芸術分野 暴力根絶へ
宮本岳志氏、文化庁に対策要求
衆院文科委
日本共産党の宮本岳志議員は2日の衆院文部科学委員会で、大手芸能プロダクション「ジャニーズ事務所」の性暴力問題を含め、文化芸術分野、エンタメ業界でのハラスメント・暴力を根絶するための早急な調査と対策を強く求めました。
宮本氏は、文化芸術分野では業務発注者に比べ芸術家などが極めて弱い立場に置かれているほか、表現の場に特有の被害があると指摘し、「性加害・暴力の問題は深刻だ」と強調。文化庁に性暴力根絶のための取り組みを質問しました。
杉浦久弘文化庁次長は「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン」を公表し、相談会や研修会を行っていると答弁。宮本氏は「実態について調査する必要がある」と要求しましたが、杉浦次長は、関係者の人権などを口実に実態調査は「慎重に対応する必要がある」とし、既存の相談窓口などを通じて個別に対応すると述べました。
宮本氏は、23年前にも国会でジャニーズ問題が取り上げられていたのに、さまざまな省庁で責任転嫁が繰り返されてきたとして、「極めて深刻な問題が解決されないまま、子どもや若者の心と体を傷つけてきた」と指摘。「文化庁は文化芸術分野を担う実演家を守る立場だ。文科相は主体的に関係閣僚会議のような取り組みを問題提起すべきではないか」と迫りました。
永岡桂子文科相はセクハラや契約の書面化などの問題があるとし、「関連法令を所管する省庁とつなぎ、それぞれが連携して適切に対応していくことが重要。しっかり取り組みたい」と答弁しました。
(しんぶん赤旗 2023年6月3日)
動画 https://youtu.be/joEV0sjK2mE
配付資料 20230602文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず、長年の懸案である請願の扱いについて聞きます。
資料一を見ていただきたい。今年三月二十二日の当委員会における私立学校法改正案の私の質疑の議事録であります。
毎年膨大な数の私学助成増額を求める請願が国会に寄せられ、この請願の紹介議員にはほぼ全ての会派の議員が名前を連ねながら、会期末には委員会審議もないまま採択されずに終わってきたことを取り上げ、これほど憲法十六条に定められた国民の請願権を愚弄する話はないと指摘をいたしました。
質疑でも、経常経費二分の一目標という附帯決議がありながら、一九八〇年の二九・五%をピークに、私立大学等における経常費補助の補助割合は下がり続けてきたことを示しましたけれども、この度、文部科学省から、二〇一五年度までの作成資料と同じ整理で私学振興・共済事業団が作成した資料というものが提出されました。
資料二がそれであります。二〇一五年度に初めて一〇%を割り込み、九・九%となりましたけれども、その後も減り続けております。
文部科学省、提出資料によると、赤い字で示した条件付ではありますけれども、二〇二一年度の補助割合は何%になっておりますか。
○茂里政府参考人 お答え申し上げます。
ただいまお尋ねございました経常的経費に占めます私立大学等経常費補助金の割合につきましては、この経常的経費の範囲、これは様々考えられたところでございますが、平成二十七年度までに作成した資料と全く同じ方法で計算した場合、すなわち、法人経営の視点から、例えば役員報酬なども含んだ形で計算したものでございますが、令和三年度の割合は八・九%となってございます。
○宮本(岳)委員 この六年間で更に一%も下がったわけですね。
私立大学はもちろん、高校以下、全ての私学助成の拡充は党派を超えた喫緊の課題だと思います。私学助成拡充の請願署名に取り組んできた団体からは、一九七一年以来、その団体の集計では、私学助成拡充を求める署名は何と五億八千万筆に達している、こういうふうにお伺いをいたしました。
今日は調査室に御答弁いただくことを了承いただいておりますが、調査室に聞きますけれども、第百七十国会以降で累計何筆の請願が提出されたか、私学助成に関わって。御答弁いただけますか。
○中村専門員 お答えいたします。
百七十回国会からということでございますと、受理いたしました請願の中から、私学助成の充実というものを求めるものであるということが一見して明らかなもの、それだけを取り上げて集計いたしましたところ、平成二十年、二〇〇八年の百七十回の臨時国会以降、昨年の二百十回臨時国会まで、おおむね十四年間ということでございますが、該当する請願が九十六種千七百九十七件でございまして、請願署名者の合計は三千九百三万六千三百五十五名となっております。
○宮本(岳)委員 およそ四千万筆なんですね。恐らく最大数集まった請願署名の一つではないかと思います。
では、この請願は過去に採択されたことはないのか。
資料三を見ていただきたい。豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願、これが二〇〇八年の第百七十臨時国会で採択をされております。
調査室に重ねて聞きますが、百七十国会のこの請願以降で同趣旨の請願が当委員会で採択されたことはないと思いますが、間違いないですね。
○中村専門員 お答え申し上げます。
百七十回国会以降、採択された請願はございません。
○宮本(岳)委員 十四年間、四千万筆もの請願が、ほとんど全会派の議員が紹介議員となって提出されながら、採択されずに来たわけです。今国会こそ、この私学助成拡充のみんなの願いの請願が採択できるように、是非真剣な検討を各会派にお願いをしたいと思います。
さて、本年三月、BBCがジャニーズ事務所創業者による性加害問題を報じ、国内でも大きく取り上げられました。ジャニーズ事務所の現社長が謝罪、回答する事態となり、事務所は相談窓口や再発防止特別チームをつくると言います。
しかし、これは創業者個人の問題で済ませられる問題ではありません。世界的にはミー・トゥー運動などが起こり、日本国内でも映画監督による性加害を俳優たちが告発するなど、文化芸術の分野における性加害、暴力の問題は深刻であります。
先ほど大臣も性暴力は魂の殺人と答弁されておられましたが、文化芸術分野、エンタメ業界だけは特別というわけではなく、ハラスメント、暴力は決して許されない、あってはならない。まず、この認識は、大臣、よろしいですね。
○永岡国務大臣 やはり、どういう業界にありましても、性暴力、性被害を、被害者を生むということはあり得ないことだと思っております。
○宮本(岳)委員 資料四は、去る五月十七日の衆議院法務委員会、我が党の本村伸子議員の会議録であります。
本村議員が、文化芸術分野における性暴力を根絶するために、検討会などを開いて対策を強化するべきではないかと問うたところ、和田内閣府副大臣は、「事、文化芸術分野に関しましては、文化芸術分野を担当する文化庁におきまして、制作や実演の現場において、性的な言動等を含むハラスメントに関する問題も生じていることを踏まえ、昨年公表した文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドラインにおいて、安全衛生に関する事項を示すなどしていると承知をしております。」と答弁をいたしました。
文化芸術分野における性暴力を根絶するために、文化庁はどのような取組をしておりますか。
○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の法務委員会におきます内閣府副大臣の御答弁では、御提出の資料にありますとおり、内閣府のほか、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省から成る関係府省会議におきまして、性犯罪・性暴力対策の更なる強化方針が取りまとめられたこと、また、分野を問わず、社会全体で認識を共有する必要があり、必要に応じて関係者間で強化を図っていくこと、そして、その上で、文化芸術行政に関しましては、文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドラインにおいて、安全衛生に関する事項を示すなどしていると承知していることから、そうした取組を踏まえ、よく連携して取り組んでまいる旨、御答弁されたものと承知しております。
このように、文化芸術分野における制作や実演の現場におきましては、性的な言動等を含むハラスメント、あるいは、そのほかにも、契約の書面化が進んでいないとか、深夜、早朝の過重業務があるなど、様々な問題があることを踏まえまして、文化庁では、有識者による検討を経まして、文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン、これを公表しまして、現場の安全衛生に関する責任体制確立のため、芸術家等の安全衛生管理を行う者を置くことが望ましいと示したところでございます。
その上で、研修会等を通じ、ガイドラインの普及啓発を行うなど、業界内での取組を呼びかけているほか、契約に関する相談窓口において弁護士による相談対応を行うこととしておりまして、その内容に応じましては、関係法令に基づく適切な対応がなされますよう、適切な機関につなぐということなどに取り組んでいるところでございます。
このように、文化庁といたしましては、今後とも、こうした研修会や相談窓口などを通じましてまず解決を図りますとともに、必要があれば現場の事業や問題点を関係当局へもしっかりつなぐことによりまして、芸術家活動の環境改善に取り組んでまいりたい、このように考えております。
○宮本(岳)委員 今の答弁にありましたように、文化庁は、二〇二一年九月、文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議を設置をし、二〇二二年七月二十七日には、ここにあります、この文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)を公表いたしました。
業務発注者に比べ、芸術家等は極めて弱い立場にありますから、文化芸術分野は、契約内容を書面で取り交わす、これは大事ですけれども、それさえされていない現状があったわけであります。
明確化のための契約の書面化を進め、契約書のひな形を解説などの方策でお示しをするという、これがこのガイドラインの目的だと思うんですが、間違いないですね。
○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。
おっしゃるとおり、そのガイドラインを基に、しっかりやってまいりたいと思います。
○宮本(岳)委員 文化庁は、このガイドラインの取りまとめに先立って、パブリックコメントを募集いたしました。パブコメでは、所属事務所とタレント、実演家の関係についても意見が出されております。
特に実演家は、多くの場合、いわゆる芸能事務所に所属していることから、事務所と実演家との間の契約関係の適正化も求められる、マネジメント契約について今後検討すべきとの意見が出され、文化庁の考え方として、御意見を踏まえ、いわゆるマネジメント契約について、本ガイドラインでは言及していませんが、契約の書面化の推進や取引の適正化の促進など参考にできるところは考慮していただきたいと追記しました、文化庁としては、パブリックコメントの御意見を踏まえ、今後も必要な検討を随時行ってまいりますと書かれてあります。
では、どのような検討を進めておられるのか、お答えいただけますか。
○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。
今御紹介いただきましたガイドライン、今そういう形で公表されて、今、実施という段階でございます。
そこのところにも書かれておりますように、いろいろな問題、これからも出てくると思いますので、それは必要に応じまして、しっかりと、また、どのような形で取り上げていくかというようなことは考えなければいけない、そのように思っております。
○宮本(岳)委員 必要が生じているから、今ここで取り上げているんですけれどもね。
文化庁は、ガイドラインの作成に先立って、文化芸術活動における契約関係についてのアンケートを実施をいたしました。
依頼者、発注者との関係で、危険を感じることやハラスメントを受けることがあったの項目は、全体で三一%、俳優で五二%あり、契約書に記載、契約時に提示されることが望ましい項目としてハラスメントと回答したのは、全体で四三%、俳優で六八%でありました。
この「表現の現場」ハラスメント白書二〇二一は、二〇二〇年十二月から二一年一月の僅か二か月の間の調査でありますけれども、千四百四十九名の回答があり、このうち、何らかのハラスメントを受けた経験があると回答したのは、何と千百九十五名で八二・五%。セクハラ経験が約八割、パワハラ経験は実に九割に上っております。
セクハラ被害の特徴を見ますと、体を触られた、望まない性行為を強要されたなど、性犯罪にも当たる可能性のある性被害を受けた人もおります。そして、性的な内容を含む作品を断りなく、無理やり見せられた、制作上の演出やアートであることを理由とした性被害に遭った、こういう表現の場に特有の被害についても、この調査は結果の中で触れております。
文化庁に聞きますけれども、文化芸術分野においてもハラスメント、暴力は許されず、性暴力を根絶する、当然ですけれども、そのためのガイドラインを作ったというのであれば、そうした実態について調査をして、つかむ必要があるのではありませんか。
○杉浦政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘のような性被害や性暴力といったような問題、ハラスメントの問題、それはあってはならない、まず、これは文化庁もそのように考えているところでございます。
ただ、今回、こういうような性被害、性暴力のような問題は、御案内のとおり、関係者の人権や人生、あるいは関係団体の方の運営、社会的信用にかなり大きな影響を与える問題でございまして、いろいろな法的な訴えなどにつながるおそれもあります。
こうしたことから、やはりそこはしっかりと慎重に対応していく必要がございまして、文化庁が今取り組んでおります相談窓口を通じまして、まず事案をしっかり調べながら、弁護士など専門家のアドバイスもいただきながら、いろいろ解決していくと同時に、その中で重大な事案があれば、それを、調査というよりはむしろ捜査に近いようなこともありますので、そういった内容に応じまして、適切な機関、当局へつなぐといったような動き方となるものではないかと考えておりまして、いずれにしても、関係法令に照らした適切な判断、対処につなげていくという手法まで考えていくということが適切と考えております。
したがいまして、調査という御質問でございますけれども、我々は、そこまで、かなり難しい問題ということを意識しながらの対応と考えますと、今申し上げた、丁寧な、一つ一つのまず事案の御相談にあずかりながら、しっかりと対応していくという手法を考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 私は一つの思いがあるんですね。二十三年前に週刊文春がこれを報じたわけですよね。そのとき、阪上善秀議員が国会でジャニーズ問題を取り上げた。私はその議事録もここに持っておりますけれども。結局、たらい回しなんですよ。順々に聞いていくんですけれども、自分のところがそのものずばりではないということで、今答弁もありましたけれども、要するに責任転嫁が繰り返されてきた。その結果、ジャニーズ問題のような極めて深刻な問題が解決されないまま、子供や若者たちの心と体を傷つけてきたわけですね。
今日はもうそういう言い逃れは許されないと思いましたから、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター事業を行っている内閣府からも、また、子供の性被害防止プランを担当しているこども家庭庁にも来ていただいております。
それぞれに簡潔に聞きますけれども、今回のジャニーズ問題のような文化芸術分野や芸能界の性犯罪や性被害の防止について、あなた方の役所が責任を持つということになるんですか。それぞれ。
○畠山政府参考人 お答え申し上げます。
一般論として、どのような分野でありましても、性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を傷つけ、心身に深刻な影響を与える行為であり、あってはならないものです。一方で、被害に遭っても、誰にも相談できず、適切な支援を受けられない状況もあるものと認識しております。
内閣府としましては、本年三月に取りまとめました性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針に基づきまして、関係省庁と連携して、子供、若年層を始めとする多様な被害者を念頭に、ワンストップ支援センターを始めとする被害申告や相談をしやすい環境の整備、社会全体への啓発など、性犯罪、性暴力対策の強化や子供の性被害の防止に取り組んでまいります。
○黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。
性犯罪、性暴力は、子供の心身に有害な影響を及ぼし、かつ、その人権を著しく侵害する極めて悪質な行為であり、断じて許されるものではございません。
本年四月に発足したこども家庭庁に、委員御指摘のとおり、昨年取りまとめられた子供の性被害防止プラン二〇二二が移管をされたところでございまして、これらに基づいて、関係省庁と連携をし、子供や保護者が相談しやすい環境の整備や、同意のない性的な行為は性暴力、被害者は悪くないという社会全体への啓発によりまして、被害者が声を上げやすくする施策を推進するところでございます。
各省庁で設置をしております既存の相談窓口等の更なる活用、周知等によりまして、被害に遭っても声を上げにくいという当事者の心情にもしっかりと寄り添うことができるように努めてまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 とにかく、いずれにしても許されないことだと、それはみんな言うんですよ。言うんだけれども、じゃ、本当に責任を持って進める体制が整っているかというと、各省連携と。それは、連携が必要なことは言うまでもないんですが。
これがその子供の性被害防止プランというものですが、ここには、児童の性的搾取等に係る対策に関する関係府省庁連絡会議が定期的に開かれるということも出てくるんですよ。しかし、この芸能界の問題、今問題になっていることについて、やはり、連携と言うならば、連携して取り組む体制が要ると思うんですね。文化庁は、文化芸術分野を担当し、実演家を守るという立場から、主体的に取り組む必要があると思います。
大臣に聞くんですけれども、ジャニーズ問題を発端とする文化芸術分野の取組を省庁横断的に対応していくために、文部科学大臣自ら、関係閣僚会議のような取組を問題提起すべきではありませんか。
○永岡国務大臣 お答え申し上げます。
議員御指摘の、今回のジャニーズ事務所の問題に限らず、文化芸術分野におきまして、性的な言動等を含みますハラスメントというだけではなくて、契約の書面化ですとか、これも進んでおりませんし、また深夜、早朝の過重業務など、様々な問題が生じていることは承知をしております。
文化芸術分野で生じた問題の解決に向けましては、文部科学省は、関連法令等を所管します省庁へつなぎまして、それぞれが連携しながら適切な対応をしていくというものが重要と考えております。しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
法的な対応ができないというのは、これは、ある面、公になり、また、それぞれの方の証拠というものがないので、なかなか難しいのかなとは思っておりますが、反対に、ハラスメントはいけないよという広報ですとか、そういうことも含めまして、対応というものはしっかりと考えてまいりたいと思っております。
○宮本(岳)委員 時間が来ましたから終わりますけれども、一昨日、国会内でのヒアリングに参加された元ジャニーズの二本樹顕理さんは、十三歳だった当時、在籍当時、ジャニー喜多川氏から十回以上の性被害を受けたと証言をされました。
現在、性交同意年齢を十三歳から十六歳に引き上げる刑法改正が国会にかかっておりますけれども、十三歳といえば、現状でも完全にアウトなんですよ。仕事がもらえなくなることを恐れて拒絶できず、誰に相談してよいかも分からなかったと語っておられます。
先ほど大臣も、性暴力は魂の殺人とおっしゃいました。ジャニーズ問題にとどまらず、文化芸術分野でのハラスメントや暴力について、早急につかみ、関係閣僚会議等で速やかに対策を打ち出すことを強く求めて、私の質問を終わります。