平成二十五年十一月二十七日(水曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 秋本 真利君
池田 佳隆君 岩田 和親君
小此木八郎君 神山 佐市君
菅野さちこ君 木内 均君
工藤 彰三君 熊田 裕通君
小林 茂樹君 桜井 宏君
新開 裕司君 冨岡 勉君
永岡 桂子君 野中 厚君
馳 浩君 比嘉奈津美君
前田 一男君 牧島かれん君
宮内 秀樹君 宮澤 博行君
山下 貴司君 吉野 正芳君
菊田真紀子君 細野 豪志君
山口 壯君 吉田 泉君
遠藤 敬君 椎木 保君
三宅 博君 大口 善徳君
中野 洋昌君 井出 庸生君
柏倉 祐司君 宮本 岳志君
青木 愛君 吉川 元君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
文部科学副大臣 西川 京子君
財務大臣政務官 葉梨 康弘君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
政府参考人
(文部科学省大臣官房長) 戸谷 一夫君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 前川 喜平君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 布村 幸彦君
政府参考人
(文部科学省研究振興局長) 吉田 大輔君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 田中 敏君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 久保 公人君
政府参考人
(文部科学省国際統括官) 加藤 重治君
政府参考人
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長) 木村 陽一君
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委員の異動
十一月二十七日
辞任 補欠選任
小此木八郎君 吉野 正芳君
永岡 桂子君 山下 貴司君
宮内 秀樹君 秋本 真利君
宮川 典子君 宮澤 博行君
中野 洋昌君 大口 善徳君
同日
辞任 補欠選任
秋本 真利君 宮内 秀樹君
宮澤 博行君 牧島かれん君
山下 貴司君 永岡 桂子君
吉野 正芳君 小此木八郎君
大口 善徳君 中野 洋昌君
同日
辞任 補欠選任
牧島かれん君 岩田 和親君
同日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 前田 一男君
同日
辞任 補欠選任
前田 一男君 宮川 典子君
―――――――――――――
十一月二十一日
学費の負担軽減、高等教育予算増額を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第六四号)
障害児学校の設置基準策定に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一四一号)
私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(稲津久君紹介)(第一四二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律案起草の件
東日本大震災に係る原子力損害の被害者に対する賠償の適切かつ確実な実施に関する件
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○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
先日、当委員会で足立区第四中学校の夜間学級を視察いたしました。さまざまな事情から義務教育未終了の方々に学びを保障する場である夜間中学校は、今日かけがえのない役割を果たしていると思います。
ことしの八月の六日に、夜間中学校問題の全党派が参加する院内シンポジウムが開かれ、私も含む当委員会の理事会メンバーのほとんどが呼びかけ人になっております。シンポジウムで、まさに足立四中の卒業生の訴えもございました。
埼玉在住のその女性は、父親一人に育てられ、中学一年のときから近所に手伝いに行ったり仕事に追われ、結局中学校を卒業できなかった。しかし、就職をするに当たっても、履歴書に中学卒業といううそを書かねばならない。その重圧に押しつぶされそうだったと述べておられました。
五十八歳のときに、仕事をやめ、御主人から、もう一生懸命働いたのだから何か自分のしたいことをしたらと言われ、学校に行きたい、こういう言葉が出たというんです。足立四中に入って勉強するようになって、学校へ行ってよかった、こんなにも楽しいことがあるんだ、漢字が読めるようになった、数学がわかるようになった、それは少しずつ自分が生きていく自信になりましたと語っておられました。この女性はその後、春日部高校の定時制にも進学をしておられます。
まず大臣、この話を聞いて、今日夜間中学が果たしている役割について、大臣の御認識をお伺いいたします。
○下村国務大臣 中学校夜間学級、いわゆる夜間中学は、戦後の混乱期の中で、生活困窮などの理由から、昼間、就労または家事手伝い等を余儀なくされた学齢生徒が多くいたことから、これらの生徒に対して夜間において義務教育の機会を提供するため、昭和二十年代初頭から中学校に設けられている特別の学級であるわけでございます。
実は、私の義理の父が夜間中学についての本を著しておりまして、また、私も夜間中学の関係者の方々からお話を聞いたことがありますが、さらにこれらの方々に加えて、現在、中学校夜間学級では、外国人を含め、不登校などさまざまな理由により義務教育未終了のまま学齢を超過した方々の学習ニーズに対応しており、このような方々に対しても教育の機会を提供する、これは大変重要なことであるというふうに認識しております。
○宮本委員 ところが、この夜間中学が、東京や大阪を初め八都府県に三十五校しかありません。残りの三十九道県には一校もないわけです。
その結果どういうことが起こっているか。先ほどの女性は、五十八歳で学校へ行きたいとなって、現在住んでいる春日部の市役所に電話をした。そうしたら、春日部には夜間中学はありませんと言われた。次に埼玉県に電話した。そうしたら、埼玉県でも夜間中学は置いてありませんと言われた。それで、いつも乗っていた東武線に夜間中学設立校とあった足立区の第四中学校の看板を思い出して、電話をかけて、思い切って学校に行ったら、東京に勤めているか在住していなければ資格がないと言われ、それならと、東京でパートの仕事を見つけて足立四中に入った、こういうことなんです。
そこで、文科省に聞きますが、なぜ全県につくらないんですか。
○前川政府参考人 義務教育未終了のまま学齢を超過した方々の学習ニーズにどのような形で応えていくかということでございますが、基本的には、住民に最も身近な自治体でございます市町村の教育委員会が判断するということがこれまでの建前でございます。
その際、中学校の夜間学級、これは学校教育法施行令の二十五条の第五号の二部授業として行えるわけでございますけれども、これを設置するかどうかにつきましても、市町村の教育委員会がそれぞれの市町村の状況を勘案して判断するということとされているところでございまして、その結果として、いわゆる夜間中学校が設置されていない県も多数あるという現状でございます。
○宮本委員 これまでそういう答弁が続いてきたんです。
しかし、既に日弁連は、二〇〇六年八月の十日政府に提出した「学齢期に修学することのできなかった人々の教育を受ける権利の保障に関する意見書」で、憲法及び教育基本法、国際人権規約及び子どもの権利条約に基づいて、「自己の意思に反し、又は、本人の責めによらずに義務的かつ無償とされる普通教育を受ける機会を実質的に得られていない者については、学齢を超過しているか否かにかかわらず、国に対し、合理的な教育制度と施設等を通じて義務教育レベルの適切な教育の場を提供することを要求する権利を有するものというべきである。」と認定をしております。
そこで聞くんですけれども、高校無償化法案でも議論になってまいりました国際人権A規約、社会権規約でありますけれども、その十三条二項の(d)にはどのように定められているか。そして、日本はこの条文に拘束されているか。文科省、お答えいただけますか。
○加藤政府参考人 委員お尋ねの国際人権A規約、いわゆる社会権規約の十三条二項の(d)でございますけれども、この条項では、「基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化される」というふうに規定されてございます。
我が国はこの国際人権A規約を昭和五十四年に批准してございますので、日本政府はこの十三条二項(d)に拘束されているものでございます。
○宮本委員 この十三条二項(d)についても、この前紹介したように、社会権規約委員会のゼネラルコメント、一般注釈十三号に詳細にその内容が定められております。
パラグラフ二十二、第十三条二項(d)によって、初等教育を受けなかったり全期間を終了していない人々は、基礎教育への権利、ザ・ライト・ツー・ファンダメンタル・エデュケーション、ないし、万人の教育に関する世界宣言で提起される基礎的教育を受ける権利がある、こういうふうに定められているわけです。拘束されているわけですよ。
この精神に立って本当に全ての人に基礎教育を保障しようと思えば、まず、学齢期を過ぎながら義務教育を受けられずにいる人々が日本にどれほどいるかを把握することが必要不可欠だと思うんです。
文科省、義務教育未終了者数を掌握しているか、それは何人なのか、お答えいただけますか。
○前川政府参考人 義務教育未終了の方々の人数の全体の数につきましては、承知してはおりません。
が、小学校に在学したことのない人または小学校を中途退学した人、これは、国勢調査におきまして未就学ということで調査されております。平成二十二年度の国勢調査では、この未就学とされた方が約十二万八千人に上っているということでございますが、この中には、小学校を卒業したけれども中学校を卒業していないという方が入っておりませんので、現実に義務教育を未終了の方というのはこの十二万八千人以上になるはずであると考えております。
○宮本委員 そうなんですね。未就学者はわかるんだけれども、義務教育未終了者がわからない。小学校を卒業していないか入学していない人というのはわかるんだが、小学校を卒業したが中学校は卒業していないという人はわからないわけです。ですから、はるかに義務教育未終了者は多いわけですけれども、それを調査する機会というのは国勢調査になるわけですけれども、現在の質問項目では未就学者しかわからないわけです。
実際に調査項目についての議論があることは、私はわかっております。しかし、とにかく実態がわからなければ対策の立てようがないわけです。それで、この日弁連の意見書は、とにかく一度は政府による全国的な実態調査が必要だと言っているわけですよ。
だから、国勢調査で行うかどうかはともかくとして、やはり、義務教育未終了者がどれだけ全国にいるかを、きちっと政府によって、政府の責任でつかむことは必要だと思うんですけれども、これは大臣の御見解をお伺いしたいと思うんです。
○下村国務大臣 国勢調査において、小学校に在学したことのない人または小学校を中途退学した人については、今の局長答弁のように、調査を行っているわけですが、中学校を終えていない人については調査対象となっていないわけでございます。
御指摘の義務教育未終了者の把握について、国勢調査の調査項目の、記入するということに対して、国民のプライバシーの問題ということで抵抗感が大きく、項目の細分化は困難でできなかったという経緯があるというふうに聞いております。
では、文科省が単独でということになると、全ての国民を対象に大規模な調査を行うということについては、予算も含めて極めて困難なことであるというふうに思いますが、ただ、委員御指摘のように、一度はやはり調査すべきであるというふうに私も思います。
その辺で、国民の抵抗感といいますかプライバシーの問題がありますが、国勢調査については総務省が行っているわけでありますが、文部科学省として、改めて総務省に、この調査項目に義務教育未終了者の把握についても入れてほしいということについては要望していきたいと思います。
○宮本委員 しっかりとお願いをしたいと思うんです。
足立四中でも、昼の中学校では不登校だったが、夜間中学に入学して生き生きと学校に通っている女子生徒からも話を聞きました。
昨年度の学校基本調査によると、全国の、三十日以上の長期欠席した小中学生は十一万二千四百三十七人、中学校で九万一千七十九人となっております。
学校現場では、長期不登校の生徒で義務教育終了の実態には欠けても、その子の将来を考えて卒業証書を出すのが普通だと聞いております。しかし、一度卒業証書をもらってしまうと、それが逆に障害になって、先ほどの女性のように、五十八歳になって夜間中学校で学びたいとなっても、逆に入学資格に欠けることになります。
夜間中学のある県では、不登校の子供や保護者に対して、卒業証書を受け取るか、それとも夜間中学という選択肢もありますよと示して、選択をしてもらっていると聞きました。現に足立四中の女子生徒は、それで選択して夜間中学に入ったわけであります。
これまで歴史的には戦後の混乱期の生活困窮、在日外国人などの義務教育未終了者への義務教育の機会提供が大きな役割であった夜間中学が今後果たすべき役割の一つが、不登校の子供たちの受け皿、あるいは学び直しにあるというふうに思うんです。しかし、北海道や東北地方、四国や九州等のように一校たりともなければ、そのような選択肢すら示し得ないということになります。
そこで、大臣、夜間中学のこういった新たな役割にも照らして、やはり各県一校、例えば定時制高校に併設するというような案もあるでしょうけれども、着実に充実をしていくべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○下村国務大臣 夜間中学の充実については、随分以前から我が党の馳委員も関心を持っておられて、私もその紹介で関係者の方々に、これは大臣になる前の話ですが、お会いしてお話をお聞きしたこともございます。
足立区のように、市町村がそれではつくると言っても、その市町村の範囲内に対象者になる人がどれぐらいいるかということになるとそれほどいないということで、結果的には困難というふうになってしまっている状況の中で、今の御指摘のように、基本的には義務教育ですから設置主体は市町村ですけれども、この発想を変えて、今、都道府県が中高一貫学校をつくっているという事例もあるわけですね。ですから、既存の都道府県の定時制高校に併設のような形で定時制中学といいますか夜間中学、それを市町村が受け皿として考えて、そして、それぞれの県内の生徒をこの夜間中学に対応できるようなことを市町村じゃなくて都道府県が考えれば、十分可能性はあるのではないかというふうに思います。
具体的に、世論調査等で、それぞれの都道府県でどれぐらいの対象者がいるかどうかということもまず把握する必要があると思いますが、そういう方々が多い都道府県に対しては、そういう取り組みについては文部科学省の方でも提案をしてまいりたいと思います。
○宮本委員 ありがとうございます。しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
次に、原賠時効特例法に関することをお伺いしたいんです。
東京電力福島第一原発の事故によって避難を余儀なくされたり、健康被害が生じたり、業務への支障、倒産、不動産価値の減少など、被害をこうむった被害者を文科省は一体どれぐらいいると認識しておられるか。これはひとつ大臣にお伺いできますか。
○田中政府参考人 お尋ねの件でございますけれども、現在、福島県全体で避難をされておられる方は約十四万人、避難指示区域から避難をされておられる方々は約八万人と承知しております。
また、東京電力に対するさまざまな損害の請求は、個人の方から五十一万四千件、法人から二十二万件、このほか、自主的避難については百二十九万七千件というふうになっているところでございます。
○宮本委員 百万人規模で被害を受けているわけですね。
そこで、損害賠償請求、今直接請求の話が出ましたけれども、同時に、原発ADRセンターへの和解仲介申し立てでそれぞれどれだけあるか、これも数字を出してください。
○田中政府参考人 お答え申し上げます。
東京電力に対しまして直接なされた損害賠償請求の件数は、十一月二十二日の時点でございますけれども、個人の方々からの御請求、これが五十一万四千件、法人及び個人事業主の方々からの請求が二十二万件というふうになってございます。
また、原子力損害賠償紛争解決センター、ADRでございますけれども、への和解仲介の申し立て件数、これは昨日の十一月二十六日時点でございますけれども、八千六百六十五件ということでございます。
なお、このうち既済件数が六千百四十九件でございますものですから、現在進行中の件数というのは二千五百十六件という状況になってございます。
○宮本委員 百万人を超えるような被災者に対し、全体で七十万件。これから損害賠償請求に進むという被害者がまだまだ少なくなくおられることを示していると思うんです。
さらに聞きますけれども、請求をしている被害者であっても、損害の項目によっては未請求で、今後順次請求していくことになるという場合があると思うんですが、確認していただけますか。
○田中政府参考人 今回の事故に関します損害賠償ということにつきましては、避難等のための費用、精神的損害、財物の損害、営業損害、就労不能というようなさまざまなものがございます。これらにつきましては、原子力損害賠償紛争審査会の指針にも明示されているところでございます。
これらのうち、例えば東京電力は、避難費用につきましては二十三年の九月に賠償請求の受け付けを開始いたしましたけれども、財物損害ということについてはことしの三月から受け付けを開始してございます。このように、請求項目によって受け付けの時期ということは異なっているというような状況でございます。
こうした状況もございまして、これまで幾つかの損害項目に関する請求をしている被害者の方々であったとしても、他の項目については今後請求をされるということがあろうかなというふうに考えているところでございます。
○宮本委員 つまり、まだ請求もできない、請求をしていても全てを請求できる段階にないというのが現状なんです。
損害賠償請求は、まさにこれからの課題であります。事故から間もなく三年を迎えようとするとき、民法第七百二十四条前段の三年の短期消滅時効の適用は避けるべきだというのが、まさにオール福島の声であります。
五月の原賠ADR時効特例法案の審議でも、私は短期消滅時効の適用を除外する修正案を提案いたしましたが、あのときは残念ながら実りませんでした。本日、この後、同趣旨の立法提案が委員長からなされようとしております。やっと国会がオール福島の声に応えることになったことを大いに歓迎し、私の質問を終わります。