平成二十五年十一月八日(金曜日)
午前八時四十分開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 井野 俊郎君
池田 佳隆君 小此木八郎君
大岡 敏孝君 神山 佐市君
神田 憲次君 菅野さちこ君
木内 均君 工藤 彰三君
熊田 裕通君 小林 茂樹君
桜井 宏君 新開 裕司君
武井 俊輔君 冨岡 勉君
永岡 桂子君 野中 厚君
馳 浩君 比嘉奈津美君
福山 守君 宮内 秀樹君
宮川 典子君 菊田真紀子君
細野 豪志君 吉田 泉君
遠藤 敬君 椎木 保君
三宅 博君 中野 洋昌君
井出 庸生君 柏倉 祐司君
宮本 岳志君 青木 愛君
吉川 元君
…………………………………
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
参考人
(日本私立中学高等学校連合会会長) 吉田 晋君
参考人
(全国専修学校各種学校総連合会常任理事)
(全国高等専修学校協会会長) 清水 信一君
参考人
(京都造形芸術大学芸術学部教授) 寺脇 研君
参考人
(千葉大学名誉教授) 三輪 定宣君
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委員の異動
十一月八日
辞任 補欠選任
池田 佳隆君 武井 俊輔君
桜井 宏君 神田 憲次君
新開 裕司君 福山 守君
野中 厚君 井野 俊郎君
同日
辞任 補欠選任
井野 俊郎君 野中 厚君
神田 憲次君 桜井 宏君
武井 俊輔君 大岡 敏孝君
福山 守君 新開 裕司君
同日
辞任 補欠選任
大岡 敏孝君 池田 佳隆君
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本日の会議に付した案件
公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)
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○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、四人の参考人の先生方、まことにありがとうございます。
まず、三年前も参考人質疑でお話をお伺いした吉田参考人にお伺いをいたします。
高等学校教育を担っている私学の役割は極めて重要でありまして、低所得家庭への支援の拡充や給付制奨学金の創設、公私間格差の是正、これは私どもも取り組むべき課題だと当然考えております。
先ほども参考人は、現行制度に上乗せする形で公私間格差の是正ができれば望ましかったがというふうにお話がありました。私どもは、現行の制度の中で予算を抜本的に拡充して、私学への支援を充実させることを求めてまいりました。
今回の改正は、公立も含めて就学支援金に一本化する。所得証明の提出を義務づけるということになってくるわけですね。現行でも、私立学校では、就学支援金を受け取るためには申請が必要で、就学支援金の加算を受けるには所得証明が必要となってまいります。
そこで、就学支援金の申請、所得証明の提出には、多分、私学の現場ではさまざまな御苦労もあろうかと思うんですね。所得証明の提出がなかなかできない家庭もあるんじゃないかと思っております。その御苦労をぜひお聞かせいただきたい。
また、そのために学校に必要になっている人の配置、事務経費の負担というものも心配されるというお話がありましたけれども、この制度変更で、さらに負担がどの程度ふえると見込んでおられるのか、もしおわかりでしたら御紹介いただきたいと思います。
○吉田参考人 具体的には、幾らかかるとか何人かかるとかいうことはわかりません。
ただ、四年前にスタートした際には、学校によっては大変大きな負担がかかったということでしたが、ここ一、二年は、今、それもなれてきたようで、二割ぐらいの生徒でございますので、割とスムーズに動いているようでございます。所得の確認も、新一年生だけは四月から六月と六月以降とに二度分かれますが、二、三年生は継続ということでございますから、そういう部分ではいいように思っております。
新制度が導入されますと、今度はここで、新しい一年生と現行の二、三年生との違いがまた出てくるという部分で、きっと最初は戸惑うものと思っております。それに対して、各都道府県で、私学担当部署がいかにそれを支援していただけるかということになるのではないかと思っております。
○宮本委員 申請書類の提出での御苦労など、もしあれば。
○吉田参考人 済みません、私、実際、東京でございますので、先ほど申しましたように、私学財団に全てやっていただいています。
よその県で伺いますと、最初、始まるときは、例えば、名前だけ出して、県の方の情報で、税務署で所得の一覧をつくってもらえば簡単にできるじゃないかとかいろいろな話があったようですが、やはりそうはいかなくて、各個人が提出するという形になりました。
その形でやっていますので、日付が間に合わないとか期日がどうのとかありますけれども、やはり、年に何回かその申請もずらせるような体制をつくったり、そういうトラブルが起きないように県と学校が話し合いをしながらうまく何とか回しているという現状でございます。
できれば、東京都方式のようなことができるのがもちろん一番ベストだと思いますが、ここにまた給付型のものが加わったりしてきたときにどういうふうになるのかとか、いろいろな心配があることも事実でございます。
○宮本委員 ありがとうございます。
私立高校には、授業料のほかに、多くの学校で施設整備費というものがございます。学校によってそれぞれの金額がいろいろありまして、中には、授業料は全国平均の金額よりも低いけれども、施設整備費が授業料と同じ程度かかるなどの例も実際にあると思うんですね。
私学の学費負担全体を軽減するためには、授業料はもちろんですけれども、この施設整備費なども含めて負担軽減、無償化を進めるべきだと私たちは考えております。
そこで、国の就学支援金の加算の拡充はもちろんですけれども、これは今聞いても授業料のみだと聞かされておりまして、これを授業料のみならず施設整備費にも拡大する、このことについてのお考え、吉田参考人、お聞かせいただけますか。
○吉田参考人 私立学校の保護者の立場になれば、その負担が軽減されることは喜ばれることだと思います。
○宮本委員 ありがとうございました。
次に、清水参考人にお伺いしたいと思うんです。
今回、各種学校も就学支援金の対象として拡大されることは私たちも大賛成であります。中学を卒業した若者が学ぶ場を積極的に支援していくことが大事だと思うんですね。各種学校や高等専修学校、専修学校の高等課程が高校からの中退者の受け皿にもなっているというふうに聞いております。
ただ、御承知のように、就学支援金の支給は三十六カ月、三年に原則として限定をされておりまして、これは私立高校も同様でありますけれども、若者の学びを支えると言うなら、これは支給月数を限定することなく、対象となる学校に学ぶ全ての人に就学支援金を支給すべきだと私たちはかねてから求めてまいりましたが、このことについて御意見をお伺いしたいと思うんです。
○清水参考人 おっしゃるとおりでございまして、こんな例が本校にございます。ある私立高校を不登校になり、中退をし、本校に入った男の子の実例ですけれども、やはり集団の中でやっていけないということで、一学年下げての本校への編入学です。そのときに、学校が就学支援金の説明をいたしました。前任校で就学支援金はもう一年間いただいている、本校に移った場合にはあと二年間はいただける、でも、三年生になったとき、本校で三年生になったときはいただけないわけです、三十六カ月オーバーですので。そういう子供たちもおりますので、そこは少し拡大をしていただくと助かる子供たちは多くいるんではないかと思います。
○宮本委員 ありがとうございます。ぜひ、そういう点はしっかりとやってまいりたいと思うんです。
次に、寺脇参考人にお伺いいたします。
先生のお出しになった「コンクリートから子どもたちへ」という本も、私、読ませていただきました。先生はその中でも、学習権ということもおっしゃっておりますし、そして授業料無償化を単に教育費負担の軽減として捉えるのではなく、教育を受ける権利保障の問題として捉えることが大事だ、こういう強調もされております。
私は、こういう考え方が我が国が昨年留保撤回した国際人権規約の理念にも合致をしている、これが世界の方向だというふうに思っておりますけれども、先生のこの点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○寺脇参考人 おっしゃるとおり、できるだけ多くの学習権を保障するという生涯学習の考え方というのは、世界的にその方向に向かっているというふうに思います。だからといって、財政的な問題もありますから、何でもかんでも無料というわけにはいかないとは思いますけれども、そのことをできるだけ広げていく。
ただ、それが、恩恵的に広げていくという考え方ではなしに、学ぶ権利が保障されているということは、自分の中に学ぶ意欲を持たなきゃいけないという能動性につながっていかなければならない。だから、まだそこのところが私たちの社会は完全な生涯学習社会になっていないのかな。所得が多い人は自分でやればいいじゃないかという話になってしまうのは、やはり一人一人の個人に学習権があるという考え方にまだ至っていないのかなというふうに感じます。
○宮本委員 ありがとうございます。
同じテーマを三輪参考人にもお伺いしたいと思うんですが、今、私たちの社会はそういう学習権というところまでまだいっていないのではないかという寺脇参考人の御意見もございました。これは同じく三輪参考人に、国際人権A規約第十三条二項(b)、(c)の留保撤回、これに触れて、権利を保障していくための無償教育の導入、授業料無償化の意義を人権保障という観点からぜひ語っていただきたいと思います。
○三輪参考人 国際人権規約十三条は、あらゆる段階の教育の無償化を規定しておりますが、しかし、その十三条の第一項に大変重要な条文がございます。それは、教育についての全ての者の権利ということをまずしっかりと据えまして、それは、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向する、あるいは、人権や基本的自由の尊重を強化するとか、社会参加とか、国民諸集団の理解、寛容、友好、平和などを目指す、そういう権利だということを、非常に方向性を明確にしておりまして、そして、その次に、この権利の完全な実現のためにという言葉が入っていて、そこから初等、中等、高等教育の無償制の漸進的導入が始まるわけです。ということからもわかりますように、なぜ無償化するか。これは全ての者の教育への権利、教育を受ける権利だという考え方でございますね。
そして、無償教育だけではない、その後に続くことは何かというと、これは、無償だけでは十分な学習権が保障できませんので、したがって、適当な奨学金を設立する、これが第二点。これがないと学習権は空洞化してしまいます。全て無償になっても、大学の授業料が無償になっても、それでも学校に行けないという人が出てきます。だから、二つ目の柱は、適当な奨学金、ローンとかそういう借金のような奨学金ではないということでございますね。
もう一つ、この条約が明確に世界の各国に向かって義務づけているのは、教育職員の物質的条件を不断に改善すること、この三つでございます。幾ら教育を受けようとしても、マスプロ教育、すし詰め教育で、十分に教育が受けられない条件であったら、それは権利の名に値しない。人格の完成やあるいは人格の尊厳の意識を培うには、そういう条件では実現できない。だから、三つの柱をしっかりと教育を受ける権利の原則として明示しております。
それくらい、ただ字面で書いてあるだけではなくて、それを補うための財政的な条件を明記しているところが、国際人権規約の画期的なところであるというように思います。
こういうところで申し上げるのはちょっとはばかられますけれども、やはり人間は教育的動物でございます。教育を通して人間になります。教育が人間をつくります。ほかの動物は本能で能力が発現しますので、メダカの学校とかスズメの学校とかということは必要ございません。しかし、教育が人間をつくるんです。だから、全ての者にこれは権利でなくてはならないということで、フランス革命の時期に、教育を受ける権利と無償制が一体で提起をされて、そして今日に至っております。
考えてみますと、今大きな時代の転換期ですけれども、猿から人間へと七百万年進化してくるその九九・九%は、実は、狩猟採集社会という中で、共同体が少人数で、無償の関係で、寄ってたかって愛情や知恵を注いで子供を育ててきた、いわば人類の無償の教育が人類を進化させた、つくり上げてきたと言ってもよいほどのものでございます。
しかし、二十世紀の半ばになりますと、有償教育が頂点に達してきます。階級社会が発生し、資本主義が広がるとともに、お金の切れ目が縁の切れ目のような、教育の領域でそういう問題が起こってくる。その二十世紀の真っただ中で実はこの国際人権規約が制定されたことの人類史的な意義というものを、私はもう一度かみしめる必要があると思います。
人間が人間に向かって、もう一回再起動をして、そして新しい羅針盤のもとに二十世紀を生きていく、そういう国際的な約束事としてこの条約が制定されました。
残念ながら、日本は大変この点ではおくれておりますので、高校無償化という画期的なことをさらに前進させるために、もっともっと教育の重要性を社会が理解して、そのために、教育の世界だけのお金のやりくりではなくて、全力で財政を支援する、そういう世論づくりの先頭にぜひこの委員会の皆さんも立っていただきたい。その具体的なあかしとして、まずは高校の無償化、そして大学の無償化から給付制へ、そういう方向に流れをぜひつくり出していただきたいというように思います。
失礼しました。
〔委員長退席、丹羽(秀)委員長代理着席〕
○宮本委員 先日、この法案の審議をやりまして、今、三輪先生がおっしゃったことというのは大臣もある意味ではお認めになった。できることならば無償制を維持したまま公私間格差の是正、低所得者対策をやれればよかったけれども、財政的限界がと。一方で、日本が、非常に教育支出が外国に比べておくれている、OECD平均と比べても、GDP比で二%、十兆円のおくれがある、これはもう党派を超えてみんなでその増額のために頑張ろうじゃないか、ここまで実は大臣もおっしゃったわけですね。
先ほど三輪先生は、高校への公費、私費の対GDP比、これで見ても、OECD諸国平均一・三%に対して日本は〇・八%、一・六倍にする必要があるというふうにお話しになりました。この点、もう少しお聞かせいただけるでしょうか。
○三輪参考人 実は、教育予算が世界主要国で最低であるということは、日本の教育条件が大きくおくれをとっているということでございますが、ここは、問題は、後期中等教育、高校レベルの議論でございます。そのために、今御紹介いただきましたように、後期中等教育の公費、私費の合算でも実は諸外国の六割程度であるということを申し上げました。
そのことがどういう問題を引き起こしているか。今本当に高校教育、義務教育もそうですが、困難を抱えております。社会の激動期、変動期、そこで育つ子供をしっかりと未来に向かって成長させてあげる、そういう専門的な仕事というのは、本当に骨の折れる、日夜格闘してくださっていらっしゃるわけです。ところが、そのための支えの条件が非常に悪い。それは、お金がないからそういうことができないということでございますね。
例えばクラスサイズ。前期の中等教育、中学校のレベルでは、実はOECD平均は二十三・四人です。日本の場合は、だんだん中学校レベルでは規模が小さくなってきていますけれども、三十二・六人ということで、非常に多いですね。後期中等教育はこちらのOECDのデータにも掲載されておりませんが、実は、高校は大体四十人で学級編制しますので、四十人をちょっと下がったところがクラスの平均サイズでございます。
そうしますと、欧米の場合は、傾向としまして、小学校より中学校、中学校より高校のクラスサイズが少ないんです。というのは、思春期になりますと一対一で丁寧に対応するということが特に重要になってくるものですから、だから、さっきのOECDの中学校レベルの二十三よりは、調べると二十人くらいだと思います。二十人くらいなのに、日本は四十人くらいで格闘していらっしゃるというこの現実ですね。
それから、法定勤務時間というのがございます。これはOECDのデータにも出ておりますけれども、OECDの平均は千六百時間台です。年間千六百六十九時間。EU、ヨーロッパだけに限りますと、千五百八十五時間です。ところが、日本の場合は千八百八十三時間なんですね。ということは、OECD比では二百十四時間、一日八時間だと何と二十七日も、一カ月分丸々オーバーワークをしていらっしゃるという状況です。多い。EU比ですと二百九十八時間ですので、四十日近く働いているという過密な勤務条件の中で、しかも物すごいオーバーワークをしている。
先日、全教が勤務時間の調査をされまして、そこで、一カ月の平均時間外勤務という項目がございましたけれども、平均勤務外です、勤務外の時間で六十九時間三十二分です。約七十時間、一カ月でオーバーワークをしている。法定の時間がこんなに長い上に、さらにオーバーワークをして教育をしてくださっているというこの現実、これを考えますと、ちょっとやそっと就学支援金を出してそれで満足というふうな事態では到底ございません。
もっともっと、これは高校教育を抜本的に財政改革をする必要がある、そのことを強調させていただきたいと思います。
〔丹羽(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
○宮本委員 もう時間が参りましたので、終わらせていただきます。
四人の参考人の先生方、まことにありがとうございました。