平成二十四年十一月七日(水曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 川内 博史君
理事 金森 正君 理事 城井 崇君
理事 高井 美穂君 理事 永江 孝子君
理事 下村 博文君 理事 松野 博一君
理事 松崎 哲久君 理事 池坊 保子君
江端 貴子君 勝又恒一郎君
川口 浩君 川端 達夫君
桑原 功君 小室 寿明君
高野 守君 高橋 英行君
土肥 隆一君 道休誠一郎君
中野 譲君 中屋 大介君
野木 実君 浜本 宏君
藤田 大助君 藤田 憲彦君
松本 大輔君 村井 宗明君
室井 秀子君 谷田川 元君
山田 良司君 吉田 統彦君
笠 浩史君 あべ 俊子君
遠藤 利明君 大島 理森君
金田 勝年君 河村 建夫君
塩谷 立君 平 将明君
馳 浩君 石原洋三郎君
大山 昌宏君 加藤 学君
高松 和夫君 三輪 信昭君
富田 茂之君 宮本 岳志君
山内 康一君
…………………………………
文部科学大臣 田中眞紀子君
内閣府副大臣 白 眞勲君
文部科学副大臣 松本 大輔君
文部科学副大臣 笠 浩史君
総務大臣政務官 石津 政雄君
外務大臣政務官 村越 祐民君
財務大臣政務官 柚木 道義君
文部科学大臣政務官 村井 宗明君
文部科学大臣政務官 那谷屋正義君
厚生労働大臣政務官 糸川 正晃君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 田中 法昌君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 河邉 有二君
政府参考人
(文部科学省大臣官房長) 前川 喜平君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 布村 幸彦君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 板東久美子君
政府参考人
(文部科学省高等教育局私学部長) 小松親次郎君
政府参考人
(文部科学省研究振興局長) 吉田 大輔君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 戸谷 一夫君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 久保 公人君
政府参考人
(文部科学省国際統括官) 加藤 重治君
政府参考人
(文化庁次長) 河村 潤子君
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委員の異動
十一月七日
辞任 補欠選任
江端 貴子君 小室 寿明君
竹田 光明君 浜本 宏君
本村賢太郎君 高橋 英行君
大島 理森君 金田 勝年君
永岡 桂子君 平 将明君
大山 昌宏君 高松 和夫君
同日
辞任 補欠選任
小室 寿明君 江端 貴子君
高橋 英行君 藤田 大助君
浜本 宏君 道休誠一郎君
金田 勝年君 大島 理森君
平 将明君 永岡 桂子君
高松 和夫君 大山 昌宏君
同日
辞任 補欠選任
道休誠一郎君 桑原 功君
藤田 大助君 勝又恒一郎君
同日
辞任 補欠選任
勝又恒一郎君 本村賢太郎君
桑原 功君 藤田 憲彦君
同日
辞任 補欠選任
藤田 憲彦君 谷田川 元君
同日
辞任 補欠選任
谷田川 元君 竹田 光明君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
――――◇―――――
○川内委員長 池坊保子さんの質疑を終了いたしました。
次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
田中眞紀子文部科学大臣の所信に対して質問いたします。
まず、既に議論になっておりますけれども、秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大、この三大学の認可問題であります。
去る十一月一日に大学設置・学校法人審議会が可とする答申を出したにもかかわらず、田中大臣は、翌二日、閣議後の記者会見で、「残念ながら認可するわけにはいきません。」と発言をされました。この発言を機に大混乱となったわけであります。
本日の答弁をお聞きしておりますと、文科大臣は、不認可にしてはおりません、こう御発言、御答弁されました。つまり、認可はまだしていないが、不認可にしたわけでもない、こういうふうに理解いたしますが、そのとおりですね。
○田中国務大臣 それで結構でございます。
○宮本委員 そうしたら、まずお伺いしたいのは、その十一月二日の閣議後の記者会見で、なぜ大臣は、認可でも不認可でもまだ決まってもいないものをそのようにお触れになったのか、それはなぜなんですか。
○田中国務大臣 朝からきょうはこのことを申し上げておりますが、記憶を喚起していただければありがたいんですけれども、あの日は、十一月二日でしたか、あれについては、本会議があって、物すごく過密スケジュールでした、朝も早かったし。その中でもって、本来は、文科省の中で記者会見室がございまして、そこでやっていれば、かなり時間をかけて毎日やっています。けれども、もう立って、いわゆるぶら下がり状態でしたから、ああいうぱぱぱっという物の言い方になって、よくわからなくて、マスコミもびっくりしたわけですから、そこで事務方がブリーフして、別に事務方のせいにしているわけじゃなくて、事実、わからなかったと思いますよ。
しかも、十月二十六日、先ほどから指摘がありますけれども、二十六日にそういう話が高等局からあって、ちょっと全然違っていますという話、そこから始まって、次はもう週末で徳島に行ったりとか、予定がどんどん入っていてどうにもならない状態でしたから、本当に、結果的にはミスリードをしてしまったというか、真意が正確に伝わらなかったということは現実としてあると思いますけれども、あとは先ほど申し上げたことの繰り返しです。
○宮本委員 いずれにせよ、そのことがやはり大きな波紋を呼んだことは、これは事実なんですね。
日本私立大学団体連合会、日本私立短期大学協会は緊急声明を発表いたしまして、「大学設置の認可に係る答申は、大学設置・学校法人審議会において法省令に基づく十分な審査を重ねた上で適切に行われたものと認識しており、遺憾の念を禁じ得ません。」、こういう緊急声明も出されておりますし、そのことがやはりさまざまな関係者の怒り、そして批判を呼んでいるということは、これは事実だと思うんですね。
それで、その中にはやはり、一番私たちが胸を痛めているのは、受験生、子供たちにやはり大変な混乱というものがあると思うんですね。
私もいろいろ聞いてみましたけれども、秋田公立美術大に進学を予定していた美術工芸短大二年の女子学生は、直前に言われても困る、また一から考え直せというのかと肩を落とした。あるいは、札幌の保健医療大学では、既に、定員百名に資料請求が千五百人、オープンキャンパスに二百人が訪れて、そして開学不認可というふうに、不正確かもしれませんが、不認可と告げられてショックで泣きじゃくった学生もいたというふうに報告されております。
それで、昨日ですけれども、道議会で我が党の議員もこの問題を取り上げて質疑をしたようでありますけれども、北海道当局も、今回の不認可の判断は、看護需要が高まっている中、将来にわたる看護職員の供給などに極めて大きな影響があり、深刻に受けとめていると。関係部と連携し、撤回も含めた処分の再考について、道として速やかに文部科学省に強く申し入れてまいる考えだ、これはもう道議会ではっきり答弁されている。
つまり、現場では、子供たちもそうですし、自治体もそうですけれども、不認可と決まったと伝えられて、大変なリアクションが起こっている。
先ほど大臣は、ソフトランディングではだめなんだ、目を覚まさせる契機になったとおっしゃったけれども、それはしかし、その結果が、子供たちが泣いたり、こういう混乱が起こるというのは、ちょっと余りにもひどいんじゃないですか。
○田中国務大臣 ハードランディングをさせたいなんて思っているわけじゃないことぐらい、賢い宮本先生は御存じだと思うんですけれども。
それよりか、泣いている、かわいそう云々、それはよくわかるんですが、学校が認可されるのは十月三十一日ですから、現実は今回は十一月一日だったと思うんですが、そこで、では、あそこやここや、この学校を受けようかなと始まってくるのに、何かあたかも、もうできている、もうビルも建っちゃっている、入学案内もできちゃっている。もし認可されなかったら、学校は経営上はどうなるんだろうかというような思いはあるんですよ、私は。
そのことも大事なので、そういうことが何か既存の事実としてどんどん進んでいって、教授も来ているのに、被害がこれだけある、大変なことになるというけれども、それはちゃんと、入学試験と同じで、受かったからそこで制服をつくり、帽子をつくり、それから貯金をおろしてきて云々、学費をということになるのであって、もう全部が準備しちゃっているのにここで言われたら困るわねということは、ちょっとそこが不思議だなと思われませんか。
○宮本委員 いや、大臣がそれが不思議だと思われるのは勝手なんですけれども、大学の設置認可のやり方というのは、従来からそういうサイクルでやってきたわけですよ。先ほどから議論があったように、もう三年も前から段取りをしながら進めてきているという事実があるわけですよね。
だから、今の大学設置・学校法人審議会のありようが今のままでよいと別に誰も言っていないわけですよ。これをいろいろ検討するということはそれはあるんでしょう。しかし、そのことと、今日まで現行制度に基づいてやってきた個別具体の大学が果たして認可すべきかすべきでないかということとは別物であって、そして、その審議会が可とすべきという答申を出したわけですから、そこはしっかりやはり尊重する必要があると思うんですね。
賢明な宮本委員と言っていただきましたから、賢明な大臣のことですから、幾つかのことを、これはもう当然のことで受けとめていただけると思うんですが、まず第一は、血も涙もある大臣でありますから、受験生のそういう声だとか、現場の自治体が混乱しているという現実、こういう諸般の事情についてはしっかり鑑みるというお気持ちはお持ちですね。
○田中国務大臣 はい。
○宮本委員 国会の委員会での議論というものを大臣として尊重するのは当然のことだと思いますけれども、きょうも随分党派を超えてこの問題が議論になってきております。当然、大臣として本委員会の議論というのは尊重されるというふうに私は思っておりますが、大臣、よろしいですね。
○田中国務大臣 委員会だけではございませんで、委員会はもちろん言わずもがなですけれども、全国から寄せられているメール、手紙、電話、大変なものがあります、賛成、反対。数は申しません。全てを勘案して、日本の将来、文部省が、日本の若い人たちが、大学が、どうやってたった一回の人生を生きがいを持って生きるか、そのことをたった一つの目標として、判断を間違えないようにしたいというふうに思っております。
○宮本委員 いずれにせよ、この問題については、やはり現行の制度もしっかり尊重した上で適切に対応する必要があるというふうに私は思っております。
それで、この問題は、やはりこれを契機にしっかり議論する必要があると思うんですよ。私どもは、先ほどの理事懇談会でも、やはりこの三大学の関係者に参考人として出席していただいて、委員会としての集中審議を行うべきだということも申し上げました。
次の定例日は金曜日ということでありますけれども、本日の委員会も、冒頭委員長からお話がありましたように、与党の要請によって、異例ながら開かれているわけでありますけれども、金曜日に予算委員会を開くやの情報がありますが、その場合はともかくとして、万一、予算委員会が開かれないというような場合には、次の定例日にはきちっとそういうことをやるべきだと私は思いますが、委員長、ぜひ御検討いただきたいと思います。
○川内委員長 理事会で協議をしたいと思います。
○宮本委員 しっかりと現行制度にのっとった対応を求めておきたいというふうに思います。
さて、次に、私は、国際人権A規約の留保撤回の問題について質問したいと思います。
我が国は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第十三条二項の(b)と(c)、つまり、中等教育と高等教育に無償教育を段階的に導入するという漸進的無償化条項を、一九七九年六月の条約締結以来、三十三年間にわたって留保し続けてきたわけであります。
政府は、ついに去る九月十一日、留保撤回を閣議決定し、同日、国連本部に通告をいたしました。三十三年ぶりと。教育を受ける権利の実現のために、国際的にももはや常識になっている漸進的な無償化条項、これを受け入れたことは当然のことだと思います。この決定は、遅きに失したと思いますけれども、日本の教育史上画期的なことであり、多くの国民から歓迎されております。
官報に掲載された外務省告示を見ますと、この通告により、「日本国は、平成二十四年九月十一日から、これらの規定の適用に当たり、これらの規定にいう「特に、無償教育の漸進的な導入により」に拘束される。」こととなる。
教育を所管する大臣として、この国際公約ともなった中等教育、高等教育の無償教育の段階的実現に向けて、どういう御決意か、まず大臣の決意を伺いたいと思います。
○田中国務大臣 国際人権A規約十三条二項ですけれども、これは私、かつて宮本先生からこの問題を伺ったことがあるように記憶しておりますけれども、家庭の経済状況にかかわらず、何人も全ての意志ある者が安心して教育を受けることができるように、今後とも一層の教育費の負担軽減に努めていく、これは理想的な姿でありますし、経済は厳しいですけれども、そういう姿勢だけは貫きたいと考えています。
○宮本委員 そこで、改めて聞くんですけれども、今日、日本政府がこの規定の留保撤回が可能だと判断した理由は何か。文科省、お答えいただけますか。
○加藤政府参考人 御説明申し上げます。
高等教育に関しましては、近年、家庭の経済状況にかかわらず、全ての意志ある者が安心して教育を受けられるように、家庭の経済的負担の軽減を図っておりまして、高等教育につきましては、授業料の減免措置の拡充ですとか、無利子奨学金の拡充といった措置を講じておるところでございます。
こういったことを踏まえまして検討しました結果、同規約の(c)項の高等教育につきましても、無償教育の漸進的な導入に係る留保は撤回できるというふうに判断したものでございます。
○宮本委員 授業料減免の拡充と奨学金受給者数の拡大、こういうことだと思うんですね。
まず、これから私が皆さん方と議論することが何かぜいたくな要求だというふうに受け取られないために、世界の常識というものを確認する意味で、私のところに届いた一通のメールを紹介したいと思っております。
ことしの九月の十二日、まさに日本政府が今の留保撤回を国連に通告した日の翌日、留保撤回を喜んで、私のところにある海外留学生からメールが送られてきました。以下のような中身です。
このたび、日本政府が中高等教育の無償化へ第一歩を踏み出したのは、日本に住む者全員にとっての大きな福音です。宮本先生を初め、国民多数の声がこれを実現させたと言えます。今、私は海外に留学しているのですが、当地では大学教育が無料なのは当たり前です。それどころか奨学金が出ています。奨学金はもちろん返還の義務などはありません。そもそも返還の義務があるようなお金は奨学金とは呼べないでしょう。外国人留学生である私にすら手厚い支給があります。日本にいたときよりもずっと経済的に楽です。自国にいるより他国にいる方が学業を続けやすいとは、こんな皮肉はありません。こう述べた上で、今度は本当に中高等教育の無償化の実現を目指して、さらに政治を前に動かしてほしい、こういうふうに結ばれておりました。
文部科学省に確認しますが、このメールにあるように、大学教育は無料なのは当たり前、留学生にでも返還不要の給費制奨学金が支給される、こういう国はヨーロッパなどには幾つも存在しますね、事実。
○板東政府参考人 各国で教育費負担についての公的補助というのはさまざまな形がございますけれども、先ほど御指摘がございましたような、授業料が無料であるということと、それから自国の学生とか留学生に対して給付型の奨学金があるという国も幾つかございます。例えばフランスとかノルウェーなどについてはそういう状況であるというように承知をしております。
○宮本委員 これが世界の水準なんですね。ここから日本は非常に大きく立ちおくれている。自国にいるより他国にいる方が学業を続けやすいとは、こんな皮肉なことはないとこの人が指摘するように、我が国の水準こそ非常識だと言わなければなりません。
そこで、まずは授業料減免制度というものが、世界に向かって、無償化に向かっていますよと言えるものかを検証したい。直近の二〇一一年度の予算における授業料免除人数、それから予算上免除率は一体幾らになっているか、高等教育局、答弁いただけますか。
○板東政府参考人 今、二〇一一年度のお尋ねでございましたので、国立大学の学部、大学院修士課程における授業料免除者数につきましては約三・六万人、予算上の免除率は七・三%ということでございます。
○宮本委員 今の局長答弁、それは学部の学生の分です、三・六万人は。大学院は含まれておりません。そうですね。
ということは、この制度が三・六万人まで拡充されてきたというからには、この予算上の免除率七・三%というのは過去最高に今なっているということなんですか。いかがですか、局長。
○板東政府参考人 過去最高ということではございません。昭和五十七年度から昭和六十一年度までというのが一二・五%ということでございました。
それから、先ほどの率については、学部と大学院の修士の方のものを含んだものでございます。
○宮本委員 現状の七・三%も実は史上最高ではなくて、かつては一二・五%もあったと。大学進学率が高まれば当然人数がふえるのは当たり前なんですけれども、漸進的無償化、つまり無償教育に向かって進んでいると言えるためには、率がふえなきゃならないんですね。来年度の概算要求、あなた方の概算要求どおり仮に満額通っても、これは結果として一〇%ですから、まだ先ほどの一九八二年の水準にまでもいかないわけですよ。これでどんどん進んでいるというふうに、無償教育に向かっているとは言いがたいと思うんですね。
もう一つ、これは私学について聞かなきゃなりません。
私立大学等経常費補助金における授業料減免で、同じく二〇一一年度の交付実績、対象学生数、被災学生以外と、全学生数に占める補助対象人数の割合はどれだけになっておりますか。
○小松政府参考人 お答え申し上げます。
お尋ねの私立大学等経常費補助金における授業料減免で、同じ二〇一一年度の交付実績、おっしゃられました対象学生数、被災学生以外ということでございますと、人数にいたしまして三万二千三百四十八人、これは全私立大学等の学生の約一・五%に当たります。補助率二分の一ということで実施をいたしております。
○宮本委員 さっき国公立で七・三%が議論になりましたが、私学の場合はもうわずか一・五%と。この間ずっと一%ですよ、授業料減免というのは。
これが広がらない、なかなか進まないのには、それは理由があります。私学の場合は、さっきお話があったように国庫負担が二分の一。つまり、半額は大学が持っているわけですから、この率がふえればふえるほど大学の負担は大きくなる。だから、どんどんふやしましょうというふうになかなかならないわけですよね。だから、授業料減免で無償化にどんどん向かうというふうに、これは現状はなかなかならないわけですよ。
そこでやはり問題になってくるのが奨学金の制度なんですね。
なるほど、留保撤回できる理由に奨学金受給者数がふえたということを挙げておられる。しかし、この間、日本学生支援機構の奨学金を受けている学生数はどのように推移しているか。
これもちょっと高等教育局に聞きましょう。
では、二〇〇九年政権交代後にどれだけふえたか。無利子、有利子、それぞれ二〇〇九年と二〇一二年を比べて何人ふえたかを御答弁ください。
○板東政府参考人 二〇〇九年と二〇一二年を比べますと、無利子奨学金が三・九万人増員、有利子奨学金が十五・二万人増員しているということでございます。
○宮本委員 合計で十九万人余りふえたという答弁になりますね。
しかし、今言われた奨学金受給者の中に、返還の必要のない給付制奨学金を受けている者が一人でもおりますか、いかがですか。
○板東政府参考人 給付制の奨学金はございません。もちろん、授業料減免とか、あるいはRA、TAのような、違う形のものはあったりいたしますけれども、先ほどの奨学金につきましては給付制ということではございません。
○宮本委員 奨学金の受給者がふえたといっても、給付制奨学金というのはゼロなんです、ないんです。つまり、借金を背負う学生が十九万人ふえたというだけの話なんですね。しかも、十五万人は利子つき借金ですよ。無利子は少なくて四万人であって、結局、大半は利子がつく借金を背負う学生がふえたというだけの話なんですね。
もう一通、私に寄せられたメールを紹介したい。私の六月の十一日に行った国会質問を見たという、これもまた若者からのメールであります。
今は就職して三年目です。奨学金は高校と大学で借りていました。現在はそれらの返済が月三万円ほどあります。宮本さんが言ったことと同じことをずっと思っていました。僕は高校、大学に借金をつくりに行ったと思っています。家も貧しかったので大学は行かず高卒で働こうと思っていましたが、家族の大学には行っておきなさいという言葉で一応大学進学を決めました。しかし、僕の予想していたとおり、親は授業料を払えず、僕が奨学金とバイトでやりくりしました。学生時代も今も、働いて稼いでも奨学金の返済があります。こんなことなら大学に行かなければよかったと思います。
僕は高校、大学に借金をつくりに行ったと思っている、こんなことなら大学に行かなければよかった、これが日本の奨学金なるものの実態なんですね。
最初に紹介した留学生のメールと比べたら、いかに日本という国が非常識か、おくれた状況かということがわかると思うんですね。
さきの留学生が言うように、そもそも返還の義務があるようなお金は奨学金とは呼べないのであって、奨学金の貸与規模が拡大したからといって、無償教育の漸進的な導入というようなことは言えません。なぜ、この拡大が留保撤回の理由に挙げられるんですか。文部科学省、いかがですか。
○加藤政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたけれども、近年におけます授業料減免措置の拡充、無利子奨学金事業の拡充等の措置がとられたことをもって、無償教育の漸進的な導入に係ります留保は撤回できるというふうに政府部内で判断したものと理解しております。
○宮本委員 答弁になっていないんですけれどもね。
だから私は、奨学金と呼べるものにするためには、給付制奨学金を導入しなさいと申し上げてきたし、現にあなた方は、昨年度の概算要求では、給付制奨学金の導入、高等教育にも概算要求までしたわけですよ。その上で、ことし九月十一日、ついに国際人権A規約の留保を撤回した。ことしこそ給付制奨学金に踏み出すのだろうと思ったら、何と、ことしは来年度概算要求に要求すらしなくなったわけです。これでは逆に、留保を撤回して無償教育の漸進的導入から遠ざかっていると言わざるを得ないと私は思いますけれども、なぜ、ことしは要求しなかったんですか。
○板東政府参考人 御承知のとおり、昨年度、給付型奨学金を要求したわけでございますけれども、財源の問題もございまして、昨年度につきまして、予算編成に関する政府・与党会議の議論を踏まえて、所得連動返済型の無利子奨学金制度という形で新たな制度を導入するということに決まったのとあわせ、無利子の奨学金制度の拡充をしたわけでございます。
来年度の概算要求についてでございますけれども、その始まった所得連動返済型の奨学金制度の充実、運用の拡大であったり、あるいは無利子奨学金の予約採用枠の拡大、それから、先ほどから御指摘のございます授業料減免の充実、そういったさまざまな制度、事業につきましての充実を図っているということでございます。
○宮本委員 その政府・与党会議でだめだと言われて、そして所得連動型になったと。なぜ、だめだという結論になったんですか。
○板東政府参考人 私の理解といたしましては、一つは、やはり東日本大震災を初めといたしまして、財政状況も厳しい中での財源の問題というのが一つあったかと思っております。
また、将来に向けて、返せる人については、将来の学生を支えていくために返していく、そういった形で、制度をより多くの人たちに利用、活用してもらうということを考えたということでございます。
○宮本委員 給付制奨学金に関して、その会議の場で、受けた学生がどんなに経済的に裕福になっても返済しないというふうになると、モラルハザードが生じるのではないか、やはり返せるようになったら返してもらわなければモラルハザードだという議論が出たと聞いたんですね。これは実は、あなた方がとうとう魂まで自民党に戻ってしまったということを意味していると私は言わざるを得ないと思います。
これがもしモラルハザードならば、どんな大金持ちの家庭でも授業料を無償化している高校無償化だって、モラルハザードだということになってしまうんですね。
確かにあなた方は、民自公三党で交わした高校無償化の見直し、それに伴う協議の場で、自民党から再三、所得制限を高校無償化にも入れろというふうに言われております。しかし、今のところ、あなた方政府は、高校無償化については救貧政策ではないのだ、教育は社会が支えるのだ、これは哲学の問題なのだと、真っ当な反論を行っております。
しかし、そうであれば、国際人権A規約十三条二の(b)項の精神はもちろんだが、(c)項についても同じく、やはり将来金持ちになったら返させないとモラルハザードだという議論に乗っかるのはおかしいのであって、高等教育まで社会が支えるという立場に立つのが当たり前だと私は思うんですが、これは大臣、そのようにお考えになりませんか。
○田中国務大臣 おっしゃることは大変よく理解はいたしますけれども、財源が厳しかったり、先ほど板東局長がるる申し上げましたような事態もありますので、御理解をいただきながら、我々もまたさらにいろいろと、日本の経済が豊かになるようないろいろな優秀な人々を育てて、日本がまた活躍して、財政が豊かになって、そしてどんどん奨学金も出して、尊敬される国になれるように頑張りたい、かように考えております。
○宮本委員 もう終わりますけれども、大臣は大学が多過ぎるというふうに冒頭の議論でもおっしゃいますけれども、日本の大学進学率はまだ四九%なんです。アメリカは七〇%、フィンランドは六九%。OECDの平均五九%と比べても決して高くないんですね。
それは、年間百万円を超えるような高学費、大学に借金をつくりに行ったようなものだ、行かなければよかったと若者に言わせるような恥ずかしい状況、こういう状況を改めれば、まだまだ大学で勉強したいという若者がふえる可能性があるんです。だから、多過ぎるというのも当たらない。
大学改革というならば、こういう問題にこそメスを入れ、国際人権規約の留保を撤回した国にふさわしい高等教育予算を抜本的に拡充することを強く求めて、本日の質問を終わります。