平成二十五年十一月二十九日(金曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 池田 佳隆君
小此木八郎君 神山 佐市君
菅野さちこ君 木内 均君
工藤 彰三君 熊田 裕通君
小林 茂樹君 國場幸之助君
桜井 宏君 新開 裕司君
新谷 正義君 冨岡 勉君
永岡 桂子君 野中 厚君
馳 浩君 宮内 秀樹君
宮川 典子君 宮崎 政久君
八木 哲也君 大西 健介君
菊田真紀子君 細野 豪志君
山口 壯君 吉田 泉君
遠藤 敬君 椎木 保君
三宅 博君 中野 洋昌君
井出 庸生君 柏倉 祐司君
宮本 岳志君 青木 愛君
吉川 元君
…………………………………
議員 大塚 拓君
議員 塩谷 立君
議員 渡海紀三朗君
議員 伊藤 渉君
文部科学大臣 下村 博文君
厚生労働副大臣 佐藤 茂樹君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 桝田 好一君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 中野 節君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 布村 幸彦君
政府参考人
(文部科学省科学技術・学術政策局長) 土屋 定之君
政府参考人
(文部科学省研究振興局長) 吉田 大輔君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 大西 康之君
―――――――――――――
委員の異動
十一月二十九日
辞任 補欠選任
小此木八郎君 八木 哲也君
永岡 桂子君 宮崎 政久君
比嘉奈津美君 國場幸之助君
細野 豪志君 大西 健介君
同日
辞任 補欠選任
國場幸之助君 新谷 正義君
宮崎 政久君 永岡 桂子君
八木 哲也君 小此木八郎君
大西 健介君 細野 豪志君
同日
辞任 補欠選任
新谷 正義君 比嘉奈津美君
―――――――――――――
十一月二十八日
研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案(塩谷立君外四名提出、衆法第二二号)
同日
私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(横路孝弘君紹介)(第一六一号)
原発賠償の時効問題の抜本的な解決に関する請願(荒井聰君紹介)(第二三三号)
同(奥野総一郎君紹介)(第二三四号)
同(田嶋要君紹介)(第二三五号)
同(畠中光成君紹介)(第二三六号)
同(山内康一君紹介)(第二三七号)
同(若井康彦君紹介)(第二三八号)
同(浅尾慶一郎君紹介)(第二六六号)
同(菊田真紀子君紹介)(第二六七号)
同(近藤昭一君紹介)(第二六八号)
同(志位和夫君紹介)(第二六九号)
同(塩川鉄也君紹介)(第二七〇号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第二七一号)
同(照屋寛徳君紹介)(第二七二号)
同(宮本岳志君紹介)(第二七三号)
同(吉川元君紹介)(第二七四号)
同月二十九日
原発賠償の時効問題の抜本的な解決に関する請願(渡辺喜美君紹介)(第三二〇号)
同(井坂信彦君紹介)(第三四四号)
同(椎木保君紹介)(第三四五号)
同(中島克仁君紹介)(第三四六号)
同(佐藤正夫君紹介)(第三九七号)
同(三谷英弘君紹介)(第三九八号)
教職員の定数改善と給与・待遇に関する請願(竹下亘君紹介)(第三四二号)
原発損害賠償請求の消滅時効に関する抜本的な立法措置を求めることに関する請願(吉野正芳君紹介)(第三四三号)
学校に正規の現業職員を必ず配置するよう法制化を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三八八号)
同(笠井亮君紹介)(第三八九号)
同(穀田恵二君紹介)(第三九〇号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第三九一号)
同(志位和夫君紹介)(第三九二号)
同(塩川鉄也君紹介)(第三九三号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第三九四号)
同(宮本岳志君紹介)(第三九五号)
同(小川淳也君紹介)(第四五〇号)
同(菊田真紀子君紹介)(第四五一号)
同(宮本岳志君紹介)(第四五二)
私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(町村信孝君紹介)(第三九六号)
学費負担の大幅軽減と私大助成の増額に関する請願(菊田真紀子君紹介)(第四四九号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案(塩谷立君外四名提出、衆法第二二号)
――――◇―――――
○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず冒頭、改正労働契約法の五年という無期転換期限を十年に延長するなどという、労働法制のルールに風穴をあけるこの改悪法案を一昨日突如として国会に提出し、けさの理事会で私の反対を押し切って趣旨説明、質疑そして採決まで決めるなどという極めて拙速で乱暴な委員会運営に対して、強く抗議をしておきたいと思います。
この改正案は労働契約法の特例を設けておりますけれども、そもそもこの法律は、大学研究開発法人を対象に研究開発力強化を進めるものであって、研究者、技術者個人について規定はしておりません。
研究開発システムの強化というこの目的に対して労働契約法の特例がなぜ必要なのか、これを発議者にお答えいただきたいと思います。
○大塚(拓)議員 宮本先生には、大変お世話になっております。
今回のこの研究開発力強化法の改正について宮本先生にも以前から御説明をさせていただいていたところでございますけれども、議員立法の取り扱いが内閣提出法案の後になるという国会の慣例もございまして、いろいろと御迷惑をおかけしておりますことをおわびを申し上げたい、このように思うところでございます。
お問い合わせの件にお答えを申し上げます。
今回の法改正、議員立法による研究開発力強化法の改正ということでございますけれども、もともと、平成二十年にこの議員立法ができたわけでございますが、三年で見直しをするという条項があったわけでございます。既に三年が経過しておるわけでございますが、その間の政治情勢等々がございまして、見直しがなされないままことしに至った、こういう経緯がございます。
この中で、平成二十年から今日までの間に、さまざまな社会情勢の変化がございました。研究開発を取り巻く状況もいろいろと変化をしてきた。こういうことも踏まえまして、今回の法改正においては、現状で我が国の研究開発力というものをしっかりと強化をしていくために必要と思われる措置を盛り込んだところでございます。
そのうちの一つが、委員よく御存じのとおり、昨年、労働契約法の改正ということがございました。その労働契約法の改正によりまして、有期雇用の上限が五年ということになりまして、五年たつと、無期雇用に転換をするか、あるいは、一般的によく言われる言葉で言いますと、雇いどめというような状況に陥ってしまう、こういう大きな研究開発をめぐる環境の変化があったところでございます。
こうしたことを受けまして、さまざまな方面から、私ども国会の方、自民党の方にも、与党の方にも、政府の方にも御要望も多かったところでございます。
まず、研究開発においてなぜ特例を設ける必要があるのかというお問い合わせでございますけれども、基礎研究でありますとか短期的に成果が出にくい研究も含めた研究開発を担う研究開発法人でありますとか大学といった現場におきましては、プロジェクトベースの研究は有期プロジェクトということが標準的でございますけれども、五年を超えるというものも多く存在をしているという実態がございます。そうした中で、研究者などが業績を上げて能力の向上を図っていくということが五年では困難な場合があるということは、委員も御承知のとおりと思います。
先ほど、大西委員からの御質問から提出者の答弁もございましたけれども、研究者は、複数の有期雇用契約というものを繰り返しながらキャリアを積んでいく、多様な教育研究経験を積み重ねていく、そういう中でテニュアというポストを目指していく、こういう一般的な傾向があるわけでございます。
こうした中で、今五年で無期転換ということになりますと、プロジェクト自体が五年よりも長いという中で、有期的なプロジェクトでございますのでその先無期転換ということがやはりどうしても困難だという中で、いわゆる五年で雇いどめということにならざるを得ない、このような状況がございまして、プロジェクト自体の蓄積した知見も散逸をする、そして、そこに参画をしている研究者におきましても、その中で、このプロジェクトで業績をしっかり上げて、それをもとに次のテニュアを取っていこうという思いで、例えばiPSプロジェクトに参加をしている研究者の方がプロジェクトに最後まで参画ができない、このような状況が生まれるということを、これは緊急避難的なところもございまして、避けなければならない。
ノーベル賞受賞者の山中伸弥教授からも、衆参の奉祝行事を初め、強い要請がございまして、国公私立大学の団体からも強い要望がある。そしてまた、iPS研究所の現場ででも、私も研究者、技術者等から……(宮本委員「端的に、簡潔でいいんですよ」と呼ぶ)はい、失礼いたしました。さまざまな研究者からも御意見を聴取する中で、このような特例を設けるということになったところでございます。
○宮本委員 限られた時間でやっているんですから、端的に答弁してくださいね。
国大協を初め大学経営者などから要望があった、そういう答弁もありました。では、対象とされる有期雇用の研究者、技術者の意見はお聞きになりましたか。
○大塚(拓)議員 二十名近くの皆様からヒアリングをさせていただきました。実際にプロジェクトの現場で研究者として働いていらっしゃる方、そして技術者として働いていらっしゃる方、有期雇用の皆様でございます。こうした方々にもヒアリングをさせていただきましたけれども、やはり今のプロジェクトベースで進んでいる研究の現場の実情を踏まえて、十年程度に延ばしていただきたい、こういう要請も受けたところでございます。
○宮本委員 私は理事会でも、このような法案を審議するならば、まず何よりも、この法律によって影響を受ける非常勤や有期雇用の研究者、技術者を参考人にお招きをして御意見を聞くべきだと主張いたしました。当事者の意見をしっかりこの審議に反映させるのは当然のことだというふうに思います。
そもそも、労働契約法の五年の期限の延長は、国家戦略特区の議論で出されてきたものであります。しかし、厚生労働省が雇用ルールに地域差はつけられないと反発し、引き続き労働政策審議会で議論することになっていたはずであります。
十一月十八日の労働政策審議会労働条件分科会では、この法案について報告があったと聞いております。そこでは、労働者側から、労政審の議論を踏まえることなく一部の労働者を適用除外するものであり、危惧しているという批判が出され、労使のいずれからも、政労使の三者構成を原則にした議論を踏まえないものだとの指摘があったと聞いておりますけれども、厚生労働省、事実ですね。
○大西政府参考人 十一月十八日の労働政策審議会労働条件分科会の状況でございますが、この法案の検討結果及び概要につきまして事務局から報告を行ったところでございます。
委員御指摘のとおり、労働側からは、労働政策審議会での検討を経ることなく一部の労働者が基本ルールの適用除外となるということを危惧している旨の意見がございました。
また、労使双方から、労働政策の決定に当たっては、労働の現場を熟知している労使が関与すべきという三者構成主義を最大限尊重することが重要という意見が出されました。
こうした意見を踏まえまして、分科会長より、今回の特例は、大学等に対象を限った議員立法による見直しと理解される、一般に労働関係の法律を見直すに当たっては、今後とも、労働政策審議会での審議を経た上で対応することが基本である、そういうような発言がございました。
○宮本委員 労政審の議論を踏まえない法案提出に懸念の声が上がるのは当然のことだと思うんです。
そこで、発議者にお伺いいたします。対象となる研究者はどの範囲なのか、大学非常勤講師も含まれるのか、お答えいただけますか。端的に。
○大塚(拓)議員 はい、大学非常勤講師等も含まれるものと解釈しております。
○宮本委員 この法案は、有期労働者から見れば、五年で得られる無期転換権が十年に先延ばしになるというものであります。雇いどめを防止する措置も盛り込まれてはおりません。十年働いたとしても、正規雇用につけず、結局十年後に使い捨てになる、つまり使い捨てを十年先送りする、こういう中身になってしまうのではないですか。
発議者いかがですか、首を横に振っておられますが。
○大塚(拓)議員 使い捨てという言葉は、私、現場で頑張っていらっしゃる研究者の皆様に対しても余り適切ではないのではないか、このように思うわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、研究者自身も、さまざまな経験を積み重ねていく中で研究者として大きく育って、そしてテニュアを取っていく、こういう目的を持って一生懸命頑張っていらっしゃる方が多いわけでございます。
そうした方々にとっては、このプロジェクトで成果を上げようというプロジェクトに最後まで参画をしていくということは、キャリアパスにとってプラスの側面も大きいというふうに私は考えております。
○宮本委員 労働契約法改正の立法趣旨、有期契約労働者の雇用の安定を図るのが目的だと、これは厚生労働大臣が答弁で明言されていることであります。雇いどめを先送りする、こんなことは誰も望んでいないわけです。今回の法案は、雇いどめの危険をなくすどころか、若手研究者に、十年後まで雇いどめの危険と背中合わせの不安定雇用を強いるものになっていると言わなければならないと思います。
ことし二月二十一日の参議院予算委員会で文部科学大臣は、我が党の田村智子参議院議員の質問に対して、「教育研究上の必要があり、能力を有する人が一律に契約を終了させられることにならないよう、適切な取扱いを促してまいりたい」と答弁されました。これは大臣、間違いないですね。
○下村国務大臣 間違いありません。
○宮本委員 優秀な研究者を育てるにしても、十年間も不安定雇用が続けば誰もなり手がいなくなる、こういう危険があると私は思うんですよ。
本法案によって、常用雇用を有期雇用に代替する、いわゆる常用代替が加速する、あるいはそれが横行する危険がないと発議者は言い切れますか。
○大塚(拓)議員 これはそもそも、通常の民間企業の雇用とは違う、大学や研究開発の現場という特殊な性格を持った現場に限定をした話でございます。こうした中で、プロジェクト自体が有期でなされているという中でこれを無期雇用に転換していくということはそもそも困難だということから、五年の無期転換権獲得に伴って雇いどめが発生するという懸念が今広がっているというのが実情でございます。
これに対する特例として設けたものでございますので、御質問、御懸念は、私は当たらないものというふうに考えております。
○宮本委員 そんなおめでたい状況じゃないんです。現に早稲田大学や大阪大学などでは、労働契約法改正を受けて五年雇いどめが問題となり、訴訟まで提起をされております。五年を十年に延ばしたところで、十年後の雇いどめが起こるだけなのは明確だと私は思うんです。
もしもそうじゃないと、労働契約法の先ほどの立法趣旨、つまり、有期雇用労働者の雇用の安定を図るのが目的だ、無期転換するんだという趣旨で運用すると言うんだったら、五年雇いどめなんて起こらないですよ。十年後に起こらないなら五年だって起こらないはずなんですよ。現に起こっているから、十年後にしたって起こるじゃないかと私は言っているんですよ。私は、この法案はここに本当に大きな問題が残されていると言わざるを得ないと思うんです。
それで、中には、五年というこの有期雇用の期限が現状で労働契約法で定められたからといって、雇いどめをせずに、立法趣旨を尊重して五年で無期転換を進めている大学も存在いたします。それはあります。これこそ、学術の中心であり、真理の探求を目的とする大学として当たり前の法に接する態度だと私は思うんですけれども、これは改正労働契約法の立法趣旨に沿ってできるだけ無期転換を進めていくべきだ、こういうことがやはり本来だと思うんです。
先ほどから山中先生の名前も発議者から出されております。iPS研究所の山中先生は、NHKの番組「クローズアップ現代」の昨年十月十日の放送で、iPS研究所の九割は有期雇用だ、彼らは十年たつと四十歳、そこで終わりとなれば行く場所がない、正社員化を国にお願いしたい、こうまず述べられた上で、本来は正社員化が望ましいんだが、しかし、五年で雇いどめという事態が起こっているからということでそういう要望も出されたんだと思うんですよ。
発議者も、山中先生がおっしゃるとおり、本来はやはり正社員化が望ましいと、これは同意されますね。
○大塚(拓)議員 本来、研究者も、もちろん研究という特性上、競争というものが一定の意味を持つということはございますけれども、しかし、その中で、安定して、生活に心配なく、不安のない状況で研究に邁進をできるということが望ましいものと私も考えておるところでございます。
ただ、一方で、現状のさまざまな状況を見たときに、この緊急避難的な特例措置を設けないことによって実際に職を失う方が出てこられる。それによって、本来、その方々が最後までプロジェクトを完結すれば次の無期雇用につながるかもしれなかったところが、これも一つ危険にさらされている、こういう状況も踏まえまして、あくまでも緊急避難的ということを先ほどから申し上げておりますけれども、今回このような措置が必要というふうに考えているところでございます。
○宮本委員 ですから、既に五年で無期転換を進めているそういう大学が、例えばこの改正によって、十年でいいんだ、やはり十年間は無期転換するのをやめようと、こんなことになったのでは大きな後退ですよね。
本法案に規定する有期雇用十年延長というものは、あくまで特例であって、一律に大学研究機関の有期労働契約を今後は十年にせよとそういうふうに言っているものではないと私は理解しますが、よろしいですね。
○大塚(拓)議員 あくまでも、研究開発、大学の現場の実態に合わせて、十年であればさまざまな研究開発プロジェクトもその期間の中におさまるということで必要最小限の期限を定めたものでございますけれども、これは、大学が、十年を待たず、あるいは五年を待たずに、有能な研究員を無期に転換していくことを妨げるものではもちろんないということは強調しておきたいというふうに思います。
○宮本委員 そもそも、大学教員など高等教育教員の地位に関しては、国際的には、一九九七年、第二十五回ユネスコ総会が採択した高等教育教員の地位に関する勧告、この勧告に定められております。
文部科学省に確認いたしますが、この勧告の第四十六項「雇用の保障」の冒頭にはどのように書かれてありますか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘の高等教育教員の地位に関する勧告につきましては、一九九七年、平成九年の第二十五回ユネスコ総会において採択されたもので、ユネスコで採択される勧告につきましては、条約と異なって、各国において受諾等の手続はなく、法的拘束力はないという受けとめでございますけれども、四十六条の冒頭には、「雇用の保障(終身在職権又は、適当な場合には、これと同等の職業上の制度を含む。)」という括弧書きがありまして、「雇用の保障は、高等教育及び高等教育教員の利益に欠くことのできないものであり、確保されるべきである。」というふうに規定されております。
○宮本委員 大学教員、研究者の終身的な雇用の確保というのは、国際的にも確立された大原則なんです。しかし、我が国の実態はどうなっているか。先ほど、iPS研究所の山中伸弥教授によると、九割が有期雇用だ、こういう御発言もありました。
以前、私は国立環境研究所の視察に行きましたけれども、メダカやミジンコに対する環境ホルモンの影響を研究しておられました。そこで研究されている方に聞きましたら、十二人でやっている仕事のうち、正規職員の研究員はたった二人で、あとは外部から来ているパート等々だということでありました。これが国立研究所の現場の実態なんですね。
そこで、大学院博士課程修了者の進路の実態は一体どうなっているか。本来、この法律は、人文科学のみに係るものを除く科学技術を対象にするとこれは定義されているわけでありますけれども、何とこの労働契約法の特例というものだけは、その除外さえ外して、人文科学も含めて特例を設けているわけです。
そこで、これも文部科学省に確認をいたします。人文科学系の博士課程修了者の進路動向について、文科省科学技術政策研究所の調査ではどのようになっておりますか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘いただきました、科学技術政策研究所が、博士課程を有する四百十四大学の平成十四年から十八年の五年間に博士課程を修了した者の進路動向等を調査したものがございます。
その報告書におきましては、博士課程修了者の就職状況では、大学の比率が全体では一〇・三%でございますが、人文系では二九・四%となっております。また、非常勤職員として就職している者は、全体が一二・七%でございますが、人文系の場合には二四・二%、そういうデータとなってございます。
○宮本委員 その報告書では、大学教員になった者のうち、これらの分野を専攻しているものが多い、そして、同じ大学教員であっても、理系分野と比べて非常勤の比率が高い、雇用形態が不安定であることは明らかであると調査報告書には出ております。
私は、ことしの六月二十一日の科学技術・イノベーション特別委員会の参考人質疑でこういう話を紹介したんです。
大学の先生が、学生が博士課程の大学院に進学したいと言うと、家はお金持ちか、あるいは資産家の子供とでも結婚する当てはあるかとこう聞いて、そのどちらもなければ諦めさせるという笑い話があるぐらい、学問に打ち込もうと思えば非常につらく厳しい時代を覚悟しなきゃならない、これでは日本の学術の未来はないのではないかと質問したところ、参考人で来ておられた白石隆政策研究大学院大学学長は、
これは笑い話じゃございません。私は常に学生にはこういうアドバイスをして、よっぽど、見ておりましてこの人はもう間違いなく伸びるという、自分に自信がなければやめた方がいいというふうにアドバイスします。
それを考える上で非常に重要なことは、博士課程以上の学生には十分なフェローシップはやはり提供すべきだ。博士課程の学生は学生なんだからというふうに考えている限り、私はやはり、本当に行ってほしいような人というのは博士課程に行かないのではないかというふうに思います。
こう述べられたわけです。
博士課程に進学することさえちゅうちょせざるを得ないこうした現状を放置しておいて、さらに修了後の就職先も、十年たっても非正規、さらにその先には雇いどめの危険さえ排除されない。こんなことでは、今後、我が国の科学技術を担う人は本当に育つのか、こうした危惧を抱くのは当然だと思うんですけれども、これは、発議者と文部科学大臣と両方にお答えいただきたいと思います。
○大塚(拓)議員 おっしゃるような懸念、私も共有をするところでございます。
ドクターの学生というと、我が国では学生、こういう扱いになるわけでございますけれども、欧米諸外国で見れば、準職業というような扱いになっているケースもございます。経済的な心配なく業績を上げていける、こういう立場で扱われている諸外国に比べますと我が国の置かれている状況というものは、私は、まだまだ改善しなければならない、そういう余地が大きいというふうに感じているところでございます。
○下村国務大臣 宮本委員のおっしゃるとおりだというふうに思います。
特に今後、科学技術イノベーションは日本の経済再生の原動力でありまして、これを担う多様な科学技術人材の育成は、我が国の発展の基礎であります。特に、我が国の将来を担う博士課程の学生や博士課程を修了した研究者等に対する支援を強化し育成を図ることは、その人のことならず、日本社会にとっても大変重要なことだというふうに思います。
文科省においては、従来より博士課程の学生や研究者等に対する経済的支援を行ってきてはいますが、平成二十六年度概算要求においてさらに、意欲と能力のある学生が経済的理由により博士課程での学びを断念することがないよう、奨学金事業や授業料減免等の充実を図るほか、我が国の学術研究の将来を担う優秀な博士課程の学生や研究者に対して、研究奨励金を支給するといった取り組みを講じることとしております。
また、博士課程を修了した若手研究者等に対しては、キャリア開発支援の強化や、産業界も含めた多様なキャリアパスの整備を図る施策を講じておりまして、平成二十六年度概算要求において、これらの取り組みを引き続きさらに推進していくこととしております。
今後とも、博士課程の学生や若手研究者の経済的な支援やキャリアパス支援等を行い、その活躍促進に努めてまいります。
○宮本委員 緊急避難と発議者はおっしゃるわけですけれども、そもそも、我が国の高等教育予算は少な過ぎるんです。大臣は、さきの高校無償化廃止法案の審議でも、我が国の教育への公財政支出がOECD諸国の平均に対して大きく立ちおくれていると、これは何度も答弁をしておられました。また、その答弁では、高校もさることながら、高等教育予算はさらに大きく立ちおくれ、OECD諸国平均の半分以下だ、こういう答弁もございました。
大学が無期転換に臆病になる背景には、政府による、人件費を含む大学の基盤的経費の削減があります。国立大学の運営費交付金は、法人化後、一千七百億円も削減されてまいりました。大学関係者の思いは、山中先生のおっしゃるように、正社員化が一番の希望なんです。しかし、運営費交付金が削られる、私学助成もふえないもとで、何とか有期雇用や非常勤でやりくりしてきたというのが実態なんです。
それが、労働契約法の改正によって五年で無期転換ということが求められ、五年で雇いどめという事態すら生まれてきた。だから、せめて適用除外を五年を十年にという声になって出ているわけですよ。
しかし、大学関係者の願いに真に応える道は、こんな雇いどめの先送りをすることではありません。五年を無期転換し、正社員化できるだけの基盤的経費の抜本的拡充が求められていると思うんです。
大臣も、当委員会の質疑で何度も、GDP比の二%、十兆円の教育予算の増額に言及をしておられたじゃないですか。この間削られた一千七百億円の運営費交付金をもとに戻すだけで、二万人以上の有期雇用研究者を正規雇用に転換することは可能になります。
文科大臣、本来はこういうことこそ今求められていると私は思いますが、大臣の御見解をお伺いいたします。
○下村国務大臣 このことに関しては、宮本委員と全く同感でございます。
我が国の高等教育の公財政支出、OECD加盟平均一・一%、我が国はその中で最低水準の〇・五%でありますから、これを拡大をしていくということについては財務省に対して強く要請をしているところでございますが、今後とも、科学技術そして教育費予算の拡大に向けて、先頭に立って努力をしてまいりたいと思います。
○宮本委員 今行うべきは、労働契約法の特例を設けることではありません。運営費交付金の増額、私学助成の拡充など基盤的経費をしっかり確保することによって、改正労働契約法の趣旨にのっとった対応を大学や研究機関に徹底し、正規、無期雇用転換を促し、研究者の雇用の安定で我が国の学術の人的基盤を分厚いものにすることだということを強く指摘して、私の質問を終わりたいと思います。
○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 私は、日本共産党を代表して、自民党、公明党提出の研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案に、反対の討論を行います。
まずもって、一昨日に提出され、以下に述べるようにさまざまな問題もある本法案の質疑、採決を急ぐこのような委員会運営に、強く抗議いたします。
本法案は、大学、研究機関で教育研究に携わる有期雇用の研究者、技術者などを対象に、無期雇用への転換権を五年から十年に先延ばしし、不安定雇用を増大させるからです。
対象となる大学の教員、研究者である大学院博士課程修了者の多くは、修了後、任期つきの大学教員、ポストドクター、非常勤講師などの期限つき、非正規の職にとどまり、数年たっても非正規のままであるのが実情です。研究者が求めているのは有期雇用期間の延長ではなく、研究の発展性、継続性が確保された、身分保障、雇用の安定、地位の向上です。
大学はこの十年間で、国による基盤的経費、国立大学運営費交付金、私学助成が約千七百億円削減される一方で、期限を区切った大規模プロジェクト研究などの競争的資金が拡充された結果、常勤職ポストは削減され、プロジェクト研究費による非正規雇用の若手研究者によって研究を支えているのが実情です。
行うべきは、労働契約法の特例を設けることではなく、労働契約法改正の趣旨にのっとった対応を大学や研究機関に徹底し、正規、無期雇用転換を促すとともに、基盤的経費の増額で、大学を支える財政措置を拡充することであります。
この間、安倍内閣のもとで、雇用の規制緩和が狙われ、国家戦略特区の中で解雇特区を設けることも検討されてきましたが、世論と運動に押され、見送られました。それを突如として議員立法という形で持ち出して行うことは、労働法制に風穴をあけるものにほかなりません。改正労働契約法の施行後一年も経ず、労政審等三者構成を原則とした議論も踏まえず新たな特例を設けることは、拙速に過ぎ、認められません。
本法案には、このほかに、研究開発、イノベーション創出のためとして研究開発法人の出資を可能とすることや、国及び国民の安全にかかわる研究開発やハイリスク研究開発の推進などが盛り込まれていますが、出資した後の利益、毀損した場合の扱いなどの問題点があることも指摘しておきます。
最後に、このような法改正は、若手研究者を使い捨てにし、基礎研究が一層軽視され、結果としてイノベーションの創出にもつながらないということを指摘して、討論といたします。