市民の声反映させよ
衆院総務委 宮本岳志氏、NHK予算ただす
日本共産党の宮本岳志議員は16日の衆院総務委員会で、2023年度のNHK予算の承認をめぐり稲葉延雄会長の考えをただしました。予算承認については、自主自律を順守すべき経営委員会が個別番組に干渉した行為について無反省であるとして反対しました。
NHKは今年末で訪問による営業を終わらせる方針です。宮本氏は、全日本放送受信料労働組合からの聞き取りを受け「営業とは契約者を増やせばいいのではない。NHKに市民の声を集め、反映させることで信頼が回復する」と指摘。稲葉氏は「ご指摘の通り。受信料徴収の過程で視聴者の皆さまの考え、希望を聞くことが大事な営業の役割」との認識を示しました。
来年度から、受信契約しない人への「割増金」制度が始まります。宮本氏は「国民を脅すようなやり方」と反発する視聴者の声を紹介し「国民の理解が広がると思うのか」とただしました。稲葉氏は「真にやむを得ない場合にのみ徴収を行う。丁寧な周知・広報が必要だ」とのべました。
宮本氏はまた、放送の政治的公平性を「一番組のみでも判断できる」とした政府統一見解を繰り返す松本剛明総務相が、NHK予算に対する意見で「政治的公平」を含む「法令等の順守状況」の公表を求めているとして、「こういう意見を総務相が付けること自身が問題だ。NHKへの圧力であり、介入になりかねない」と厳しく批判しました。
予算は共産党以外の賛成多数で委員会で承認されました。
(しんぶん赤旗 2023年3月18日)
動画 https://youtu.be/a_1hhB3uZdg
配布資料 20230316総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
NHKにとっても極めて重大な、放送法四条一項に定める政治的公平の解釈をめぐる行政文書の問題について、まず、総務省に確認をいたします。
三月の二日に小西洋之参議院議員が公開した政治的公平の解釈についての一連の文書について、総務省に文書として保存されているものと同一か精査を行った結果、小西議員が公開した文書は全て総務省の行政文書であることが確認をされました。
そこで、これは情報流通行政局長に聞きますけれども、この文書は、行政文書ファイルに保存されていたのかどうか、行政文書ファイル管理簿には記載されていたのかどうか、どのような形で保管されていたのか、お答えいただけますか。
○小笠原政府参考人 お答えいたします。
文書管理共有フォルダ及び行政文書管理簿、双方のお尋ねでございますので、まず第一に、三月七日、総務省が行政文書として公表した文書は、総務省において電子的に保存されていたものでございます。そして、総務省が行政文書というふうに認めさせていただいた文書につきましては、確認した結果、行政文書ファイル管理簿への記載が行われておりませんでした。
このように、行政文書の管理が適切に行われていなかったことは大変申し訳なく思っております。法令にのっとり、速やかに分類、整理を行い、行政文書ファイル管理簿への記載をすることとしております。
○宮本(岳)委員 行政文書管理ファイルに記載されていなかったということが確認をされました。
ただ、これはもちろん紛れもない総務省の保管する行政文書でありまして、七十八ページということで公表されていますけれども、これが全てであるというふうに報告を受けております。
二〇一五年五月十二日の参議院総務委員会で当時の高市総務大臣が、この放送法の政治的公平性について、自民党の藤川政人議員に対して、従来は、一つの番組だけで判断するのではなく放送事業者が放送する番組全体を見て判断するというのが基本的な判断であったものを、極端な場合には、一つの番組のみでも、一般論として政治的に公平であることを確保しているとは認められないと答弁したことが、今改めて問題になっているわけですね。先ほど奥野総一郎委員の方からも、るるお話がありました。
松本大臣は、この間の国会審議で、補充的説明であって昭和三十九年以来の政府解釈を変えたものではない、これを繰り返しておられます。
その昭和三十九年四月二十八日参議院逓信委員会における郵政省宮川岸雄電波監理局長答弁、これが、番組全体でなく一つの番組だけで公平であるかどうかを判断してもよい根拠となると。こう松本大臣はお考えなんですか。
○松本国務大臣 まず、放送法につきましては、当委員会でも、また、国会における他の場所でも、本年もでありますが、これまでも累次の質疑が行われてきたというふうに承知をしております。
委員が御指摘いただいた昭和三十九年四月二十八日における答弁もそうでございますが、それも含めて、これまでの累次の答弁は、放送法の四条の大切な解釈を変えたものではなく、その時々の質問にお答えをして御答弁を申し上げたものであるというふうに考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 資料一を見ていただきたい。その会議録ですよね。
これはちゃんと線を引いておきましたけれども、確かに、太い赤線部、「ある一つの番組が、極端な場合を除きまして、」、太い部分、これはございます。しかし、出てくるのは一度だけ、ここで出てくるだけでありまして、個々の番組に対する判断というものは非常に難しい問題だと。一つのものにつきまして、客観的に正しいという結論を与えることはなかなか難しい問題、難しいと、一つの番組で判断するのは。そう繰り返した上で、個々の番組でやろうと思えば、常にテレビ番組あるいは放送番組の内容を監視して見ていくということが伴わなければできないんだ、だから番組全体でやらなければならない、考えていかなければならないと答弁しているんですね。
ここの答弁は、これは間違いないですね、大臣。見ていただきましたか。
○松本国務大臣 先ほど御答弁を申し上げたとおりでございまして、私、先ほども奥野委員との質疑でも出てまいりましたが、これまでも、この四条に係る政治的公平性の議論につきまして、具体的に、これに関係する編集等に関して、地上波についての意見、行政指導があったというふうに御答弁を申し上げましたが、放送法四条の規定でございますので、これまでも、文理上これは法規範性を有するというふうに御答弁を申し上げているところでございますが、実際に、この違反として放送法における業務停止や電波法における停波の処分が行われたことは、私としてはないと承知をしているところでございます。
○宮本(岳)委員 そんな議論、していないですよ。法規範性をここで議論しようというつもりもないですし、それで停波されたかどうかという事実を聞いているわけじゃないんです。
この答弁は三十九年の答弁ですね、このときの電波監理局長答弁というものは、なるほど、「ある一つの番組が、極端な場合を除きまして、」という枕言葉がついていますけれども、つまり、おっしゃっていることは、一つの番組で判断することは難しいんだ、そして、一つの番組で判断しようと思えば、全ての番組を常時監視するようなことになるのでやるべきでないという答弁なんですね。
ところが、高市総務大臣の二〇一五年五月十二日の参議院総務委員会における藤川政人議員への答弁では、一つの番組ではなく放送事業者の番組全体を見て判断するとされてきたと聞いているなどと言いながら、初めて、一つの番組のみでも、政治的に公平であることを確保しているとは認められない二つの場合というのを例示したわけですよね。二つがどういう場合かというのは、この間、繰り返し議論されてきたとおりであります。
これを受けて、藤川政人議員は、一番組だけでも政治的公平に反すると言える場合があるという御答弁をいただいたと。つまり、それまではそういう答弁は余りなかったものを、ここで、一番組だけでも政治的公平に反すると言える場合があるという御答弁をいただいた、その点についても放送事業者を十分御指導いただきたいとまで、この五月の議論では述べているわけですよね。
だからこそ、今回公表された行政文書、資料二につけました。二〇一五年二月十八日、官邸で行われた、これは安藤友裕情報流通行政局長による山田総理秘書官へのレク結果、未定稿という文書をつけておきました。取扱厳重注意という赤い印が押してありますけれども。山田秘書官も、「政府がこんなことしてどうするつもりなのか。礒崎補佐官はそれを狙っているんだろうが、どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか。」とまで述べております。
この丸がついているのは、全部、山田総理秘書官のお言葉なんですね。それに対して、バツのついているのが情報流通局長、当時の安藤さんの発言ですけれども、一体この情報流通局長は何と語ったか。現情報流通行政局長にひとつ、このバツのところに何と書いてあるか、お読みいただけますか。
○小笠原政府参考人 お答え申し上げます。
当該文書については、ちょっと、関係者の聞き取りにより、その正確性は十分でないというふうに考えているという前提で読ませていただきますが、「法制局には当たっていない。礒崎補佐官も現行の「番組全体で」とする解釈を変更するものではなく、あくまで「補充的な説明」と位置づけ。国会で上手に質問されてしまったから答弁せざるをえない形を取ることとしている。」以上でございます。
○宮本(岳)委員 随分早口で読まれましたけれども。
ここで、バツのところに書かれていることは、「礒崎補佐官も現行の「番組全体で」とする解釈を変更するものではなく、あくまで「補充的な説明」と位置づけ。」、ここに持っていこうと。「国会で上手に質問されてしまったから答弁せざるをえない形を取ることとしている。」、こういう話でまとまっているということを、これは安藤さんがおっしゃっているわけですね。
今、松本大臣が繰り返している、変更していない、いろいろあっても、変更していないから問題ないんだ、この行きがかりについては、文書の正確性その他まだまだいろいろな、正確かどうかは調査が必要だと。
しかし、変更していないんだと言って、それ以上もう、これがどうであったとしても議論する必要はないという物事の落としどころを決めようというのは、まさにここで既に安藤さんがおっしゃっていることじゃないんですかね。大臣の答弁とこれとは符合していると思うんですが、違いますか。
○松本国務大臣 私どもは答弁する立場でございますので、国会での答弁がどなたが上手かどうかということについてはコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、御質問をいただいたことに真摯にお答えするのが私どもの使命であると同時に、答弁については、政府として責任を持って答弁をさせていただくということではないかというふうに思っておりますが、当然、答弁の御趣旨に対して、答弁に、的確にお答えをすることが私どもの使命でございます。
その上で、この放送法の解釈については、改めて平成二十八年にも政府統一見解を出させていただいているのも、大変重要な表現の自由、知る権利に係ることであるからこそ、政府の統一見解として皆様に分かりやすく政府の考え方を御説明を申し上げる必要があると思っておりまして、その意味では、番組全体を見て判断するとしても、番組全体は一つ一つの番組の集合体であり、一つ一つの番組を見て全体を判断するというような形で御説明をさせていただいているというふうに理解をしております。
○宮本(岳)委員 いや、政府統一見解がその後出たことなんか分かっているんですよ。分かっているんです。
私は、この昭和三十九年の答弁で既にある、今お話をした局長答弁ですね、このときの局長答弁、これのままなんだ、このときから既に一つの番組で判断できると言っているんだという話が、全然違う、このときはそんなことは言っていないと。枕には置いていますけれどもね。
しかし、それが、礒崎さんその他が様々動きをした結果、その政府統一見解も含めて、一つの番組でも大丈夫だということに変えられたことは明瞭だ、なぜ変わったのかを明らかにするのが当委員会のやはり責務だということを申し上げたいんですが、今日はそのことをやる場ではありません。追ってやりましょう。追って、そのことについて徹底的に総務委員会で解明する必要があるということを今日のところは申し上げておきたいと思います。
そこで、委員長にお願いがあります。
改めて、本件の真相解明のために、それぞれ当時の、礒崎陽輔総理補佐官、それから安藤友裕情報流通行政局長、そして山田真貴子首相秘書官、当委員会への参考人招致を求めたいと思いますが、お取り計らいを願います。
○浮島委員長 後刻、理事会で協議いたします。
○宮本(岳)委員 さて、そこで、NHKの会長にお伺いをいたしたい。
稲葉会長は、先日の当委員会でも、日銀時代に日銀法の改正に携わった際に放送法に接したことを振り返って、その第一条に、放送の目的として、放送の効用を国民にあまねく普及し、表現の自由を確保し、健全な民主主義の発展に資すると書かれていたことに感銘を受けた、こうおっしゃいました。今、NHK会長となって、えにしを感じるとともに、大変名誉に感じていると述べられました。
まず、会長の自主自律、公平公正な立場を堅持する御決意をお伺いしたいと思います。
○稲葉参考人 今ほど委員がおっしゃったように、私は、日銀時代に放送法に接する機会がありまして、放送法第一条に大変感銘を受けました。
第一条には、放送の目的として、放送の効用を国民にあまねく普及し、表現の自由を確保し、健全な民主主義の発達に資するということがうたわれてございます。こうした放送の役割をしっかり果たすために、公平公正で確かな情報を間断なくお届けして、視聴者の皆様の日々の判断のよりどころになりたいというふうに強く思っております。
NHKは、放送法にのっとりまして、事実に基づいて、公平公正、不偏不党、何人からも規律されることなく、自らを律して放送に当たってございます。政治的公平性につきましても、こうした自律的な取組の中でしっかり確保していくという決意でございます。
○宮本(岳)委員 大変大事な御決意だと思います。
しかし、残念ながら、この間、NHKはこの点で重大な問題が発生してまいりました。NHK予算の承認案件に、我が党は、従来は、受信料負担増など国民負担増や経理などの不祥事があった場合、あるいは政治家の圧力に屈した場合や会長が不偏不党を脅かす発言を行った場合などを除き、基本的には大半に賛成をしてまいりました。しかし、二〇二〇年、二一年、二二年と三年連続で反対の態度を取ってきたのは、かんぽ生命の不正販売を取り上げた「クローズアップ現代+」をめぐって、当時の日本郵政の鈴木副社長からの抗議を受けて、予定した第二弾の放送番組を取りやめ、先送りし、さらには、経営委員会がNHK会長に厳重注意を行い、事実上、番組編集に圧力をかけたからであります。
この経営委員会の行為は、放送番組は何人からも干渉されないとする放送法三条に違反し、公共放送たるNHKの自主自律を脅かすものであり、断じて許されるものではありません。
しかも、経営委員会は、国民への説明責任を放棄し続け、先ほども奥野委員からも指摘がありました、今なお厳重注意をめぐる議事録の公開に背を向け続けております。そのような下で、その執行部が編成し、経営委員会が議決した予算には、残念ながら今年も承認を与えることはできません。
しかし、一番あってはならない、放送番組への政治など外部からの介入が起こるときには、かんぽ生命不正販売問題の「クローズアップ現代+」といい、二〇〇一年に発生した「ETV2001 問われる戦時性暴力」番組といい、結局、一つの番組に注文がつき、様々な形で圧力を受けているわけですね。だから、番組全体ではなく、一つの番組だけでも文句がつけられるとなれば、山田真貴子首相秘書官が指摘したように、それこそ放送事業者にとっては萎縮しかねないということになるんだと思うんです。
個々の番組に次々と意見をつけるということがやられたら、やはり放送事業者にとっては大変つらい。これは、稲葉会長、そういうふうにお感じになりませんかね。
○稲葉参考人 NHKには、視聴者を始め様々な方面から、様々な御意見を日々頂戴してございます。しかし、そうした中で、NHKは、不偏不党の立場を守りながら、公平公正、自主自律を貫いて放送に当たってきておりまして、今後もこの姿勢に変わりはありません。
政治的公平性について、NHKは、自律的な取組の中で確保していく決意でございます。
○宮本(岳)委員 その立場をしっかり貫いていただきたいんですけれども、放送への信頼を取り戻すには、放送法の本来の理念に基づいた、NHK自身の自律的な努力こそが求められていると思います。
ところが、今回の総務大臣意見の「国内放送番組の充実」を見ると、二〇二一年十二月二十六日に放送されたBS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」において、自らの番組基準に抵触する放送が行われた件を取り上げて、事もあろうに、再発防止に向けた取組を徹底することが求められる、まあ、それはいいんでしょうが、今後、定期的に、本件に関連する法令等の遵守状況や再発防止策の取組状況を取りまとめた上で公表することが求められる、こう総務大臣は意見をつけておられます。
ここに、法令という言葉を使っておられるんですね。この法令の中には、この意見の中に出てくる法令の遵守状況というものは、まさに今議論になっている放送法、とりわけ、今一番の議論になっている放送法四条も入っているわけですね、大臣。
○松本国務大臣 今御指摘の件でございますが、御指摘のNHKの放送した番組については、昨年二月に、NHK自らが放送ガイドラインを逸脱していたことは明らかと公表したことにより、放送法第五条第一項の規定に抵触するものと認められた事案であるというふうに承知をいたしております。これを踏まえて、総務大臣意見に記載した御指摘の法令等の遵守状況の法令等は、放送法及びNHKが自ら定める番組基準などを指しております。
放送法四条ということでございますが、放送法でございますので、放送法四条を始めとする放送番組の編集に関する規定も含まれるというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 それなんですよ、私が言いたいのは。
NHKが自ら様々な形でこの問題を検証したり発表するのは、もちろん結構です。それから、この件が五条に関わるものであったことも、それは今おっしゃったとおりでしょうけれども、しかし、事もあろうに、それについてつけた意見の中で法令等と述べて、この法令には放送法四条も入る、今議論になっているやつも入ると。まさに一番組でも文句がつけられるという、私は変えたと思いますが、あなた方が変えていないというこの解釈に関わることも入ると。
こういう意見を総務大臣がつけること自身が、私は、問題だ、NHKに対する圧力であり、介入にもなりかねないというふうに指摘をせざるを得ないわけであります。
また、大臣意見には、「受信料の適正かつ公平な負担の徹底に向けた取組等」として、冒頭に、受信料の適正かつ公平な負担の徹底に向けて、未契約者及び未払い者対策について現状分析と課題の整理を十分行った上で、民事手続の適切な活用などにより、こう書いてございます。大臣意見で民事手続の適切な活用などと触れたのは、かつて何回ございましたか。
○小笠原政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘の民事手続の適切な活用につきましては、過去、平成二十年度及び二十一年度の収支予算に付した総務大臣の意見においても記載をしているところでございます。
○宮本(岳)委員 私のところに来た総務省の職員は、支払い率が七九%になることが見込まれているということに強い危機感を表明しておりました。今の予算ですよ、このかかっている大臣意見のついた予算について。今答弁にあったように、以前に、総務大臣意見がこの民事手続に触れた二〇〇八年、二〇〇九年というのも、受信料の未払いが激増したときのことで、強い危機感が表明されたときでありました。
では、改めてNHKに聞くんですけれども、NHKが本予算において支払い率の低下、受信契約率の低下を想定せざるを得ないのはなぜなのか、そして、その理由は何だと考えておりますか。
○山名参考人 お答えいたします。
支払い率は、受信料の公平負担の状況を表す指標として重要なものでありまして、向上させていく必要があると考えております。
ただ、来年度につきましては、訪問だけに頼らない営業活動への転換の途上であることや、学生免除の拡大の影響もありまして、支払い率は七九%と見込んでおります。
支払い率を向上させていくため、現在行っている、インターネットを通じた視聴者の皆様との接点の拡大や、特別あて所配達郵便の活用などで直接間接のコミュニケーションを図り、契約していただけるよう取り組んでまいります。
○宮本(岳)委員 理由は、やはり直接間接のコミュニケーションと。間接とも入れられましたけれども、コミュニケーションを図らないとやはり進まないんですよ。国民の理解が広がらないと進まないことは明瞭だと思います。つまり、受信料の意義、NHKの在り方に国民的な支持と理解を広げることが何よりも大事なんですね。
ところが、制度を理解していない人に強制的に迫る、例えば民事手続をやるとかということをやれば、理解が進むどころか、更に誤解と反感が広がりかねないと私は思います。
国民の支持を失った結果、新規契約率や受信料収納率が下がり、収入が減る中でコストカットせざるを得なくなる。受信料を下げると言うが、それが一層公共放送としての意義や魅力を失わせる結果となって更に収入が減るという悪循環に陥ったらまずいと思うんですね。
一昨日の質疑でも、稲葉会長は、縮小再生産になっては意味がない、こう答弁をされました。まさに縮小再生産は公共放送NHKにとって死滅への道だと私は思いますが、稲葉会長のお考えをお伺いしたい。
○稲葉参考人 ただいま委員が御指摘になりましたように、私が申し上げたかったのは、受信料収入の値下げによって名目上の事業規模が縮小することで職員の士気が下がり、結果的によいコンテンツを作れなくなってしまうことがあってはならないということでございます。
先日もお答えしたとおり、この点につきましては、例えばデジタルテクノロジーの更なる活用など様々な工夫をして、多様で質の高いコンテンツを作り続け、結果として、視聴者・国民の皆様にNHKの価値を感じていただくと同時に、受信料制度の意義を丁寧に説明をすることで納得していただく、そして受信料をお支払いいただく、そういう流れにすることが必要だというふうに考えてございます。
○宮本(岳)委員 NHKに対して民事手続の適切な活用などということをけしかける総務大臣も総務大臣と言わなければなりませんが、しかし、NHK自身の方針にも大きな問題があります。四月から実施する割増金制度ですね。資料三から五は、割増金について視聴者・国民から寄せられている意見です。
資料三。割増し料金を払いたくないから契約するというのは脅されて契約するに等しく、NHKが国民・視聴者の皆様に丁寧な説明を行い、十分な理解をいただいた上で受信契約を結んでいただくことが重要とする答弁に矛盾しており、強く反対する、四十代男性ですね。
受信料の全額に対して二倍の割増金を設定することに反対です、現在のNHKの番組には公共放送と呼べないものが多くを占めており、その費用全てを割増金の対象とすることは視聴者に著しい不利益が生じます。
資料五。受信料割増金について国民を脅すようなやり方で強制的に受信料を取って理解してもらえると思うのですか、むしろ、更に反発を受けるということに気づいてほしいです、三十代女性。
会長は、割増し料金によっては受信料制度への国民の理解が広がるわけがない、このことは、どうですか、お気づきになりませんか、会長。
○稲葉参考人 割増金制度は、受信料の適正かつ公正な負担を図るために放送法でもって規定されたものというふうに認識してございます。
その際、昨年の法改正に当たっても附帯決議をいただいておりまして、「真にやむを得ない場合にのみ割増金の徴収を行うこと。」とされておりまして、やはり、制度の趣旨やどのような場合に割増金の対象となるかなど、視聴者の皆様に丁寧に周知広報することが必要だというふうに考えてございます。
実際、割増金制度の導入後も、NHKの価値や受信料制度の意義を御理解いただく、納得して契約のお手続やお支払いをいただくというこれまでの方針に変わりはなく、この方針の下で、更に受信料制度の理解を広げていくということが大事ではないかと考えております。
○宮本(岳)委員 おっしゃるとおり、放送法改正によって、これはNHKにそういう制度が入れられた。だから、NHKだけの責任じゃないんです。
私たちは、今回、これが具体化されていることを、当然、本承認案に対する反対の理由にしておりますけれども、それは、この法改正そのものに原因があるということは申し上げておきたいと思います。
二〇二一年から二三年の経営計画では、訪問によらない営業へのかじを切って、クレームが多かった法人委託だけでなく、地域スタッフによる営業も二三年度で終了するとされております。総務大臣意見でも、訪問によらない営業への転換に伴う財政面や事業運営面に与える効果の検証を求めております。NHKではどのような検証をしたのか、契約数の増減、併せてお示しいただけますか。
○山名参考人 お答えいたします。
これまでは巡回型で何度も訪問する営業を展開してまいりましたが、営業経費の高止まりや訪問員へのクレーム等の課題が指摘されてまいりました。そのため、訪問だけに頼らない営業活動に転換いたしまして、NHKの公共的価値を理解していただいて、納得して受信料をお支払いいただくための取組を進めているところでございます。
こうした取組によりまして、二〇二三年度の営業経費率については、前年に続き一〇%を下回る計画であります。苦情の件数も、今年度はコロナ禍前の十分の一以下に減少しております。今年度の契約数につきましては、十万件の減少の計画に対しまして、四十三万件の減少と今のところ見込んでおります。
新しい取組を定着させていくには一定の時間がかかると考えておりますが、いち早く軌道に乗せて、来年度の事業計画の達成に努めてまいりたいと思っております。
○宮本(岳)委員 私は、この間、NHKから受信料契約等の業務を委託する全日本放送受信料労働組合、全受労の皆さんからお話をお伺いいたしました。訪問によらない営業で契約取次ぎが激減し、受信料収入が揺らぐのではとの懸念を示されておりました。この方々は、毎日地域を歩く中で、NHKに対する市民の受け止めや、その変化を日々実感しておられます。不祥事が相次いだ時期は、まさにNHKへの不信、不満を真正面から受け止めて、信頼回復の最前線に立ってこられたわけですね。
営業とは、単に契約者を増やせばいいというものではないと思います。NHKに対する市民の声を集めて、それがNHKに反映されることで、信頼の回復を促す重要な役割があるのではないかと私は思いますけれども、会長、いかがでございましょうか。
○稲葉参考人 まさに委員御指摘のとおり、営業活動というのは、単に受信料の徴収を増やすということだけに集中するのではなく、その過程で、視聴者の皆様がどのようなお考えを持っているのか、どのような御希望を持っているのか、そういうコミュニケーションの一つのツールとして役立てていくということが大事な営業の役割ではないかというふうに思ってございます。
○宮本(岳)委員 全受労の皆さんからは、新たな雇用問題も起こっているとお聞きをいたしました。
NHKは、二〇二三年度をもって訪問による営業がなくなるため、営業に当たっていた地域スタッフに対し、受信料未納者の集金を担う仕事に当たってもらうとし、現在その任に当たっているメイトさんと呼ばれる方、この方の契約を全て二三年度で終了するということであります。
資料六を見ていただきたい。新しい個人委託制度における委託費モデルという、これはNHKから提出を受けた文書であります。
新しい委託契約で収入が激減するのは一目瞭然です。上段のパターンA、年収四百四十万円、これがほぼ現状レベルと聞いておりますけれども、パターンB、年収三百六十万円、パターンCとなると、年収二百八十万円となっております。こういう委託費モデルで今検討していることは、NHK、事実ですね。
○山名参考人 お答えいたします。
現行の地域スタッフ制度は二〇二三年度末で終了いたしまして、二〇二四年度より新しい個人委託制度を開始することを計画しておりまして、地域スタッフの皆様には、こうした方針や新しい業務内容等について丁寧に説明をしているところでございます。
○宮本(岳)委員 時間が参りましたから、最後に一つだけ会長に。
こういう労使の問題をここで議論するつもりはございません。
○浮島委員長 宮本君に申し上げます。
申合せの時間が経過しておりますので、おまとめください。
○宮本(岳)委員 はい。
最後に会長に、NHKに働く方々の労働条件や賃金についても、しっかりと守り、引き上げていく必要があると考えますが、その思いをお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
○稲葉参考人 賃上げについてのお尋ねがございました。
物価高騰が続いている中で、企業の賃上げに関して、ベアとか、あるいは一時金とか、毎月の手当の支給の中でいろいろ工夫するといった、民間では各社、各業界で様々な対応を取っていることをよく承知してございます。
職員の給与につきましては、NHKは、公共放送の立場として、民間の対応状況や、それから組合の要求などをよく踏まえて、また、NHKの財務の状況にも鑑みて答えを出していきたいというふうに考えております。
また、子会社等についても、NHK本体の対応を踏まえつつ、子会社等のそれぞれの財務状況を踏まえながら判断していくというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 ありがとうございました。終わらせていただきます。
反対討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表し、放送法第七十条第二項に基づき、承認を求めるの件、いわゆるNHK二〇二三年度予算の承認に対して、反対の討論を行います。
放送の自主自律を遵守しなければならないNHK執行部、経営委員会の無反省極まりない姿勢に、国民の信頼は得られていません。
NHKのかんぽ生命の不正販売報道をめぐって、我が党は、NHKが日本郵政グループからの圧力に屈して、第二弾の放送を延期し、経営委員会が会長を厳重注意したことは、放送番組は、何人からも干渉され、規律されることがないと規定する放送法第三条及び経営委員に個別の番組に干渉することを禁じる第三十二条に反する行為であると厳しく指摘し、二〇二〇年度、二一年度、二二年度のNHK予算の承認に反対いたしました。
経営委員会は、今なお厳重注意をめぐる議事録の公開に背を向け、国民への説明責任を放棄し続けています。こうした下で、執行部が編成し、経営委員会が議決をした二〇二三年度予算を承認することはできません。
また、今回のNHK予算は、昨年成立した改正放送法で創設された還元目的積立金制度と割増金制度が導入される初めての予算です。我が党は、還元目的積立金制度について、NHK受信料決定に行政が介入し、NHKの自主性を毀損すると厳しく批判し、割増金制度による未契約者へのペナルティー導入にも反対しました。NHKの経営と予算をゆがめるこれらの制度の導入は認められません。この立場から、制度導入の最初の予算となる本件の承認に反対するものです。
対面による丁寧な説明の機会をなくした上で、民事手続や割増金による対応を増やすことは、国民の信頼、受信料制度への理解を得ることと逆行するものです。国民・視聴者の受信料で成り立つ公共放送として、NHKは、受信料制度への理解を得るために、丁寧な説明に徹底して力を尽くすべきことこそ求めて、討論を終わります。