カード急増で誤交付
住民票 宮本岳志氏が批判
衆院総務委
日本共産党の宮本岳志議員は27日の衆院総務委員会で、横浜市のコンビニエンスストアで起きた住民票の誤交付について質問し、政府の姿勢が招いたものだと批判しました。
誤交付は、マイナンバーカードを使ったコンビニでの住民票交付が集中し、システムの不具合が生じ、他人の住民票が発行されたもの。市民からの連絡で発覚しました。
宮本氏の質問で、トラブル発生は、横浜市も証明書発行サーバー事業者である「富士通JAPAN」も自ら把握できなかったことが分かりました。
松本剛明総務相は、「個人情報漏えい事案が発生したことは重く受け止める」としながら「カード自体に起因したものではない」との認識を示しました。
宮本氏は、横浜市がコンビニ交付をはじめた2017年のカード交付数は39万枚だったが、現在は252万枚に増えているとして、カード急増が要因になっていると指摘。また、「技術として稚拙な設計」などの意見が専門家等から寄せられていることをあげ、「富士通JAPANに問題あり、変えろといえるのか」と質問しました。
総務省の吉川浩民・自治行政局長は「検討を依頼している」と述べるにとどまりました。
宮本氏は「リスクを語らず、カードの普及のみを自己目的化させるような政府の姿勢が、国民にとって重大な損失につながりかねない」と批判しました。
(しんぶん赤旗 2023年4月30日)
動画 https://youtu.be/SMo4J5MBGyc
配付資料 20230427総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず、冒頭に聞きたいと思います。
資料一を見ていただきたい。四月二十二日付毎日の記事です。
四月十六日告示、二十三日投票で行われた北海道旭川市議選に女性として立候補されたトランスジェンダーの候補をめぐり、道選挙管理委員会は二十日、総務省から戸籍の性別で集計するよう指示があり、扱いを男性に変更したという記事であります。
道選管によると、市選管から十六日、届出状況の報告があり、総務省に市が受理した女性として報告したが、翌十七日、LGBTなど性的少数者の候補者の性別取扱いを確認したところ、総務省から戸籍に基づき報告するよう指示があったというものです。
まず、これは事実ですか、選挙部長。
○森政府参考人 お答え申し上げます。
総務省では、統一地方選挙に際し、各種統計の取りまとめを行っており、この中で、党派別立候補者数とそのうちの女性の数について、各都道府県の選挙管理委員会からの報告を受け、都道府県別の合計数値を公表しております。
都道府県別の集計を行うに当たっては、立候補届に添付されている本人を公証する書類である戸籍謄本等に基づき、性別の報告をいただいております。
北海道選挙管理委員会から、数値を報告するに当たっての考え方についての問合せを受け、総務省よりこの考えを説明し、同委員会より数値の訂正報告があったことは、報道されているとおりでございます。
○宮本(岳)委員 事実なんですね。
資料二の三月三十日付東京の記事では、総務省選挙部の担当者は、客観的な事実として性別を確認できる資料は立候補届に添付される戸籍に限られるため、そうしていると説明したといいます。
これは、つまり、戸籍と性自認が食い違っているトランスジェンダーの場合、性自認は客観的な事実とは認められず、戸籍だけが客観的な事実だということですか、選挙部長。
○森政府参考人 お答えを申し上げます。
先ほど御答弁したとおり、都道府県別に党派別立候補者数の集計を行うに当たっては、立候補届に添付されている本人を公証する書類である戸籍謄本等に基づき、性別報告をいただいております。
お尋ねの報道における説明については、トランスジェンダーの方の客観的な性別が戸籍上の性別に限られる旨を述べたものではなく、都道府県別の集計を行うに当たっては、立候補届に添付されている本人を公証する書類である戸籍謄本等に基づき、性別の報告をいただいている旨を説明したものでございます。
○宮本(岳)委員 先日、四月二十一日に国会内で、超党派議員でつくるLGBTに関する課題を考える議員連盟役員会が開催され、私も参加をいたしました。参加された与党議員からも、五月のG7広島サミットまでにLGBT理解増進法の成立を目指す考えが示されました。
日本は、この課題で、なお世界から大きく後れを取っております。あくまで戸籍上の性別が客観的事実で、本人の性自認は二の次だなどという議論は、二〇〇三年に、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律、いわゆるGID特例法が成立したときに決着のついた議論です。戸籍ではなく御本人の性自認こそ客観的な現実であって、そちらに戸籍の方を合わせようと。
したがって、この扱いについては直ちに改善を検討すべきではありませんか。
○森政府参考人 お答えを申し上げます。
自認する性を記載をした立候補届出を基に男女別の統計を集計するということに関しては、各種統計における男女別について、どのような定義で取りまとめるかという議論を踏まえる必要があると考えております。
第五次男女共同参画基本計画においても、ジェンダー統計における多様な性への配慮について、現状を把握し、課題を検討することとされておりますので、総務省としても、内閣府と連携し、どのような定義の統計を取っていくか、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 検討は当然だと思うんですね。
GID特例法以前は、戸籍上の性別と本人の性自認が一致しない場合には、戸籍上の性別を動かし難いものとして、意識の方を変えさせようと、治療とか指導といったことをしようとしてまいりました。しかし、GID特例法の立法趣旨は、それを百八十度ひっくり返して、性自認こそ客観的な現実であることを認め、戸籍上の性別を性自認に合わせることを認めるものでありました。総務省の言うような、客観的な事実として性別を確認できる資料は戸籍に限られるという考えそのものを改めたのが、この法律だと思います。
是非、早くこれは改めていただくように求めて、マイナンバーカードに移りたいと思います。
三月二十七日昼頃、横浜市内のコンビニエンスストアで、マイナンバーカードを使って住民票の交付を受けようとした市民に、他人の住民票が発行されるという考えられないトラブルが発生いたしました。磯子市役所に入った住民からの一本の電話から始まり、青葉区役所や横浜市のマイナンバー専用コールセンターなどにも同様に誤発行の連絡が相次いだわけです。
資料三は、この誤交付を起こした富士通Japanの記者発表資料に添付されていた、「発生した事象の流れと原因」と題された図表であります。
自治行政局長、何が起こったのか、事象の流れと原因を簡潔に説明していただけますか。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
三月二十七日の横浜市の事案でございますが、コンビニエンスストアでの証明書交付サービスで別人の証明書が交付される事案が発生し、横浜市は同日中にサービスを停止するとともに、再発しないよう必要なシステム上の対応を行い、二十九日にサービスを再開したものと承知しております。
本件は、横浜市が管理する証明書発行サーバーのアプリケーションに起因するものと聞いております。
具体的には、証明書の交付申請件数が増加し、受付の上限値に継続的に到達した結果、処理遅延により一部の申請のキャンセルが発生しましたが、このキャンセルの処理の際にプログラムに誤りがあったため、強制的に印刷処理中の証明書データが後続の交付申請に係る証明書データに置き換わったものと聞いております。
○宮本(岳)委員 分かりにくい説明なんですけれどもね。まあ、バグがあったということなんですが。
報道によると、市民からの連絡を受けた横浜市は、システムに何かしらのトラブルが発生していると判断し、富士通Japanの担当者にすぐさま連絡し、同日午後二時にコンビニでの証明書交付サービスを停止したと報じられております。
事実を確認しますが、横浜市から連絡を受けた時点で、富士通Japanは、トラブルの発生を認識していたのか、それとも言われるまで気づかなかったのか、どちらですか。
○吉川政府参考人 富士通Japanは、横浜市からの連絡により事案の発生を認識したと聞いております。
○宮本(岳)委員 サーバー管理者であった富士通Japanが、住民票の誤交付というような深刻なトラブルを横浜市からの連絡を受けるまで知りもしなかったとすれば、事態は一層深刻であります。つまり、富士通Japan自身には、アラート機能が働いていなかったということを示すわけですね。
ところが、河野太郎デジタル担当大臣も、松本剛明総務大臣も、横浜市の証明書発行のサービスを担っているベンダーのアプリケーションの問題であり、マイナンバーカード自体やカードを使った情報連携の仕組みに問題があるわけではないと言い放ち、マイナンバーカードの信頼性に影響するものではない、こうおっしゃっています。
松本総務大臣に確認しますけれども、全く問題はないというお考えですか。
○松本国務大臣 横浜市において発生したコンビニエンスストアでの証明書交付サービスに係る御指摘の事案については、横浜市が管理する証明書発行サーバーにおける誤ったプログラム処理が原因であるということで、このプログラム処理が誤っていること自身、そして個人情報の漏えい事案が発生したことは重く受け止めているところでございますが、マイナンバーカード自体に起因したものではないと承知をしているということを申し上げているところでございます。
○宮本(岳)委員 資料四を見ていただきたい。
地方公共団体情報システム機構、J―LISが今年三月三十一日付で発出した事業者向けの事務連絡であります。
この事務連絡には、マイナンバーカードの交付枚数が八千万枚を超えて急速に拡大を続け、令和四年度のコンビニ交付サービスの利用数も年間二千万通を超える想定で急増、利用数急増に伴い証明発行サーバーも負荷がかかることが想定されます、利用数急増にも十分対応可能なリソースや流通確保を図っていただき、引き続き安定運用が行えるようシステムの点検、万一障害が発生した場合も迅速に対応できるよう体制の確保などと書かれております。
三月二十七日に個人情報の漏えいが起こってから、慌てて、万一障害が発生した場合も迅速に対応できる体制の確保などを叫んでみても、既に後の祭りであります。
自治行政局長に聞きますけれども、これのどこが安心、安全と言えるんですか。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
今回の事案の発生を受けまして、総務省またJ―LISそれぞれに、関係の各方面にチェック体制の強化あるいは監視の強化などを要請をしたところでございます。その一環として、御紹介いただきましたこのJ―LISからの要請もあるということでございまして、それぞれ、ベンダーに対して十分な監視を行うように要請したものでございます。
○宮本(岳)委員 横浜市では、コンビニ交付を始めた時期はいつなのか、ベンダーと契約した時期のマイナンバーカードの交付枚数は何枚で、今の交付枚数は何枚になっているか、これは数字をお答えいただけますか。
○吉川政府参考人 横浜市がコンビニ交付サービスを導入したのは平成二十九年の一月です。
また、横浜市におけるマイナンバーカードの累計交付枚数でございますが、平成二十九年三月八日時点で人口に対する割合が一〇・五%、令和五年三月三十一日時点で六七・三%となっております。
○宮本(岳)委員 今お答えのあった二〇一七年三月八日時点で枚数で三十九万五百六十枚、そして今年三月末時点で二百五十二万九千五十枚、まさに六・五倍になっているんですね。
識者は、技術としてやや稚拙な設計ではないか、この富士通のシステムですね、本来はファイル名と送信処理をIDでひもづけるなどして申請者に正確にファイルを送信するのが一般的だ、こう語っております。
にもかかわらず、富士通Japanは、今回の事象の原因となった、一時的に交付申請が集中した際の強制的な印刷処理に関するプログラムは既に修正したというものの、メディアの取材にも、逐次処理を行っている点やファイル名が同一だった点は特段問題があったとは考えていないなどと開き直っております。
先ほど、監視をお願いしていると言うんですけれども、結局総務省は、全て地方自治体と富士通Japanなど事業者に任せて、安全に責任は持たない、こういうことですか。
○吉川政府参考人 お答えいたします。
本事案を受けて、総務省では関係者の聞き取りを行い、横浜市における対応状況や詳細な原因の把握等を進めるとともに、自治体に対し、運用監視の徹底等について要請を行ったところでございます。
その上で、事業者に対しましては、今回の事案の直接の原因となったプログラム処理への対応のみならず、先ほど、冒頭に御説明いたしましたが、発行される証明書が交付リクエストどおりかどうか、これを確認する仕組みなどについての検討を依頼したところでございます。
○宮本(岳)委員 まさにそれが、送信処理をIDでひもづけるという、そのことがされなければやはり駄目なんですよね。ただ、特段問題なかったと言っているわけですけれども、特段問題なかったと言っている富士通Japanに対して、問題ありだ、変えろと言えるんですか。
○吉川政府参考人 富士通Japanに対して、先ほど申し上げましたような依頼をしているところでございまして、真摯に御対応、御検討いただけるものと認識しております。
○宮本(岳)委員 これは事前に確認しても、お願いベースなんですね。
大臣は、この間の私との論戦でも、マイナンバーカードをデジタル社会のパスポートなどと言い放ってまいりました。デジタル社会の安全、安心に国が責任を持つから大丈夫というのであれば、今回のような情報漏えいが起こったときには、お願いにとどまらず、事業者に厳しく改善を求め、国が責任を持って二度と起こらない対策まで取り組むべきだと思います。
結局、それができないということであれば、デジタル社会をバラ色にのみ描くのではなく、こうした個人情報漏えいのリスクもあるということを市町村の現場や国民にきちんと伝えるのがあなた方の役割ではないか。そうでなければ無責任ではないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○松本国務大臣 まず、本事案につきましては、当該横浜市の対応などについても適切に行っていただいたものということで、この辺りも確認をさせていただいているところでございますが、今お話があった点について申し上げれば、自治体とベンダーなどの契約につきましては、自治体の皆様が契約者として御対応いただくことになろうかと思いますが、総務省としても、自治体に対して運用監視の徹底等について要請は行わせていただいたと先ほども答弁申し上げたところでございます。
また、デジタル庁やJ―LIS、地方公共団体情報システム機構とともに、関係事業者に対して改めてシステムの点検を図るように要請をさせていただいておりまして、デジタル社会を進めていくに当たって適切に対応させていただきたいと考えております。
○宮本(岳)委員 いや、本当に事業者に対して厳しく当たれるのかということなんですね。
一つ聞きますけれども、これは局長でいいですけれども、二〇二〇年から二〇二二年の三年間に、地方公共団体情報システム機構、J―LISは、富士通とどれだけの契約実績があるか、件数と額でお答えいただけますか。
○吉川政府参考人 過去三年間におけるJ―LISが富士通を単独の相手方とする契約でございますが、予定価格が一定金額以下でありますいわゆる少額随契契約を除き、令和二年度は十件、合計一億四千百十万円余、令和三年度は十七件、合計九千三十四万円余、令和四年度は十四件、合計五億一千五百二十三万円余となっております。
○宮本(岳)委員 つまり、三年間の合計で四十一件、総額七億五千万近くに上っております。
では、資料五を見ていただきたい。
昨年十一月二十五日に公表された、自民党の政治資金団体、国民政治協会の二〇二一年分の政治資金収支報告書の写しであります。下線部、富士通株式会社、一千五百万円とあります。
大臣、自民党の政治資金団体に富士通からこのような献金を受け取っていて、富士通にきちっと厳しく迫れるんですか。
○松本国務大臣 先ほども御答弁を局長からも申し上げたように、地方公共団体情報システム機構、J―LISは、適切に、手続にのっとって調達をさせていただいているというふうに理解をしております。
そして、今、政党への寄附について御指摘がございましたけれども、個別の企業や政治団体の活動についてコメントすることは差し控えさせていただきます。
なお、総務省としては、先ほども申しましたように、総務省として必要なことについてはしっかりと対応はさせていただきたいと考えております。
○宮本(岳)委員 あなた方は、閣議決定で、今年三月末までにほぼ全国民に普及などということを決めて、マイナポイントで誘導するばかりか、地方交付税の算定にまでマイナンバーカードの普及率を反映させることによって、カードの普及を無理やり促してきました。
しかし、横浜市など自治体が、国の言うがままにカードを普及し、その利活用を進めたら、証明書発行サーバーに莫大な負荷がかかって、個人情報の漏えい事件さえ起こったわけです。これは、はっきり言って、政府自身の政策が招いたトラブルだと言わなければなりません。
○浮島委員長 宮本君に申し上げます。
申合せの時間が経過いたしておりますので、質問をおまとめください。
○宮本(岳)委員 デジタル社会の安全神話を振りまき、リスクを語らず、カードの普及のみを自己目的化させるようなあなた方の政策は、やがて国民にとって重大な損失をもたらしかねないということを厳しく警告して、私の質問を終わります。