時間外100時間超6.8万人
地方公務員の増員要求
衆院委で宮本岳志氏
日本共産党の宮本岳志議員は16日の衆院総務委員会で、「過労死ライン」を超える長時間勤務が増加している地方公務員の実態について、政府の公表資料と現場の声を交えて告発し、自治体職員の増員を強く求めました。
昨年末に総務省が公表した「地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」によると、2021年度に時間外勤務が月100時間以上だった職員は6万8130人で、前年度から1万8307人増でした。
宮本氏は、総務省が自治体に継続的な助言を行い、長時間労働を行った職員の健康維持を図る立場にあると指摘。大臣もそれを認めました。
しかし実態は、「医師の面接指導」の対象となる長時間勤務者のうち、指導を受けなかった職員が7割に及ぶと宮本氏は指摘。総務省の大沢博公務員部長は「できるだけ面接指導をしっかり行ってほしいとお願いをしている」と述べました。
宮本氏はまた、入職直後から長時間労働となった新人保健師が「気が付いたら、マンションのベランダに足をかけていた」と語ったことを紹介。「住民の命を守るべき自治体職員が、職場体制と労働条件のために命を絶つなどあってはならない」と訴えました。
さらに、長時間労働の背景に職員不足があると強調。国が定員削減目標を設定し、05~09年に行った「集中改革プラン」で、職員は7・5%(約23万人)減少しており、「減らしすぎた体制の改善が必要だ」と訴えました。
(しんぶん赤旗 2023年2月17日)
動画 https://youtu.be/BrOARADMjjA
配布資料 20230216総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
前回の委員会でも、また本二法案の本会議質疑でも、地域デジタル社会推進費の増額分、マイナンバーカード利活用特別分五百億円について、私も、また他の委員も、マイナンバーカードの交付率を交付税の算定とリンクさせる理由について質問をいたしました。
資料一を見ていただきたい。
原邦彰自治財政局長は、当委員会で、マイナンバーカードの普通交付税への反映につきましては、五百億円増額いたします、その中で、カード交付率も活用するということにしております、これは、カードの普及に伴いまして、住民サービスを向上するための財政需要を的確に反映するということで交付率を用いるものでございますと答弁し、本会議で大臣もこの原自治財政局長の答弁を踏襲されました。
私は、前回、その答弁について、それは追ってやりましょうと申し上げましたので、そこから入りたいと思います。
原局長、この五百億円が財政需要を的確に反映したものだというのであれば、総務省はこの五百億円を、どのような新たな財政需要をどのようにしてつかみ、どういう積算根拠で算出したのか、的確に示していただきたい。
○原政府参考人 お答えいたします。
マイナンバーカードの交付率の普通交付税への反映につきましては、今御指摘ありました、地域デジタル社会推進費のうち、今回、マイナンバーカード利活用特別分として増額する五百億において、カードの交付率も活用して行うこととしております。これは、カードの普及に伴う、カードを利活用した住民サービスのための取組に係る財政需要を的確に算定に反映する観点から行うものであります。
今御指摘ありました、今回増額する五百億円の積算根拠についてであります。
令和四年度において総務省が行った調査では、カードを利活用した住民サービスの向上のための地域のデジタル化の取組に係る財政需要が三百億円程度と見込まれたところであります。この調査では、マイナンバーカードを活用する事業の取組市町村数は千二百団体程度でございました。
今後は、カードの交付枚数が増加する中で、カードを利活用した取組については、取組を進める市町村が拡大していくこと、また、カード交付率が高い市町村を中心に先進的な取組事例が、横展開が見込まれることから、財政需要が増加するものと想定し、また、地方からデジタル経費の拡充を求める御要請も受けておりまして、そうしたことも含めて財政当局と折衝し、五百億円の増額を図ったところでございます。
○宮本(岳)委員 千二百団体から三百億円という額が出ました、それ以外にも広がるだろうから二百億円上積みした、こういう説明ですね。
それは、財政需要を的確に反映という言葉を三百億とか二百億というような金額に置き換えただけのことでありまして、的確に反映とまで言うのであれば、その内訳が問題になります。
聞きますけれども、その内訳は、設備投資ですか、それとも運用費用ですか、またその両方ですか。それぞれ幾らになるのか、お答えいただけますか。
○原政府参考人 お答えいたします。
運用経費あるいは設備投資等の内訳等については詳細は把握しておりませんが、運用経費、設備経費、両方含まれているというふうに存じております。
○宮本(岳)委員 では、もう一つ聞きましょう。
資料一の二は、先日の委員会での原局長の私への答弁です。
私は、マイナンバーカード交付率の普通交付税への反映一般にとどまらず、カード交付率が上位三分の一に達している市町村についても、更にカード交付率が高い市町村ほど高い割増し率に算定する理由は何かと、これも重ねて聞きました。
局長答弁は、最後の一行、これはあくまでも財政需要の適切な反映という観点で行うというものでございました。
先ほどは的確、今度は適切と。どう違うんですか。そして、その中身を的確あるいは適切にお答えいただけますか。
○原政府参考人 お答えいたします。
まず、五百億円については、全ての市町村において基準財政需要額を増額するよう算定することを予定しております。
それで、具体的にマイナンバーカードを使った事業ということでございますと、例えば、各種証明書のコンビニ交付サービス、それから行政手続のオンライン申請、それから書かない窓口、いわゆる申請書の自動作成支援など、こうしたもので住民サービスを向上させるための取組の財政需要があるというふうに調査でも出てきております。
それで、そうしたことがございますが、私ども、いろいろと調査の中で分析をしましたところ、カードの交付率が高いところほど財政需要が大きくなるというような傾向も見られます。
また、マイナンバーカードの交付率に比例する、例えば各種証明書のコンビニ交付サービスの軽減措置ですとか、あるいはいろいろと今言った、書かない窓口、これは、カードの交付が増えますと窓口の数が増えますので、そういった経費がかかる。比例する需要もある、そういったことを勘案して、基本的には全ての自治体に増やしますが、一定の、特に高いところは増やすということで、先ほども申し上げましたが、普通交付税の算定においては上位三分の一で切るという手法がありますので、上位三分の一を超えるところを割増しということにしたということでございます。
○宮本(岳)委員 るるおっしゃいましたけれども、一つは、やればやるほど需要が高まる、つまりコストがかかっていく。こうなりますと、あっちもこっちも進めていくと基準財政需要が膨らんでいく、そういう理屈になるわけですよ。だから、効率化するんだという説明との関係もどうなるのかということですけれども。
じゃ、少なくとも、昨年九月にやった調査結果、これから算定したという三百億とか二百億、中身が分かるように出していただけますか、追ってでいいですけれども。
○原政府参考人 お答えいたします。
そもそも、その調査は、優良事例を把握するということで調査をし、それから、自治体に対しては非公表を前提とした調査でございます。
したがいまして、その公表の在り方については慎重に検討を要すると思いますが、どのような形で資料がお出しできるか、それは工夫をして、検討したいと思います。
○宮本(岳)委員 当然のことだと思うんですね。私たち、私だけじゃない、何人もの、主に野党ですけれども、議員が聞いたのに対して、的確な計算をやった上でのことだと答弁されたわけですから、だから、どれほど的確かということを私たちも見極めなければならない。
出し方は、それは検討していただいたらいいですけれども、国会が納得する形で出していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
資料二を見ていただきたい。昨日、二月十五日付の朝日新聞大阪版の記事です。一昨日、二月の十四日に私はこの岡山県備前市の問題を取り上げましたけれども、その日に市長が行った会見の記事でございます。
国の政策に呼応したものであって、強引な手法だとは思っていない、給食費を人質に取っていると指摘されたが、人質に取っていないと息巻いておられます。
私が気になるのは、最後の市の担当者と呼ばれる人の言葉なんです。カードの普及で市の歳入が増えればこうした政策も続けやすくなると語ったと出ていますね。この担当者の説明は、先ほど来繰り返されている、需要が増えるから増えるという話とは全然違う。つまり、率が上がれば割増し率が増えて、御褒美にお金がいっぱい入る、そうやっていっぱい御褒美を取ったら、そのお金でまたサービスもできるでしょう、こう説明している。
しかし、この割増し、五百億円の普通交付税の増額分というのは、カードの普及に伴って住民サービスを向上するための財政需要を的確に反映したものであって、御褒美だとか報奨金という性格ではないという御説明だったと思いますが、間違いないですね、原さん。
○原政府参考人 お答えします。
先ほど来、五百億の根拠あるいは割増しの根拠を御説明させていただきましたとおり、交付税の世界では、例えば今のデジタル経費も、事業所の増減ですとか高齢者の多寡とかそういうもので割増ししたり、むしろ減らすことまでやっておりますので、そういう意味では、今回は割増しだけに限っておりますので、あくまでも的確な財政需要の反映ということの財政措置ということでございます。
○宮本(岳)委員 もう一度、原自治財政局長の答弁に戻りますけれども、この答弁というのは二つの中身を言っております。住民サービスを向上するため、一つはね。二つは、財政需要を的確に反映した、こういう話であります。
この備前市がやろうとしている政策は、住民サービスを向上するためどころか、市民サービスの水準を切り下げて、そして、交付税さえ上がれば、報奨金のようにお金が入るので、そうなったら市民サービスもまたできるだろうという話であります。本末転倒だと言わなきゃならないと思うんですね。
現場では、この前、四万三千筆と申し上げましたが、四万五千に達する住民の署名が広がっていると直近の情報でお伺いをいたしました。
この備前市の政策のどこに住民サービス向上のための財政需要の的確な反映があるのか。報奨金ならともかく、自治財政局の説明が正しいのであれば、このような施策には交付税の増額の割増しの根拠が成り立たないと思います。
大臣、自治体とも日頃から情報交換しながらやってきておりますと先ほど来答弁がございました。国が自治体に指示や命令ができないことは分かっております。しかし、誤解があるとか趣旨に違いがあるときには、誤解を解く必要があります。その考え方は違いますよ、報奨金じゃないですよ、住民サービスを向上させるための財政需要が的確に積み上がらなくては出せませんよと国から説明、伝達するのは当然じゃありませんか、大臣。
○松本国務大臣 これまでも重ねて議論を積み重ねてきたであろうというふうに思いますが、これも既に委員、御理解をいただいておりますが、国と地方、対等で協力をする関係の中で、各自治体がお決めになる、お決めになられようとしていることに国がどのように関与するかということを踏まえて私も発言をさせていただいていると是非御理解をいただきたいというふうに思っております。
そして、先ほども本委員会の議論でも申し上げましたが、各自治体の施策が差別につながるようなものであってはならないというのは、私どもの考え方でもあります。
その上で、先ほど自治財政局長からも御答弁を申し上げましたが、今回のこの五百億円、各自治体にしっかり配らせていただくものと、一部、普及率を交付税に反映させるものとあるわけでありますけれども、これは財政需要を的確に反映をするというふうに申し上げてきております。
これまで予算を作成、予算は翌年度というんでしょうか、この四月から始まるものの予算に自治体が、基準財政需要額ですから、必要となるであろうお金はこういうことであろう、そして、今デジタルを進めていく中ではデジタル化にもこれだけのお金を積んでやっていただくことになるだろうという、それをまさに、的確の的は的でありますから、数字を正確にということと違って、的確に財政需要を反映した交付税の額を、地方財政計画で基準財政需要額を積み上げて、そしてそれを交付税、地方の財源や国の負担金との合計で地方財政計画という形にしている中での交付税であるというふうに理解をいただきたいわけでありますが、これは地方の自主財源でありまして、交付税は、こういうことに使われると恐らく、ものを積み上げるとこれだけお金が要るだろうからこのお金を用意をするというのが交付税である。
これは、釈迦に説法だというのはよく分かっておりますが、ですが、その使い道を我々が制限をかけるとか使途を指示をするというものではないということも御理解をいただきたいというふうに思っております。
その上で、普通交付税算定の反映の趣旨について御指摘がありましたが、これは自治体に対してこれまでも説明に努めてきたと考えておりますけれども、引き続き丁寧に説明をいたしたいと思います。
その上で、この趣旨として、今お話がありましたが、今回の交付率の普通交付税算定への反映は、政策誘導や報奨金や御褒美といった趣旨ではございません。
○宮本(岳)委員 そうです、そのことをちゃんと伝えていただきたいと言っているわけですね。
是非これは、市民の声も広がっております、議会でもこれから議論になるでしょう、しっかり市民の声も聞きながら、制度の趣旨ということを御理解いただきながら、私はこれはきっぱり改めるべきだというふうに考えております。
さて、次に、地方公務員の長時間労働について聞きたいと思います。
私は、二〇〇二年十一月、参議院議員時代に、地方公務員災害補償法審議の際に、和歌山県橋本市の辻田豊さんの過労自殺事案を取り上げました。過労とストレスで胃潰瘍を再発させているのに、休日出勤、残業も一月で百十六時間にも及んでおりました。二日欠勤の後、職場から出勤を促され、職場には行かず、自ら命を絶ったという痛ましい事案について、明らかに公務上の災害であるにもかかわらず、当初は公務災害認定すらされておりませんでした。
私は、この事案を通じて、過労死、過労自死というものは、労災認定や公務災害認定がなされなければ、遺族は永遠に自分を責め続けなければならないということを痛切に学んだわけであります。
そのことを如実に示すのが、辻田さんの息子さんが小学校一年生のときに作った「ぼくの夢」という詩であります。紹介したいと思います。
大きくなったら ぼくは 博士になりたい
そしてドラえもんに出てくるような
タイムマシンを 作る
ぼくは タイムマシンに乗って
お父さんの死んでしまう 前の日に行く
そして 仕事に 行ったらあかんて 言うんや
こういう詩なんですね。
この詩に込められた小学校一年生の息子さんの思いは、なぜ止められなかったのだろうということですね。
親や子、お連れ合いを過労死で失った遺族は、そばにいる自分が引き止められなかったから、愛情が足りなかったから愛する家族が亡くなってしまったのではないかと責め続けるわけであります。労災や公務災害に認定されて、自分のせいではなかったんだ、職場環境や労働条件のせいだったんだということになって初めて、その自責の念から解放されるわけですね。
この辻田さんは公務災害認定されました。しかし、何一つよかったというわけにはいきません。仕事で親や子、お連れ合いを殺されて、補償金をもらっても、決して癒やされることはありません。もう一度生き返らせて返してほしい、もう二度と自分たちの家庭のような悲劇を繰り返さないでほしいというのが御遺族の思いだ、願いだと思います。
まず、大臣、この話を聞いていただいて、こういった御遺族の思いは重く受け止めていただけると思うんですが、いかがでしょうか。
○松本国務大臣 おっしゃるように、どのような社会であっても、過労死等は本来あってはならないものだというふうに私も考えております。
地方公務員につきましては、過労死等を防止し、職員の健康を確保することが極めて重要であることから、時間外勤務の上限規制や、健康確保措置の制度を厳格に運用することが必要であると考えております。
総務省といたしましては、実態を把握しつつ、様々な機会を捉えて助言を行うとともに、先進事例の情報提供を行うなど、各地方公共団体における取組がしっかりと行われるように支援を行ってまいりたいと考えております。
御議論いただいております本法案などにもありますが、自治体のDX、デジタルトランスフォーメーションも、住民の利便性向上のみならず、職員の事務負担軽減にもつながるものとして進めてまいりました。そのような効果もしっかり上がるように私どもとしてもしてまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 参議院で質問した二〇〇二年から二十年が経過して、過労死、過労自殺は根絶されたのか、それを生むような現状は一掃されたのかが問題であります。
二〇一四年六月、全会一致で可決、成立し、同年十一月一日に施行された過労死等防止対策推進法に基づいて、二〇二一年七月三十日、過労死等の防止のための対策に関する大綱が定められております。
これは公務員部長でいいです。この大綱では、六ページで地方公務員の公務災害の状況について指摘するとともに、十六ページで地方公務員について総務省から継続的な助言を行うよう求めております。何と書いてありますか。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
その通知の中身というふうに認識をいたしましたのでそれをお答えしますが、総務省といたしましては、こういった過労死防止のための大綱等に基づきまして、地方公共団体に対しまして、勤務時間の適切な把握であるとか、勤務時間外の要因の整理、分析、検証などの制度を適切に運用して、時間外勤務縮減に向けた取組を図ってほしいといったことでありますとか、医師による面接指導の効果的な実施をしてほしいといったような制度の実効的な運用に向けた取組の推進、こういったものについて通知、助言してきたところでございます。
○宮本(岳)委員 おおむねそういう文言が書かれております。
これはもう確認するまでもないと思うんですが、大臣、当然、この指針、大綱について、守るということでよろしいですね。
○松本国務大臣 この大綱、令和三年七月三十日に閣議決定をされているというふうに承知をしていますので、政府としては、この決定をされた大綱にのっとって施策を進めていくものと理解しております。
○宮本(岳)委員 では、現在の地方公務員の勤務実態はどうか。
資料三は、昨年末に総務省が公表した資料でありまして、地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果であります。
上の表の青いところを見ていただきたい。令和三年、二〇二一年度で時間外勤務時間が月百時間以上となった地方公務員は〇・五%で六万八千百三十人。これは、前年度の〇・四%から一万八千三百七人も増加しております。四十五時間超百時間未満は五・一%で六十四万人。前年度の四・四%から大きく増加しております。これはもう明確に、過労死ラインを超える長時間労働が増加しているということなんですね。
そもそも、過労死ラインを超えることなどあってはならないことではないか。総務省は、過労死ラインを超える事態が増えていることをどのように認識しているのか。まさか、増えても仕方がないと思ってはいないと思うんですが、公務員部長、いかがですか。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
地方公務員につきましては、御承知のとおりかと思いますが、その業務の性質上、公務のために臨時に必要がある場合でありますとか、災害その他避けることができない場合に、上限時間を超えた時間外勤務を命ずることが可能な制度となってございます。
新型コロナウイルス感染症への対応などが求められる中で、やむを得ず上限時間を超えるような時間外勤務を命じざるを得ない、そういう場合もあるものと考えておりますが、このような場合についても、上限時間を超えるような時間外勤務を必要最小限にとどめるべく、時間外勤務の上限規制制度の実効的な運用が重要であると考えてございます。
○宮本(岳)委員 いや、もちろんそういう必要がある、住民のために様々な必要があるということは分かった上で言っているんですけれども、まさか、だから地方公務員が過労死や過労自殺しても構わないというようなことはいささかも考えていないですね。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
もちろん、そのようなことは考えてございません。先ほど申し上げたことは、そういったことができるだけ少なくなるように、必要最小限になるように、いろいろな形での工夫、仕事上の工夫であるとか業務運営のやり方であるとか、様々な自治体に工夫をお願いをしたいという趣旨で申し上げたものでございます。
○宮本(岳)委員 一時的になら仕方がないという認識が、この過労死という事態の背景にあるというふうに私は思うんですね。
たとえ一時的であったとしても、過労死ラインを超える長時間労働は許されない、根絶しなければならない、こういう立場に立ち切ってこそ、悲劇を二度と生まないという立場になるんですね。しかし、実際には、一時的どころか月百時間を超えるような残業が繰り返されているのが現場の実態であります。
さらに、この調査では一層深刻な状況が明らかになっております。
時間外勤務が月百時間を超えたり、数か月の平均で八十時間を超えるなど、まさに命の危険がある職員に対しては、医師による面接指導が義務づけられております。しかし、この勤務条件等に関する調査結果の長時間勤務者に対する医師による面接指導の状況を見ると、医師による面談指導が行われなかった職員が七割、受けていない方が七割いるわけですね。
その理由を聞くと、職員が業務多忙で面接時間を確保できなかったとか、職員に対し、面接指導を受けることを勧奨したが、職員の理解が得られなかった、これは御本人が嫌だと言った、こういう理由で、必須である医師の面談すら受けられていないわけですね。
なぜ、こんな事態になっているのか。職場の業務が多忙なら、あるいは本人が嫌がったら地方公務員が過労死に至っても仕方がないなんという話はなかろうと思うんですが、公務員部長、いかがですか。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
私どもも、今委員から御指摘がありましたような理由で本来実施されるべき面接指導が行われないというのは望ましくないと考えております。
このために、総務省としても、全国の中でいろいろな工夫、例えば、事前に問診票を配るとか、オンライン会議システムを活用して面接時間を短くするとか、様々な工夫をしている事例もございますので、そういったことも地方団体に積極的に情報提供するなどして、できるだけそういった面接指導をしっかり行ってほしいというお願いをしている、そういうことでございます。
○宮本(岳)委員 いや、工夫でいかないからこういう事態が起こっているんだと思うんですね。
過労状態にある人は、自分の健康状態に気づかない、気づけないケースが多いです。まさか奴隷労働じゃあるまいし、痛いとか苦しいとか死にそうだと訴える職員を医者に行かさずにというようなことは、それはないんでしょうよ。そんなことは今日の日本ではないと思います。違うんです。元気そうにしていて、大丈夫かと聞いたら大丈夫ですと答えている、その職員が、突如、脳や心臓の疾病で命を落とすというのが過労死のよくある現実なんですね。
だからこそ、月百時間とか数か月平均で八十時間超とかこういう外形的な基準を超えれば、本人が何と言おうが、元気そうに見えていようが、やはり医師の面談を、面接を受けさせなければならないというのが労働安全衛生の常識なんですね。それが、今おっしゃったような何か工夫で何ともならないから、受けることもできずにいるということなんですよ。
自治体には安全管理義務があるはずです。当然、業務に優先して医師面接を受けてもらわなければなりません。本人の対応だけでなく、その職場でなぜこの状態が放置されているのか。総務省は実態を把握しているんですか。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
個々の団体の個別の事情まで詳細に把握しているわけではございませんが、様々なヒアリング等の場でそういった実態については聞き取りをし、我々としても深刻に受け止め、様々な場でこういう医師面接等を行うようにお願いをしている、そういうことでございます。
○宮本(岳)委員 当然、そういう形でつかむ中では、人員配置が足りていない、そういう実態にも気づいておられるんですね。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
もちろん、人員配置等を理由としている団体もあろうかと思いますが、そういった団体におかれては定員管理の中で、地方公共団体において適切に定員管理の中で対応されているというふうに思います。
我々が伺っている中では、そういったことのほかに、例えば、残業時間でいえば、なかなか上司と部下の間のコミュニケーションがうまくいっていないとか、上司がきちんとした残業時間の管理ができていないとか、様々な理由も御指摘を受けておりますので、そういったことも含めて、全体として、勤務時間の縮減等についていろいろな形でのアドバイスを、助言をさせていただいているということでございます。
○宮本(岳)委員 いや、適切に対応できていないからこんな事態が残されているんじゃないですか。適切なわけないじゃないですか。そうでしょう。
総務省は、適正な配置と通知で述べておりますけれども、職場のやりくりで改善できるとの認識には大いに疑問があります。応援とか適正配置と言うけれども、労働実態を知らないのではないかと言わざるを得ません。
とりわけ、私が直接生々しい話を聞いてきた保健所の現場などでは、深刻な実態があることはもうお分かりのはずです。例えば、他の部署から応援が入っても、結局保健師でなければできないコアな仕事はカバーできないとか、それをやってもらったとしても、結局もう一回保健師がチェックせざるを得ず二度手間になっただけとか、そういう実態もいっぱいありますよ。
また、急遽増員しても、なかなかそう簡単な問題じゃないんです。
私は、昨年入職した新人保健師の話を聞いてまいりました。
本来の研修は全て省略、入職初日から保健所に配置された。第四波の真っただ中で、保健所はほとんど戦場のような状態で、先輩全員が電話対応中で、ほかに鳴っている電話を取れる職員もいなくて、コール音がずっと鳴り続けていた。取りあえず電話を取らなきゃと思って取ったら、物すごいけんまくで、何で電話を取らへんねんとどなられた。これが自分の仕事の第一日目だったと。朝出勤して、お昼を食べる時間もなく、気がついたら帰りの電車がなくなって、タクシーで帰って、それが六日連続。月の休みも一か月に三日ぐらいしかないこともあって、家族や友人に相談する時間も気力もない。気がついたらマンションのベランダに思わず足をかけていたという、聞くに堪えない、そんな話でありました。
春に入職した新人ですから、それこそ大学卒、二十二歳の女性でありましたけれども、それでも保健所を辞めずに勤め続けてきたのは、助けてほしい、コロナが心配という声を毎日聞いて、介護とか育児もあるのに自分を犠牲にしながら走り続けている先輩を見ていると私も頑張らなきゃいけないと踏ん張っていると、本当に泣きながら、私の目の前で語られました。
住民の命を守るべき自治体職員、保健師などが逆に、その職場体制等、労働条件のために命を絶つなどということは絶対にあってはならない。そういう認識はありますか、公務員部長。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
私どもも、そのようなことがあってはならないと考えております。
保健師につきましては、委員から先ほど御指摘がありましたような他部署からの応援ということだけではなくて、定員の増員といったことについても、地方財政計画の中で措置人員を増やすなどの取組を行っておりまして、私どもとしても、保健所の業務改革、増員等については配慮をし、できる限りのことをしていきたいと考えてございます。
○宮本(岳)委員 確かに保健所の現場、増やし始めた。私も、金子総務大臣のときに質問して、増やしますという答弁をいただいたのを覚えております。
でも、本当に間尺に合っていない。今八波ですけれども、もう楽々になっているかといったら、そんなこと、全然なっていないわけですね。まあ、少しは増えていますから、このときよりは少し増えているというだけのことでありまして。
それで、こういう実態の背景に何があるのかということをやはり指摘せざるを得ないわけですよ。
自治体の職員は、通常も時間外がないわけではありませんが、しかし、一たび災害や新型コロナのような感染症の拡大などが起これば、尋常ではない長時間労働を強いられる。そもそも、職員の過重労働を引き起こす背景に、職員の数が足りていないという認識があるのかということなんですね。
自治体が判断して定数削減してきたように言うんですけれども、あなた方が自治体に対して集中改革プランという形で自治体職員の定数削減を迫ってきたことは、紛れもない事実だと思います。
これは公務員部長に改めて聞きますが、地方公共団体の集中改革プランにおける定数管理の状況、自治体にどのような目標を持たせ、結果、どのような削減が行われたのか、これは率も含めて答弁していただけますか。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
平成十七年度からの五年間、国、地方を通じた効率的で質の高い行政の実現を図るという観点から、行革推進法などに基づきまして、各地方公共団体に対して、具体的な定員削減目標を設定した上で、集中改革プランによる取組を要請をしたところでございます。
その際、骨太二〇〇六において、五年間で国家公務員の定員純減率が五・七%であることを踏まえて、これと同程度の定員純減を行うこととされたことを踏まえまして、各団体が定めた目標の平均は当時六・四%であり、最終的な削減実績は七・五%でございます。
○宮本(岳)委員 今部長がおっしゃいましたね。国は五年間でマイナス五・七%というものでありました。国家公務員の削減目標と同程度の職員数の純減、こういう話を受けて、今言ったように六・四%という目標を持ち、更にその目標を一%上回る七・五%の減、こういうことになったんですね。
しかし、国家公務員の方は、マイナス五・七%ですと言いましたが、結論はマイナス五・三で終わっているんですね。それは、幾らでも減らせるというものじゃないんですよ。私は、国家公務員を減らし足らぬと言っているんじゃないですよ。公的な仕事というのは守らなきゃならないことがあるんですよ。国だって、そう言いながら、何でもかんでも切ってしまえと言ったわけじゃないんですよ。だから、自分たちは、国の仕事はやはりちゃんと守るべきは守るということをやったので、五・七といったって、そこまでいっていないんですけれども、自治体の方は、そう言われて六・四と思ったら七・五まで削っちゃったから、いざ事が起こったらこんなことが起こるんじゃないですか。
あなた方が減らし過ぎた。私はそう思いますけれども、その自覚はありますか。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
地方公共団体の定員につきましては、各地方公共団体におきまして、行政の合理化、能率化を図るとともに、行政課題に的確に対応できるよう、地域の状況を踏まえて、適正な定員管理に努めていただく、こういう考え方でございます。
当時、行革推進法に基づいて集中改革プランの策定を要請いたしましたけれども、これは、厳しい財政状況の中で公共サービスを提供していくためにも、簡素で効率的な行政の実現に向けて、各団体において取り組んでいただいたものでございます。
各団体において大変な御努力をいただいたものと認識をしております。
○宮本(岳)委員 大変な努力、それはしたんでしょう、その結果こういう事態になっているわけですね。そんなに人を減らせば、人が足りなくなり、長時間勤務が増えることは明らかです。
名古屋市職員労働組合から届いた生々しい実態を紹介したい。
名古屋では、市長部局において、年間一千時間を超えて残業を強いられた職員が五十八人発生、最長者は年間千七百三十八時間の超過勤務だと。ただ、これは申請ベースで、更に実態はもっと多いのではないかという報告が出ております。千七百三十八時間というこの超過勤務の規模は、二人分働いているという異常事態ですよ。一千時間に至らないとはいえ、年七百二十時間の超過勤務を強いられた職員が二百八十六人、月百時間を超えて超過勤務した職員が四百三十四名発生しているというレポートがあります。月百時間というのは、一か月で、先ほど申し上げた産業医の面接をしなきゃならないんですね。本当に完全に過労死水準を超えているんですよ。
一方で、名古屋市は、二〇一四年から一六年度にかけて職員は三百人の減、二〇一七年から一九年度に百二十三名の減、そして、今なお定数削減を進めておりまして、二〇二〇から二二年に百六名の減というのが方針なんです。まだ減らしているんですよ。これは、長時間労働を前提とした定数削減にほかなりません。こんなことはあってはならないと私は思いますけれども、いかがですか、公務員部長。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
名古屋市の定員管理と申しますか超過勤務の実態については、私、個別には承知をしておりませんので細かいコメントはできませんけれども、もしそのような残業時間の実態があるとすれば、やはり業務の見直しであるとか、あるいは職員に対する残業時間の管理であるとか、要因分析をしっかりとした上で、その対応策を検討すべきものと考えております。
○宮本(岳)委員 是非つかんでくださいね、実態を。
これは、自治体の判断で済むような問題ではありません。
もう時間がなくなりましたからまとめて聞きますが、資料四を見ていただきたい。地方公務員の長期病休者の状況についての、これは総務省提出資料であります。
上のグラフによると、地方公務員の長期病休者数は二〇一三年頃から幾何級数的に増えておりますけれども、下のグラフの疾病分類別を見ると、何が増えているか、これはもう一目で分かることになっています。
もう一つ、最後の資料五を見ていただきたい。これは、自治労連という労働組合が作った資料です。
地方公務員が減らされる中で、それと見事に相関関係を見せて、メンタル疾患による長期休職者が増えております。地方公務員削減とメンタル疾患の激増の間には明確な相関関係があると私は思うんですが、公務員部長、いかがですか。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
委員から提出のありました資料を拝見をさせていただきましたが、現時点、公務員数の推移とメンタル疾患による長期病休者の推移とに明確な相関関係があるかどうかについては、必ずしも判断できていないところでございます。
○宮本(岳)委員 しかし、明確にXの形になっているじゃないですか。
それなら、自らちゃんと調査をして、解決してくださいよ。相関関係がないのなら、一体何と相関関係があるのか、どうすれば減るのかということをやってもらわなきゃならない。自治体に過労死防止を呼びかけるのであれば、現状は人員が全く足りていないという認識に立てるかどうかが鍵を握っています。長時間労働の是正には、減らし過ぎた体制の改善が必要です。
最後に、過労死で一人の地方公務員の命も奪わせないという総務大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わります。
○松本国務大臣 委員がお示しいただいた資料にもありますように、ここ数年は、必要な人員を確保するという意味で、一般職員の職員数も含めて増としているところでありまして、令和五年度も、地方公共団体の一般職員の職員数が増加している実態などを勘案して、職員数全体で二千六百十八人の増としたところであります。
ここ数年は、このグラフでも御覧いただけるように、少し職員の数が増えてきているわけでありますが、残念ながら、今お話がありましたように、メンタルで休む職員は、逆に、引き続き増加をしているということでありますので、私どもも必要な施策は展開をしなければいけないということで、今申しましたように、人員の増も、そういった観点も含めて、ここにもおいでですけれども、昨年来から金子前大臣の下で行われてきたものだと理解をしておりますが、冒頭申しましたように、どのような社会であっても過労死は本来あってはならないということは重ねて申し上げて、決意に代えさせていただきたいと思います。
○宮本(岳)委員 是非頑張ってください。
終わります。