について御質問いただきました。
地方交付税は、標準的な行政サービスを住民に提供するために必要な財源を全国の各地方団体に保障する役割を有しております。
また、地方団体には、カードを利活用した住民サービス向上のための地域のデジタル化に係る財政需要が存在しており、こうした財政需要を的確に普通交付税の算定に反映する観点から、カードの交付率を用いるものです。
したがって、地方団体の標準的な行政サービスを住民に提供するために必要な財源を保障するという地方交付税の役割に沿うものであり、地方交付税の役割をゆがめるものではありません。(拍手)
○国務大臣(永岡桂子君) 宮本議員にお答え申し上げます。
まず、学校給食の無償化についてお尋ねがありました。
児童生徒の学校給食費については、経済状況が厳しい保護者に対して、生活保護による教育扶助や就学援助を通じまして支援をしているところです。
学校給食費の無償化については、学校の設置者と保護者との協力により学校給食が円滑に実施されることが期待されるとの学校給食法の立法趣旨を踏まえ、設置者である自治体において適切に御判断いただくものと考えます。
次に、高校、大学までの無償化についてお尋ねがありました。
我が国においては、国際人権規約で定められているとおり、無償教育に漸進的に取り組んでおります。
その上で、教育費の負担軽減策として、義務教育段階における就学援助制度、高校就学支援金による授業料支援、授業料以外の教育費を支援する高校生等奨学給付金制度、また、令和二年度から、低所得者世帯の学生等を対象とした高等教育の修学支援新制度を実施しております。さらに、令和六年度からは、この修学支援新制度について、多子世帯や理工農系の学生等の中間層へも対象を拡大することとしており、具体的な制度設計を進めております。
今後とも、教育に係る経済的な負担軽減の取組を通じ、教育の機会均等に努めてまいります。(拍手)
○国務大臣(加藤勝信君) 宮本岳志議員より三問の質問をいただきました。
国保の保険料と子供の医療費についてお尋ねがございました。
国民健康保険制度においては、保険給付費の五割を公費負担するなど、他の制度より手厚く公費を投入しています。
その上で、国保の均等割保険料は、全ての世帯員がひとしく給付を受ける権利があるため、子供を含めた被保険者の人数に応じて一定の御負担をいただくことが基本であります。所得の低い世帯には一定の負担軽減を行うとともに、本年度からは、未就学児の均等割保険料を半額に軽減する等の措置を講じております。
子供の医療費助成については、自治体独自の助成制度により、自己負担の更なる軽減が図られているものと承知をしています。国保の国庫負担金の減額調整措置については、平成三十年度以降、未就学児までを対象とする医療費助成を対象外といたしました。減額調整措置について更に見直しをした上で、子供の医療費助成を全て国の制度として実施することは、自己負担の軽減により受診行動の変化も考えられ、厳しい医療保険財政や助成内容等に地域差があることなどを勘案すると、限られた財源の公平な配分などの観点から、課題が多いものと考えております。
保育士の配置基準と保育料の無償化についてお尋ねがありました。
保育士の配置基準の国際比較について、二月三日の衆議院予算委員会では、他国と比べて配置基準が十分ではないという指摘は十分に受け止めなければならないが、日本とは異なり、諸外国の配置基準では必要な保育者は必ずしも有資格者に限定されていないため、単純な比較はできないことなどを答弁させていただきました。
政府として、保育士等の配置改善を図っていくことは重要な課題と考えており、この間、待機児童の解消に努めるとともに、平成二十七年度から三歳児に対する職員の配置改善に取り組んでおり、今後も取り組んでまいります。更なる配置改善については、引き続き、安定的な財源の確保と併せて検討が必要と考えております。
また、幼児教育、保育の無償化については、三歳から五歳の子供については広く国民が幼稚園や保育所などを利用しているのに対して、ゼロ歳から二歳の子供の保育所等の利用は約四割にとどまっていることなどを踏まえて、三歳から五歳までは所得制限を設けず、ゼロ歳から二歳までは住民税非課税世帯を対象として無償化しているものと承知をしております。これを踏まえた議論がなされているものと考えております。
こども政策担当大臣の下、子ども・子育て政策として充実する内容を三月末を目途に具体化し、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示するものと承知しており、厚労省としても必要な連携協力を図ってまいります。
地域医療構想についてお尋ねがございました。
地域医療構想は、中長期的な人口構造の変化に伴う地域の医療ニーズに応じて、病床機能の分化、連携により、質の高い効率的な医療提供体制の確保を目指すものであり、病床の削減や統廃合ありきではありません。また、新型コロナ対応を通じて明らかになった地域の医療機関の役割分担等にも対応するものであります。
厚生労働省としては、引き続き、都道府県の御意見を伺いながら、地域医療構想を着実に進めるとともに、今後、高齢者人口がピークを迎えて減少に転ずる二〇四〇年頃を視野に入れつつ、新型コロナ禍で顕在化した課題を含め、中長期的な課題について整理し、新たな地域医療構想の策定に向けた検討を進めてまいります。(拍手)