平成二十五年四月二十五日(木曜日)
午後零時三十分開議
出席委員
委員長 松島みどり君
理事 北川 知克君 理事 鈴木 淳司君
理事 中根 一幸君 理事 永岡 桂子君
理事 山本ともひろ君 理事 菊田真紀子君
理事 坂本祐之輔君 理事 浮島 智子君
赤枝 恒雄君 秋元 司君
岩田 和親君 熊田 裕通君
小林 茂樹君 新開 裕司君
田畑 裕明君 豊田真由子君
堀内 詔子君 宮川 典子君
武正 公一君 柚木 道義君
遠藤 敬君 西野 弘一君
輿水 恵一君 畠中 光成君
宮本 岳志君
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国務大臣 森 まさこ君
内閣府副大臣 伊達 忠一君
内閣府副大臣 寺田 稔君
内閣府大臣政務官 亀岡 偉民君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 杵淵 智行君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 山崎 史郎君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 岩尾 信行君
政府参考人
(法務省大臣官房司法法制部長) 小川 秀樹君
政府参考人
(法務省人権擁護局長) 萩原 秀紀君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 布村 幸彦君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 板東久美子君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 久保 公人君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 鈴木 俊彦君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房統計情報部長) 伊澤 章君
政府参考人
(厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 小川 誠君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局長) 村木 厚子君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 岡田 太造君
衆議院調査局第一特別調査室長 横尾 平次君
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委員の異動
四月二十五日
辞任 補欠選任
堀内 詔子君 豊田真由子君
同日
辞任 補欠選任
豊田真由子君 堀内 詔子君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
青少年問題に関する件
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○松島委員長 次に、宮本岳志さん。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、子どもの貧困対策についてお伺いをしたいと思います。
去る三月二十九日、国会内で、子どもの貧困をなくそうと、超党派の議員がそろって院内集会が開催をされました。私も出席をさせていただきました。そこでも問題になっておったんですけれども、子どもの相対的貧困率が一五・七%、こういう数字が出ておりました。
ここで聞くんですけれども、二〇〇九年、政府は二〇〇七年調査に基づいて初めて子どもの貧困率を公表いたしました。厚生労働省、お答えいただきたいんですが、二〇〇七年調査と、平成二十二年国民生活基礎調査の概況に掲載された二〇〇九年時点の全体の相対的貧困率と子どもの貧困率をそれぞれ答えていただけますか。
○伊澤政府参考人 お答えいたします。
二〇〇六年時点における全体の相対的貧困率は一五・七%でございます。子どもの貧困率は一四・二%でございます。
また、二〇〇九年時点におきましては、全体の相対的貧困率は一六・〇%、子どもの貧困率は一五・七%となっております。
○宮本委員 相対的貧困というのは、社会の標準的な所得の半分、五〇%以下の所得しかない世帯を相対的貧困と定義しております。お金持ちの半分じゃないんです、標準世帯の半分以下ということでありますから、社会において当たり前と思われることさえできなくなる生活水準のことなんですね。
二〇〇七年から二〇〇九年にかけて、相対的貧困率は、全体も〇・三ポイント上がっておるわけでありますけれども、子どもの貧困率は、先ほどの御答弁にあったとおり、一・五ポイントも上がってしまっております。
我々は、全体の相対的貧困率の上昇ももちろん問題だと思いますけれども、子どもに関して言えば、それこそ子どもたちには何の責任もありません。
これは、大臣にひとつ基本的な認識をお伺いしますが、大臣の昨日の所信でも、残念ながら、子どもの貧困という言葉、それ自身はなかったわけでありますけれども、この現状を、大臣、どう受けとめておられますか。
○森国務大臣 子どもの貧困、大変深刻な問題であると考えております。OECD諸国の中で、大人を含めた全体の貧困率は、日本は二十七位なんですけれども、子どもの貧困率は十九位なんですね。つまり、子どもの貧困率の方がとても高いということで、看過できない現状だと思っております。
総理も言っていますけれども、子どもたちが、生まれ育った家庭環境によってその将来が左右されることがないよう、世代を超えた貧困の連鎖は絶対に断ち切っていかなければならないと考えております。このため、学習支援や経済的支援など各般の対策、できることを全てしっかりと取り組んでいきたいと思っております。
○宮本委員 子どもの貧困を考える上で、とりわけ一人親家庭の貧困が深刻だと思うんですね。
これも厚労省にお答えいただきます。
同じく二〇〇九年時点の調査で、子どもがいる現役世帯の貧困率と、大人が一人、つまり一人親家庭の相対的貧困率、それぞれお答えいただけますか。
○伊澤政府参考人 お答えいたします。
二〇〇九年時点における子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は一四・六%、それから、このうち、厳密に一人親家庭というわけではありませんけれども、大人が一人世帯ということであれば、相対的貧困率は五〇・八%ということになっております。
○宮本委員 一九九八年には六三%でありましたが、徐々に下がってきたとはいえ、依然として五割を超えているわけですね。つまり、一人親家庭の子どもたちは、二人に一人が、社会において当たり前とされることさえできない生活水準で暮らしているとも言えるわけであります。
政府として、一人親家庭の子どもたちを貧困から救い出すためにどのような対策をしてきたか、子ども・子育て白書などから御紹介いただけますか。
○山崎政府参考人 お答え申し上げます。
一人親家庭に対する支援でございますが、大きく四つございます。
一つは、まず、子育て・生活支援でございまして、例えば、保育所の優先入所、ヘルパー派遣、公営住宅の優先入居等でございます。二つ目は就業支援でございまして、母子家庭等就業・自立支援センターやハローワーク等におきます就労に対する支援でございます。三つ目が、養育費相談支援センターにおきます養育費の確保でございます。そして四つ目が、これは経済的支援でございますが、児童扶養手当の支給や母子寡婦福祉貸付金の貸し付け。こういった対策を講じてきたところでございます。
○宮本委員 一人親家庭の貧困をここまでひどくしてきたそもそもの原因は、実は自公政権にあったと言わざるを得ないと私は思うんです。
小泉政権が進めた社会保障削減路線の中で、二〇〇三年六月の骨太方針は、生活保護について、「制度、運営の両面にわたる見直しが必要」と明記をいたしました。二〇〇五年四月から生活保護の母子加算を段階的に縮減する。ついに、二〇〇九年四月に全廃をしてしまいました。
実は、これを決めたのは第一次安倍内閣でありまして、当時、安倍首相は、衆議院予算委員会で、生活保護を受けている母子世帯と受けていない母子世帯の公平性の確保のためだという答弁まで行ったわけであります。
つまり、相対的貧困率が五割を超えるような一人親世帯全体の貧困状況をそのままにして、不公平だからと生活保護の母子加算を全廃した。これに対して、全国各地で、母子加算の復活を求めて、審査請求を経て行政処分取り消し訴訟が提起されることになりました。そして、実は、母子加算を全廃して五カ月後の総選挙で自公は大敗をし、政権から転がり落ちるという結果になりました。
総選挙の結果誕生した民主党政権は、二〇一〇年四月一日に、全国生存権訴訟原告団及び弁護団と基本合意書を取り交わし、生活保護の母子加算を復活させました。
この基本合意の一方の当事者である厚生労働省に聞きますけれども、この基本合意書では、一項目めに何を約束しておりますか。
○村木政府参考人 お尋ねの二〇一〇年四月一日の基本合意書の一項目めを読み上げさせていただきます。
「国(厚生労働省)は、母子家庭の窮状にかんがみ、子どもの貧困解消を図るために復活した母子加算については、今後十分な調査を経ることなく、あるいは合理的な根拠もないままに廃止しないことを約束する。」以上でございます。
○宮本委員 今厚生労働省も認めたとおり、ここには二つの大事なことが書き込まれております。一つは、母子加算は子どもの貧困解決を図るために必要な施策だから復活するのだということ、二つは、自公政権による母子加算の廃止は、十分な調査を経ることもなく、合理的な根拠のないものだったという認識、こうだと思うんですね。
そこで、村木局長に改めて聞きますが、この基本合意は、たとえ政権がかわっても当然引き継がれるものだと思いますが、間違いありませんね。
○村木政府参考人 御指摘のとおり、この合意は前政権下で取り交わされたものではございますが、子どもの貧困防止に取り組むことの重要性、そういったことへの認識は、厚生労働省としては変わるものではございません。
○宮本委員 そこで、自公の政権のことを今論じてきましたが、あなた方の後を受けて誕生した民主、社民、国民新党の連立政権は、政権交代直後の九月九日、連立政権樹立に当たっての政策合意を取り結びました。子どもの貧困解消のために、生活保護の母子加算の復活とともに、子ども手当の創設を盛り込んだんです。
しかし、その財源を、扶養控除の廃止による増税で捻出しようとしたため、子どものいない家庭には増税だけが押しつけられる結果になったのを初め、子どもがいる家庭でも、子ども手当が満額支給されなければむしろ増税になるということも指摘をされてまいりました。
その後、民主党政権は、東日本大震災を受けて子ども手当の満額支給を断念、二〇一一年八月の民主、自民、公明の三党合意によって、子ども手当は廃止し、児童手当を拡充することが決められたわけであります。
これは大臣に聞くんですが、結局、民主党政権による政権交代と、その後の、あえて言いますが迷走、そして最終的な民自公三党合意路線の意味することは、民主党が子ども手当の財源のためという口実で国民に増税を押しつけたあげく、あなた方、自公がばらまき三K攻撃を徹底して行い、とうとう子ども手当を潰してしまった。すなわち、差し引きすれば増税だけが残ってしまったということになっているんじゃありませんか、大臣。
○森国務大臣 子ども手当は、控除から手当へという考え方に沿って行われまして、民主党政権のもとで、今委員御指摘のような制度設計のもと、扶養控除の廃止により、結果的に手取り額が減少する世帯も生じたと承知しております。
私は、先ほどの自殺問題について、二度の政権交代を経てもずっと継続的に行われてきたことで一定程度の効果が出たということを見ますと、やはり特に社会的弱者に対する施策というのは急激に変えてはいけない、もちろん不断の改革が必要ではございますが、急激に変えてはいけないというふうに、慎重に行わなければ、やはりこのような矛盾が生じてしまうのだというふうに思います。
現在は、平成二十四年三月の三党合意に基づきまして、児童手当法一部改正法、行われましたけれども、その附則で、御指摘のようなことに関して、子育て支援に係る財政上または税制上の措置については、児童手当の支給並びに扶養控除の廃止による影響を踏まえつつ、そのあり方を含め検討を行い、その結果に基づき、必要な措置を講ずるというふうに規定されておりますから、やはりこのような、ころころと政策が変わることによって国民に負担が生じている部分については、政府として、与党内での議論等も踏まえまして、しっかりと対応してまいりたいと思います。
○宮本委員 当然の認識だと思うんですね。
もちろん、最初に相当社会保障を削るという方向を打ち出されたのは自公政権だったということを私は冒頭申し上げました。それで、国民の期待を担って政権交代というのが起こった。しかし、例えば子ども手当が満額二万六千円になっていれば、それはそれとして、増税分と差し引きしてもプラスになったんですが、結局、今大臣おっしゃったように、政権交代が繰り返されることによって、かえって余計に問題が悪くなった一例だと本当に私は思うんですね。
それで、三月二十九日の超党派の院内集会では、自民党や民主党から、子どもの貧困対策法案を国会に提出する、こういう準備をされているということが話されておりました。主催団体の一つ、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークの方々からも私も御要望をいただきました。私も、そうした団体とともに、党派を超えて、実効ある子どもの貧困対策法の成立のために力を尽くしたいと思います。
そこで、大臣に聞くんですけれども、この子どもの貧困対策法の実効性を担保するためには、数値目標は不可欠だと私は思うんですね。政府が子どもの貧困をなくす数値目標を決め、いつまでにその目標をやり切るのかという具体的なアクションプランを持って進めてこそ実効性も担保できると思うんですけれども、大臣の御認識をお伺いいたします。
○森国務大臣 自由民主党初め各党において議員立法として子どもの貧困対策法案を検討しているということは伺っております。貧困の連鎖を断つために政治として何をすべきかということは、当然に考えていかなければならない課題であると思います。
御指摘の数値目標については、いろいろな御意見があるというふうに伺っております。例えば、子どもの相対的貧困率は可処分所得のみで算出されているため、資産の保有状況が全く反映されず、これだけで貧困の状態の全てをあらわすことはできないという御意見とか、学習支援や保育といった子どもに対する現物サービスの充実などが貧困率の改善につながらないなどの御意見があると承知しております。
いずれにしましても、先ほどのような、貧困率は世界で十九位ということで、また一人親家庭の子どもの貧困率が大変高いということはゆゆしき問題であると思っておりまして、政府としてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。
私は、一つ常日ごろ思っておるのは、一人親家庭のもう一人の親が、お亡くなりになった場合は仕方ないのですが、生きておられる場合の養育費の支払いというのが、先進国の中で、日本は大変低いのでございます。私が弁護士として裁判所で約束しても、すぐに支払わなくなってしまいます。また、支払っている場合の平均月額も四万円と、大変低いのでございます。
そういった親としての認識、支払い義務というものも政府としてしっかり促すと同時に、この子どもの貧困問題についてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○宮本委員 おっしゃるとおりで、養育費の支払い、よくないんですよ。だから、場合によったら、政府が立てかえてお渡しして御当人から取るというような制度も含めてちゃんと考えないと、本当に約束が守られないという状況があると思います。
それで、社会的な養護を必要とする子どもたちへの施策の拡充も極めて大事だと思うんですね。
これも厚生労働省に数字を確認しますけれども、全国の児童養護施設で高校卒業を迎えた子どもたちのうち大学進学者は何名いるか、お答えいただけますか。
○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十四年の五月一日現在でございますけれども、高校などの卒業生千五百四十三人のうち、大学等へ進学した方は百六十九人でございます。
○宮本委員 千五百四十三人のうち百六十九人と、わずか一一%ですね。高校卒業者全体の大学進学率が五〇%台であるのと比較しても、進学率の低さが際立つわけでありまして、二〇一一年に東京都が発表した調査では、そのわずか一一%の狭き門をくぐり抜けて大学に進学しても、その二割が退学してしまっていることが明らかになっております。理由は、アルバイトとの両立ができない、心身のストレス、病気、学費等の負担が大きかったなどが挙がっております。
大臣も御存じのように、児童養護施設は十八歳で出なければならなくなります。大学進学を考えると、親に頼ることもできず、学費も家賃も生活費も全て自分で工面しながら勉強を続けなければなりません。
院内集会では、児童相談所の一時保護所で過ごしてきた子どもの訴えも聞きましたけれども、子どもたちが安心して過ごせる施設にしていくことと同時に、施設を出てからも学び続けられる、自立して生きていけるような支援体制の必要性を痛感いたしました。
大臣、大学進学を支援し、貧困の連鎖を断ち切るためにも、社会的養護を必要とする子どもたちが児童福祉法上の十八歳を超えてもきちんと自立して生活できる支援が必要だと思うんですが、最後に大臣の決意をお伺いして、質問を終わります。
○森国務大臣 私自身も、中学を出てから、学費も食費も生活費も自分で稼いできましたので、本当に、体もぼろぼろになり、アルバイトとの両立も大変な思いをしておりました。
そのときに、私は大学の寮に入っておりましたので、寮に入っている同級生たちはやはり皆さん、一人親家庭の方や、それから両親のいない方もおられて、大変苦労していましたが、一つ寮の下で皆で助け合って生活をするということで、やはり家庭生活にかわる精神的な安定というものは育まれていったと思います。
そういう経験から申しましても、社会養護のもとで育ってきた子どもたちが十八歳を超えてから円滑な社会生活または学校生活を営むことができるような、自立援助ホームの拡充や奨学金事業の充実などにより、施設を退所した後も引き続き子どもを受けとめて、支えとなるような支援の充実を図ることが必要であると思います。
○宮本委員 終わります。ありがとうございました。