平成二十五年四月一日(月曜日)
午後一時開議
出席委員
委員長 山本 有二君
理事 伊藤 達也君 理事 岩屋 毅君
理事 遠藤 利明君 理事 小此木八郎君
理事 西銘恒三郎君 理事 萩生田光一君
理事 長妻 昭君 理事 山田 宏君
理事 石田 祝稔君
あかま二郎君 伊藤信太郎君
今村 雅弘君 うえの賢一郎君
衛藤征士郎君 大塚 高司君
大塚 拓君 奥野 信亮君
勝沼 栄明君 金子 一義君
小池百合子君 関 芳弘君
武部 新君 武村 展英君
津島 淳君 辻 清人君
渡海紀三朗君 豊田真由子君
中川 俊直君 中山 展宏君
西川 公也君 野田 毅君
原田 義昭君 福田 達夫君
藤井比早之君 藤原 崇君
牧原 秀樹君 宮路 和明君
保岡 興治君 山本 幸三君
若宮 健嗣君 岸本 周平君
後藤 祐一君 玉木雄一郎君
辻元 清美君 中根 康浩君
原口 一博君 前原 誠司君
坂本祐之輔君 重徳 和彦君
新原 秀人君 杉田 水脈君
中田 宏君 中山 成彬君
東国原英夫君 三木 圭恵君
浮島 智子君 佐藤 英道君
井出 庸生君 柿沢 未途君
佐藤 正夫君 三谷 英弘君
山内 康一君 宮本 岳志君
村上 史好君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 麻生 太郎君
総務大臣 新藤 義孝君
法務大臣 谷垣 禎一君
文部科学大臣 下村 博文君
厚生労働大臣 田村 憲久君
経済産業大臣 茂木 敏充君
国土交通大臣 太田 昭宏君
国務大臣
(内閣官房長官) 菅 義偉君
国務大臣
(復興大臣) 根本 匠君
国務大臣
(情報通信技術(IT)政策担当) 山本 一太君
国務大臣
(経済再生担当)
(経済財政政策担当) 甘利 明君
国務大臣 稲田 朋美君
財務副大臣 山口 俊一君
外務大臣政務官 あべ 俊子君
政府参考人
(内閣府規制改革推進室長) 滝本 純生君
参考人
(再就職等監視委員会委員長) 羽柴 駿君
予算委員会専門員 石崎 貴俊君
―――――――――――――
委員の異動
四月一日
辞任 補欠選任
あかま二郎君 石川 昭政君
秋元 司君 辻 清人君
伊藤信太郎君 津島 淳君
今村 雅弘君 橋本 英教君
大塚 高司君 坂本 剛二君
塩崎 恭久君 中川 俊直君
中山 泰秀君 武部 新君
西川 公也君 勝沼 栄明君
船田 元君 豊田真由子君
牧原 秀樹君 武村 展英君
玉木雄一郎君 中根 康浩君
前原 誠司君 後藤 祐一君
坂本祐之輔君 新原 秀人君
重徳 和彦君 三木 圭恵君
東国原英夫君 杉田 水脈君
柿沢 未途君 山内 康一君
佐藤 正夫君 井出 庸生君
同日
辞任 補欠選任
石川 昭政君 あかま二郎君
勝沼 栄明君 西川 公也君
坂本 剛二君 大塚 高司君
武部 新君 福田 達夫君
武村 展英君 牧原 秀樹君
津島 淳君 中山 展宏君
辻 清人君 藤井比早之君
豊田真由子君 船田 元君
中川 俊直君 藤原 崇君
橋本 英教君 今村 雅弘君
後藤 祐一君 前原 誠司君
中根 康浩君 玉木雄一郎君
新原 秀人君 坂本祐之輔君
杉田 水脈君 東国原英夫君
三木 圭恵君 重徳 和彦君
井出 庸生君 佐藤 正夫君
山内 康一君 三谷 英弘君
同日
辞任 補欠選任
中山 展宏君 伊藤信太郎君
福田 達夫君 中山 泰秀君
藤井比早之君 秋元 司君
藤原 崇君 塩崎 恭久君
三谷 英弘君 柿沢 未途君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
平成二十五年度一般会計予算
平成二十五年度特別会計予算
平成二十五年度政府関係機関予算
――――◇―――――
○山本委員長 これにて三谷君の質疑は終了いたしました。
次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは教育予算についてお伺いをいたします。
まず、質疑冒頭に一つ確認をしておきたいことがございます。
私は、去る三月二十七日、文部科学委員会での質疑で、概算要求時には入っていた教職員の定数改善計画が、その後、財務省との折衝で削られてしまったことを文部科学大臣にただしました。
この問題をめぐって、ことしの予算折衝で財務、文科両省間で取り交わされたのが、資料一におつけをした確認の文書であります。この確認文書の三項目めには、「今後の少子化の進展や国・地方の財政状況等を勘案し、」とあるわけですけれども、先日の文科委員会の場で、下村文科大臣は、「項目としては財政状況等も入っておりますが、これは確認的に記載したということで、これについては、麻生財務大臣との話の中で、私は、拘束されないというふうに認識をしたい」、こう私に答弁をいたしました。
そこで、麻生財務大臣に確認するんですが、この三項目め、「国・地方の財政状況等を勘案し、」という文言は、下村大臣のおっしゃるとおり、拘束をされない、適当な文言、こういう理解でよろしいですか。
○麻生国務大臣 適当な表現かという表現がもう適当なのでちょっと問題なんですけれども、適当かと言われますと、これは教育の質の向上につながる教職員のことですから、金目だけの話ではなかなか縛れないのではないかという見解を私どもは持っておりましたので、これは、財務省としては、当然、払えないということになるのでは話になりませんから、きちんとしてこういうものは勘案をしていただかないと、とても、できるものもできなくなりますから、やりたくてもやれないことがありますので、そういうことをある程度考えておいていただかないといけません、書いていただきますよと。
ただし、問題点としては、教育の質の向上というのは、学生の数が減って先生の数が多くなればそれだけで教育の質が上がるなんて、そんな簡単なものじゃないのはよく御存じのとおりなので、その点もよく考えて、今後とも、いろいろな意味で話をしていきましょうという話をさせていただいたのは事実です。
○宮本委員 そうしますと、やはりこれは書き込んだだけのことがあって、これに拘束をされるという話になるわけですね。
何かありますか、文科大臣。
○下村国務大臣 これは、宮本先生、前提条件をちゃんと話をしていただいて、それから麻生財務大臣に聞いていただかないと、フェアではないというふうに思います。
そもそも、これは義務教育法の改正の中で、少人数学級の推進についての議論の中の御質問だったわけですね。
これについては、お手元に資料を配付していただいているわけですが、この二項のところに、「今後の少人数学級の推進については、習熟度別指導等とあわせ、文部科学省において、その効果について平成二十五年度全国学力・学習状況調査等を活用し十分な検証を行いつつ、教職員の人事管理を含めた教職員定数の在り方全般について検討する。」と。今御指摘のところは三のところですね。「「二」の検討を見つつ、今後の少子化の進展や国・地方の財政状況等を勘案し、」この中に入ってきているわけですね。
我々としては、教職員定数のあり方というのは、最初に財源で左右されるということではなくて、まずは習熟度別指導者についての、増減をしたけれども、実際、二十五年度の全国学力・学習状況調査の結果を活用し、財務省と一緒に検討する。その中で、結果的に、やはり少人数学級がそれだけ学習効果あるいは教育上の効果があるということを踏まえた中で、その中でさらに国、地方の財政状況を勘案しつつというのがあるのであって、最初から、財政状況があるから少人数については一切だめということでなくて、まずは学力それから学習状況の結果を踏まえてということですから、これは何ら問題ない話だと思います。
○宮本委員 それは、やりとりのいきさつでいえば、そのときのやりとりは、私が、二〇一一年三月の民主党政権下で出された義務標準法改正のときに、民主党、自民党、公明党三党で、附則にあった「国及び地方の財政の状況その他の事情を勘案しつつ、」という文言をわざわざ、当時、下村さんは自民党の筆頭でしたが、これを削って、そして、財政の状況にかかわらず、やはり義務教育国庫負担金については国がきちっと責任を持つべきだという趣旨で我々は削ったのだとおっしゃった。その下村さんが大臣になって結んだ文書に全く同じこういう文言が出ているから、これは二年前の言葉と違いますねというやりとりをやったわけですよ。
だから、拘束されないんだったら、もとから入れなきゃいいじゃないですか、そう言うんだったら。
まあ、いいですよ。それはまた文部科学委員会で議論しましょう。とにかく財務省の答弁はそういうことだということですね。
やはりこの問題は、それはそのとおりです、しっかり教育の側面から見ていくということで、引き続き、少人数学級の推進は財政状況にかかわらず進めるべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。
さて、去る三月の二十九日、国会内で、子どもの貧困対策法制定を目指す院内集会というものが開かれました。自民党を初め、全ての党が参加をいたしました。その後、代表が下村大臣にお会いして、直接要請したと聞いております。この問題は大臣も取り組んでこられた問題であります。
大臣は三月一日の記者会見で、記者に問われて、議員立法が望ましいが、政府の方で協力できる部分については最大限協力をしていきたい、文部科学省の立場でいえば、教育的なハンディキャップが貧困によってマイナスにならないような、そういうフォローアップは当然していく必要がある、こう述べられました。
この立場、間違いございませんね。
○下村国務大臣 御指摘のように、私も、高校、大学と、交通遺児育英会、そして今の学生支援機構、日本育英会の奨学金を、当時は給付型奨学金もございました、これを借りたりあるいは給付を受けることによって、高校、大学に進学できたと思っております。今、給付型奨学金はもうございません。
そういう中で、当時以上にやはり貧困の連鎖が深刻な問題としてあるというふうに思っておりますので、子供の貧困対策という観点から、子供の教育を受ける機会が妨げられることがないように教育費の負担軽減を図っていくということは、これは極めて重要なことであるというふうに思います。
ことしの二十五年度の予算案においても、幼稚園就園奨励費補助の充実や義務教育段階の就学援助の実施、大学等奨学金事業及び授業料減免の充実等を通じて家庭の教育費負担の軽減に努めているところでありますが、当然、まだまだ十分ではないわけでございまして、全ての意志ある者がその能力に応じて安心して学ぶことができるよう、これからも教育費軽減について、その努力に向けて全力で対応してまいりたいと思っています。
○宮本委員 そういうことを考える上で、やはり大学を考えると、世界に比して余りにも高学費の現実があると思うんですね。
今や、大学などの高等教育まで段階的に無償にしていこうというのが世界の流れになっておりまして、大臣御存じのように、国際人権A規約十三条二項(b)及び(c)、中等教育、高等教育の漸進的無償化条項、日本は一九七九年の条約批准以来、三十三年間にわたって留保してきたわけでありますけれども、昨年の九月の十一日に、ついに留保撤回を国連に通告いたしました。
これによって我が国は、無償教育の漸進的な導入というこの条文に拘束されることになるわけですけれども、これは大臣、政権がかわっても遵守するという立場に違いないですね。
○下村国務大臣 これは当然の話でありまして、我々はさらに、私的負担、教育費の軽減に向けて対応してまいりたいと思っています。
○宮本委員 では、どのようにして子供や学生の学びを支えるのか。その具体的な中身として極めて重要なのが奨学金制度だと思うんです。
下村大臣の時代には、先ほどお話あったように、日本学生支援機構の前身、日本育英会は給付型の奨学金を持っておりました。大臣が受けられたのも給付型、返済の必要がない奨学金だったと思います。今はありませんよね。
無利子であろうが、あるいは所得連動型というようなものをつくろうが、貸与である限りは借金は借金なんですよ、給付でなければ。日本学生支援機構の奨学金というのは全て借金になります。利子があろうがなかろうが、返さなきゃならない。諸外国では、奨学金というものは返済の必要のないものを奨学金と呼ぶわけでありまして、日本の奨学金制度はもはや学資ローンというにふさわしいものになっていると思うんですね。
この予算案で、麻生財務大臣は予算説明で、文教及び科学振興費として、奨学金等の就学支援の施策を推進する、こう述べられました。では、前年度に比してどれくらい充実させたのか。奨学金には有利子と無利子がありますけれども、それぞれ分けて、どれぐらい充実させたか、答えていただけますか。
○麻生国務大臣 平成二十五年度の予算のことだと存じます。人員のベースで見ますと、無利子奨学金につきましては、対前年度二万七千人増の四十二万六千人、有利子奨学金につきましては、六万一千人増となる百一万七千人であります。
これをいわゆる金額ベース、事業費ベースで言わせていただければ、二千九百十二億円になっておりますので、対前年度比百四十四億円、それから、有利子奨学金の方は九千七十億でありますので、こちらの方は対前年度比五百七十四億円となっております。
この無利子奨学金の政府の貸与金が減少しておりまして、奨学金が充実しているのではないのではないかと多分言われたいんだと思うんですね。(宮本委員「言いますよ」と呼ぶ)時間がもったいないと思いますので、先にお答えしておきます。
無利子奨学金は、過去の貸与者の返還金と政府の貸付金を両方原資にしていますので、二十五年度におきましては、返還金が多く見られることから、政府の貸付金が減少しておるということになっております。
いずれにしても、この支援という政策の目的から、どれだけ学生に貸与できるかというところが非常に重要なところであって、その財源の内訳であります政府貸付金が減少しているから問題であるというような御指摘は、ちょっと違うんじゃないかという感じがいたします。
○宮本委員 聞いていないことまで答えていただきまして。有利子の方がやはり多いんですね、今年度の予算でも。
この間、奨学金貸与の規模というのは確かに拡大されてきたんです。特に、一九九九年、平成十一年に自民党、公明党が新しい奨学金の制度の創設に合意して以来、その多くは有利子の奨学金の規模が拡大されてきたわけです。
その推移は、きょうの資料の二枚目につけてありますから、見ていただいたらよくわかりますよ。白い部分、無利子奨学金はずっと横ばいで、この網がけの部分がずっとふえてきたというのが実態なんですね。
無利子は、今回、二万七千人増でも四十二万六千人。利子つき奨学金は百一万、百万を超える。七割以上は利子つき奨学金なんですね。
一九八四年に日本育英会法を改正して有利子枠を創設した際の国会の附帯決議には、育英奨学事業は、無利子貸与制度を根幹としてその充実改善に努めるとともに、有利子貸与制度は、その補完措置とし、財政が好転した場合には廃止等を含めて検討する、こうされていたはずですね。
文科大臣、そもそも、奨学金というものは無利子こそ根幹なんじゃないですか。
○下村国務大臣 おっしゃるとおりだというふうに思います。
○宮本委員 結局、今年度の無利子奨学金の拡大というものも、先ほど財務大臣の答弁にあったとおり、政府からの貸し付けは減らして、そして、返還金の拡大で行っているというのが現状です。
資料の三つ目に、この間の推移をつけておきました。左側が政府の貸付金。これは、二〇〇〇年度前後には一千億円を出ていたものが、今はもう減ってしまって、七百五十七億円というのが今度の予算案であります。そして、黒い方は返還金です。要するに、奨学金を回収して、そのお金を貸している。だから、構成は、返還金がどんどんふえてきたということですよね。
貸付金を六億円減らしているわけですから、去年に比べても。これで、返還金がふえているから拡充したと言えるというのが先ほどの御答弁の趣旨ですか。
○麻生国務大臣 財政事情の厳しい中で、返済をしていただける方に関しましては、ぜひ、今後、自分たちの後輩もこういった形でいろいろな奨学金が受けられるような制度を維持していくという気持ちは、奨学金を受けられた下村先生に限らず、いろいろ後輩のことを考え、現状のことを考えると、そういった意味で、できる限りという形で、今たしか三百万円で切ったというような記憶がありますけれども、三百万円ぐらい以上の所得のある方になられた段階からというお話をさせていただいていると記憶をします。
○宮本委員 なるほど、日本学生支援機構の奨学金を受給する学生数は年々ふえてきたわけです。
それで、大内裕和中京大学国際教養学部教授の調査によると、国立大学でも、鹿屋体育大学や福岡教育大、岩手大学では全学生の六割、私の通っておりました和歌山大学で四二・八%、大阪大学で四割の学生が、これは有利子も含めて受給をしているわけです。私学でも、私の地元大阪の摂南大学や千里金蘭大学で全学生の五割以上、大阪青山大学、帝塚山学院大学、大阪経済大学で四五%を超えております。
しかし、これは、とても手放しでよいことだと言えないんですね。なぜならば、それらは全て、何百万円、ひどい場合には一千万を超える借金なんですよ。しかも、その大半を、有利子枠の拡大と、今大臣おっしゃった返還金の回収強化で進めてきた。ここに今問題が生じているわけです。
先日、日弁連が全国一斉奨学金返済問題ホットラインというのをやりましたが、就職先がなく、返済の見通しがないなど、全国で一日で四百五十三件の相談が寄せられたと報告をされております。既に、低所得者層ほど、奨学金を返せるかどうか不安なのでもう借りたくないという考えが広がりつつあります。
本来、低所得の人を助けるための制度である奨学金が、ローン返済への不安から使えないというようなことになれば、全く本末転倒の結果になると思うんですが、文部科学大臣、そうお感じになりますね。
○下村国務大臣 そういう問題点はあるというふうに思います。
そういう意味で、今度の平成二十五年度の予算案において、無利子奨学金を充実する、平成二十四年度から導入した所得連動返済型の無利子奨学金制度を充実させ、所得掌握が容易になる社会保障・税番号制度への移行を前提に、卒業後に一定の年収を超えた時点で一定額を返済する現行制度から、卒業後の年収に応じた額を返済する柔軟な制度へ改善するための準備、また、各大学が実施する授業料減免等への支援の充実など、これは給付型ですね、教育費の負担の軽減に努めております。
さらに、高校においては、給付型奨学金、これはぜひ導入を考えたいと思っております。高校授業料無償化の見直しの中で、所得制限等を設けることにしております。それを財源として、平成二十六年度以降については、低所得者層あるいは公私間格差を是正するための給付型奨学金の導入を検討していきたいと考えているところでございます。
○宮本委員 高校の給付制奨学金、結構でありますが、高校無償化を見直す、その財源でやるというのは全く反対です。これは、そういう財源をきちっと別につくってやるべきだということは申し上げておきたいんです。
所得連動返済型奨学金、これは民主党政権がつくったものですけれども、最初の概算要求では、これを在学生全員に広げようという概算要求だったんですが、その部分についてもあなた方は削ってしまったわけですよ。
そして、今、やはりそういう不安が広がる最も重要な問題は、非情な取り立てをしているということです。
昨日、東京で、奨学金問題対策全国会議という団体の設立集会が開催されて、私も参加をいたしました。そこでは、当事者から生々しい事例が報告されました。
例えば、大学時代に第一種、第二種奨学金を毎月五万円ずつ、総計約四百万円借りたが、就職氷河期に大学を卒業。卒業後半年はフリーター、その後は契約社員で低収入のため返済が困難、五年ほど延滞を繰り返したため、延滞金が四十万円程度まで膨らんでしまった。三十代の女性。
高校、大学時代に、第一種、第二種合わせて四百五十万円利用。卒業後は正社員として就職したが、過労のためうつ病にかかり、自己都合退職。現在は実家に戻りパートで働いているが、月十万円程度の収入しかない。親もほとんど収入がない。卒業後から利用していた五年の猶予の期限が切れたが、返せる見込みがない。弁護士から自己破産を勧められている。
こういう話が次々出るわけですよ。
この人たちは決して怠けているわけでも悪意があるわけでもないのに、日本学生支援機構から厳しい返還金の取り立てを受けております。下村大臣、これで奨学金と呼ぶような教育的な制度と言えると思いますか。いかがですか。
○下村国務大臣 御指摘のように、今、日本学生支援機構の奨学金制度は貸与でございまして、貸与しているわけですから、学生から返還金は求める。この返還金が次の学生への奨学金の原資になっているわけでございまして、返還できる方からしっかりと返還してもらう、これはある意味で当然の話だというふうに思います。
このため、返還できるにもかかわらず返還しない者に対しては、延滞金の付加、個人信用保証協会への登録、それから支払い督促申し立てなどの法的措置の実施などにより、返還を促しているというところも一方でございます。こうした取り組みは民間等の事例を参考にした中で設定していることでありますし、また、あらかじめ本人に対して通知をするなどしており、強引な回収を行っているということにはならないというふうに思います。
ただ一方で、御指摘があったように、経済的理由やあるいは病気等によって返還が困難な方に対しては、返還猶予制度それから減額返還制度を適用する、また、今御指摘の、疾病等によって仕事ができないために返還が無理だという場合には猶予期間も認められているということで、より柔軟に、現実の中で対応するように努力をしてまいります。
○宮本委員 返せる人から返してもらってというんですけれども、実際には、返せない人からも、また、本来なら返す必要のない人からも非情な取り立てをしているというのが実態なんですよ。そうやって取り立てた返還金で奨学金の貸与規模がふえているだけであって、だから政府からの貸付金が減っているんじゃないですか。これはひどいやり方だと私は言わざるを得ないと思うんですね。
昨日、お母さんが語った東京の女子学生の事例を紹介したい。
娘さんは、二〇一〇年に、理科の先生になりたいと私立の理系大学に入学しました。初年度納入金は二百万円程度だったといいます。非常に優秀な学生で、一回生前期の成績は二番。後期もその調子なら、大学から給付の奨学金を受けられると大学から言われるほどでした。日本学生支援機構の無利子奨学金を月五万四千円、一年間なので六十四万八千円受給いたしました。
二〇一一年一月五日に自宅で突然心肺停止、救急病院で何とか一命を取りとめたが、上下半身とも全く動かず、蘇生後脳症と診断をされました。やむなく胃瘻で栄養をとり、気管支切開も行っております。身体障害者一級の手帳も交付されました。やむなく一回生で大学を退学したところ、退学直後の二〇一一年五月から、日本学生支援機構から返還請求があり、御両親は五月から十二月まで月々三千円、ボーナス月一万八千円、合計六万円を返還したというんです。
しかし、この年に娘さんの医療費だけで百万円以上かかった。お父さんの収入も減った。機構に状況を説明しても、本来は返還免除が当然の事例なのに、あなたは借りたんでしょうと言われ、減額返還か返還猶予か、どちらかの願いを出すように言われた。医師の診断書と障害者手帳一級のコピーを添えて送ったけれども、誤って減額返還の書類を送ったため、ことし一月末に機構は減額の通知を送ってきた。弁護士に相談して免除を申し出たが、改めて猶予願を出せ、何回も返済猶予を繰り返した後でないと免除はできない、機構の医師は、回復の見込みがあるからすぐには免除できないと言っている。
こういう事例が生々しく語られたんですね。
精神もしくは身体の障害により返還ができなくなったときには、返還免除は当然のはずです。それを、何も知らずに親が払えば六万円を受け取る、免除願もあれこれ理由をつけて受け付けない、こんなやり方がありますか。
昨日の集会では、日本学生支援機構は借金奴隷化推進機構だ、そういう声まで上がっておりました。大臣、本当にこんなことでいいんですか。
○下村国務大臣 今の事例がそのとおりということであれば、それはやはり深刻に受けとめなければいけないことであるというふうに思います。
その方だけでなく、個々の状況把握にきちっと努め、対応する。そして、経済的理由や今のような事例等によって返還が困難な者に対してよりきめ細かな対応をしていくことによって、これはただのローン会社じゃないわけですから、柔軟な対応については、今後、それぞれの事例等をよく把握しながら適切に判断していくということについて検討させていただきたいと思います。
○宮本委員 多重債務にならないように安易な借金はするなと、金融庁は消費者教育を大学で行っております。きょうの資料の四につけたのは、これは金融庁がつくった資料なんですね。「安易に借金をしてはいけません」「社会にはばたこうとしている皆さんに」、こういうものであります。
ところが、同時に、教育現場では、進学や学業継続のために日本学生支援機構の奨学金を勧めております。資料五には、下村大臣御出身の早稲田大学学生部の広報をつけておきました。「奨学金制度を徹底活用しよう!」、こうあります。
私は、今や、日本学生支援機構の奨学金も、金融庁が警鐘を乱打するようなローンやクレジットと何の違いもない、そういう取り立てが現に行われているということを言わなければなりません。
例えば、年収三百万未満の場合、五年は猶予を認めるといいますが、既に法的措置、裁判に訴えられた場合には一切認めないなどと言っております。サラ金ですら延滞利息の減額を認めるのに、支援機構は延滞金を一切減額しないなど、サラ金以上に悪質だという声が上がっています。今回、この奨学金問題対策会議を立ち上げた弁護士さんたちは、これまでクレジット、サラ金問題に取り組んできた弁護士さんたちなんですよ。文科大臣、学生たちがやがてこんなところに追い詰められる借金制度を、奨学金と称して学生の半分近くに借りさせておいてよいのか。文部科学大臣としての見解をお伺いしたいと思います。
○下村国務大臣 御指摘については、もっともな部分がたくさんございます。
一方で、モラルハザードにならないような形で、そして、真に困窮されている方に対して適切な対応を学生支援機構としても考える時期に来ているのではないかというふうに思いますし、それも踏まえて、より学生が借りやすい条件について、さらにしっかり検討させていただきたいと思います。
○宮本委員 先ほどの女子学生のお母さんは、若者がこんな借金を背負っていて日本に未来はあるのかと語っておられました。月額十二万円の利子つき奨学金を大学四年間借りたら、返済総額は利子も含めて七百七十五万円ですよ。
社会に羽ばたく若者に、その初日からそんな借金を背負わせている国に未来があるか。直ちに給付制奨学金を導入すること、少なくとも有利子奨学金を本来の根幹にふさわしく無利子にすること、そして返済猶予の五年という期限を取り払うことを強く求めて、私の質問を終わります。