「心構え」規定 悪用も
地方自治法改定案 宮本岳志氏が批判
衆院総務委
日本共産党の宮本岳志議員は13日の衆院総務委員会で、地方自治法改定案で新たに規定する地方議員の「心構え」は「物言う議員への懲罰動議に悪用されかねない」と批判しました。
法案は第89条3項に地方議員は「住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならない」との規定を追加。宮本議員は、総務省が検討過程で提案した「心構え」規定に、地方制度調査会専門小委員会で委員から疑問が出ていたとして、「この規定が地方議員の懲罰の判断基準に入れられるのではないか」とただしました。
総務省の吉川浩民自治行政局長は「懲罰理由になるのは議員の具体的な行為で、心構えが懲罰理由になると考えてない」と述べました。
宮本氏は「朝日」が「非公開の会議の運営方法に疑問を投げかけた議員が、秘密を漏らしたとして処分されるなど、多数派によって乱用されている」との指摘を報じたとして、「89条3項が条例とかさまざまなものに影響を与えて間接的に懲罰事案が増えることがありうるし、物言う議員への圧力としての懲罰動議に悪用されることが絶対にないと言い切れるのか」と追及。松本剛明総務相は「総務省として個別に申し上げるのは差し控えたい」と答弁を避けました。
宮本氏は、法案で会計年度任用職員の「勤勉手当」を支給可能とするのは当然の措置だと述べました。
(しんぶん赤旗HP 2023年4月16日)
動画 https://youtu.be/AKkeDftQ93Y
配付資料 20230413総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
冒頭に一言申し上げたい。
今回の地方自治法改正案は、ざっと読み流しただけでは見落としてしまうような重大な問題点が存在いたします。慎重な審議が必要ですが、統一地方選挙のさなかでは、地方議会関係者や地方自治体関係者等の御意見を聞くことさえままなりません。本来ならば、選挙が終わってから、地方議会関係者や地方自治体関係者を招いての参考人質疑なども行って、丁寧に議論すべき法案だと考えます。たった一回、僅か三時間の審議では全く不十分であり、幸い本日の採決は見送られたわけですから、この後、質疑終局をせずに、引き続き審議を続行することを強く要求して、質問に入りたいと思います。
法案第八十九条は、地方議会の役割及び議員の職務等について法律上明確化するということでありますけれども、第三十三次地方制度調査会第三回専門小委員会に提出された全国都道府県議会議長会の提出資料とは違うものとなっております。
資料一を見ていただきたい。
議長会からの提出資料は、「地方議会は、地方公共団体の意思決定を行うこと」というものでありますが、今回の法案八十九条二項は、「普通地方公共団体の議会は、この法律の定めるところにより当該普通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、」となっております。
ここで言う「この法律」とは何か、自治行政局長、お答えいただけますか。
○吉川政府参考人 地方自治法のことでございます。
○宮本(岳)委員 そうすると、議会の議決も、検査や調査も、地方自治法の定めによるということになります。
地方自治法一条の二には、国と地方の役割分担等が定められております。そうなりますと、「この法律の定めるところにより」の内容には、もちろんこの地方自治法一条の二も含まれるのではありませんか。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
改正後の地方自治法八十九条の二項は、議会の役割や責任について、地方自治法に定められた議会の権限に係るものを網羅的に規定しているものでございます。具体的には、この法律の定めるところにより当該普通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、並びにこの法律の定める検査及び調査その他の権限を行使するとしております。
御指摘の地方自治法一条の二は、国と地方の役割分担の在り方の原則を規定しているものであり、議会の議決等の権限に関連する規定ではございません。このため、改正後の八十九条の二項の「この法律の定めるところにより」という部分には含まれないということでございます。
○宮本(岳)委員 この八十九条の二項には、九十六条に定めるところによりとは書いてありません。「この法律の定めるところにより」となっており、この法律とは、言うまでもなく地方自治法全文ですね。
ならば、確認しますけれども、はっきり答えていただきたいんですが、この八十九条二項の「この法律の定めるところにより」の内容は、九十六条のみに限定される、あるいは一条二項は完全に排除される、明言していただけますか。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
地方自治法一条の二は、国と地方の役割分担の在り方の原則を規定しているものでございまして、議会の議決等の権限に関する規定ではございません。このため、八十九条二項の「この法律の定めるところにより」には含まれないということでございます。
○宮本(岳)委員 八十九条二項のこの規定には、一条二項は含まれないと。一条二項以外の地方自治法の条文は含まれるんですね。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
「この法律の定めるところにより」という部分で、念頭に置いておりますのは、御指摘のとおり九十六条でございまして、基本的には、地方自治法の中の議会に関する権限の部分ということでございます。
○宮本(岳)委員 実は、今でも、地方議会で、子供医療費の助成制度や学校給食の無償化を国の責任でやってくれ、あるいは憲法九条を守ってくれとか、核兵器禁止条約の加入、批准、こういうことを求めますと、それは国の制度の問題なので地方議会での議論になじまないとか、国と地方の役割分担に反するなどの言い分で拒否されることがあると聞いております。
今回の改正が、そのような傾向を一層助長されるおそれはないのかということについては大変危惧をしておりますが、これは、きっぱり先ほど関係ないとおっしゃいましたので、そういうおそれはないということでよろしいですね、局長。
○吉川政府参考人 地方自治法第九十九条の規定により、地方議会は、自治体に関係のある事柄について意見書を国会や関係行政庁に提出することができるとされているわけでございます。
繰り返しになりますが、改正後の八十九条二項の「この法律の定めるところにより」ということにつきましては、自治法の一条の二は含まれないということでございますので、議会の役割をより限定的に解釈するといったようなことにはならないということでございます。
○宮本(岳)委員 しかも、改正案は、その後の八十九条三項で、議員の職務について、「議会の議員は、住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならない。」としております。
総務省はこれを一般的な規定と言うわけですけれども、他の法律に、議会の議員についてこのような規定は見当たりません。議会の議員についてこのような定めのある法律がほかにあるならば、自治行政局長、挙げてください。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
御指摘のような規定につきましては、議会あるいは議員についてはございません。
○宮本(岳)委員 ないんですね。
もう一度、資料一を見ていただきたい。
議長会の提出資料の三項目めは、「地方議会議員は、住民の負託に応え、自らの判断と責任において、その職務を行うとともに、調査研究その他の活動を行うこと」となっております。そもそもこの三項目めも法案と大きく異なるわけですが、この法案八十九条三項というのは、一体誰が書いたんですか、局長。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
地方制度調査会の答申を踏まえて、立案したものでございます。
○宮本(岳)委員 確かに、地方制度調査会の最終答申にそのように書いてあるんですが、そもそも都道府県議会議長会の資料、提案には、全然文言が違って、「地方議会議員は、住民の負託に応え、自らの判断と責任において、その職務を行うとともに、」、こうなっていたものが、今回のような文面になったのは一体なぜなのか。それは、総務省が作文をしたということだと思います。
資料二を見ていただきたい。
二〇二〇年五月二十七日に全国都道府県議会議長会が行った今後の地方議会・議員のあり方に関する決議であります。確かに、下線部、「議員の位置付け、職務等を明確化すること【地方自治法改正事項】」とありますけれども、それに続けて、「議会の役割が増す中、議員は専業的な公選職としての役割を果たすことが求められており、議員を職業として位置付け、併せて職務に応じた処遇とすることが必要である。」となっております。つまり、議員の処遇改善によるなり手不足の解消を要望したのであって、決してこんな心構えを書いてくれと言ったわけではないんですね。
だからこそ、資料三にありますように、第三十三次地方制度調査会第七回専門小委員会でも、東京大学の宍戸委員は、「懲罰の根拠になり得るような位置付けなのか。」と疑問を投げかけております。
確認しますけれども、宍戸委員の危惧のとおり、この八十九条三項の規定が地方議員の懲罰の判断基準に入れられるのではありませんか、局長。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
今回改正を提案させていただいております八十九条三項につきましては、地方制度調査会の答申におきまして、議会の役割や責任、議員の職務等の重要性が改めて認識されるよう、全ての議会や議員に共通する一般的な事項を地方自治法に規定することも考えられると提言されたことを踏まえたものでございます。あくまでも、議員が職務を行う上での心構えを示すものということでございます。
一方で、懲罰の理由になりますのは議員の具体的な行為でございますので、こうした心構えが懲罰の理由になるということは考えておりません。
○宮本(岳)委員 地方制度調査会の中の議論、小委員会の中の議論でも、今おっしゃったような形で、直ちに変わることはないと答弁されているんですね。
ただ、この規定ができれば、それに基づく条例あるいは規則が制定されたり改められたりすることが想定されます。懲罰の判断基準にこの規定が影響を与えることになるのは私は明瞭だと思うんですね。これは過大な危惧ではないんです。
資料四を見ていただきたい。
今年三月十九日の朝日の記事でありますけれども、見出し、「荒れる地方 懲罰動議八十三議会」とあります。この朝日のアンケートによると、この四年間で懲罰動議が提出された地方議会が、少なくとも三十八都道府県、八十三議会もありました。中には、「非公開の会議の運営方法に疑問を投げかけた議員が、秘密を漏らしたとして処分されるなど、多数派によって乱用されているとの指摘もある。」と報じております。
これは大臣に確認したいんですけれども、この八十九条の三項の規定の挿入が、物言う議員への圧力としての懲罰動議に悪用されることは絶対にないと言い切れるのかどうか。絶対にないと言い切っていただいたらありがたいんですが、大臣、いかがでございましょうか。
○吉川政府参考人 地方自治法第百三十四条につきまして御説明をさせていただきます。
議会は、法律や会議規則、委員会条例に違反する議員の行為に対し、懲罰を科することができます。議会の懲罰権は、会議体としての議会の規律と品位を保つために認められているものでありまして、懲罰事犯の対象となるのは、自治法や会議規則、委員会条例に違反する議会内における議員の行為に限られております。あくまで心構えを示す改正後の八十九条三項が懲罰の対象になるものとは考えておりません。
○宮本(岳)委員 八十九条三項が懲罰の対象になることは考えていないのは分かっているんですよ。
この八十九条三項が、今あなたがるるおっしゃった条例とか規則とか様々なものに影響を与えて、間接的に懲罰事案が増えるということがあり得るし、現に今、荒れる地方、懲罰動議が増えている、物言う議員への圧力かというふうに報じられているわけですから、くれぐれもそういう利用のされ方がないようにこれはしていただきたいので、そういうことはないとおっしゃるんだったら、大臣、それはないと大臣の方からもお答えいただけますか。
○松本国務大臣 今回の改正法の八十九条三項が懲罰の対象になるものとは考えていないということは御答弁申し上げたとおりでありますが、住民の負託を受けた議員によって構成される議会が制定される条例について、私ども総務省として個別に申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
○宮本(岳)委員 という答弁になるから、この規定は問題だと申し上げているわけですね。私たちは、この点については徹底的に検証する必要がある、こういうふうに思っております。引き続き議論を求めたい。
次に、会計年度任用職員について聞きます。
会計年度任用職員制度が創設された二〇一七年四月十三日の参議院総務委員会で、我が党の山下芳生議員は、月々の報酬を引き下げて、その分を期末手当に回そうとする自治体があり、法改定しても、臨時、非常勤職員の処遇が改善されず、後退することもあり得ると指摘をいたしました。
資料五を見ていただきたい。
当時の高原総務省自治行政局公務員部長は、「本改正法案を成立させていただいた暁には、今夏をめどに発出する予定のマニュアルなどにその旨を盛り込み、地方公共団体に対してしっかりと助言を行ってまいります。」と述べております。
制度移行後、我が党に一通の手紙が届きました。東北のある県の非正規職員の方であります。会計年度任用になり、勤務時間が短縮され、日給は減額になりました。減額された分を手当としてもらいましたが、年収で見れば減りました。私は、以前の手取り十二万円、年収百四十四万円でした。会計年度になり、月手取り十万円、六月と十二月の手当の合計十七万円でした。七万円減りました。暮らしていけません。家賃、光熱費、車のローン、ガソリン代、保険に車検、御飯代、生活は苦しいです。新しい長靴も買えずにテープを貼って市役所に出勤し、笑われました。惨めで悔しくて悲しいですという、胸が詰まりそうな訴えであります。
総務省は、二〇二〇年の会計年度任用職員制度の施行状況等に対する調査を通じて、減額となった職種のある団体が五百三十八団体あるという実態もつかんでおります。このうち、財政上の制約のみを理由として期末手当の支給について抑制を図ったり、新たに期末手当を支給する一方で給料や報酬について抑制を図る団体はどれだけあったのか、お答えいただけますか、公務員部長。
○大沢政府参考人 お答えいたします。
今委員から御指摘のありました、令和二年度に実施した施行状況等調査によりますと、給料、報酬の水準が制度導入前と比べて減額となった団体は五百三十八団体ということですが、その理由につきましては、幾つか分類を設けておりまして、給与決定原則を踏まえて適正化したこと、職員の入れ替わりや職務内容の変更があったことによるものというものが多くはなっております。
ただ、この中に、その他という項目がありまして、七十一団体がそこに該当しておるわけですけれども、そういった団体の中に、これは明確に財政上の理由というふうにおっしゃっているわけではないんですけれども、我々が聞く範囲では、制度の趣旨に沿わない理由にあるというふうに考えられるものも見られますので、総務省としても、適正な運用について通知を発出するとともに、ヒアリング等の機会を通じて、適切な対応を行うように、繰り返し促しているところでございます。
○宮本(岳)委員 累次にわたる通知を発出して、財政的理由によるそういった減額をしてはならないということをおっしゃっていることは重々分かっているんですけれども、それが一体、やられているかやられていないかをちゃんとつかんで指導していただかなくては、今回の勤勉手当でも同じことが起こらないとは限らないです。
同時に、山下議員は、「財政措置がなければできない。」と指摘をし、地方財政措置を求めました。当時の高市大臣は、これも資料五にあるように、「地方公共団体の実態なども踏まえながら、地方財政措置についてもしっかりと検討してまいります。」と答弁をいたしました。これは、地方財政措置の規模が分からなければ、自治体は対応が難しいのが実態です。高市大臣と同じく松本大臣も、ちゃんと財政措置の規模感を示して進めていただけるかどうか。
そして、最後に、日本自治体労働組合総連合、自治労連の調査でも、会計年度任用職員の六割が年収二百万円以下という深刻な実態が浮き彫りとなっております。
二〇二二年十月に最賃の改定があり、茨城や大阪で最賃割れすることが明らかになって、年度内に解消したことが報じられております。
均等待遇の確保、更なる処遇改善が必要だと考えますが、大臣の決意を伺って、質問を終わりたいと思います。二つ、お答えください。
○松本国務大臣 会計年度任用職員に対する勤勉手当につきましては、法案が成立した際に、各自治体において適切に支給されることが必要であると考えております。
目指す方向は、処遇の改善でございます。勤勉手当の支給に関して必要な経費については、支給に向けて今後各自治体に対し調査を行うことを考えておりまして、その結果を踏まえ、地方財政措置についてしっかり検討してまいりたいと考えております。
そして、処遇改善についての二つ目の御質問でございますが、御案内のとおり、私ども、会計年度任用職員については、令和二年度に制度を導入し、期末手当の支給を可能とするなど、制度、運用の改善に取り組んできたところでございます。
会計年度任用職員の給与水準については、地方公務員法に定める職務給の原則等の給与決定原則にのっとり、類似する職務に従事する常勤職員の給料表を基礎とするなど、適切に決定する必要がある旨、これまでも助言してきたところであり、今後も丁寧に取り組んでまいりたいと考えております。
ただいま御審議いただいております地方自治法の改正案において勤勉手当の支給を可能としているものでございまして、会計年度任用職員の更なる処遇の改善に資するものと考えており、引き続き、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 時間ですので、今日はこれで終わります。