平成二十五年四月十一日(木曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 山本 有二君
理事 伊藤 達也君 理事 岩屋 毅君
理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君
理事 西銘恒三郎君 理事 萩生田光一君
理事 長妻 昭君 理事 山田 宏君
理事 石田 祝稔君
あかま二郎君 秋元 司君
伊藤信太郎君 池田 道孝君
池田 佳隆君 今村 雅弘君
岩田 和親君 うえの賢一郎君
衛藤征士郎君 大塚 高司君
大塚 拓君 大野敬太郎君
奥野 信亮君 門 博文君
金子 一義君 菅家 一郎君
小池百合子君 清水 誠一君
塩崎 恭久君 関 芳弘君
渡海紀三朗君 野田 毅君
野中 厚君 原田 義昭君
福田 達夫君 船田 元君
星野 剛士君 牧島かれん君
牧原 秀樹君 三ッ林裕巳君
宮路 和明君 武藤 貴也君
保岡 興治君 山本 幸三君
若宮 健嗣君 岸本 周平君
玉木雄一郎君 辻元 清美君
原口 一博君 前原 誠司君
坂本祐之輔君 重徳 和彦君
中田 宏君 中山 成彬君
東国原英夫君 松田 学君
浮島 智子君 佐藤 英道君
柿沢 未途君 佐藤 正夫君
杉本かずみ君 宮本 岳志君
村上 史好君
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公述人
(みずほ総合研究所株式会社常務執行役員チーフエコノミスト) 高田 創君
公述人
(北海道大学大学院法学研究科教授) 山口 二郎君
公述人
(群馬大学理工学研究院教授) 片田 敏孝君
公述人
(大阪府教育委員会教育長) 中原 徹君
公述人
(慶應義塾大学経済学部准教授) 別所俊一郎君
公述人
(法政大学経済学部准教授) 小黒 一正君
公述人
(三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社参与
景気循環研究所長) 嶋中 雄二君
公述人
(全国労働組合総連合事務局長) 小田川義和君
予算委員会専門員 石崎 貴俊君
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委員の異動
四月十一日
辞任 補欠選任
伊藤信太郎君 福田 達夫君
大塚 高司君 野中 厚君
大塚 拓君 三ッ林裕巳君
中山 泰秀君 牧島かれん君
西川 公也君 菅家 一郎君
船田 元君 星野 剛士君
保岡 興治君 池田 佳隆君
坂本祐之輔君 松田 学君
佐藤 正夫君 杉本かずみ君
同日
辞任 補欠選任
池田 佳隆君 保岡 興治君
菅家 一郎君 門 博文君
野中 厚君 大塚 高司君
福田 達夫君 池田 道孝君
星野 剛士君 船田 元君
牧島かれん君 大野敬太郎君
三ッ林裕巳君 大塚 拓君
松田 学君 坂本祐之輔君
杉本かずみ君 佐藤 正夫君
同日
辞任 補欠選任
池田 道孝君 岩田 和親君
大野敬太郎君 中山 泰秀君
門 博文君 清水 誠一君
同日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 武藤 貴也君
清水 誠一君 西川 公也君
同日
辞任 補欠選任
武藤 貴也君 伊藤信太郎君
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本日の公聴会で意見を聞いた案件
平成二十五年度一般会計予算
平成二十五年度特別会計予算
平成二十五年度政府関係機関予算
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○山本委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、四人の公述人の方々からの御意見、まことにありがとうございます。私も十分でありますので、時間に限りがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず、山口二郎公述人にお伺いするんですけれども、今、アベノミクスと言われる経済政策、これがずっと進められているわけですけれども、先ほどのお話の中でも、トリクルダウン、つまり、大企業がもうかれば、やがて国民のところにも滴り落ちてくる、こういう状況にならないんだというお話がございました。
私どもも、やはり、内需をしっかり拡大するという点で、今のままではいかないんじゃないかというふうに思っておるわけですけれども、山口公述人の御意見をお伺いしたいと思います。
○山口公述人 多分、企業がもうかったらまずやるのは内部留保の積み増しでありまして、それに関する資料もきょうはつけております。
内需を拡大するということは、消費性向の高い低所得者層、中から下のレベルの人たちの購買力を高めるということが一番効き目が大きいわけでありまして、そのためにはやはり再分配が必要であります。
ですから、先ほど私が申した最低賃金の引き上げなどに加えて、例えば、非常に低賃金できつい労働をしている介護だとか保育といった対人サービス、社会サービスの労働においても賃金を引き上げる、そういう前提で社会保険システムをもう一回組み直すということが、やはり非常に即効性があると思います。
ついでながら、公務員給与の削減というのは、やはり地域にとっては非常に需要を減らす原因でありまして、この点についても、単なる公務員バッシングじゃなくて、もうちょっと地域経済の実態に合わせた、本音の議論が必要だと思います。
○宮本委員 最低賃金の引き上げということにも今触れられました。
我が党は、かねてより、最低賃金をせめて時間千円以上に引き上げるということも訴えてきたわけですけれども、賃金というか働く者の収入の問題では、今、首相が企業、経済団体に賃金の引き上げを要請した、あるいはそれに応える企業も幾つか生まれてきた、こういう報道もされているわけであります。
山口公述人の方から、最低賃金を引き上げていく、これが本当に一番効果的だというお話でありましたけれども、どの程度、どれぐらい引き上げていく必要があるとお考えか、これも含めてお話をいただきたいと思います。
○山口公述人 一九九七年にイギリスで労働党が政権をとった後に、イギリスで初めて最低賃金制を導入いたしました。当初は経済界ももちろん反対をしたんですが、実際にやってみると、むしろ、まさに内需が拡大して、経済的な効果があったという研究も出されているわけであります。
具体的な金額がどうかと言われると、私はそっちの方の専門家ではありませんが、やはり、おっしゃったように、最低一時間千円、あるいは標準的な生活を営むために必要な経費を所定の労働時間で割ってという発想で、徐々に引き上げていくべきだというふうに思います。
○宮本委員 山口公述人が新聞などに書かれたものを読ませていただきますと、四月の二十八日に、安倍首相が、内閣が今度決定をした主権回復記念式典、これについても異議を唱えておられると思うんですね。
私たちも、この日を国民全体で祝うというのはやはり問題がある、こう考えておりまして、このあたりについても御意見をお伺いできたらと思っております。
○山口公述人 サンフランシスコ講和条約が発効する日を主権の回復として位置づけるということは、要するに、非常に抽象的な国家の主権の復活を祝うということであります。日本国は、憲法の中で国民主権の原理を明示しているわけでありまして、やはり国民主権という観点で主権という問題を考えなければなりません。
そうすると、例えば定数不均衡の問題等々、国民の主権が十全に行使できないような状況を放置しているこの政治の現状で主権を云々するというのは、私にとってはまことに不可解と言うべきでありますし、さらには、例えば、先般報道があった、日米安保条約の、いわゆる砂川事件に関する当時の最高裁長官の行動ですとか、およそ主権国家とは思えないようなことが多々あったわけでありまして、そういうことをきちっと総括して、日本の国の主権というものが一体いかなるものか、国民主権というものが本当に守られているか、そういう論争こそが必要だと思います。
○宮本委員 私も、この予算委員会でTPPをめぐる総理との論戦にも立たせていただいたわけですけれども、本当に、我が国の国民の利益というものをいかに守るかという点で、独立国と言えるのかと言われるような現状が現にある。また、前半に意見をお聞かせいただいた経済対策にしても、国民の暮らしをどう温めるかという点では、まだこのアベノミクスというものからは何も見えてこないということは、本当に重大な問題だと思っております。
次に、片田公述人にお伺いしたいと思うんです。
かつて対談をされたような資料なども読ませていただきました。片田さんは、何といっても、防災教育において子供たちを一つ一つ納得させることが大事で、知識偏重や、災害が起こると怖いというようなおどしではうまくいかないんだ、こう書いておられます。
私は非常に大事なことだと思っておりまして、いじめの問題あるいは道徳教育の問題、さまざまな議論がきょうも交わされておりますけれども、もちろん、私どもも、市民的な道徳という意味での道徳、これは決して否定するものじゃないですけれども、ただ単に、厳罰でおどすとか、あるいはマニュアルをつくって安直にやるというだけではいかないわけであって、このあたりのところ、ぜひ、防災教育に取り組んできた御経験から、お聞かせいただきたいと思っております。
○片田公述人 私が今、防災教育を全国でやっているわけなんですが、そこで重視していることは、今先生がおっしゃったような、おどしの防災教育はいけない。それは、もし、津波が怖いぞ、津波が怖いぞと教えていく、逃げなきゃ死んじゃうぞ、こういう教え方をしますと、子供たちは地域のことを嫌いになっていきます。自分の地域のことを誇りに思えなくなります。そして、いつか出ていこうと思います。
私は、釜石の子供たちにも、釜石はとってもいいところだ、海がこんなにきれいで、食べるものがこんなにおいしくて、君たちはここに住んでいるからわからないかもしれないけれども、とってもいいところなんだ、まず、その地に住むに当たって一番大事なことは、その地を誇りに思い、大事に思い、そして、思い切り海に近づいて、思いっ切り恵みをもらうということ、これを未来永劫もらえるように、そのためには、時々、海の大きな振る舞いにもつき合わなきゃいけない、でも、恐れるな、そんなのは一生に一回か二回だけだ、その日、そのときだけしっかり逃げる、大人たちは逃げないかもしれないけれども、君はしっかり逃げる、君であればいいんだ、決して人に委ねるのではなく、自分の意思で、そのときだけかちっと行動をとれる君であれ、こう教えてきたわけです。これを僕は姿勢の防災教育といい、地域に住むお作法の教育だろうというふうに思っています。
そういう観点からいくときに、単に、怖いぞ、怖いぞ、怖いから逃げなきゃいけないんだ、こういう教え方は僕は間違いだと思いますし、知識偏重型の教育、これさえ知っていれば大丈夫などということは、相手は自然だからあり得ない。
だから、主体的に判断できる姿勢を身につけ、判断力、主体性を身につけ、その地に住む姿勢を身につける、そして、それを地域のお作法として教えることの重要性、これを今の防災教育の重点に置いて取り組んでおります。
○宮本委員 時間が参りましたけれども、片田さんのものを読んでおりますと、子供たちは、やはりなかなか、逃げるということを言っても、すぐには逃げると決められない。それに対して、君が率先して逃げたら皆の命が助けられるぞ、もし君が逃げなかったら、お母さんが危険を顧みず迎えに来ようとするじゃないか、お母さんの命まで危ないぞ、こういうふうに語ってもらったという話を聞きました。
やはり、一人一人が自主的に判断できる能力を子供に培う、ここに教育の原点があるように思います。
本日は、まことにありがとうございました。
○山本委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
四人の公述人の皆様方からの冒頭のお話、心から感謝を申し上げます。私どもも十分でありますので、なかなか皆様方にお伺いするということになりかねると思いますけれども、どうぞよろしくお願いをいたします。
デフレ不況と言われるもの、これがデフレスパイラルと言われる悪循環をしている。賃金自身もこの間下がってきました。ですから、消費購買力がなかなか上がらない、売れ行きが伸びないから利益が上がらない、利益が上がらないから、さらにリストラがやられる、あるいは価格が下がるという悪循環ですよね。
ですから、それをどこで断ち切るかという議論が中心だと思うんですけれども、私たちは、やはり働く人の所得をふやす、こちらからデフレ不況を打開しようということを提案してまいりました。今のアベノミクスとは少しやり方が違うわけでありますけれども。
今、賃下げや非正規の拡大がデフレ不況に悪循環をつくり出していると全労連の小田川公述人からもお話がありましたけれども、そこに消費税の増税を来年の四月、さらにその翌年と、こうしますと、経済にも非常に重大な影響があると思うんですが、小田川公述人の御見解をお伺いしたいと思います。
○小田川公述人 消費の停滞が全てデフレの原因かどうか、私は専門でないからよくわかりませんが、少なくとも消費が減退をしている、それは、物を買いたいけれども買い控えをしているという状況でないことは、例えば貯蓄ゼロの世帯がこの十数年間で一気にふえてきているということからも見られますように、最低限の生活、ぎりぎりで生活する労働者がふえているということの状況だと承知をいたします。
その上に、逆進性が強くて生活費に課税をする消費税が導入をされるということになりますと、途中で生活保護世帯の例を申し上げましたけれども、所得の構造によってやはり支出の構造というのも違っているはずでありまして、消費税増税は、より厳しい生活への負担が低所得者にかかっていくことになるというふうに承知をいたしますので、今の状況ではとても賛成できないと考えております。
○宮本委員 午前中も実は北海道大学の山口先生とも議論になったんですけれども、最低賃金の引き上げということでなければ、ボーナスがいっときふえるとかいうだけではいかないんだという議論もありました。それから、トリクルダウンという、企業が潤えばやがて労働者にも回っていくだろうという議論は、今そうなっていないんだという議論も出されたと思います。
いずれにせよ、企業の収益が戻ればやがて労働者にも回るんだ、だから賃上げをと、今の政府もそういうふうに言ってはいるわけですけれども、ただ、それが確かにそうなっていくか。そのためには、本当に政治がやるべきことは多いと思うんですね。その点で、最低賃金の引き上げというのは非常に大きな力を持っていると思います。
それで、タイムラグがあるんだというふうによく言われます。予算委員会でもそういう答弁が政府からあります。タイムラグが生じるという点では、それは、労働者の賃金を引き上げて、やがて消費がふえ、企業収益が戻るのにもタイムラグがあることは当然でありますけれども、そちらの方のタイムラグというものは許さないのに、企業収益が伸びてから労働者の生活や国民の暮らしへのタイムラグの方はおおように構えるというのは、非常に僕は矛盾を感じるんですけれども、この点について、小田川公述人、どうお考えでしょうか。
○小田川公述人 意見公述でも申し上げましたけれども、大きな企業と小さい企業との格差というのはだんだん広がってきているということでありまして、トリクルダウンのお話もありますが、企業から労働者へもそうですけれども、大きな企業から小さな企業への移転といいますか、これも非常にうまくいかなくなっているのではないかと私どもは感じております。
とりわけ、最近の状況で申し上げますと、円安の結果、原材料の上昇が言われておりまして、これが中小零細企業での経営難にも来ているというふうに言われております。
したがって、タイムラグの問題だけではちょっと整理がつかない問題が今の現状にはあるのではないか。いずれ労働者に回るからというふうには、今の状況の中では必ずしも期待できないものだというふうに考えております。
○宮本委員 私どもは、国会でも大企業の内部留保というものを取り上げてきました。ため込まれていると私たちは言っておりますけれども、二百六十兆円に及ぶ、これは政府側の答弁も、額はともかくとして、ため込んでいるというか、たまっているということは認めざるを得ない状況であって、試算してみますと、トヨタ自動車でも月一万円の賃上げをするのに内部留保のわずか〇・二%という数字が出ておりますが、一%以下の取り崩しで賃上げが可能だと。やはりここをまずしっかりとやってもらわなければ、本当にデフレからの脱却というのはできないと思うんです。
ところが、一方では、一層雇用が壊されるような動き、例えばベースアップはもうなくすとか、あるいは働き方そのものを、先ほども準正社員のような話が出てまいりました。それから、公述の中でもブラック企業という言葉が出てきましたけれども、例えば、正規で働いていれば安心かといえば、正規で働いている人の中にも、本当に劣悪でひどい状況が広がりつつある、こういう報告もされております。
そういう相談がたくさん寄せられていると少し触れられましたが、中身はお触れになりませんでしたから、今、現に現場で起こっているひどい事例を御紹介いただければありがたいと思います。
○小田川公述人 まず、ブラック企業ということで申し上げれば、最も多いのは、不払い残業を強いながら、過労死ラインと言われます八十時間まで労働を強制するという事例が時折出てまいります。どちらかと申し上げれば、サービス業関係のところでそういう事案が発生する事例は多いというふうに相談の中からは感じておりますけれども、こういう事例があります。
あるいは、リストラに際しまして、隔離部屋という形で、仕事を取り上げて、窓もない部屋に閉じ込めながら、一日そこで、仕事というよりもじっとすることを強要する、こういうやり方で退職を強要するという事例は、去年来からの、先ほども申し上げましたけれども、電機のリストラの中で何件か私どもも相談を受け、対応をしてきたところであります。
○宮本委員 私、実は、若者の就職難の問題というものにずっと取り組んできたんですが、大学生などの間に、どうしても正社員にならなければならないと。というのは、非正規が非常に悲惨だという状況が知れ渡ってきていますから。だから、正社員になるために、みんな物すごい競争をやっている。逆に、そこにつけ込んで、正社員だということで雇うんだけれども、最初から選別をして、放り出していくということを予定して採用するような企業があって、それがやはりブラックと言われる企業の出発点になっている。
ところが、今起こっている状況は、それが、かつてであれば、ごく一部の企業、一部のそういう非常に悪質な企業のことでありましたけれども、私たちが国会で取り上げた隔離部屋とかという企業は名立たる大企業であって、ですから、最初はごく一部に始まったことが、今や名立たる大企業にも広がっている。
要するに、全ての企業のブラック化というか、そういう状況すらあるのではないかというふうに言われておるわけですけれども、このあたり、小田川さん、いかがお感じでしょうか。
○小田川公述人 私どもが受ける相談の中には、特定の企業でというふうに申し上げませんけれども、大小を問わず、著名な企業の中からも相談をいただくことも相当数あるのは事実であります。例えば三六協定というのがありますけれども、これの上限を超えて働かせている実態が大企業の中からも時折出てくるという状況にあります。
その意味では、先生がおっしゃいますように、社会全体として、働くルールを守らなくてもいいという風潮がとりわけこの二〇〇〇年代に入って広がってきていることについては、私ども労働組合として非常に強い懸念を持っております。
○宮本委員 同時に、この国会では、やはりTPP交渉への参加ということが大きな論点になってまいりました。
農業団体、漁業の団体、そういうところが反対の声を上げるのは当然でありますけれども、労働組合としてTPPについてどうお考えか、最後にお伺いして終わりたいと思います。
○小田川公述人 TPPは、人、物、金の国境を越えた移動を自由にする。当然のことですけれども、人にかかわるさまざまな制度についてもハーモナイゼーションする。要は、私どもの感覚で申し上げれば、アメリカ的な制度に全体として持っていくという危険性を持っているのではないかと、まず基本に考えております。
そういたしますと、アメリカの労働者の実態あるいは雇用の状況、権利の状況を考えますと、今の日本の状況よりも、いい部分がないとは申し上げませんけれども、全体として申し上げれば、極めて雇用は流動的であり、低賃金労働者も相当数存在をする、貧困の実態もひどいというふうに承知をしておりますので、そういう事態が日本で起きることをまず第一に懸念をいたします。
もう一つは、日本の労働市場に他の国から参入をされる場合の規制が、この国では残念ながらまだ十分議論がされていないように承知をいたします。
研修・実習生問題というのが最近議論になっておりますけれども、そこの中で、最低賃金さえ下回る働かせ方をしているという実態が、私どものところにも相談を受け、実際に事件としても扱いました。
そういう状況があることを前提に考えれば、日本の労働市場の現状というのは極めて不安定性を持っておりますので、そういうところの手当てがないままにTPP参加の議論だけが進むことについては、必ずしも賛成をしておりません。
○宮本委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。
ありがとうございました。