平成二十四年十一月十六日(金曜日)
午前十一時二十分開議
出席委員
委員長 川内 博史君
理事 金森 正君 理事 城井 崇君
理事 高井 美穂君 理事 永江 孝子君
理事 下村 博文君 理事 松野 博一君
理事 松崎 哲久君 理事 池坊 保子君
江端 貴子君 川口 浩君
川端 達夫君 高野 守君
竹田 光明君 土肥 隆一君
中野 譲君 中屋 大介君
松本 大輔君 村井 宗明君
室井 秀子君 本村賢太郎君
森岡洋一郎君 山田 良司君
吉田 統彦君 笠 浩史君
あべ 俊子君 遠藤 利明君
河村 建夫君 塩谷 立君
田野瀬良太郎君 永岡 桂子君
丹羽 秀樹君 馳 浩君
石原洋三郎君 大山 昌宏君
加藤 学君 三輪 信昭君
大口 善徳君 宮本 岳志君
山内 康一君
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文部科学大臣 田中眞紀子君
文部科学副大臣 松本 大輔君
文部科学副大臣 笠 浩史君
文部科学大臣政務官 村井 宗明君
政府参考人
(文部科学省高等教育局私学部長) 小松親次郎君
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委員の異動
十一月十六日
辞任 補欠選任
野木 実君 森岡洋一郎君
大島 理森君 丹羽 秀樹君
富田 茂之君 大口 善徳君
同日
辞任 補欠選任
森岡洋一郎君 野木 実君
丹羽 秀樹君 大島 理森君
大口 善徳君 富田 茂之君
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十一月十五日
私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)
同月十六日
二〇一三年度文部科学省の予算要求に関する請願(宮本岳志君紹介)(第二三号)
私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(町村信孝君紹介)(第六八号)
同(稲津久君紹介)(第一〇二号)
教職員の定数改善と給与・待遇に関する請願(田中和徳君紹介)(第八八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)
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○川内委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、これを許します。宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず冒頭、このような委員会運営について、断固抗議したい。
本日の委員会日程が提案されたのは、昨日の本会議後の理事懇談会の場でありました。本来、法案審議は、政府から趣旨の説明を聴取した後、それをしっかりしんしゃくした後に、十分な時間をとって質疑するというのが当然の姿であります。そのことから、通常は、趣旨説明と質疑は続けて行わないことが当委員会でも慣例とされてきました。
本日、衆議院が解散されることは、もはや動かざる事実であります。いまだ法案の趣旨説明すら聴取していないものを、趣旨説明、即質疑し、即採決するなどという異常な委員会運営が到底認められないことは当然であり、現に、理事懇談会でも少なくない会派から、急に過ぎる、異常な運営だとの声が上がりました。ところが、民自公三党で合意したからなどという理由のみで、このような乱暴きわまりない委員会運営が行われているのであります。
この際、自民党にも申し上げたい。昨日自民党は、本会議での公債特例法案に対する賛成討論において、もはや野田政権にはあす衆議院を解散する以外に我が国の政治を前進させる道はなくなったと言い、もはやこれ以上言葉のやりとりは必要ない、あとは剣を交えるのみとまで言い切ったではありませんか。
その本会議を終えてみたら、剣を交えるどころか、民自公三党で合意したから、趣旨説明も受けていないような法案を、事もあろうにこのような異常なやり方で、衆議院ばかりか参議院まで通そうなどというのは、議会制民主主義を踏みにじるばかりでなく、その表向きの言葉とも裏腹に、談合政治だと言わざるを得ません。
そこで、法案の質問に入ります。
まず聞きますけれども、そもそも、被用者年金一元化法による共済年金の廃止は二〇一五年十月実施であり、この法律案の施行自体も二〇一五年十月とされており、まだ三年もあるのに、今、この解散のどさくさにこんな異常な委員会運営まで行って本法律案を成立させなければならない理由はどこにあるのか、大臣にお伺いしたいと思います。
○田中国務大臣 宮本委員のおっしゃっている御趣旨は、よくわきまえているつもりでございますが、お答えをさせていただきたいと思います。
来年の一月からの退職手当の引き下げと、それから、新たな年金給付の創設を一連の改正としている国家公務員関係の改正法案は、今国会での成立が必要とされております。このため、国家公務員の年金制度と均衡を図るということを内容とする私学共済法案も成立の時期を合わせることが必要であると考えております。
○宮本委員 つまり、公務員と均衡を図るということを今大臣も御答弁になりました。
年金に限らず、私立学校教職員と国公立学校教職員との待遇の均衡を図ることが必要だというのが、大臣そして政府の認識だと受けとめてよろしいですか。
○田中国務大臣 はい、そう思います。
そして、公務員の取り扱いにおくれないようにすることは、私学関係者の意にも沿うものであるというふうに認識しております。
○宮本委員 国家公務員の退職手当の支給水準を今回四百万円以上も引き下げる、そして、その場合に、職域部分の廃止後の官民均衡を図るために、国共済に新たな年金払い退職給付というものを設けて確保するというふうになっているわけですね。これ自体が問題であると私たちは考えますけれども、公務員の場合には、退職手当との関係で共済年金廃止後の制度設計を議論しているわけですよ。
では、私立学校教職員の退職金はどうなっているのか。これは私学部長で結構ですけれども、退職金の水準の実態はどのようになっているか、お答えいただけますか。
○小松政府参考人 お答え申し上げます。
私立学校の退職金は、まず、仕組み的には実態は、民間企業と同様に、それぞれの労働協約等によりまして、一般的には退職金規程等によって定められておりますので、その水準は学校法人ごとに異なっておって、かなりばらばらでございます。
ただ、個々の学校法人の事案がどうなっているかということになりますと、私立学校の自主性の尊重等の観点から、所轄庁による関与は限定的に行われておりますので、個々の教職員の給与、退職金の額を個別に把握するということについては慎重に扱っているという実態でございます。
参考になる平均数値等はある程度つかめますけれども、個別の実態ということになると、そういうことが現状でございます。
○宮本委員 私立学校教職員の退職金の実態というのは、今答弁あったとおり、つかめていないわけですね。
本来、私立学校教職員の共済制度にかわる新たな制度をつくるというのであれば、給与、退職金の実態を踏まえた制度設計を私学関係者の理解と納得のもとに進めていくべきだ、これは当然の話であります。私立学校教職員の退職金の実態も具体的には示されないで、ただ公務員と横並びの制度だからと同じ仕組みを導入するのは、余りにも安易に過ぎると言わなければなりません。
例えば、財団法人私立大学退職金財団がまとめた平成二十四年度退職金等に関する実態調査報告書、私きょう持ってきましたけれども、この中には、定年退職の場合、二〇一〇年度時点で一千五百十万九千円、これは公務員の退職手当を四百万円切り下げた後の金額よりもはるかに低いのが実態であります。これは大学の教職員の場合でありまして、高校や幼稚園ではさらに低くなっているのが予想されます。
やはり、私立学校の教職員の給与、退職金などの実態をよくつかんだ上で、改めて公務員との待遇均衡を図るための制度設計を行うというのが筋ではないかと私は思うんですが、大臣の答弁を求めたいと思います。
○田中国務大臣 おっしゃるとおり、実態をよく掌握してから進めていくんだということはそうなんですけれども、現在進行している状態は、なかなかその実態が全て掌握できずにいるということも事実でございます。
ですから、年金とか私立学校の教職員の福利厚生については、国公立学校の教職員との制度的な均衡の確保に努めることも重要だと思いますし、他方で、学校法人における給与や退職金については、民間労働法制のもとで、各学校法人ごとの労働協約等に基づきまして自主的かつ適切に決定されるべき事項であろうというふうには考えております。
○宮本委員 この七月にあなた方が開催した私学共済年金制度の在り方等に関する調査研究協力者会議、ここでこういう意見が出されております。
私立学校は公務員ではなく民間として扱われる場合(私学助成等)と、公務員と同様に扱われる場合(共済制度等)がある。そのときの状況に応じて、民間として自助努力を求められたり、公務員同様に、優遇されているかのような見方をされたりと、不利な状況を強いられることが多いイメージがある。今後、制度設計をするにあたり、極力こうした不公平感のない制度にしていただきたい。
こういう意見が出されているわけですね。
つまり、私立学校教職員と公務員の均衡を図るといいながら、給与や退職金は公務員よりも低く、均衡も図られていないのに、年金だけは公務員と同じにして切り下げるというのでは、とても納得が得られるものではないと私は思います。
私学共済とのかかわりで、私立高校での非常勤講師の実態についてもきょうは聞いておきたいと思っております。
公立の学校でも今、非常勤の教員がふえておりますけれども、私立の学校では直接雇用、間接雇用を問わず非常勤の講師がどういうふうになっているか、まず割合をお答えいただけますか。
○小松政府参考人 お答えを申し上げます。
直接雇用、間接雇用を問わずということでございますけれども、私どもの持っております調査では、学校基本調査で、用語としては非常勤講師ということではなくて、専任の教員を指します本務者とそれ以外の兼務者ということで、今のお尋ねは、その兼務者で私立高校の講師の方というのが一番近いかと思いますので、その数字でお答えさせていただきます。
本務者と兼務者を合わせた私立高校教員数が九万二千八百十五人、このうちで兼務者で講師である人というのが二万七千四百四十六人でございますので、この本務者と兼務者を合わせました教員数に占める兼務者の講師数の割合は二九・六%ということになります。なお、複数の学校を兼務していらっしゃる場合はそれぞれの学校から上がりますので、若干の重複があることはお許しをいただきたいと思います。
○宮本委員 二九・六%。学校教員統計調査を見ますと、公立学校では教員全体に占める兼務教員の割合は一七%となっておりますから、私立の高校というのは、その倍近く高いことがわかります。
全国私立学校教職員組合連合、全国私教連がことし十月に公表した調査では、全国三十一都府県の二百六十二校を調査したところ、間接雇用の講師は三十五校で百四十名、うち派遣講師は三十二校に百十三名、業務委託、請負が五校に二十七名いることがわかった、こういうふうにされているわけですね。
それで、学校現場で業務委託、請負というのは、これは、本来は校長の指示のもとに仕事をする人たちですから、限りなく偽装請負に近いと言わざるを得ない雇用形態だと思うんですね。
こういう業務委託、請負という形態をとっているものの中に偽装請負という実態があるとすれば、これは直ちに改善されるべきだと私は思いますが、よろしいですか、私学部長。
○小松政府参考人 お答え申し上げます。
私立学校を設置いたします学校法人の教員の雇用は、一般の民間法人と同様に、労働関係法令にのっとってなされるべきものでございます。
このような観点から見ました場合に、一般論として申し上げれば、仮に私立学校において、労働関係法令に照らして、今おっしゃるようにいわば違法というような状態があった場合には、直ちに改善されるべきものという認識に立つ必要があると思います。
個別具体の対応につきましては、さまざまな学校ごとの実態に即して考える必要があると思いますが、全体としてはそういうふうに理解をいたしております。
○宮本委員 聞きますと、やはり私学の生徒獲得競争が激化していると。それで、大体どこの学校でも、公立の二次募集の試験が終わらないと生徒数が確定しないという状況があるというんですね。公立の二次募集が終わるのが三月の十日ごろですから、三月の二十日ごろに私学の生徒の最終的な数が決まる。そうすると、それから慌てて教員を探さなきゃならないという事態が生じているというんですよ。
それも、その時期に募集をかけても、とてもじゃないが応募をしてもらえる人もいないという状況があって、それで、そういうところをまた見込んで教員の派遣会社というものがつくられていて、派遣会社から派遣を受ければすぐに手当てができるというので、派遣教員というものが派遣されるという事態になっている。これがずっと全体に広がってきていると思うんですね。そう聞いたんです。
そういうことが広がると、やはり非常に教育の中身自身も不安定になってくると思うんですけれども、これはちょっと大臣に、そういう事態についてどうお受けとめになるか、御答弁いただけますか。
○田中国務大臣 雇用の形態というのがさまざまになってきていて、今おっしゃるように、雇われる方の人の立場というのが安定的であった方がいいわけでして、業務委託、すなわち請負というような形でやるということは、法律の締めつけがすごく緩いということがあるんですけれども、片や、今度派遣にすると、それはそれなりのまた縛りがあったりとかあるので、それぞれ今、現実に進行していることはいろいろな形態があるので、これを一くくりにはできないと思いますが、いずれにしても、雇用される人の状態を安定的にやっていかなきゃ、指導するべきだという御指摘だというふうに思いますし、私もそのように考えております。
雇用形態については労働関係の、これはむしろ私は、厚生労働省の労働の、これは教育だから文科省でやっておりますけれども、一般に言われている労働形態という形からも、今後もっと緊密にアクセスをしてほしいと思って、先ほど事務方に指示もしたところなんです。
一応、労働関係法令にのっとりつつ、公教育を担う立場から各学校法人が自主的かつ適切に判断していただく性質のものであって、文部科学省は、今の時点では特別にこのことでコミットして調査をしないということかもしれませんが、しかし、実際の状況を、現実をよく見ながら、それに沿って対応するようにということを事務方に、けさ指示をいたしました。
○宮本委員 雇われる側の雇用という問題もあるんですけれども、私は、やはり生徒たち、子供たちへの影響ということを文部科学省はしっかり見なければならないと思うんですね。
これは、文科省が公立の教育に関して発表された新たな定数改善計画、これを見ても、公立学校で臨時、非常勤の教員がふえていることについて、学校の組織運営の面や教育内容の質の維持向上の面で支障が生じることが懸念され、望ましくないと公立については書いているわけですよ。私学でも当然、非常勤教員がふえれば、学校の組織運営の面や教育内容の質の維持向上の面で支障が生じることが懸念されると思うんですね。
それで、やはりこれは全体をつかむ必要がある。先ほど指示されたとおっしゃいましたけれども、全体をしっかりつぶさにつかんで、教育の質、これをしっかり守れるかどうかを見きわめる必要があると思うんですが、大臣の御答弁をいただきたいと思うんです。
○田中国務大臣 おっしゃるとおりだと思いますし、いろいろな形態の学校、雇用関係がありますが、要は教育の質を担保していくということに尽きると思いますので、また、先ほど言いましたように、厚労省等とも連携をとりながら、現場をよく見て、そして実情を把握した上で、適切な指導なり、できるように努力いたします。
○宮本委員 この法律案は、別途の法律案で創設される国家公務員共済の職域部分にかわる新たな制度と同じ内容の制度をそのまま私立学校教職員に導入しようとするものであります。
そもそも、国公立学校教職員と比して低額な私立学校教職員の給与、退職金が改善されないまま年金だけを切り下げる結果となるものであり、我が党は反対であるということを表明して、質問を終わります。