経営委の録音 開示を
宮本岳志氏 NHKの姿勢ただす
衆院総務委
日本共産党の宮本岳志議員は21日の衆院総務委員会で、2024年度NHK予算(事業収入6021億円)の承認に先立ち、NHKの稲葉延雄会長と古賀信行経営委員長の姿勢をただしました。
東京地裁は2月20日、上田良一元会長を「厳重注意」した経営委員会(2018年)の録音データの提出を求める判決を出しています。宮本氏は「録音データはあるのか」と追及。稲葉氏は「データは削除されたと聞いている。経営委員会の取り扱いだ」として、問題の主体は経営委員会だと主張しました。
宮本氏は「地裁判決は森下俊三前経営委員長の放送法41条(議事録の作成・公表)違反を認めた。開示義務について古賀経営委員長の決意を聞きたい」と要請。古賀氏は「議事録の作成・公表は放送法の基本。時代に合わせてきちっと担っていきたい」とのべ、透明性の高い議事運営に努める意思を示しました。
宮本氏はまた、旧ジャニーズ事務所の性加害について「NHKも結果として性加害の機会を提供してきたのではないか。徹底調査と再発防止策を」と求めました。稲葉会長は「性加害についてメディアとしての役割を十分に果たせていなかった。調査・検証し、報道を通じて知らせたい」と答えました。
NHK予算は全会一致で承認されました。
被災地BSプ継続を
能登半島地震で被害を受けた石川県輪島市の一部では地上波電波が届かない状況です。NHKは現在、BSプレミアムを使って放送を届けていますが、3月末で停波の予定です。
宮本氏は「放送法15条の『あまねく日本全国で受信できるように』に照らせば終わらせるわけにいかない」と総務省に対応をただしました。
総務省の小笠原陽一情報流通行政局長は「継続についてNHKと相談している。適切に対応したい」とBS放送を続ける考えを示しました。
(しんぶん赤旗 2024年3月22日)
動画 https://youtu.be/jgPl9xAvRic?si=zo5V97zwqS1NrWMU
配付資料 20240321総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
今年は、元旦から能登半島で大地震が発災し、たくさんの人命が失われました。貴い命を落とされた方の御冥福を心からお祈りするとともに、被災された皆様方に衷心よりお見舞いを申し上げます。
そこで、令和六年能登半島地震について聞くんですけれども、放送法第十五条は、協会は公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、よい放送番組による国内基幹放送を行うと定めております。あまねく日本全国において受信できるようにすることは、災害時においても当然守られるべきNHKの責務だと考えますが、NHKの御答弁をいただきます。
○根本参考人 お答えいたします。
放送法に定められておりますいわゆるあまねく義務は、ラジオとテレビの放送それぞれが受信できるように措置することを求めているものと承知してございます。
NHKの中継局は、能登半島地震におきますと、一月下旬に全て復旧いたしまして、地上波の放送も復旧してございます。この関係でいいますと、衛星放送を含めテレビ放送を受信することはできるため、能登半島における現状がこの規定に抵触しているとは考えておりませんけれども、被災地の視聴者に必要な情報をお届けすることはNHKの役割として必要だというふうに考えてございます。
現在、輪島市内でケーブル網の断線等によりましてNHKの地上波を見ることのできない詳しい世帯数は承知してございませんけれども、三月末までの幹線ケーブルの復旧を目指して地元のケーブルテレビ会社が尽力されているというふうに承知してございます。
現在、BS一〇三チャンネルでの放送の業務は三月三十一日に廃止するということで総務大臣の認可を受けておりますけれども、今後につきましては、ケーブルテレビの復旧状況や被災された方々の要望を踏まえまして、関係者と協議しながら、早急に結論を出すべく検討を急いでいるところでございます。
○宮本(岳)委員 そこなんですね。電源の喪失による中継局の停波、これは復旧したというふうに聞いておりますが、輪島市では、山際で電波が届きにくい世帯に向けてケーブルテレビを輪島市が運営していて、全世帯のうち約四割がそれを視聴しておりました。しかし、この地震によって光ファイバーケーブルは、先ほど三月末に向けて復旧に努力しているとおっしゃいましたけれども、まだ復旧に着手すらできていない。ウェブサイトを見ていただいたら復旧のめどは立っておりませんと書いておりますから、めどが立っていないんですね。
ケーブルテレビ事業の復旧自身、もちろん大事な問題でありますけれども、難視聴対策をケーブルテレビに頼ってきたNHKにとっては、先ほどの放送法第十五条、あまねく日本全国において受信できるようにというこの責務に照らしても、一刻も放置できない課題だと思います。現状は、今おっしゃったとおり、BSプレミアムの空きを使って放送を届けているという説明でありましたが、これもおっしゃったとおり、三月末で放送免許が切れるわけです。ケーブルテレビが三月末までに復旧することは到底考えられませんので、このままだとこれも三月末でということになりかねない。
これはNHKでなくて総務省にお伺いしなければなりません。情報流通行政局長に聞きますけれども、あまねく日本全国において受信できるようにに照らせば、BSプレミアムを使っての放送は三月末で終わらせていいのかということが問われてくると思うんですが、NHKと相談はしていただいていますか。
○小笠原政府参考人 委員御指摘のとおり、令和六年能登半島地震の被害者にとって、日常生活を取り戻すために必要な、より正確な情報を入手する手段として、放送が果たす役割が極めて重要であるというふうに考えております。
御指摘のBS一〇三チャンネルを活用したNHK金沢放送局の番組の放送につきましては、一部の地域におきましてケーブルテレビがいまだ復旧していない状況等を踏まえ、継続についてNHKと御相談させていただいているところでございます。
三月三十一日の放送終了まで間もないことから、NHKと速やかに調整の上、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 調整が始まっているという御答弁です。速やかに、本当に速やかに対応していただきたいと思います。
ユニバーサルサービス義務は障害者に対しても保障されなくてはならない、当然のことです。地震発災直後に全日本ろうあ連盟がNHKに要請書を送ったと聞いております。要望内容は、地震発災直後のNHKのEテレで予定されていた十八時五十五分からの手話ニュースが放送されなかったことについて、手話言語による生活を送る聞こえない人を軽視することにつながり、到底納得できるものではないと厳しく批判をしております。
この全日本ろうあ連盟の要請書に対してNHKはどう対処したのか、NHK、お答えいただけますか。
○山名参考人 お答えいたします。
能登半島地震では、発生時からテレビとラジオの全ての放送波で緊急ニュースを放送いたしました。大津波警報が出される切迫した状況の中、最新の情報をあらゆる放送波で提供すべきと判断しまして、Eテレで予定していた手話ニュースを休止し、総合テレビと同じ内容を継続いたしました。
この中では、聴覚障害者にも情報が伝わるよう、大津波、津波警報を知らせる手話動画を放送したほか、官房長官や気象庁の記者会見を生中継でお伝えする際に、現場の手話通訳の映像を同時に放送いたしました。
全日本ろうあ連盟からの緊急要請に対しましては、既に直接お答えもしておりますけれども、NHKとしましても御指摘を真摯に受け止めているところでございます。
大規模災害時に障害がある方々にも情報を届け切ることは、NHKにとって非常に重要だと認識しております。大規模災害時のユニバーサルサービスの在り方につきましては、更に検討を進め、取り組んでまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 災害時の障害者への情報保障は、私が一貫して取り組んできたテーマであります。
私が最初にNHKにニュースなど生放送への字幕付与を求めたのは、一九九九年三月二十三日、参議院交通・情報通信委員会における一九九九年度NHK予算の審議でありました。さらに、一九九九年十一月十八日の一九九七年度NHK決算の審議では、一九九九年九月三十日に発生した東海村での臨界事故に際して聴覚障害者に情報が保障されなかったことを取り上げております。この質問では、私は既に字幕だけでなく手話の付与も求めております。
当時はまだ海老沢勝二会長でありましたけれども、一九九九年の質問から数えて二十五年、四半世紀が経過して、いまだに災害時の手話言語による情報保障が止まっていたというのでは話になりません。全日本ろうあ連盟の要望書は公共から聞こえない人を排除することのないよう求めておりますけれども、これはひとつ稲葉会長の御決意をお伺いしたいと思います。
○稲葉参考人 公共放送NHKは、障害のある方々に情報をしっかりお届けしていくことが重要な責務だと認識しております。
能登半島地震でも、字幕放送を地震の直後から速やかに実施いたしました。また、外国人に向けても、テレビの副音声とラジオで大津波警報を五か国語で伝える緊急多言語放送も行いました。
今後ですけれども、今、AI技術を活用した字幕放送の自動化あるいは手話CGの開発など、新しい技術の研究を鋭意進めてございまして、これを積極的に取り入れてユニバーサルサービスの更なる充実を図ってまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 是非よろしくお願いをいたします。
昨年の予算審議でも申し上げましたけれども、我が党は二〇二〇年度以降、予算の承認に反対の態度を取ってまいりました。その最大の理由は、かんぽ生命の不正販売を取り上げた「クローズアップ現代+」をめぐる個別番組への介入を当時の森下経営委員長代行が行い、その議事録を開示せず隠蔽し続けてきたからであります。
資料一にはこの間の経過をまとめた年表をつけておきました。去る二月二十日にこの議事録の開示を求める裁判の地裁判決が出ました。資料二はそれを報じた二月二十一日付毎日でありますけれども、見出しには「NHKに「録音」開示命令」とございます。これは経営委員長に聞かなければなりません。裁判所は録音データの提出を命じたんですが、なぜ提出をしないのですか。
○古賀参考人 裁判所の方でそういう判決が出たのは承知いたしております。ただ、何せ係争中の事案でありますから、私からその有無についてここで言及することはやはり差し控えるのが相当だろうというふうに考えます。
○宮本(岳)委員 いや、実は、あなたの前任者森下さんは即座に、既に存在しない録音データを交付せよという判決内容なので遺憾だ、直ちに控訴の手続を取ります、こう述べて控訴したわけですよね。しかし、裁判を見ていましても、録音データについて、かつて録音データを保有していたことはNHK側も争っておりません。かつてあったということは議論の余地もないことなんですね。
今はないと、これは森下さんですよ、森下さんがそうおっしゃっているとすれば、経営委員会の録音テープはどこかで消去されたということになるんでしょうけれども、経営委員会はいつまで録音テープの存在を確認していたのか。着任されてすぐの古賀さんに聞いてどうなのかと思いますが、いかがですか、いつまで確認されていたか御存じですか、つかんでおられますか。
○古賀参考人 委員の御指摘はよく分かりますが、私といたしましては、係争中の事案の中身について言及することは差し控えさせていただきたい、このように思います。
○宮本(岳)委員 そういう御答弁でありました。
録音データは存在しないという森下前経営委員長に対して、控訴に当たってのNHK広報局のコメントは、主張が認められず遺憾です、直ちに控訴の手続を取りますと、少し違うものでありました。これは当然のことでありまして、NHKには経営委員会の議事録の基となる録音データの有無は語れないはずなんですね。経営委員会から当該の録音データは既に削除されたと聞いているというだけで、NHK執行部には経営委員会事務局の中を直接調べる権限などないはずであります。
稲葉会長に確認しますけれども、この録音データの有無をNHKの執行部自身が確認した、捜した、調べたということはないですね、できないですね。
○稲葉参考人 当該録音データは既に削除されたと聞いているということでございます。
また、経営委員会における議事録あるいは録音データは直接的には経営委員会での取扱いということでございまして、執行部側ではこれ以上申し上げることはできないということでございます。
○宮本(岳)委員 多分そうだと思うんです、聞いているというだけであって、それ以上のことは言えない。大体、確認する権限がNHKの執行部にはないわけですから。
では、再び経営委員会に聞くんですけれども、資料一の年表の赤線部、二〇二一年七月八日に開示された議事起こしというものがございます。粗起こしとも呼ばれますけれどもね。この議事起こしというものが議事録なんですか、経営委員会委員長。
○古賀参考人 ここで書かれております議事起こし、これは、再精査をするためにあらあらのものを文書にしたものだというふうに承知いたしております。
議事録というのは、きちんとした形で、精査をした上で、精査というのは、別に隠し立てするつもりはございません、誤解がないようにきちんとした形でするのが議事録というふうに私は承知いたしますので、同じかと言われると、それに対して直ちに明確にお答えできる状況にございませんので、ここではちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
○宮本(岳)委員 恐縮ですけれども、古賀委員長、放送法第四十一条にはどのように書かれておりますか。
○古賀参考人 四十一条では、経営委員会の議事録を作成、公表していくということが書かれているというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 条文どおり読んでいただきたかったんですが、放送法四十一条、委員長は経営委員会の、これは経営委員会の委員長ですよ、委員長は経営委員会の終了後、遅滞なく、経営委員会の定めるところにより、その議事録を作成し、これを公表しなければならない、こう書かれているわけですね。これは経営委員長の責務、義務と定めております。
地裁判決では、二〇一八年十月九日実施の千三百十五回、十月二十三日実施の千三百十六回、十一月十三日実施の千三百十七回の経営委員会の議事録が存在しないため、議事録開示が棄却されました。しかし、議事録がまだ作成されていないならば、その作成のための録音データは存在するであろうということで、それを提出せよ、開示せよ、交付せよとの判決でありました。
これは司法の場で現状では議事録に値するものは存在しないと判断されたということであり、もしも、にもかかわらず録音データも消去したというのであれば、この東京地裁判決は森下前経営委員長の放送法四十一条違反を認めたということになりますね。これらはこれから、もちろん裁判の場で事実を検証しなければなりません。NHK側は録音テープが存在していたことは認めているわけですから、万一消去しているなら、いつ、誰の指示によるものか、経営委員会側が実証しなければなりません。
この点で看過できないのが、森下前経営委員長の口頭弁論での発言であります。
資料三は、二〇二三年六月十八日付東京新聞朝刊です。下線部、原告側の沢藤統一郎弁護士が視聴者とは誰のことかと問うと、森下氏は郵政三社も視聴者ですと返答、沢藤氏から重ねてかんぽ生命不正販売の被害者の目線は入っていないのかと問われると、入っておりませんと言い切った、原告や傍聴席からは、えっと驚きの声が上がったと報じられております。既に退任したとはいえ、放送法を遵守すべき経営委員長の発言とは信じ難い発言であります。
古賀委員長にお伺いするんですけれども、あなたは先日の当委員会で、この問題についてよく知らないとおっしゃいました。同時に、あなたは、開示義務の今後についてどうあるべきか、もう一回しっかり考え直して対応してまいりたいともおっしゃいました。これは少なくとも今までどおりの前例踏襲ということではなく、一度は自分としてもこの問題をしっかり考え直してみたいという新たな決意だと私は聞いたわけですが、古賀経営委員長の御決意をお伺いしたいと思います。
○古賀参考人 まず、森下さんの件につきましては、先ほど来申し上げているように、司法の場で今、係争中でありますから、私から感想を含め、言葉を出すのは差し控えたいと思います。
今おっしゃいましたいわゆる公表、議事録をきちんと作成して公表していくというのは放送法の基本だというふうには考えております。したがって、今後、別に森下さんとの比較ではなくて、いつもどうあるべきかというのは考えながら、時代も変わっていきます、その時代時代に合わせてきちんと担っていくのが私の責務である、このように考えております。
○宮本(岳)委員 三月十四日の当委員会での御発言について、先日、古賀委員長に直接聞いてきてくれというふうにお伺いをしたら、放送法第四十一条の規定に基づき経営委員会の議事録を作成、公表していくという趣旨で説明したものだと。そして、十二日に経営委員長に就任したばかりだったので、今後、放送法の規定に基づく経営委員会の議事録の在り方について自分でよく考量して透明性の高い経営委員会の運営に努めたい、こういう御意向が示されたと私は聞いておるんですが、再度、それでいいのかどうか、御発言いただけますか。
○古賀参考人 私の考えは、基本、今委員のおっしゃったとおりでございます。
○宮本(岳)委員 是非、この方向で、しっかりと経営委員会の透明性を確保していただきたいと思います。
次に、ジャニーズ性加害問題について聞きたいと思います。
ジャニーズ性加害問題、これは所属事務所の絶対的な権力者による深刻な児童への性加害事件であります。昨年八月二十九日に外部専門家による再発防止特別チームが旧ジャニーズ事務所宛てに提出した調査報告書によると、性加害は、一九五〇年代から二〇一〇年代半ばまで長期間にわたり、多数のジャニーズジュニアに対し広範に行われ、少なく見積もっても数百人の被害者がいるとされております。
日本共産党国会議員団もプロジェクトチームを設置いたしました。責任者は吉良よし子参議院議員、私が事務局長を務めました。
なぜジャニーズ事務所の性加害がここまで放置されてきたのか。これは私ども日本共産党も無関係ではありません。なぜもっと早く、もっと徹底的にこのことを取り上げなかったのか、自らにも問いかけているわけです。日本社会全体が問われる問題です。政府も国会も社会全体で取り組む必要があるという立場で、私たちはこれに取り組んでまいりました。
そこで、視聴者からの声ではどうなっているかということを聞きたいんですね。二〇二三年七月から九月の視聴者対応報告を見せていただきましたが、経営への声、つまりNHKの経営への声で一番多かったのは何であったか。御答弁いただけますか、NHK。
○小池参考人 お答えします。
昨年七月から九月の間に視聴者の皆様からNHKの経営に関して寄せられた声の件数は七百四十件でありました。このうち最も多かったのは、ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐってNHKが今後の対応方針について明らかにした記者会見に対するもので、百九十三件ございました。
視聴者の皆様からは、これまでのNHKとジャニーズ事務所との関わり方について、受信料で運営されているNHKだからこそ、きちんと検証を行って国民に説明してほしいという声を多数いただいております。
○宮本(岳)委員 受信料で運営されているNHKだからこそ、きちんと検証を行って国民に説明してほしい、これが多数の声なんですね。
昨年十月九日、NHKニュースで元ジャニーズジュニアの証言が放送されました。二〇〇二年の秋、「ザ少年倶楽部」への出演を希望し、渋谷のNHK放送センターでダンスの練習に参加していたときにジャニー喜多川氏に声をかけられ、局内、つまりNHK放送センター内のトイレで被害に遭ったという衝撃的な証言でありました。
NHKはこれまでの同番組の歴代担当者へのヒアリングを行ったということでありますけれども、性被害を知っていたという担当者はおりましたか。
○山名参考人 お答えいたします。
当時の担当者に伺ったところ、把握しているという者はおりませんでした。
○宮本(岳)委員 自らのニュースではそういう証言を報じたわけですね。私がお尋ねしても、自らNHKが報じたんですからとおっしゃるんですけれども。ではそれが事実かどうかということを、視聴者の声にあるようにきちんと検証を行って国民に説明したかというと、聞いてみた、聞いたら性被害を知っているという人間はおりませんでした、これで終わっているわけです。昨年十月の稲葉会長の定例会見では、番組で検証すると述べられて、第三者による調査は否定をされました。
しかし、これはNHK自身のガバナンスが問われる問題だと私は思います。長期間、広範囲、エンターテインメント業界で見過ごされてきた児童への性加害、性犯罪ですよね。被害者は勇気を出して、命を削る思いで被害を告発されております。具体的に性加害の日時が特定できないにしても、誰が番組に出演、若しくはオーディションに参加したのか、渋谷のNHK放送センターで行われたものであれば、NHKは事実を把握しているはずです。被害救済のため、事実確認を行うべきではありませんか。
○稲葉参考人 お答え申し上げます。
私、かねがね申し上げてきましたけれども、放送の内容について報道機関として自主自律を堅持する立場から、このような問題が起こった場合は、放送に関わることでございますので、自ら原因や背景を解明し、それを放送を通じてお伝えするということが重要だと思っております。
言ってみればこれは放送人の矜持というべきものかと思いますが、この調査では十分でないというような、そういうようなことがあればまた他のやり方も考えますが、現状、こういうことでよろしければ、私自身あるいはNHK自身が報道機関として自主自律を堅持する立場から、自ら原因や背景を解明し、やっていきたい。その関係で、今回生じた問題も、新たな事実が出てきたというような場合には、まず自ら検証し、ニュースや番組を通じて視聴者の皆様にお伝えしていく、こういうことをまずはやらせていただきたいというふうに思っております。
○宮本(岳)委員 放送の自主自律が侵されたのではないかという問題が起こって、それについて最も厳しい立場から批判をしてきた私ですから、放送の自主自律をないがしろにしてもらいたいつもりは毛頭ないんです。番組でおやりになる、その番組の当否について私が語るというのも、全くそういう気はございません。
問題は、放送内容もこの問題にはあるでしょうけれども、同時に、NHK放送センターの中でそういうことが行われた、事実上NHKのスタジオがジャニーズ事務所の貸切り状態になっていた、こういうふうに言われているわけですよね。つまり、ジャニーズ事務所とジャニー喜多川氏にNHKの放送センターのスタジオが私物化されていたということではないのかという疑惑があるわけですね。
この問題でいいますと、先ほど少し番組名が出ましたが、「ザ少年倶楽部」という番組、NHKBS放送の番組でありますけれども、この「ザ少年倶楽部」の放送期間は一体いつからいつまでであったか、そしてメインの出演者はジャニーズジュニアだったと思いますが、間違いないですね。
○山名参考人 お答えいたします。
「ザ少年倶楽部」は、平成十二年、二〇〇〇年四月にスタートいたしまして、去年の十月まで放送いたしました。去年の十月以降は、番組タイトルと内容を抜本的に見直した後継番組を今年一月から放送いたしまして、今月で終了いたしました。
番組開始以来、メインの出演者としては、コンサートなどで活躍し、若年層からも支持されていたジャニーズジュニアを起用してまいりました。
ジャニーズ事務所以外の事務所に所属するタレントの方も、ゲストとして出演したことはございます。
○宮本(岳)委員 ジャニーズ事務所以外の人が出たことがないと言っているつもりはないんです。しかし、圧倒的なジャニーズ事務所のアイドルの方々でやってきたわけですね。むごいことに、多くの子供たちがアイドルとしての成功を夢見るNHKの番組が悪用され、性被害が引き起こされた可能性があるわけです。
資料四は、先ほども紹介した、昨年八月二十九日に外部専門家による再発防止特別チームが旧ジャニーズ事務所宛てに提出した調査報告書の五十二ページから五十三ページであります。下線部ですけれども、ジャニーズ事務所はジャニー氏の性加害についてマスメディアからの批判を受けることがないことから、当該性加害の実態を調査することを始めとして自浄能力を発揮することもなく、その隠蔽体質を強化していったと断ぜざるを得ない、その結果、ジャニー氏による性加害も継続されることになり、その被害が拡大し、更に多くの被害者を出すことになったと考えられると書かれております。
また、TBSも、昨年十一月二十六日に第三者の弁護士二名を外部委員として加えたTBSの特別調査委員会が作成した調査報告書を公表いたしました。
視聴者は、性加害問題を含め、NHKとジャニーズの関係の検証と説明を望んでいるんです。私は、NHKが番組でおやりになることに口を挟むつもりはありません。問題は、ガバナンスの問題です。結果として性加害の機会を提供してしまったのではないのか。この事実を重く受け止めて、徹底的な調査を自ら行って教訓を明らかにするとともに再発防止策を策定することは当然のことだと考えますが、稲葉会長、そうお考えになりませんか。
○稲葉参考人 まず最初に申し上げなきゃいけなかったと思いますけれども、本件性加害の問題につきましては、やはりメディアとしての役割を十分に果たしていなかったというふうに自省せざるを得ないというふうに強く思っております。
今後も、必要であれば十分調査を行い、検証し、その結果について報道を通じて皆様にお知らせする、そういう姿勢で臨んでまいりたいというふうに思っております。
○宮本(岳)委員 我が党は、二〇二〇年度NHK予算の承認に反対して以来、予算承認に反対してまいりました。それは、厳重注意をめぐる議事録の公開に背を向け、放送法の根幹を踏みにじる経営委員会の姿勢を問題としてきたからであります。
しかし、一連の問題を主導してきた森下俊三経営委員長は既に退任され、古賀信行新委員長が就任されました。古賀経営委員長は先ほども、放送法の規定に基づく経営委員会の議事録の在り方について自身でよく考量して透明性の高い経営委員会の運営に努めたいと発言され、三月十三日の会見で稲葉会長は、個別の放送番組など業務の遂行に関する事柄は放送法で規定されているとおり執行部側の自主自律を担保していただくことが大変大切だと述べられました。
我が党は、今回、これらの新たな動きに注目し、この二〇二四年度NHK予算にあえて反対せず、NHK執行部と経営委員会が放送の自主自律を遵守し、かんぽ生命問題で失った国民の信頼を回復できるかどうかを注視していくこととしたいと思います。
NHKが是非とも国民の期待に応えて公共放送の自主自律を取り戻すことを強く求めて、質問を終わります。