子ども動員 撤回求める
万博校外活動通知 宮本岳志氏が質問
衆院文科委
日本共産党の宮本岳志議員は14日の衆院文部科学委員会で、来春開幕予定の大阪・関西万博に、校外活動として子どもの動員を図る通知を撤回するよう迫りました。
万博会場予定地の夢洲(ゆめしま)1区では3月28日、メタンガスによる爆発事故が発生。それにもかかわらず文科省は内閣官房と経済産業省から4月3日に依頼を受け、同8日に「修学旅行等における2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の活用について」という通知を発出しています。
同通知に爆発事故の記載はなく、「事故の事実を知らずに通知を出したのか」と宮本氏がただしたのに対し、文科省の矢野和彦初等中等教育局長は「発出前から文科省として把握していた」と答弁。宮本氏は「把握しながら何も触れない通知を出したということだ」と指摘しました。
宮本氏はさらに、万博への学校行事で爆発事故が起きた場合は「文科省が全責任を負うのか」と追及。しかし、文科省は「現在、博覧会協会(万博協会)が会期中の安全確保の対策をとりまとめている」と繰り返すのみで、主体的な判断を示しませんでした。
宮本氏は「『事故の絶無を期する』という遠足・修学旅行の最も大切な前提で、文科省は責任をもとうとしない」と批判。「万博会場は現役の廃棄物最終処分場。どんな対策をとっても安全な場所にはならない」と述べた上で、「子どもたちを危険にさらし、責任を学校に押し付けるような万博への強制動員はやめるべきだ」と主張しました。
(しんぶん赤旗 2024年6月15日)
動画 https://youtu.be/uvbvig5tmKo?si=nQxZWvGs-qJAn-1j
配付資料 20240614文科委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
本日、冒頭の田野瀬委員長の報告にあったように、一昨日、極地研に伺って、各種研究施設や南極・北極科学館に御案内をいただきました。南極・北極科学館は、我々が見ても楽しく、充実したものでありましたけれども、子供たちにも是非見てもらいたい内容でございました。
現場でも質問が出ましたけれども、子供たちや生徒の南極・北極科学館を含む極地研への訪問数は昨年一年間で何回になっているか、改めて校種別と合計で答えていただきたいと思います。研究開発局長。
○千原政府参考人 お答え申し上げます。
初めに、委員の先生方におかれましては、御多忙のところ国立極地研究所を御視察いただきまして、ありがとうございました。
お尋ねの件でございますが、令和五年度に国立極地研究所を訪問した学校の数は、小学校六校、中学校八校、高等学校十一校、特別支援学校六校の合わせて三十一校となります。
気候変動などの地球規模課題の解決において南極及び北極研究は重要でありますことから、引き続き極地研究の更なる理解増進を図ってまいります。
○宮本(岳)委員 三十一回に上っているとの答弁であります。是非、引き続きそういう役割を果たしていただきたいと思うんです。
しかし、校外活動の大前提は子供たちの安全というのが、この間、これは万博への子供たちの校外学習をめぐって議論してきたことですね。万博の会場となっている夢洲は、先日お示ししたように、現役の廃棄物最終処分場であり、埋め立てたものの分解に伴い、可燃性のメタンガスが発生し続けております。
まず、環境省に確認をいたします。
三月二十八日にメタンガスの爆発事故が発生した夢洲一区は、大阪市の海面最終処分場である北港処分地となっております。配付資料一につけましたけれども、環境省の海面最終処分場の廃止と跡地利用に関する技術情報集の参考資料三の二ページには「二〇二五年十一月埋立終了予定」と記載されております。
現在も廃棄物の埋立処分が続いている最終処分場で間違いないですね。
○角倉政府参考人 お答え申し上げます。
現在も廃棄物の埋立処分が続いている最終処分場でございます。
○宮本(岳)委員 確認されました。
昨年夏には約二トンのメタンガス発生が確認されており、一日当たり約二トン、それは今後も増加することが想定されております。
博覧会協会は、三月二十九日の事故報告では、グリーンワールド工区のみ、一部管理型の廃棄物処分場となっており、可燃性ガスが発生しています、ほかのエリアでは、建設残土等で埋立てされており、可燃性ガスの発生はありませんと述べていましたが、五月三十日の「お知らせ」では、四か所で低濃度のメタンガスが検出されているデータを確認しましたと述べました。
配付資料二は、それに添付されたPW工区におけるメタンガスの検知状況を示した地図でありますけれども、見ると、今年一月から三月にかけて既にメタンガスが検知されております。既に一月三十日には、会場の迎賓館予定地の付近で七%LELという濃度のガスが検知されております。
ほかのエリアでは可燃性ガスの発生はありませんという三月二十九日の報告はうそだったんですか、経産省。
○茂木政府参考人 今御指摘がございました、六月七日に、パビリオンワールド工区のメタンガスデータが検出されたという公表でございますが、これは、グリーンワールド工区以外のところでのガス検出量があるかどうかということについて再度確認するために、パビリオンワールド工区も含めまして、施工事業者から提出されている記録を全て再検証をいたしました。これは、昨年、工事が始まりました二三年七月以降、ガスの計測をしておりますけれども、それ以降、今年の三月までのデータを再検証いたしましたところ、先ほど委員からお示しがあった四か所において、それぞれ一回、ガスの検出が行われたということでございます。
したがいまして、その点を改めて再検証した結果、そういった状況が把握できましたので、五月三十日にその旨を公表した次第でございます。
○宮本(岳)委員 何を言おうが、検査項目にはメタンガスが含まれており、三月にガス爆発が起こったときに、当該工区はもちろんですけれども、ほかの工区でも同様の事故が起こってはいけないと考え、調査するのが当然で、そのとき気づかなかったなどあり得ないわけですね。
経産省は、昨年七月以来、酸素濃度とともにメタンガス濃度についても測定をしてきました。それは、メタンガス発生の可能性を予想していたということであります。三月二十八日に爆発事故が起こる前から、メタンガスの発生は、計測もして分かっていた。ましてや、三月二十八日には爆発事故が発生し、その日のうちに経産省と内閣官房にも報告がありました。
にもかかわらず、経産省と内閣官房は、なぜ四月三日付で、資料三につけましたけれども、「修学旅行等における二〇二五年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の活用について」という依頼通知を、文科省にガスのことも爆発事故のことも一切隠したまま出したのか、お答えいただけますか。
○茂木政府参考人 令和六年の四月の通知文の発出でございますが、大阪・関西万博の準備状況について改めて情報共有を行うという目的で、経産省、内閣官房万博事務局の連名で文科省へ依頼したものでございます。
大阪・関西万博が約一年後に迫りまして、学校側の準備状況等を踏まえますと、新年度を迎えたこの時期に情報提供が必要だと判断して実施した次第でございます。
会場の安全確保、これはもとより最優先で取り組むべきことでございます。今後、会期中の安全対策を取りまとめまして、学校関係者の皆様にもしっかりと説明をすることで、安心して会場にお越しいただけるよう真摯に対応してまいりたいというふうに存じます。
○宮本(岳)委員 翌年の行事計画に間に合わせるといっても、爆発が起こった事実も伝えずに文科省に初中局長名の活用通知を出させるというようなことは、私は詐欺に等しいと思いますよ。
しかし、その依頼文書を受けて、何の確認もせずに右から左に活用通知を出した初中局長も初中局長だ。
矢野初等中等教育局長、あなたは、ガス爆発の事実を知らずに、資料四につけたこの通知を出したんですか。
○矢野政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の事故については、四月八日に通知を発出する前の段階から、報道や博覧会協会のホームページにおいて文部科学省として把握しておりました。
○宮本(岳)委員 把握していながら、何も触れない通知を出したということですね。
五月二十九日の本委員会で、遠足、修学旅行については、事故の絶無を期すること、事故防止や安全確保の徹底が何よりも大事であるということを大臣もお認めになりました。
大臣に聞きますけれども、文部科学省は、現時点で、この爆発事故が起こった夢洲の土地の安全性について確認しているんですか。
○盛山国務大臣 先ほど宮本委員から御発言がありましたように、前回の委員会でそのような趣旨の発言を、私、確かにさせていただきました。修学旅行等において、事故の防止や児童生徒の安全確保を徹底することは何より不可欠と考えております。
そして、委員御指摘の万博会場の安全につきましては、現在、博覧会協会において確認をしていただいているところでございます。文部科学省としては、今週十二日にも、担当の初等中等局から、内閣官房の国際博覧会推進本部の事務局、そして経済産業省の博覧会推進担当のところに、安全確保の徹底について改めて要請をしております。
我々文部科学省としては、事故が発生することがないよう、引き続き、安全確保の徹底について関係省庁に要請するとともに、都道府県教育委員会等に対する必要な情報の提供等についても、関係省庁と協力をして対応してまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 今大臣がおっしゃった六月十二日の要請、何を要請したかペーパーを出してくれと言ったら、安全確保の徹底について改めて要請したというペーパーが出ただけでありまして、中身ないんですよ。分からないんです、何を言ったのかは。
では、経済産業省に聞きます。
博覧会協会は、安全対策は六月中に示す、こう言っておりますが、今月中の何日に示すんですか。
○茂木政府参考人 会期中の安全対策については、来場者がより安心できるように、継続したガス濃度の計測や換気などを行うという対策を実施していくことにしておりますけれども、博覧会協会において、更なる安全確保の対応策を、専門家の意見も聞きながら、六月中を目途に取りまとめるべく調整をしているところでございまして、取りまとまり次第、速やかに公表いたします。
○宮本(岳)委員 六月中のいつなんですか、日にちは。日にちは。
○茂木政府参考人 現在、調整中でございます。
○宮本(岳)委員 日にちも言えない。六月中を繰り返すが、六月はあと半月しかないんですね。
私たちは、少なくとも、爆発事故の事実も知らされないまま矢野初中局長名で発出した活用通知は撤回すべきだとただしてきましたけれども、文科省は、博覧会協会における会期中の安全確保に向けた対応策の取りまとめ状況も踏まえ、引き続き、関係省庁と連携しながら、修学旅行等の実施について適切に検討してまいりたいと考えております、これを繰り返すばかりなんです。
矢野局長、現状は、あなたの名前で万博活用を奨励する通知が出されたままで、撤回もされなければ、爆発事故の事実を知らせる追加通知も出されておりません。このままで、もし万博への学校行事が計画され、実施されて、万が一児童や生徒が爆発事故に遭った場合には、あなたや文科省が全責任を負うということでいいんですね。
○矢野政府参考人 御指摘の令和六年四月の通知は、先ほども御答弁ございましたとおり、大阪・関西万博の開催が約一年後に迫り、学校側も新年度を迎えたタイミングを踏まえ、大阪・関西万博の準備状況等について改めて情報提供を行うという考えを踏まえた内閣官房、経済産業省の依頼を受けて文部科学省として発出したものでございまして、会場の安全については、三月の事故も踏まえ、現在、博覧会協会において、専門家の意見を聞きながら、会期中の安全確保の対策を取りまとめているというふうに伺っており、文部科学省としては、当該対応策も踏まえ、引き続き、関係省庁と連絡を取りながら、修学旅行等の実施について、安全をもちろん万全に期した上で適切に対応してまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 無責任ですよ。その答弁ばかりやっているんですね。遠足、修学旅行に当たって事故の絶無を期するという最も大切な前提問題で、文科省は責任を持とうともしないわけです。万博協会と大阪市、こう言うんですね。
現場の先生からは、修学旅行については学校の判断と文科省は言うが、何かあれば学校の責任になる、安全性も確認できていない、何の情報もないのに、学校の判断ということで責任を押しつけられるのはおかしいという声が出ております。
また、六月の五日、新日本婦人の会大阪府本部の皆さんが大阪府教委に届けた子供の声というものを見せていただきましたけれども、何でガス爆発するようなところへわざわざ行かなあかんの、遠足はいつも楽しみやけど、そんな怖いところへは行きたくない、そもそも情報がなくて分からない、また爆発したら嫌などの声が寄せられております。
大臣、六月中に博覧会協会が提示するという会期中の安全確保に向けた対応策の取りまとめ状況を踏まえて、やはり新たな通知を出し直すのは当然のことではないかと思いますが、いかがですか。
○盛山国務大臣 繰り返しの答弁になりますけれども、現在、博覧会協会の方でも御対応していただいているところであり、当省としては、事故が発生することのないよう、関係省庁とも連絡し、博覧会協会その他に要請をしながら対応を見守っていきたい、そういうふうに考えております。
○宮本(岳)委員 その同じ答弁の繰り返しなんですね。
この土地は、一日二トンのメタンガスが出続けている現役の管理型最終処分場であります。どんな対策を取ろうが、絶対安全な場所にはなりようがないんです。
昨日は、自前の万博海外館、十月の外観完成構想が破綻、開幕時に一部未完成の可能性と産経が報じました。万博そのものの中止が必要だと思いますけれども、子供たちを危険にさらし、その責任を学校に押しつけるような、万博への修学旅行、遠足を強制動員するようなことはやめるべきだということを求めて、次のテーマに移りたいと思います。
次に、大学学費の問題です。
私は、国際人権A規約十三条の2(c)における高等教育の漸進的無償化の留保撤回を求め、撤回させてきた者として、政府に繰り返しこの条項の遵守を求めてまいりました。大臣は、私と目指す頂上は同じ、ルートが違うだけ、こういう答弁を繰り返してこられました。しかし、幾らそう言われても、現に文科省がやっていることを見ると、到底そうは思えないんです。
前回、留学生の学費の上限を撤廃したことについて、山に登るどころか海に潜っているではないかと指摘しましたが、授業料の値上げについては留学生だけの問題ではなくなってきました。東大が授業料の値上げを検討しているということが明らかになって、これに対して、学生四百人が参加する反対集会が開かれました。また、広島大学でも授業料の値上げを検討しているということがあって、反対するネット署名が行われております。
続々と値上げをする動きが出てくれば、こうした動きは国際人権規約に逆行するということになるのではありませんか、大臣。
○盛山国務大臣 ちょっと日付は忘れましたけれども、先日宮本先生に御答弁したことの繰り返しになりますけれども、国際人権規約そのものに違反するとは我々は考えておりません。長期的な方向として、できるだけ、国際人権規約に規定されているように、誰にとっても差別なく学びを続けられる、こういうような環境を整えることは重要であると私たちは考えております。
ただ、そこへ至るまでの過程でどのように授業料も含めて対応していくのか、これはまた個別の問題であろうかと思います。
○宮本(岳)委員 いや、新制度や後払い制度というんですけれども、これによって中間層の支援が薄くなってしまうという指摘があります。日本版HECSと言われる大学院段階の授業料後払い制度は、後払い制度の導入によって、逆に、各大学が独自に実施していた授業料減免などがなくなるのではないかとの不安の声も出されております。
そのような中、去る六月七日、資料五につけました国立大学協会の理事会声明が出されました。運営費交付金が減額されたまま、社会保険などの経費の上昇、近年の物価高騰、円安などにより基盤経費を圧迫し、実質的に予算が目減りする中で、外部資金の獲得などの努力を進めているが、もう限界ですと窮状を訴える悲痛な声であります。
資料六はその国大協の声明につけられた参考資料の一枚でありますけれども、国立大学運営費交付金は、二〇〇四年比でマイナス一三%、千六百三十一億円の減とされております。
高等教育局長に確認いたしますけれども、これは事実ですね。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
資料でつけていただいている法人化後の運営費交付金の推移、これはこのとおりでございますが、平成二十七年度以降は、何とか、厳しい政府全体の財政事情の中で運営費交付金を確保してきているところでございます。
○宮本(岳)委員 いや、減らしようがましになったという話でありまして、運営費交付金が下げられてきたこと、そして選択と集中政策をしてきたことが、現在の大学の窮状を生み、研究力の低下につながったと思うんです。しかし、もう限界だからといって学費の値上げを放置するなら、大臣の目指す頂上は同じという説明は全く空文句であるばかりか、国際人権規約の条項に対する国際的責任をほごにする結果となります。
資料七は、二〇一六年三月四日付で文科省高等教育局が出した、国立大学授業料についてという文書であります。下線部、「文部科学省としては、基本的には学生等に対してできるだけ教育費負担をかけないようにしていくことが重要と考えており、最近の十年間において標準額の引上げは行っておらず、」と書いております。
この認識は今も変わりないですね、高等局長。
○池田政府参考人 お答え申し上げます。
文部科学省といたしましては、これまでも、低所得者を対象として高等教育を無償化する高等教育の修学支援新制度の実施など、安定財源を確保しつつ、様々な負担軽減策を行ってきております。
また、令和六年度、七年度の制度の対象拡大等、今御指摘いただいたHECSも含めた制度の拡充を今年度とそれから来年度予定しておりますが、こうしたことも含め、国会でも大臣から御答弁申し上げているとおり、教育費の負担軽減を図ることは重要であるというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 もちろん、国大協の声明は、危機的な財政状況について国民に理解や協働を求めてはいるんですけれども、永田会長は発表後の会見で、授業料値上げについて国民に理解を求める意図は今回の声明にはないとも語っておられます。
しかし、中教審大学部会の特別部会がまとめた「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方に関する中間まとめ(素案)」というものを見ると、質の高い高等教育のための授業料、公費支援、寄附金等の在り方が挙げられ、この中間まとめに先立って自民党の教育・人材力強化調査会が出した提言では、学費完全無償化について、授業料を家計負担から公費負担としているにすぎず、必ずしも質の高い教育環境の実現にはつながらないとまで述べております。
しかし、授業料を家計負担から公費負担に置き換えることこそ、国際人権規約の無償教育の趣旨だと私は思うんですね。何が悪いのかと。
大臣、我々が同じところを目指しているというならば、そこを目指しているというこの共通認識が必要じゃないですか。
○盛山国務大臣 同じ山のてっぺんを目指しているということは、前にも申し上げているところであります。そして、ルートが違うということも前に申し上げたところでありますが、どのようにして高い高等教育の水準を維持していくのか、そして、できるだけ多くの人に学びというものを格差がないように享受をしていただくのか、そのやり方の問題だろうと思います。
運営費交付金の話もあれば、授業料の話もあれば、奨学金、こういったこともあろうかと思います。様々な観点から様々なやり方、そういうような内容を検討しながら、中央教育審議会での御議論、こういうものを踏まえながら、しっかり対応を検討していきたいと考えております。
○宮本(岳)委員 この特別部会で、慶応義塾大学の伊藤公平塾長が国公立大学の学費を年間百五十万円にすることを求めたことが話題になりました。伊藤学長の資料を見ると、高度な大学教育を実施するためには、学生一人当たり、大学の収入として年間三百万円が必要だと。国立大学が三百三十五万円であるのに対し、私学は僅か百五十四万円であることを指摘をしております。その上で、そのうちの八〇%に当たる百二十四万円が家計負担、すなわち授業料等となっているという指摘なんですね。
資料八を見ていただきたい。その結果、私立大学の平均授業料は、国際人権規約の留保を撤回して段階的な無償化を国際公約として受け入れた二〇一二年以降の十一年間の方が、撤回前の十二年間より更に上がっている。つまり、これも山に登るどころか海に潜るような結果になっている。
このグラフは事実ですね、私学部長。
○寺門政府参考人 お答えをいたします。
御指摘のように、私立大学の初年度授業料の平均額につきましては、二〇〇〇年から二〇一二年の間の差額は六万九千七百八円、増加率一〇九%、二〇一二年から二〇二三年間の差額は九万九千八百三十八円、増加率一一二%となってございます。
○宮本(岳)委員 かえって上がっているんですね。この原因は、はっきりしております。問題は、私学への公財政支出、経常費補助が少な過ぎることです。
私立学校振興助成法成立時の全会一致の附帯決議では、経常費二分の一の補助の速やかな達成を目指すとされておりました。
私学部長に重ねて聞きますけれども、二〇二二年度の私立大学等経常費補助金の算定における経常的経費と経常費補助金額の補助割合は幾らになっていますか。
○寺門政府参考人 お答えをいたします。
令和四年度の予算につきましては、私どもの算定では一一・四%ということになってございます。
○宮本(岳)委員 二分の一どころか、僅か一一・四%なんですね。一貫して減らされ続けている。資料九につけております。
運営費交付金の減額、選択と集中、私学の経常費補助金の低下、学長からのもう限界の声、こうしたことの背景には、文部科学省が教育予算の抜本的増額を目指す姿勢すら失いつつあるのではないかと言わざるを得ません。
資料十を見ていただきたい。下村博文元文部科学大臣が大臣時代に出版したこの本、この本の中に掲げられた、二〇二〇年教育再生実現に向けたグランドデザインというものであります。これによると、二〇二〇年までに教育予算を約五兆円増やす、二〇三〇年のビジョンでは更に五兆円を増やして、高等教育は完全無償化するというプランであります。下村博文という大臣の評価はともかく、十兆円規模で教育予算を増やそうという姿勢はあったわけですね。
もう限界という大学の声に応えるには、この運営費交付金や私学助成の抜本的な増額は不可欠ですよ。
盛山大臣、あなたは下村大臣ほどの気構えもないのですか。
○盛山国務大臣 下村元大臣がどういうようなお考えでこういうふうに書かれたのかは分かりませんが、同じ気構えかどうかは別にして、私自身としましても、文部科学省のスタッフ全員とともに、少しでも教育環境をよくしよう、そういうふうな思いは引き続き持ち続けております。
○宮本(岳)委員 大学に限らず、私学助成の拡充は党派を超えた切実な願いです。だから、毎年、多くの請願署名が当委員会に寄せられてきたんです。
今国会、本日が請願の締切りということでありますが、先日も調査室に答えてもらいましたが、最も幅広い、教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願について、本日までに付託されている署名数と最も多くの署名を紹介している会派の署名数を答えていただきたい。
○藤井専門員 お答えいたします。
今国会の文部科学委員会に付託された、教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願につきまして、本日時点における総署名者数は百六十五万三百八十四名であります。このうち、会派別の署名者数が最も多いのは自由民主党・無所属の会であり、その合計の署名者数は七十一万千七百十九名であります。
以上です。
○宮本(岳)委員 請願権は日本国憲法十六条に定められた国民の権利です。本来、全てについてしっかり議論を尽くし、国民の声はできるだけ採択すべきであります。
少なくともこの請願については、全ての会派が紹介議員となり、しかも、自民党が最も熱心に紹介している署名であります。これが自民党の態度によって不採択になるなどということがあってはならないし、そんなことになれば、国民の願いに背を向けたということになります。
紹介議員となっている会派として責任を持って採択に向け努力を尽くし、今国会こそ採択して実らせることを強く求めて、私の質問を終わります。