NHKへの介入に道
宮本岳志氏 放送法改定案を批判
日本共産党の宮本岳志議員は4月25日の衆院総務委員会で、放送法改定案はネット配信の必須業務化を契機に政権がNHKに介入する仕組みを導入するものだと批判しました。
改定案では、ネット配信の必須業務化とともに、手続きをしてネット配信の受信を開始した人も受信契約の対象となります。
宮本氏がスマートフォンやパソコンを持っていれば受信契約を結ばなければならないのかとの不安の声があるとして確認を求めると、総務省の小笠原陽一情報流通行政局長は「スマホやパソコンを保有しているだけでは締結義務は発生しない」「ID登録など端末上の能動的な行為が必要だ」と説明しました。
宮本氏は、同案がNHKの放送番組の同時配信、見逃し・聞き逃し配信とともに必須業務化する「番組放送情報」の配信について評価するなどの仕組みを導入することに言及。「番組放送情報」は「放送番組と密接な関連を有する」「放送番組の編集上必要な資料」で、これまで任意業務だったものをあえて必須とします。
宮本氏は、「番組放送情報」の業務規程について、総務相が利害関係者の意見を聞き、是正勧告・命令までできる強い関与の仕組みを導入すると追及。小笠原局長は「勧告・命令の対象は個々の『番組関連情報』の内容ではなく、業務規程全体が対象だ」と弁明しました。
宮本氏は「法案の内容を検討してきた取りまとめにも一切なかったものだ。NHKに対する権力の介入につながりかねない」と厳しく批判しました。
(しんぶん赤旗 2024年5月15日)
動画 https://youtu.be/4WYlJV6vrUg?si=j_dVI_qarmpZJGg0
配付資料 20240425総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
NHKの全ての放送番組がインターネット配信されることは、国民の要望に応えるものであり、我が党は決して反対ではありません。
しかし、本法案は、NHKのネット配信の必須業務化に当たって、同時配信や見逃し配信だけでなく、番組関連情報の配信も新たに必須業務に加えた上で、その実施状況をNHKが総務大臣に報告する制度を導入し、それを受けて総務大臣がNHKに対する勧告や命令までできるという、極めて重大な内容を持つものであります。
それにしても、そもそもこの制度の導入をこんなに急ぐ理由が私には分かりません。インターネット環境の整備が進むにつれて、二〇二〇年にはついにネット視聴時間がテレビ視聴時間を超え、確かに、若い世代を中心に、テレビを持たない人も増えてまいりました。国民の間には、スマホやパソコンの普及に合わせて受信契約を広げ、受信料収入を増やすために法改正するのではないかといった不安の声もございます。
そこで、まず局長に確認するんですが、今回の法改正でNHKの番組をインターネットでも同時配信することをNHKの必須業務にするのは、受信契約を広げ、受信料収入を増やすために行うのですか。
○小笠原政府参考人 お答え申し上げます。
午前中の説明と重複して恐縮でございますが、今回の法案の背景といたしまして、今委員の御指摘にもありましたとおり、放送をめぐる視聴環境、特にインターネットを通じて情報を入手するという方が非常に増えている、その結果インターネットと放送の視聴時間というのが逆転している、そういう背景があったことということに加えて、それによって情報空間が非常に拡大しているということに加えて、偽・誤情報、そして放送の信頼性や役割への期待、こういったものが非常に大きくなっている、更に加えて、午前中でも御指摘をいただきました諸外国の状況、そういったことを踏まえ、令和三年の十一月から検討会で御議論いただき、インターネット必須業務化ということの必要性を御提案いただき、その内容を踏まえて今回の法案を御提案させていただいているという経緯でございます。
○宮本(岳)委員 余り問いに答えずに別のことをおっしゃったんですが。私は、これはお金をたくさん集めるために、受信契約を広げるためにやるんですかということを聞いたんですね。
これまで受信契約の締結義務が生じる対象としては長く、協会の放送を受信することができる受信設備を設置した者、こうなっておりました。今回、インターネット業務の必須化とともに、特定必要的配信の受信を開始した者も受信契約の締結義務の対象となります。この仕組み導入は、あくまで受信機を設置していない者が自らID登録のような手続をした上で開始したものとなると理解しております。しかし、この法案についての情報が広がる中で、これも先ほどありましたけれども、インターネットにつながるスマホやパソコンであれば受信契約を結ばなくてはならないのかという疑問の声も聞こえてまいります。
局長、端的に、法案に言う特定必要的配信の受信を開始した者とはどのようなものをいいますか。
○小笠原政府参考人 お尋ねの部分でございますが、本法案におきまして前提としておりますのは、IDやパスワードの取得、入力など、通信端末機器の一定の操作等を経て、NHKが必須業務として行う放送番組等の配信の受信を開始した者を受信契約の締結義務の対象としているところでございます。したがいまして、スマートフォン、PC等、通信端末を保有しているだけで契約義務が発生することはないというところであります。
○宮本(岳)委員 それは当然なんですね。
だが、以前に強引な営業が問題になった際、スマホを持っているだけで、ワンセグがつながるといって意図しない契約を求められたことが問題となったこともありました。誤解に基づく強引な契約締結は、国民の信頼を失う結果となります。地デジ移行の時期にはアンテナやテレビの環境が変わり、集合住宅などで衛星放送の意図しない受信が生じるということもかつてございました。
この法案では、インターネット業務は原則実施となりますけれども、当面、衛星放送は除くことが想定されております。地上波契約と思っていたら、衛星放送もやがて必須業務となった途端に契約変更を求められるというようなことにはなりませんでしょうか。
○小笠原政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、受信契約の締結義務の発生ということの要件として、NHKの放送を受信することのできる環境と同等の受信環境になるための能動的な行為ということを要件としているところでございます。
したがいまして、衛星放送の放送番組等のインターネット配信の受信ということに関しましても、端末上の操作等により受信できる環境を自らつくるという能動的な行為ということが必要となるというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 もちろん、解約の仕組みもきちんと示さなくてはなりません。
原理的には、ネット上でID登録を解除すればNHKの側はすぐに確実に分かるということに今後はなると思うんですね。しかし、ID登録を解除しているにもかかわらず契約が続くというようなことが発生すれば、国民・視聴者の理解は到底得られないと思うんです。ID登録を解除すれば特定必要的配信の受信はできなくなるのでありますから、条文に照らせば、受信契約はそこで終了し、受信料の徴収もそこでストップするのは当然だと思います。これも間違いないですね、原理的に。
○小笠原政府参考人 御指摘の点でございますが、NHKの放送を受信することのできる環境がある者と同等の受信環境にあるとは言えない、そういう状態になったときには契約締結義務はなくなるということになります。
今御指摘の、NHKから発行されたインターネット配信サービスを利用するためのIDの登録を取り消した場合ということなどは、この一例として考えられるということでございます。
○宮本(岳)委員 受信料をめぐっては、国民の間にも不信は多いんですね。ここまで確認してきたようなことを丁寧に説明を徹底することは不可欠だと思います。NHK自身はもちろん、総務省としても法律内容を周知していくべきだと考えますが、どのような対処を考えておられますか。
○小笠原政府参考人 今御指摘をいただきました件、能動的な行為があって初めて通信端末については受信契約の義務の対象となるという点についてでございますが、これまでも、この点については法律の説明ということを関係者の方々に説明する際にもあえて強調してきたところでもございますし、当然ながらこれからNHKさんもこの旨をきちんと丁寧に説明していただきたいとも思いますし、また、当然ながら法案の所管として総務省としてもこの点は可能な機会を捉えて丁寧に御説明していきたいというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 国民の信頼なくしてNHKは成り立ちません。ここまでの答弁を聞く限り、強引な受信契約拡大と受信料増収が目的ではなさそうであります。この前、二〇二四年度のNHK予算の国会承認の審議を行いましたけれども、NHKの受信料に関しては引下げが進められている、このことを見ても、今すぐ何かしなければ経営破綻するというようなことはないと思うんですね。
では、法案の一つ一つの中身を聞いていきたいと思うんです。
本法案は、NHKのネット配信の必須業務化に当たって、放送の同時配信や見逃し配信とともに番組関連情報の配信というものを必須業務にいたします。NHKは、これまでも任意の業務として、現行二十条二項二号に定める理解の増進に資する情報、いわゆる理解増進情報のネット配信を行ってまいりました。まず確認するんですけれども、この理解増進情報の配信と今回新たに必須業務に加える番組関連情報のネット配信は同じものなのか、それとも違うものなのか。局長、いかがですか。
○小笠原政府参考人 お答え申し上げます。
番組関連情報につきましては、本法案においては、放送番組と密接な関連を有する情報であって、放送番組の編集上必要な資料により構成されるものというふうに定義をされております。それから、理解増進情報というのは、まさに放送番組の理解を増進するために必要な情報という趣旨が法案に記載されたわけでございます。
いずれにいたしましても、公共放送としてのNHKの役割、すなわち必要かつ国民の間で共有されるべき情報ということを基本的に国民にきちんとお伝えしていくこと、そこの点についてはNHKさんもこれまでも行ってきておられますし、これから、今後とも、この法案が成立した暁にもそういった役割を果たしていただいているというふうに考えております。必要な情報をきちんとお届けしていくということについては、理解増進情報あるいは番組関連情報ということ、いずれにおいても変わるものではございません。
したがって、法案ということにつきましては、今の定義の差、それから本法案で定めました様々な手続ということの差が出てまいりますが、それについての必要性ということについては、この前提となる有識者会議の御議論において、そこで指摘された必要性ということに基づいて措置をさせていただいているものでございます。
○宮本(岳)委員 NHKがネット業務をどの範囲で実施するかは、公共放送として国民の利益を最大限に保障する方向で検討すべきものであります。
ところが、改正案二十条の四では、番組関連情報の配信の業務を行うに当たって、NHKは番組関連情報配信業務の実施に関する規程を定めて、これを総務大臣に届け出なければならないとされております。そして、二十条の四の二項にはその業務規程の内容が三項目にわたって列挙され、次の各号のいずれにも適合するものでなければならないと定めております。
言うまでもなく、放送法三条は、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」と、放送番組編集の自由を定めております。そもそも、NHKがネット業務をどの範囲で実施するかは、公共放送として国民の利益を最大限に保障する方向で自らが決めるべき、こういうことではないんですか、局長。
○小笠原政府参考人 まず、今御指摘をいただきました点につきまして、御指摘の放送法二十条の四第五項から七項までに規定する措置ということについて今言及がありましたところでございますが、この措置の基本的な考え方については、NHKの今委員からもおっしゃいました自主性を最大限尊重しつつ、しかしながら放送法の今回の法案がNHKに求める要件ということに適合すること、これを確保するために慎重な要件、手続の下で一定の行政措置ということを講ずる、そういった仕組みを取っているものでございます。
具体的に申し上げれば、本法案は、まずNHKの番組関連情報配信業務について要件を三つ定めておりますが、この要件を踏まえました業務規程の作成、その規程に従った業務の実施、業務の実施状況の定期的な評価、あるいはこれを踏まえた業務規程の必要な変更、こういった基本的なプロセスにつきましてはNHKの判断と責任ということに委ねるということにしているところでございます。
一方、これまでの議論の過程で、他の放送事業者との公正な競争の確保等々に支障が生じないというような観点の、放送法の今回の案に定められました要件に適合するということを確保するということの必要性も指摘されたところでございます。したがいまして、確保の手段ということで、今回、電波監理審議会への諮問、答申を経て、あくまで必要に応じてということでございますが、変更の勧告や命令を可能という仕組みにしているところでございます。
○宮本(岳)委員 いや、そこなんですよね、私が問題にしたいのは。
二十条の四の二項に列挙された、今もおっしゃった番組関連情報の配信の業務に当たっての三つの業務規程の内容、一つ目は公衆の要望を満たすということでありますけれども、その後にわざわざ、必要かつ十分なものであることと書かれておりますね。必要かつ十分なものであるという言い方は、つまり公衆の要望を満たす上で足りないものが一つでもあってはならない、また余計なものも一つでもあってはならないというふうに読めるわけでありますけれども、こんなことまで指図するんですか。
○小笠原政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘のありました適合要件の部分についてでございますが、これは業務規程の内容が全体として適合しているということを求めるものでありまして、その業務規程に従って配信される個々の番組関連情報の内容が適合しているということを求めるものではございません。この点は午前中の当委員会における御議論においても説明させていただいたとおりでございます。
したがいまして、先ほど申し上げましたようなNHKの自主性ということを尊重した上でのプロセスということでございますので、それに従った御提案ということをさせていただいているところでございます。
○宮本(岳)委員 いやいや、そこが問題になるわけですね。
当該業務規程に従った番組関連情報配信業務の実施により、全国向け又は地方向けに他の放送事業者その他の事業者が実施する配信の事業その他これに関連する事業における公正な競争の確保に支障が生じないことが確保されるものであること、これは三号になるんですけれども、三つ目にはこれが挙がっています。つまり公正な競争の確保、すなわち民業圧迫にならないかどうかということをこれまた要件に挙げております。
つまり、これまでも理解増進情報の配信などもやってきたんですよ、既にNHKは、任意ですけれどもね。そのときにはこのような規定は放送法にはありませんでした。公正な競争の確保、すなわち民業圧迫にならないかどうか、これを要件として放送法に書き込むというようなことは、これは初めてのことですね、間違いないですね。
○小笠原政府参考人 今委員御指摘の、今回の法案で新たに創設しているプロセスであるということはそのとおりでございます。しかしながら、その背景としては、放送法の制度の前提の趣旨から始まる議論というのがございまして、午前中にも申し上げましたが、我が国の放送制度は、広く受信料によって支えられるNHKと広告料収入によって支えられる民放とそれぞれが存在する二元体制、双方が切磋琢磨することによって放送全体が発展してきたもの、こういった仕組みで今までの放送制度ということは運用されてまいりました。言い換えますと、放送の二元体制ということを含むメディアの多元性ということを確保することで放送番組を国民・視聴者にお届けするという環境が整備されてきたということでございます。
そして、今まさに委員御指摘のとおり、今現在NHKがインターネットで番組を配信しているということ、これは実態として行われているわけでございますが、一方、近年、国民・視聴者の多くがインターネットを主な情報入手手段として利用しつつあるなど、放送をめぐる視聴環境は急速に変化しております、インターネットの情報空間拡大と偽・誤情報の問題ということも顕在しております、そういった背景の下に御議論いただいた結果、有識者会議でも御提案をいただき、それを基に今回のプロセスを御提案させていただいたところでございます。
○宮本(岳)委員 インターネットが発展するに従って放送をインターネットでも流してもらいたい、これは故あることでありまして、国民の利便の向上に役立つ、国民の要望に応えることになる。我が党は賛成だと言っているわけですね。
問題は、番組関連情報というものを必須業務に入れるには、このような基準まで定めて、こういう複雑な仕掛けをつくらなければならないということになっているのがいかなることかということを申し上げているわけなんですよ。
これまで、民業圧迫にならないように、あるいは公正な競争の確保、これまでも民放との二元体制だったとおっしゃるけれども、では放送法にそういう定めはこれまでありましたか、あるいはそれ以外でもそういった定めを掲げてやってきたんですか。
○小笠原政府参考人 まさに委員おっしゃいますとおり、現在の放送法制度ということが、先ほどから申し上げております様々な環境変化ということの中でどう考えていくべきかということを有識者会議の中で御議論いただいたわけであります。そして、今委員から再三、やはり必須業務の範囲ということについて、放送番組の同時及び見逃し配信ということを超えて、今回、番組関連情報を必須業務の範囲に入れているということについての問題意識を御指摘いただいております。
その論点についてでございますが、やはり有識者会議でも御議論もあったところでございます。その中で、インターネットへと情報が広がる中で、公共放送の役割ということを議論する過程で、例えば聴覚障害をお持ちの方々への文字情報の配信あるいは災害時などにおける迅速なプッシュ通知といった、全ての国民・視聴者に対し放送番組の内容をインターネットの特性を生かして届けることの必要性という御指摘を受けているわけでございます。
そして、そういった議論の過程を経て、取りまとめにおきましても、そこの論点、つまり必須業務化の範囲をどこまでにするか、要は放送番組の同時及び見逃し配信ということを超えてどこまで入れるかということについては、番組関連情報ということの必要性について、NHKの設置趣旨に鑑み、国民の知る権利への奉仕という公的な側面を勘案すれば、民間放送事業者や新聞社、通信社のほか、NHKを含めた様々な主体から視聴者が多元的に情報を受け取ることができる環境を整えることが望ましい、こういった御指摘を得ているところでございます。
こういった御指摘も踏まえて今回の御提案とさせていただいているところでございます。
○宮本(岳)委員 いやいや、今回の法案に盛り込んだようなことはこれまでなかったんですよね。今日は資料で配りましたが、これまでは理解増進情報についてはNHKインターネット活用業務実施基準の中に競合事業者という言葉はございますという説明をいただきました。第三十九条ですよ。競合事業者又は外部事業者から意見、苦情等が寄せられたときは、適切かつ速やかにこれを受け付けて対応する。至って当たり前のことを書いているわけでありまして、これと今回のものが同じなわけはないんですね。
今回、だから、私は、同時配信と見逃し配信をやり、それ以外にこれまでやってきたような、つまり今ここで紹介したような任意の、必須業務でない理解増進情報の提供、これを今までどおりやるということに別に反対しませんよ。もちろん、今のままでいいかどうかは改善の余地があるかも分かりませんが。
ただ、番組関連情報というものを必須業務に入れて、それを入れるからにはこういう仕組みをつくらねばならぬというこの議論が本末転倒に思えて仕方がないのです。内容は全く違うし、そもそもインターネット活用業務実施基準は、総務大臣の認可を受けるものの、NHK自身が作成する自主的な基準なんです。一方、今回の改正案の二十条の四、二項三号は、法律に、競合事業者との公正な競争の確保に支障が生じないようにせよなどと書き込むものですよね。
そこで、小笠原情報流通行政局長に聞きます。これはつまり、今後は、番組関連情報の配信業務に関してだけであるとはいえ、NHKに対して、競合事業者との公正な競争の確保に支障が生じないようにせよという制約を法律で押しつける結果になります。これは、放送法三条が定めてきた、何人からも干渉され又は規律されることがないという放送の性格をゆがめるものではありませんか。
○小笠原政府参考人 ただいまの点につきまして、まず二点申し上げます。
第一点であります。まずはNHKの自主性との関係でございますが、先ほどプロセスの点で申し上げましたとおり、今御指摘のありました業務規程の作成、それの公表、それの実施状況の報告、それからその変更等々、いずれもこれはNHKの自主性ということに委ねられているわけであります。
そして、次の第二点で申し上げますが、では、業務規程ということについてどういうプロセスに乗せて、大臣の勧告といったようなプロセスに乗せていくかということにつきましては、あくまでもNHKの業務規程の内容あるいは実施状況について、三号の公正競争のところについては様々な方々の意見といったようなことを踏まえて必要があると判断した場合、しかもその場合には電波監理審議会、新たな第三者機関の審議を経た上で総務大臣が判断するということであります。
更に加えて申し上げますと、総務大臣の勧告の対象でありますが、そこのところは、今委員が御指摘になりました個々の番組の内容ということを対象としているわけではなく、あくまで業務規程ということ全体に対するものということ、その点は御理解いただければと思います。
○宮本(岳)委員 いやいや、これまでと全然違う仕組みが入るわけですよ。報告を三年に一回、長くともですね、三年ごとに番組関連情報の配信業務の実施の状況について総務大臣に報告をさせる、これを義務づけております。二十条の四の五項にはその報告を受けたら総務大臣は何をすると書いてありますか、局長。
○小笠原政府参考人 二十条の四第五項においては、総務大臣は、第一項の規定による届出又は前項の規定による報告があったときは、業務規程の内容が第二項第三号に適合しているかどうかについて、学識経験者及び利害関係者の意見を聞かなければならないというふうに定めております。
○宮本(岳)委員 これも驚くべきことですよ。公共放送たるNHKの業務について利害関係者が影響を及ぼす規定が入っている、しかも意見を聞くのは総務大臣なんですよ。
NHKからの報告を総務大臣が受けて、総務大臣が利害関係者の意見を聴取するという仕組みは、この法改正の内容を検討してきた公共放送ワーキンググループの取りまとめにも一切なかったものですよね。私、逐一読ませていただいたけれども、これですけれどもね。公共放送のワーキンググループの取りまとめにない、総務大臣がやるというものは一体どこで決めたんですか、局長。
○小笠原政府参考人 お尋ねのところにつきまして、議論の経緯について御報告を申し上げます。
今委員御指摘になりました、総務大臣が意見を聞く、その場についての御議論でございますが、昨年の十月、一旦報告を頂戴した後、これも報告の、御提言に基づいて設置された会合でございますが、具体的な競争評価の仕組みということについて御議論いただく場として日本放送協会のインターネット活用業務の競争評価に関する準備会合が開催をされ、そこの中で検討を進めていただきました。
そこで、どういう場において要するに議論すべきかというところが議論されたわけでありますが、競争評価の仕組みについて、ワーキングの議論、つまり去年の十月の時点では例えば電波監理審議会というような場も出ていたわけでありますが、今申し上げた準備会合という場の中で改めて御議論があった結果、業務規程ということについて議論することとなると、電波監理審議会のような、放送事業者さんが委員として参加できない、そういったところで行うのではなくて、やはり当事者が、幅広い関係者が集まって議論する場ということ、そこのところが適当ではないかという御意見が出たところであります。そういった御議論も踏まえまして、今読み上げさせていただきました仕組みということを提案させていただいているところでございます。
○宮本(岳)委員 いやいや、この中では第三者機関(電波監理審議会等)となっていまして、等ともついているわけですね。問題意識は、第三者機関でないとやはり駄目ですよね、こういう議論なわけですよ。総務大臣が直接これを聞いて勧告できたり変更を命令できる、こういう項目を六項と七項に入れる、この仕組みはNHKとNHK放送番組に対する総務大臣ひいては政権の介入につながりかねないものではないか、そういう可能性が排除されていると言えますか。絶対にそういうことはありませんかね。
○小笠原政府参考人 今御指摘の点については、午前中の当委員会の議論でも御指摘を受けたところであったと思います。あくまで勧告、命令の対象というのは、個々の番組内容ないしは個々の番組関連情報の内容ということではなく、業務規程全体が対象であるということについて御説明をさせていただいたところでございます。
それから、今、こういった勧告、命令の仕組みというところがどういったプロセスでこういったところに出てきたのかという御質問でございます。
先ほど御紹介申し上げました日本放送協会のインターネット活用業務の評価に関する準備会合の中の検討ということを進めていただく中で、例えば競争評価の結果、NHKさんの業務規程等々に問題が仮に生じた場合、総務省において何らか対処する仕組みということが整備が必要ではないかというような御意見がありました。そして、確かに行政指導等々いろいろな行政措置の手段はあるけれども、やはり問題があった場合の是正手段ということについては様々検討が必要ではないか、そういった御意見もいただいているところでございます。
したがって、そういった御意見を踏まえまして、今般、総務大臣による勧告、命令措置を含めた仕組みということを提案させていただいたところでございます。
○宮本(岳)委員 時間が来ましたから終わらざるを得ないんですけれどもね。
駄目ですよ、それは。あなた方は勧告やあるいは命令のときには電監審に諮るということを言うけれども、そんなことはほとんどないんです。これまでの理解増進情報でも勧告とあるんですけれども、やられたことは一回もないんです。三年に一回報告を取り、その報告は利害関係者に見せて意見を求めることは分かっているわけですから、NHKはそこで勧告されたりあるいは命令されたりするような報告は上げないんです。あらかじめそういうことにならないような法文になっているんですよ。これがNHKに対する圧力になるということを私は申し上げているんです。こういうやり方はきっぱりやめるべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。
討論
○宮本(岳)委員 日本共産党を代表して、放送法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。
NHKの全ての放送番組がインターネット配信されることは、国民の要望に応えるものです。しかし、本法案は、NHKがネット配信を必須業務化するに当たり、番組関連情報について、民間放送事業者等が行うネット配信等との公正な競争の確保に支障を生じないもの、すなわち民業圧迫にならないなどの要件を含んだ業務規程策定と、配信内容が民業圧迫となっていないかどうか定期的に検証することをNHKに義務づけるとともに、総務大臣は、NHKから届出や報告があったとき、競合事業者などの利害関係者から意見を聞き、検証した上で、是正勧告、命令までできるとしています。
NHKがネット業務などをどの範囲で実施するかは、公共放送としてNHK自身が国民の利益を最大限に保障する方向で検討すべきです。
NHKのネット配信の必須業務化を議論してきた公共放送ワーキンググループでは、現在のNHKのネット配信事業がどれだけ民業圧迫となっているかのエビデンスは示されませんでした。不明確なエビデンスを基にNHKのネット業務の範囲に制限をかけ、競合する利害関係者である業界の利益を優先するものにほかなりません。
しかも、重大なことは、政府がNHKの配信内容について、競合する利害関係者の意見を聞き、勧告、命令までできる強い関与の仕組みを導入することです。これは、NHK及びNHKの放送番組に対する権力の介入につながりかねず、反対です。
本改正案の議論過程では、NHKのインターネット配信の必須業務化による将来ビジョンなど根本問題についての議論は十分に行われず、ネット配信の必須業務化ありきで法制化を急いだものです。
インターネットが一般化した下で、NHKが放送と通信の融合による新しい公共メディアを目指すのであれば、国民の知る権利が一層充実し、民主主義の発展に寄与する目的のために実践されなければなりません。しかし、こうした根本問題を十分議論しないまま、自民党情報通信戦略調査会が業界の意向に沿って政治決着させると称し、いわばそこにつけ入るように大臣や政権がNHKに介入する余地を開くなど、重大な問題があると指摘して、反対討論といたします。