官民あげて軍事強化
JAXA法改定案 宮本岳志氏追及
衆院で可決
宇宙科学技術の研究・開発を行う民間企業や大学に資金を交付する「宇宙戦略基金」を創設する宇宙航空研究開発機構(JAXA)法改定案が24日、衆院本会議で、自民、公明などの賛成多数で可決しました。日本共産党は反対しました。
同改定案は「宇宙基本計画」に民間の「宇宙技術を防衛のために活用」するなど、政府主体で軍事研究を促進するのが狙いです。
共産党の宮本岳志議員は同日の衆院文部科学委員会で、1969年5月の衆院本会議の決議では宇宙開発は「平和の目的に限り」としていたと指摘。2008年の宇宙基本法は「わが国の安全保障に資するよう行わなければならない」と定め、12年のJAXA法改定で目的規定から「平和目的に限り」を削除するなど「平和目的」がゆがめられてきた経緯を明らかにしました。
宮本氏は、昨年末策定の「国家安全保障戦略」に基づき6月に策定した「宇宙基本計画」で「民間の宇宙技術の防衛への活用」「官民による協力強化」を明記しており、「民間技術を軍事利用しようということではないか」と質問。内閣府の渡邉淳審議官は「宇宙技術のデュアルユース(民生技術の軍事利用)性にかんがみれば、わが国として安全保障分野でも先進的な民間技術を利用するのも可能だ」と述べ、軍事利用の狙いがあることを認めました。
宮本氏は、高市早苗経済安全保障担当相が「経団連の提言も踏まえ、宇宙基本計画を閣議決定した」と述べており、「経団連の防衛産業支援を求める声と『国家安全保障政策』は軌を一にしている」と強調。「国立研究所や大学に軍事研究をさせるやり方は、学問・研究の発展を阻害する」と批判しました。
(2023年11月26日 しんぶん赤旗)
動画 https://youtu.be/F70dxWQd9Es?si=rMgqDwSSVLjgOEnY
配付資料 20231124文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
資料一を見ていただきたい。JAXAのウェブサイトにある、宇宙開発事業団沿革というページであります。
JAXAは、二〇〇三年十月に、この宇宙開発事業団と宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所の三機関が統合して、独立行政法人宇宙航空研究開発機構、JAXAとして発足をいたしました。
ページ冒頭、下線部。「宇宙開発事業団は、宇宙開発事業団法に基づき、わが国の宇宙開発の中枢的実施機関として平和の目的に限り宇宙開発を進め、宇宙の開発および利用の促進に寄与することを目指し、一九六九年十月一日に設立されました。」とあります。宇宙開発事業団法は、一九六九年六月、第六十一回国会で可決、成立いたしました。
宇宙開発については、資料二につけてありますけれども、そもそも、一九六九年五月九日、衆議院本会議で、わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議が上げられております。この決議は、打ち上げロケットの開発及び利用は、平和の目的に限り、学術の進歩、国民生活の向上及び人類社会の福祉を図り、あわせて産業技術の発展に寄与するとともに、進んで国際協力に資するためにこれを行うものとするというものであります。
これはまず原点ですから、大臣、間違いないですね。
○盛山国務大臣 旧宇宙開発事業団法第一条、「宇宙開発事業団は、平和の目的に限り、」と規定されております。また、同、昭和四十四年の国会で決議された平和利用決議におきましても、そのような、平和の目的に限り行うものというふうにされているということであります。
○宮本(岳)委員 なぜこのような決議が上げられることになったのか。実は、この宇宙開発事業団法案第一条の目的規定には、当初、平和の目的に限りという文言は入っていなかったんですね。ところが、審議の過程で軍事転用への懸念と不安が出され、宇宙開発審議会答申ではその目的を平和の目的に限りと明記されていたにもかかわらず、それが入っていないではないかということで、平和の目的に限りという文言を入れた修正案が出されまして、修正可決されたという経緯がございます。
うなずいておられますけれども、大臣、間違いないですね。
○盛山国務大臣 はい、そのように承知しております。
○宮本(岳)委員 そして、この修正案の提案趣旨説明では、我が国における宇宙開発は、憲法の趣旨にのっとり、非核、非軍事を趣旨として平和の目的に限ることを明確にする必要があることから、平和の目的に限りという文言が加えられたことが述べられております。
ノーベル賞の原点である爆薬や、毒ガス、核兵器の例を引くまでもなく、科学研究は、その成果が一たび戦争に使われれば、膨大な人の命が奪われます。ましてや、侵略戦争の反省の上に立った日本国憲法を掲げる我が国であれば、当然の立場だと思います。
日本の科学者の内外に対する代表機関である日本学術会議は、科学者コミュニティーの戦争協力への反省と、再び同様の事態が生ずることへの懸念があったことから、一九五〇年に、戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない旨の声明を、一九六七年には、軍事目的のための科学研究を行わない声明を出しております。
ところが、二〇〇八年、宇宙基本法というものを制定いたしました。これは第三条で、宇宙の開発利用は我が国の安全保障に資するよう行われなければならないなどと定めたわけであります。
そこで、確認しますけれども、資料三は、宇宙基本法案審議の際の衆議院内閣委員会の議事録であります。立法者は、一九六九年の我が衆議院本会議での決議について、「本法案により、平和利用決議を否定したり、これを無効にするようなものではないと考えております。」と明確に答弁しておりますけれども、政府として、今日でもこの答弁を尊重する立場に変わりはないか、大臣に御確認いただきたい。
○盛山国務大臣 二〇〇八年五月の衆議院内閣委員会における宇宙基本法案の審議において、御指摘のとおり、国会決議に関しましては、法案提出者より、「憲法の平和主義の理念にのっとりまして、専守防衛の範囲内で我が国の防衛のために宇宙開発利用を行うことは、決議の文言及びその趣旨に反するものではなく、本法案により、平和利用決議を否定したり、これを無効にするようなものではない」と答弁されたということを承知しております。
○宮本(岳)委員 これは今日でも尊重されるんですね、大臣。
○盛山国務大臣 そのように考えております。
○宮本(岳)委員 この二〇〇八年宇宙基本法の制定を受けて、二〇一二年、政府の宇宙開発戦略本部の専門委員会は、JAXAが防衛分野の研究も手がけられるよう法改正すべきだとの提言をまとめ、二〇一二年の通常国会ではついにJAXA法が改悪され、平和目的に限るとする規定が削除されました。
法案審議に当たった我が党の吉井英勝議員は、「JAXAの目的規定から「平和の目的に限り、」をなくすと、結局、軍事の価値観で機密が持ち込まれ、学術研究がゆがめられてしまう」と指摘をし、徹底的に反対をいたしました。当時も政府は、そんなことはないという答弁を繰り返しましたが、あれから既に十二年が経過し、私は、吉井議員の指摘どおり、JAXAは軍事研究に取り込まれる結果になってしまっていると思います。
国立大学法人法案の審議でも指摘しましたけれども、昨年十二月十六日に国家安全保障戦略が閣議決定され、これに基づき、二〇二三年、今年六月十三日、宇宙基本計画が策定されました。宇宙基本計画は資料四につけましたけれども、下線部、「宇宙システムのデュアルユース性を踏まえ、これらの取組を全省庁的に推進する」とし、官民による協力強化が明記されております。
これはつまり、こうした民間技術を軍事にも転用しようということではありませんか、内閣府。
○渡邉政府参考人 お答えいたします。
ロシアによるウクライナの侵略によりまして、宇宙を経由した通信また宇宙からの画像の情報というものが安全保障の確保に極めて重要であるということが改めて明らかになったというところでございます。
一方、近年、海外におきましては、民間企業による宇宙ビジネスというものが進展いたしまして、最先端のテクノロジーが官のみならず民からも創出されるようになったということでございまして、宇宙開発の構造は、官主導から官民連携へということで、構造が変わりつつあるところでございます。我が国におきましても、合成開口レーダー、スペースデブリの除去といった、世界に誇れる先端技術を持つ様々なスタートアップが育ってきているというふうに承知しております。
このような状況を踏まえつつ、宇宙技術のデュアルユース性というものに鑑みれば、我が国として安全保障分野においても先進的な民間宇宙技術を活用するということは可能でございますので、安全保障に資する宇宙システムの早期装備化等の取組の推進を宇宙基本計画に位置づけたというものと認識してございます。
○宮本(岳)委員 何かもう一つかみ合わぬ答弁ですけれども、「民間の宇宙技術の防衛への活用」という文言がこの中に書かれていることは事実なんですね。
宇宙基本計画と同じ日に内閣府宇宙開発戦略本部が策定した宇宙安全保障構想では、民間部門が創出する新たな技術を安全保障分野に迅速に取り込む、政府の宇宙安全保障上のニーズを民間部門に明確に示すことにより、民間投資が促進されるとまで述べております。
これは、前回の国立大学法人法の質疑でも私が指摘をした、今年八月二十五日の総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議での高市大臣、永岡前文部科学大臣の発言に行き着くわけですね。
資料五を見ていただきたい。前回は高市大臣の発言を紹介しましたが、今日は永岡前文部科学大臣の発言をつけておきました。
この会議で永岡大臣は、国研において総合的な防衛体制の強化に向けた研究を継続的かつ効果的に進めていくためには、政府として適切な環境を整えていくことが重要と考えると。それぞれの国研では科学的な意義や様々な政策課題に対応した研究を行ってきており、これもまた科学技術イノベーションの創出を通じた我が国の発展のために不可欠と述べられました。
十七日の当委員会で、盛山大臣は、この関係閣僚会議について、私に対して、当省としては、このような仕組みを通じて、政府全体の取組に貢献していくつもりですと答弁されました。つまり、国研においては総合的な防衛体制強化に向けた研究を継続的、効果的に進めるということですね、大臣。JAXAは紛れもなくここに言う国研の一つだと思いますが、間違いないですね、大臣。
○盛山国務大臣 JAXAにおきましては、宇宙基本法の理念にのっとり、宇宙基本計画に基づいて宇宙安全保障の取組を進めているところであり、それを踏まえて、JAXAと防衛省では、両機関間で結ばれている協定等に基づき、研究協力等を行っております。
文部科学省としては、JAXAの研究成果が様々な形で社会還元されることは重要であると考えており、JAXAと関係機関や民間企業等との連携協力を促すとともに、宇宙開発の中核機関としての役割の拡充強化に向けた取組を進めていく所存です。
○宮本(岳)委員 様々な形で活用していただくといっても、軍事で活用されることは許されないわけですよ。非核、非軍事の趣旨が、まさに最初掲げられたものがなきものにされて、場合によったら軍事にもというところまで来たわけですね。
資料六を見てください。日本経団連は、宇宙基本計画に先立つ今年三月十四日、宇宙基本計画に向けた提言を策定し、その中で、安全保障分野におけるJAXAの機能を強化すべきなどと政府に求めるばかりか、JAXAの体制、機能の強化については、政府が資金を拠出することでJAXAに基金等の仕組みを整備し、企業の研究開発を直接支援する仕組みの構築が必要とまで述べております。
文科大臣、今回のこの法改正は、この経団連の指図を受けてのものでございますか。
○盛山国務大臣 そういうような提言が出たのでしょうけれども、その指図を受けてということではありません。
もう一言述べさせていただきますと、この基金の事業は、宇宙関連市場の拡大等を目標に、民間事業等につながる技術の研究開発を支援するものですが、宇宙技術のデュアルユース性に鑑みれば、成果となる技術が共通基盤的に安全保障にも貢献し得るテーマの設定もあり得ると考えております。
具体的な支援のテーマについては、今後、内閣府の下で策定する宇宙技術戦略を踏まえ、検討していくこととなりますが、宇宙技術戦略の策定に向けては、世界の技術開発トレンド等を踏まえ、安全保障、民生分野、横断的に、我が国が開発を進めるべき技術を見極める予定でございます。
ということでございまして、安全保障にも貢献し得るテーマはあり得ると考えておりますが、安全保障それ自体を目的としているというものではございません。
○宮本(岳)委員 幾ら盛山大臣が否定されましても、経団連の指摘を踏まえて進めてきたと、これは高市大臣はあけすけに語っております。
資料七を見ていただきたい。七月二十七日付の経団連タイムスであります。
この紙上で、高市大臣は、経団連の宇宙基本計画に向けた提言も踏まえ、政府は六月十三日、宇宙開発戦略本部において宇宙安全保障構想を決定するとともに、三年ぶりに宇宙基本計画を改定し、閣議決定した、高市大臣ははっきりそう答えているんですね。
これは事実ですね、内閣府。
○渡邉政府参考人 お答えいたします。
この資料にございますとおり、経団連の宇宙基本計画に向けた提言も踏まえまして宇宙基本計画を改定したということでございまして、そのままということではございません。その内容を十分にしんしゃくした上で改定したというものでございます。
○宮本(岳)委員 いや、受け止めて、そしてそういう方向を取ったわけですよ。
経団連の防衛産業支援を求める声と国家安全保障政策は軌を一にしております。そして、今や、その道に、国立研究機関はもちろん、アカデミア、国立大学まで動員するための関係閣僚会議まで動き始め、盛山大臣は国会で、政府全体の取組に貢献していくつもりと答弁しております。
しかし、政府、防衛省がニーズを示し、デュアルユースの名で国研や大学に軍事研究をさせるようなやり方は、逆に学問研究の発展を阻害するものであるということを厳しく指摘をして、私の質問を終わります。
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討論
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法一部改正案への反対の討論を行います。
本法案は、JAXAの業務として、宇宙科学技術に関する先端的な研究開発の成果を活用し、宇宙空間を利用した事業を行おうとする民間事業者、当該民間事業者と共同研究開発を行う大学や研究機関が実施する先端的な研究開発に対して、必要な資金を充てるための助成金の交付に関する業務を追加するとともに、最終的には一兆円規模の基金を設けようとするものです。
そもそも、宇宙開発について、一九六九年五月九日の衆議院本会議で、わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議が上げられ、この中で、平和の目的に限ることとされていました。ところが、二〇〇八年に制定した宇宙基本法で、我が国の安全保障に資するよう行わなければならないとされ、二〇一二年にはJAXA法が改悪され、機構の目的から平和の目的に限りという文言が削除され、衆議院決議の解釈がゆがめられました。
こうした下で、国家安全保障戦略及びそれに基づく宇宙基本計画の中で、民間の宇宙技術を防衛のために活用し、宇宙産業を発展、促進することが目指されるとともに、宇宙安全保障構想では、「政府が安全保障上重要な技術開発を行う企業を支援する協力形態を拡大し、民間イノベーションも含めた民間主導の開発を促していく。」と述べています。
つまり、本法案における基金による民間支援は、民間の宇宙技術の防衛への活用という政府の宇宙安全保障政策と軌を一にするものであり、その支援をJAXAに担わせようとするもので、到底賛成できません。
政府、防衛省がニーズを示し、デュアルユースの名で軍事研究をさせるやり方は、憲法の平和主義とは相入れない上に、学問、研究の発展を阻害するものです。衆議院本会議決議の原点に立ち返り、非軍事の下で、研究者が自由に研究できる環境の整備、支援こそが重要であることを指摘し、討論を終わります。