私立学校法改正案を可決
私物化防ぐ仕組みを
宮本岳志氏
衆院文部科学委員会は22日、理事と評議員の兼職を禁止することなどを柱とした私立学校法改正案を全会一致で可決しました。日本共産党の宮本岳志議員は、理事長が他の役員の生殺与奪を握る現行法の仕組みが法人私物化の温床になってきたとし、執行と監視・監督の分離という改正案の趣旨の徹底を求めました。
理事長への選解任の権限集中について、文科省の茂里毅・高等教育局私学部長は「(私物化の背景には)ご指摘の点も含めさまざまな問題がある」と認めました。
宮本氏は、改正案で設置が義務づけられる理事選任機関の構成が各法人の寄付行為(規則)に委ねられ、理事会を選任機関とすることも排除されていないことを指摘。17日の参考人質疑でも大規模法人で理事会を選任機関とすることは許されないとの指摘がでたことを示し、大学など「大臣所轄学校法人等」については理事会を選任機関としないよう文科省の考え方を示すべきだと主張しました。
宮本氏は、経常経費の2分の1の私学助成が国会決議されているのに、1980年をピークに下がり続け、直近の文科省試算では11・6%だと批判。永岡桂子文科相は、大学生の7割超が在籍するなど私学が果たしている役割に触れ「私学助成の確保は大変重要。拡充にしっかり取り組む」と述べました。
(しんぶん赤旗 2023年3月24日)
動画 https://youtu.be/WSKHd67a0Lo
配付資料 20230322文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
ガバナンス改革の出発点は、私学の理事会、理事長の権力集中による私物化、不祥事だったと思います。そうした現行法の問題点を改善し、私立学校等の公共性と教育研究の質を更に高めるための法改正は、我が党も当然必要だと考えております。
そこで、私学部長に確認しますが、文科省として、なぜこうした理事会、理事長による私物化、不祥事が防げなかったと考えているのか。現行法では、理事、評議員、監事を事実上理事長が選解任できる仕組みになっているというところに私は原因があると思いますが、お考えをお聞かせいただきたい。
○茂里政府参考人 お答えいたします。
私立学校における不祥事の原因は様々であると考えておりますが、近年の事例を踏まえるとすれば、元理事長の専横的な法人運営により理事会及び評議員会が形骸化し、牽制機能が利かなかったことなどが原因だと考えております。
このようなことなどを踏まえますと、現行法では、権限が特定の者に集中することを防ぐ仕組みや、あるいは理事長など執行部に対するチェックの実効性を確保する仕組み、こういったことが十分でなかったのではないかというふうに思ってございます。
○宮本(岳)委員 私の指摘した点でいいんですね、再度確認ですが。
○茂里政府参考人 申し上げます。
今御指摘いただいた点も含めて、様々な問題があろうかと思っております。
○宮本(岳)委員 これまで評議員会や監事に権限がなかったから私物化、不祥事が防げなかったというわけではありません。理事長に生殺与奪の権があるために、内部で問題が発覚したとしても、理事長の意向に反することが言えないという状況となってしまうことが最大の原因だったと思います。
ガバナンス改革会議報告書では評議員として教職員が排除されようとしておりましたけれども、今回の法案では学校法人の職員も含まなければならないとされております。その意義として、内部の教職員の意見を反映させることを重視したということがあろうと思うんですけれども、この点、私学部長、いかがですか。
○茂里政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のありました評議員につきましては、特定の利害関係に偏らない幅広い意見を反映することができる構成にすることにより、評議員会に期待される牽制機能の実質化を図ることが重要だと考えております。
様々な方々、教職員も含めていろいろな角度から私学運営にアドバイスをいただくというのは極めて重要なポイントかと思っております。今回の改正につきましても、その点を十分考慮した制度設計としてございます。
○宮本(岳)委員 おっしゃるとおりで、教学の面もあるわけですから、教学と運営の協調が必要であって、教学の面からの意見もちゃんと聞いていただく必要があると思うんですね。
不祥事、私物化について、起こってはならないことは当然でありますけれども、先日の参考人も、九九・九%のところは問題ないと思うんですが、やはりその中に不心得な方が出てくる、それをどう防ぐかと述べられておりました。不祥事事案は全学校法人のごく一部の問題でありますけれども、その他、ほとんどの学校法人は真面目に運営をしておられます。問題は、そうした不祥事が起こり得る仕組み、理事長が理事、評議員、監事を選ぶことが事実上可能となっている現状をどうするかというところにあります。そうした仕組みを改善するためには、内部の意見を反映させることは当然だと思いますね。
評議員の選解任については寄附行為の定めるところによるとされております。現行法でも評議員の選任を寄附行為に定めるということにされておりまして、これによって理事会あるいは理事長が評議員を選定すると寄附行為で定めている学校法人が多く存在すると聞いております。
今回の改正案では、理事、理事会が選任する評議員は評議員総数の二分の一を超えないこと、こうなっておりますし、それ以外に、理事の親族等の特別利害関係人についても評議員総数の六分の一を超えないこととされております。つまり、理事、理事会が選解任する評議員と理事の親族等の評議員は、これを両方足し合わせますと最大で評議員総数の三分の二となるわけですね。これでは、理事長、理事会に対する、先ほどから議論になっている牽制としての今回の役割、今回の法改正の意義が骨抜きになってしまうのではないかという指摘もあるわけですね。
もちろん、学校法人の規模などを考慮する必要があることは理解しておりますけれども、せめて大臣所轄学校法人等については、評議員を選任する際に理事、理事会の選任する評議員の数をできる限り減らす、あるいは特別利害関係人は極力ゼロにするなど、理事長、理事会の暴走による不祥事、私物化を抑制するという法案の趣旨を徹底すべきだと私は考えますが、文科省としてどのような方策を講じるつもりか、お聞かせいただけますか。
○茂里政府参考人 お答えいたします。
今般の改正におきましては、評議員会の機能の健全な実質化を行うという観点から、選任する主体、これに着目いたしまして、理事、理事会が選任する評議員の割合を二分の一まで、これはマックスでございます、とすると同時に、選任された評議員の身分等に着目いたしまして、職員評議員が三分の一まで、親族等評議員が六分の一までとする仕組みを導入したところでございます。
御指摘の点につきましては、この度の法改正が建設的な協働と相互牽制を確立することで実効性のあるガバナンス構造を構築する趣旨であることに鑑みれば、評議員会においては、特定の利害関係に偏らない幅広い意見を反映することができる構成にすることにより、評議員会に期待される牽制機能の実質化を図ることが重要であると認識してございます。
そのため、文部科学省におきましては、政省令の制定に合わせまして、今の御指摘、また今回の基本方針なども踏まえながら、学校法人や都道府県向けの説明会の実施、モデルとなる寄附行為の作成、寄附行為変更に関する個別相談、そういったものにしっかりと応じてまいりたいと思います。
二分の一、六分の一、三分の一はあくまでも上限でございます。各学校のそれぞれの実情に合わせた適切な取組が行われるよう徹底してまいりたいと思います。
○宮本(岳)委員 是非、きちっと適切にしていただきたいんですけれどもね。
理事選任機関の構成、これも寄附行為によって定めることとされております。これは私立学校の自主性を尊重するための規定でありますけれども、こうした規定により、理事会を理事選任機関とすると定めることは排除されていないわけですね。
この点について、先日の参考人質疑で福原参考人も、小さな学校法人では理事会が選任することで円滑に継承されていく例があり、そういった例を全く防いでしまうというわけにはいきませんと述べつつも、それが全ての大規模な大学にまで同じようなことまで許されるのかというと、それは決してそうではないと述べられました。
そういう意味では、特別委員会の報告書でも、その後の法案骨子でも、理事の選任を行う機関として、「評議員会その他の機関」と、評議員会がその筆頭例に挙げられております。現行法の下でも、理事会、理事長が理事を選任してうまくいっている学校法人もあるかもしれませんけれども、理事長、理事会に対する牽制機能という今回の法改正の趣旨を考えれば、せめて大臣所轄学校法人等では、理事選任機関の在り方について、文科省のやはり考え方を示すべきではないかと思いますけれども、私学部長の御答弁をいただきたい。
○茂里政府参考人 お答えいたします。
今般の法改正は、我が国の公教育を支える私立学校の教育研究の質の向上を図る観点から、建学の精神を受け継いでいる理事会が意思決定機関、評議員会が諮問機関であるという、この基本的な枠組みを維持しつつ、評議員会のチェック機能を可能な限り高めるようガバナンス改革を進める、これはこれまでも申し上げたとおりでございます。
他方、現行制度でも、理事の選解任は学校法人ごとに多様な方法で行われており、理事会が関係者から信任を得て安定的に学校運営を行う基盤となっていることなども踏まえ、具体的な理事選任機関の取扱いについては各学校法人の判断に委ねたところでございます。このため、今お話ありましたけれども、理事会が理事選任機関になることもありますし、評議員会や第三者機関などが法人の判断により理事選任機関となることも可能かと思います。
今般の改正におきましては、理事選任機関を寄附行為で明確に定めるように法定した上で、当該理事選任機関はあらかじめ評議員会の意見を聞かなければならないということとしてございます。
また、不正行為があった場合には評議員による理事の解任請求を認めるなど、評議員会は諮問機関であるという、その基本的な枠組みの中で、可能な限り評議員会のチェック機能を強化したというのが今回の一番の工夫したところでございます。
また、学校法人の適切な運営のためには、人事に関する仕組みの整備のみならず、加えまして、不正等の防止や、問題が発生した際の対応の仕組み、これを整備するなど、適正を担保する、確保する仕組みを総合的に構築する必要があろうかと考えております。
いずれにいたしましても、今般の法改正の趣旨を踏まえた適切な運用が八千法人全てでなされるよう、しっかりと、基本方針の周知徹底に努めてまいりたいと思います。
○宮本(岳)委員 是非、寄附行為作成例などで示していただくということであれば、執行と監視、監督の分離という法案の趣旨をしっかり徹底していただくことを求めておきたいと思います。
ガバナンス改革会議の報告書では、評議員会を最高監督、決議機関とした上で、構成員から学校構成員を排除するとされておりましたが、本法案ではそうした規定はなくなっております。その理由に、私立学校の特性ということが語られておりますけれども、これは大臣に、改めて、私立学校の特性とは何か、お述べいただきたい。
○永岡国務大臣 宮本委員にお答え申し上げます。
私立学校におきましては、それぞれの建学の精神に基づきまして、個性豊かな活動が展開されているところでございます。私財を投じた創立者やその親族を含む理事会メンバーにおきまして建学の精神が受け継がれてきた背景がございます。
私立学校は、このようなそれぞれの建学の精神に基づきまして、個性豊かな活動が展開をされており、我が国の学校教育の発展、普及や、多様化するニーズに応じました特色のある教育研究の推進に重要な役割を果たし、質及び量の両面から我が国の学校教育を支えているものと考えております。
今後とも、我が国の公教育を支えます私立学校の重要性に鑑みまして、建学の精神に基づいて、時代と社会の変化に対応し、自ら積極的に教育研究の質の向上に取り組む私立学校をしっかりと後押しをしてまいります。
○宮本(岳)委員 先日の参考人質疑でも、教育というものは自由でなければならない、学問はやはりあらゆる権力から独立して、学は独立したものでなければいけないということが述べられました。
教育の自主性という点では、理事会が一々教育内容や研究内容に口を出すようなことはやはり慎むべきだと思います。
学校法人の校務、教学面については、まずは学校の自主性を最大限尊重することは当然のことだと考えますけれども、これは私学部長、よろしいですね。
○茂里政府参考人 申し上げます。
学校教育法におきましては、「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。」とされ、学校における教学面の事項について職務権限を有していることは明らかでございます。
他方、私立学校法におきまして、理事会は、学校法人の業務を決定するとされているところ、この学校法人の業務とは、学校法人が設置する私立学校の業務を含む学校法人全ての業務を意味しているところでございます。
したがいまして、教学面につきましても、学校法人運営の最終的な責任を担っております理事会がその権限と責任の下、最終的な決定を行うことがありますが、その際には、御指摘のあったとおり、教学サイドの自主性を十分尊重しなければならないと考えてございます。
この点については、現行制度においても、今回の改正後においても、変わるものではございません。
○宮本(岳)委員 後半だけでよかったんですけれどもね。学長、校長を含む教員組織の自主性を最大限尊重することは、教育の自由、研究の自由の根幹であり、まさに中心問題だと思います。
法案四十六条「監事の資格」について。
文科省は、二〇一九年九月二十七日に発出した、学校法人寄附行為作成例の改正についてと題した通知の中で、八条二項、前項の選任に当たっては、監事の独立性を確保し、かつ、利益相反を適切に防止することができる者を選任することとするとして、その理由として、理事長と監事が他の法人で上下関係にあるような場合や、監事が学校法人と顧問契約を結んでいるような場合など、牽制機能が十分に発揮されない状況とならないよう、選任に係る規定を追加したと述べております。
この規定の趣旨は変わっていないということの確認と、なぜこのような規定を設けたのか、そして、学校法人の規模にもよるけれども、少なくとも大臣所轄学校法人等ではこうした規定はきちっと守られるべきだと思いますが、私学部長、よろしいでしょうか。
○茂里政府参考人 お答えいたします。
現在の学校法人寄附行為作成例におきましては、監事の選任に当たっては、監事の独立性を確保し、かつ、利益相反を適切に防止することができる者を選任するものとするとされております。
この規定は、御指摘のとおり、理事と監事が他の法人で上下関係にあるような場合や、あるいは、監事が学校法人と顧問契約を結んでいるような場合など、牽制機能が十分に発揮されない状況とならないよう、追加されたところでございます。
この趣旨につきましては、今回の改正後においても変更ございません。
今お話ありました学校法人全体のガバナンスの中で、このことについてはしっかり取り組んでまいりたいと思います。
○宮本(岳)委員 第五十二条一項一号は監事の本来業務が規定されておりますが、六号で、前各号に掲げるもののほか、寄附行為をもって定めるところにより監事が行うこととされた業務とあります。
寄附行為で定めることによって、まさか大学の研究内容の一々にまで監事が口を出すというようなことは私は想定されていないと思うんですけれども、これもよろしいですね。
○茂里政府参考人 答弁申し上げます。
第二条第六項は、改正法に定められた監事の職務のほかに、学校法人として監事が行うことが適切であると考える職務がある場合には学校法人の判断において寄附行為に定めることができることを規定したものでございます。具体的には、会計監査人や内部監査室との連携のために必要な職務に関する規定などが考えられるところでございますが、学校法人の必要に応じて適切に規定をしていただくことを想定しているところでございます。
また、教学面のお尋ねがございました。教学面につきましても、学校法人の経営に関する問題である以上、学校法人の業務として監査の対象となりますので、寄附行為で定められる監事の職務が教学的な面に及ぶこともあると考えております。
ただ、御指摘もございましたが、寄附行為で定められる監事の職務により、個々の教員の具体的な教育内容や研究内容まで立ち入ることは想定しているところではございません。
○宮本(岳)委員 これも結論だけでよかったんですけれどもね。
現行法上では、理事会が評議員会に諮問する項目について、寄附行為の定めで評議員会の決議を要するものとすることができるとされております。これは本法案でも同様でありますけれども、現在、学校法人によっては、法律上諮問事項としていることも寄附行為によって評議員の決議事項としているところもあります。今回の法案は、こうしたことを妨げるものではありませんね。
○茂里政府参考人 お答えいたします。
その前に、先ほど私、答弁の中で二条第六項と申し上げましたが、五十二条第六号の間違いでございます。訂正させていただきます。申し訳ございませんでした。
今お尋ねの部分でございますが、御指摘のとおり、改正後においても、寄附行為で定めることにより、学校法人の判断で、評議員会の諮問事項を評議員会の決議を要する事項に変更することは可能でございます。
○宮本(岳)委員 法案四十二条四項、理事は書面で理事会の議決に加われるとされております。他方、四十二条一項で、理事会の決議は理事の過半数の出席が必要とされております。これは評議員会も同様であります。
そこで聞くんですけれども、二〇二一年六月二十五日の通知、「理事会及び評議員会の運営及び議事録の取扱い並びに学校法人寄附行為作成例の改正について」では、理事会の開催の意義について、監事の意見も踏まえつつ、理事が相互に意見交換を行うことを通じて法人の業務執行に関する意思決定が適切にされることが期待されると記されております。しかし、出席の過半数が書面出席ということになれば、意見交換の場としての理事会や評議員会の趣旨にそぐわないことになるのではないかと私は思いますけれども、文科省の認識はいかがでございましょうか。
○茂里政府参考人 お答えいたします。
原則として、理事会は、単に議決を行うための機関ではなく、理事が議題について相互に意見交換を行うことにより学校法人の業務執行の意思決定を行うことが期待されるものであることから、書面開催することは認められません。ただし、できる限り多くの理事の意見を理事会の意思として反映させるため、出席できない理事が書面やメール等でその意思表示を行うことによって理事会の議決に加わることは可能としているところでございます。
理事会開催に当たりましては、様々な事情、例えば現在はコロナなどが考えられますが、こういった様々な事情が想定されることから、書面やメールによる議決への参加について半数までとするといった一律的な制限は設けていないところでございます。
○宮本(岳)委員 参考人質疑の中で、税制優遇や私学助成、幼児教育、高等教育の無償化等の進展によって、それにふさわしいガバナンス構造の現代化を図っていくことに対する社会的要請もますます高まっているということが語られました。これに対して、幼児教育の無償化が実現したことは本当に感謝の気持ちしかないけれども、そういうようなことが達成されたからちゃんとガバナンスを守りなさいよ、今まで以上にやりなさいよと言われるのは、私はちょっと違和感がございますという御意見もございました。
税制優遇や公費助成、幼児教育、高等教育の無償化が行われているから公共性を確保すべきというんですけれども、それは少しおかしいのではないかと私も思います。
そもそも、公共性について、私立学校法制定時の提案理由ではどのように述べられていたか、私学部長、是非紹介していただきたい。
○茂里政府参考人 申し上げます。
昭和二十四年十一月十八日の衆議院文部委員会における私学法の提案理由では、公の性質について、次のように説明されているところです。「私立学校も学校教育法に定める学校として、教育基本法のいわゆる「公の性質」を有するものでありまして、設置者がほしいままに経営すべきものではないのであります。このため私立学校については、その自主性を尊重するとともに、あわせてその公共性を高めることが必要とされるのであります。」
以上でございます。
○宮本(岳)委員 公の性質、つまり、私立学校は、国公立学校同様、公教育を担っているということであります。
更に言えば、私立学校に在籍する学生、児童生徒の割合は、大学、短大で約七五%、高校で約三四%、幼稚園は八八%と、私立学校は我が国の学校教育の発展に大きく貢献をしております。だからこそ、一九七五年には私立学校振興助成法が成立をし、いわゆる私学助成が始まりました。
そこで、配付資料一を見ていただきたい。法案可決時の参議院文教委員会の附帯決議であります。
赤線部、「私立大学に対する国の補助は二分の一以内となっているが、できるだけ速やかに二分の一とするよう努めること。」となっています。これはまさに国会の意思であります。この国会の意思がその後どのように扱われてきたか。
資料二は、日本私立学校振興・共済事業団が作成してきた「私立大学等における経常的経費と経常費補助金額の推移」という資料であります。
一九七五年、法成立と附帯決議以降、五年後の一九八〇年の約三割まで増え続けてきた経常費補助金の補助割合は、その後は、二分の一どころか、どんどん減り続け、ついに平成二十七年、二〇一五年には、一割も切って、九・九%にまで落ち込みました。そして、何と、この平成二十七年を最後に、この表の作成が止まってしまいました。
聞きますが、文部科学省は予算案の説明の際、平成二十八年度まではこのグラフを用いていたんですが、一割を割り込んでしまって以来このグラフの使用をやめたのはどういう理由なのか、お答えいただけますか、私学部長。
○茂里政府参考人 お答えいたします。
御指摘の点につきましては、様々なデータの拾い方があろうかと思います。今回委員から御指示いただいて御用意したデータなどもございますので、今後、どれがこれから私学助成の伸び率を測っていくか、一番適当なのかについては、しっかりと検討してまいりたいと思います。
○宮本(岳)委員 分母に不正確があるという説明でした。ならば文部科学省が正確だと考える経常的経費を計算した上で同じように表を作ってくれと言って出てきたのが、資料三であります。
文部科学省が正確だとする数字で計算してみても、資料三のグラフが示すように、二〇〇八年以降も補助割合は一貫して減り続け、二〇二一年度で一一・六%にすぎません。
結局、一九七五年の国会の意思、私学助成の二分の一への引上げに照らせば、ずっと逆行し続けているわけですね。
そこで、大臣に確認したいんです。
一九七五年の附帯決議の経常経費二分の一目標は捨て去られたのか、それとも、公教育としての私立学校がその役割を果たすためには経常費補助二分の一の達成は依然として重要であり必要だと大臣はお考えか、はっきりと御答弁いただきたい。
○永岡国務大臣 私立の学校は、大学等で七割を超えます学生が在籍をしておりまして、建学の精神に基づいた個性、特色のある教育を実施しており、我が国の学校教育において重要な役割を果たしていると考えております。
私学に対する助成にいたしますと、こうした私立学校が果たす役割の重要性に鑑みまして、私立学校の教育条件の維持向上、そして学生等の修学上の経済的負担の軽減、私学の経営の健全性の向上を図ることを目的としておりまして、私立学校の振興に大きな役割を果たしていると考えております。
文部科学省といたしましては、基盤的経費でございます私立の助成を確保するというのは大変重要だと思っておりますし、また、高等教育の修学支援も含めまして、私立学校への総合的な支援、これをしっかり行いまして、教育の質の向上とアクセスの機会、これの拡充にしっかりと取り組んでまいる所存でございます。
○宮本(岳)委員 当然です。だから、私学関係者は、学生や生徒、保護者とも力を合わせて、毎年膨大な、私学助成増額を求める請願署名を国会に届けてきました。
この請願の紹介議員には、ほぼ全ての会派の議員が名前を連ねております。ならば採択されてしかるべきではないかと思いますが、審議されることなく、国会会期末の委員会で不採択が報告されるということが繰り返されてまいりました。これほど憲法十六条に定められた国民の請願権を愚弄する話はないと思うんですね。
委員長、今国会こそ請願の審査をするための委員会の開催を求めたいんですが、是非理事会で御検討いただきたい。
○宮内委員長 理事会で協議をさせていただきます。
○宮本(岳)委員 先日の参考人質疑で、学校法人ガバナンス改革会議座長の増田宏一参考人からは、二〇一九年と二一年の骨太方針で決まった、この二度の閣議決定を翻す対応は国のガバナンスが問われている、そういう御意見も出されました。
報告書をまとめていただいた座長としての思いは受け止めたいと思うんですが、国のガバナンスの問題を言うのならば、何でもかんでも骨太方針や閣議決定で進められると考えている今の政権の手法こそが問題だと言わなければなりません。閣議で決めようが、関係者や国民の実態を無視しては政治も行政も進められない。このような手法こそ直ちに見直すことを求めて、私の質問を終わります。