平成二十四年八月六日(月曜日)
午後一時開議
出席委員
委員長 稲津 久君
理事 川村秀三郎君 理事 竹田 光明君
理事 道休誠一郎君 理事 柚木 道義君
理事 あべ 俊子君 理事 松浪 健太君
理事 黒田 雄君
打越あかし君 橘 秀徳君
富岡 芳忠君 橋本 勉君
初鹿 明博君 松岡 広隆君
室井 秀子君 森山 浩行君
山崎 摩耶君 山田 良司君
棚橋 泰文君 馳 浩君
岡本 英子君 小林 正枝君
高木美智代君 宮本 岳志君
吉泉 秀男君
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参考人
(花園大学客員教授) 水谷 修君
参考人
(PHP総研教育マネジメント研究センター長) 亀田 徹君
参考人
(NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事) 小森美登里君
衆議院調査局第一特別調査室長 横尾 平次君
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委員の異動
八月六日
辞任 補欠選任
川口 浩君 橋本 勉君
松岡 広隆君 打越あかし君
池坊 保子君 高木美智代君
同日
辞任 補欠選任
打越あかし君 松岡 広隆君
橋本 勉君 川口 浩君
高木美智代君 池坊 保子君
同日
理事池坊保子君同日委員辞任につき、その補欠として池坊保子君が理事に当選した。
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本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
青少年問題に関する件(いじめ問題)
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○稲津委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
三人の参考人の皆さん、本日は本当にありがとうございます。私からも心からお礼を申し上げたいと思います。
まず、小森美登里参考人にお伺いしたいんですけれども、いじめを苦にしたこういう自殺事件が起こるたびに、学校現場や教育委員会による隠蔽的な体質ということが問題にいつもなっております。
それで、子どもを失った御遺族の立場からいいますと、なぜこういうことがいつまでも変わらずに繰り返されるのか、隠蔽ということが繰り返されるのか、それについてどのようにごらんになっておられるか、少し御意見をお伺いしたいと思います。
○小森参考人 毎日子どもが死に続けている、きょうも死んでいる、その現実に対して大人たちがいつになったら本当に向き合ってくれるんだろう、そんなふうにずっと思い続けながら生きています。大津のあの事件はただニュースになっただけで、あれと同じことが日本じゅうで起きています。
なぜこれが改善されることがないのか。それは、やはり、国が主導権を持って何かに当たるということを今までしてこなかったからだと思います。できることはたくさんあるのに何もしないで、その問題に向き合わなかった、そのことが何より一番大きいと思っています。
○宮本委員 ありがとうございます。
実は、この前の金曜日に、この参考人質疑に先立って、当特別委員会で対政府質疑も行ったわけですね。そのときも、私、質問に立たせていただいて、既に文科省は、二〇〇六年に福岡で起こったいじめ事件、中学二年生の事件、それから北海道滝川市の事件、これを受けて、平成十八年十月十九日付で初等中等教育局長通知というものを出しております。
この中には、まさに、「子どもを守るべき学校・教職員の認識や対応に問題がある例や、自殺という最悪の事態に至った後の教育委員会の対応が不適切であった例が見られ、保護者をはじめ国民の信頼を著しく損なっています。」こう述べた上で、その中には、「保護者や地域住民の信頼を確保することが重要であり、事実を隠蔽するような対応は許されない」ともはっきり書いているんですね。
だから、ここまで書いた通知が出ていながら、しかし、相も変わらず同じことが繰り返される。私は、その背景にはシステムの問題があるんじゃないかと。文書を幾ら出してみたって、片方で、こういう文書を出しはしていますよと言うけれども、実際にそれが報告をきちっとするようなことができないシステム、やりにくいシステムになっているんじゃないかということを申し上げたんですね。
それで、亀田徹参考人、先ほどの滝川の事件に、文科省におられたときに対応にかかわられたというふうに聞いております。
それで、今度の大津市の事件でいえば、報道されるものを見聞する限り、まさにこういう基本が全然貫かれていないということは明らかだと思うんですけれども、これがなぜ現場で生かされないのか。亀田さんが滝川の事件でしっかりかつてやったにもかかわらず、またそれが生かされていないのはどこに原因があるとお考えなのか、お答えいただけますか。
○亀田参考人 ありがとうございます。
私は、二点あるかと思います。
一つは、冒頭申しましたように、優先順位がつけられていない。子どもが安心して楽しく学べる場が大事だといいながら、同時にさまざまな要請をしている。その中で、私としては、この安心して学べる場づくりというのが最も大事な部分だと思いますので、そこの優先順位を国がつけることで、各地域、各学校にそれが浸透していくということがあるかと思いますので、その優先順位づけがなされていないということが一つあるかと思います。
もう一つは、今先生おっしゃった、指導のあり方ということだと思います。教育行政は指導行政と言われておりますけれども、実態としては、通知、紙をまくことによって指導しているという実態がございます。紙は紙として、通知としてあるんですけれども、それをいかに具体化していくか、現場の学校の中で変えていくかというところにこそ、指導行政の本質があるはずであります。
したがいまして、そのためには、実際に、教育委員会の事務局にいる指導主事が各学校を訪問して、各学校の状況を見て必要なアドバイスをする。また、文部科学省としては、都道府県や市町村の教育委員会に行って、その状況を実態として把握して、そして必要な指導をしていく。単に通知を配付するのではなくて、実際に現場、学校や教育委員会に行って関係者と話をして、そして把握をして必要な指導をする、そういった指導行政というのが本来求められているはずだと考えます。
しかしながら、実際のところは、なかなか時間がなくてそういったことができないとか、幾つかの状況によって指導行政の本来の姿というのが進められていないというところに原因があろうかと思います。
○宮本委員 実際にかかわった立場からの貴重な御意見だったと思うんです。
私どもは、実は、この初等中等教育局長通知が出た直後に、国会でいじめ問題で論戦をさせていただいたんですね。そのときに、この通知はいい、通知はいいんだが、もう一方で、これを進める上で障害になる問題があると。
一つは、学校の評価や教員の評価を、いじめの数の多いか少ないかで進めるということをやっているじゃないか、いじめが少ない方が評価が高いということになると、それは事実をちゃんと報告しないということになるでしょうと。だから、この学校評価や教員評価のシステムそのものを見直さなければ、幾らどこにでもありますよと言ってみたって、それはそういう隠蔽ということはなくならないというのが一点ですね。
もう一つは、先ほど亀田参考人もお触れになったんですけれども、大変な教員の多忙化がある。だから、しっかり教員の数もふやして、そういうことをちゃんと丁寧にやれるだけの体制をとらなければ、それは幾ら口でやりなさいよと言ってみたって、実際に現場はそういう状況になっていない、こういうところにちゃんとメスを入れないと、片方で、こう出しているんですよと言っているだけじゃだめじゃないかという問題提起をした。
残念ながら、そのときの政府答弁は、目標を持つことは必要なことなんだ、文書が出ているのに現場でやられないのは現場の教員の道徳規範が足りないのだという答弁に終始したんですけれども、私は、やはり今回の事件を受けて真剣にそこは反省をするというか、そういうことをずっと続けてきた文科省にも国の政策にも問題があったというふうに思うんですけれども、これは亀田参考人と、それから小森参考人にもお答えいただきたいと思います。
○亀田参考人 学校の先生たちは非常にお忙しいということ、授業があり、子どもたちの掃除があって、あっという間に勤務時間は終わってしまう。その中で教材研究もやらないといけない、さらに、子どもたちの状況をしっかり把握する、家庭訪問する。そういったことを十分に行うためには教職員の数をふやしていくということが必要ですので、それはぜひ先生方にお力添えを賜れればと思っております。
また、評価につきましては、恐らく各地域でいろいろな評価があるのかもしれませんけれども、私が認識しているところでは、教員がどれだけ頑張ったか、学校がどれだけその取り組みに専念して取り組んできたかというところがやはり評価されるものだと思っております。実際に入学してくる生徒は年によってさまざまですので、その生徒の状況に応じて、そういった問題行動の多い少ないというのは当然出てくるかと思います。
したがいまして、単にそこで判断するのではなくて、教職員がどれだけの努力をしてきたかということを評価の中で判断していくということが大事かと思っております。
○小森参考人 評価制度については、私は、正直、わからないんです。
ただ、何年以内にいじめの数をこれだけにしなさいとか、不登校をこれだけにしなさいというような数字を設定されれば、その中に抑えなければならないというような意識は自然と出てくるので、それは隠蔽につながってしまうのは当たり前だと思います。
あとは、それよりも、逆の発想として、どこかの自治体が勇気を持って、日本一いじめの報告数が多いというふうに誰か勇気を持って本当の数字を上げてくれるところが出てきたらうれしいなと思っておりますので、私は、会う学校、会う学校に、この地域で一番いじめの報告数が多い学校になってくださいと言って回って、講演しています。
○宮本委員 ありがとうございます。
聞くところによると、熊本県というのが全国でも特にいじめの報告数、認知数が多いということのようでありますけれども、しかし、それだけ対応も頑張っているというふうにも聞いているんですね。
だから、やはり、そういう数の多少だけで評価をするということが非常に大きく現場をゆがめているということは間違いないことだというふうに思っております。
お待たせをいたしました、水谷参考人にもお伺いいたしますけれども、あの大津市で起きたいじめは、亡くなった子の人格も尊厳も根本から否定する、かなりひどいものでありました。
この間報じられているいじめの実態を見聞きするたびに、子どもたちを取り巻く状況が、先ほどももう随分お話がありましたけれども、年々深刻さを増してきている、そうしたストレスやつらさがいじめとなってあらわれている、これはもうたくさんの方が指摘をされているわけでありますけれども、参考人は子どもたちを取り巻く状況をそういう意味ではどう見ておられるか、もう一度お述べいただきたいということと、あわせて、この同じテーマを小森さんにもお答えいただきたいと思います。
○水谷参考人 子どもたちを取り巻く状況は、最悪だと思っております。世の中、マスコミまで含めて、全てが子どもたちを悪くしよう悪くしようとしか考えていないんじゃないか。品のないテレビ番組から、いろいろな問題のある文章、漫画等、インターネット等を含めて、もう少し子ども中心の良識ある社会づくりをしていかなければ、どうしようもないと考えております。
そんな中で、子どもたちが必死の訴えをしてきていますが、ちょっとケアしたいのは、どうも今回の件は、いじめたとされる子が、これ以降、多分刑事事件に発展をし、少年院等への送致になるのか、試験観察、保護処分になるのか、何らかの教育的配慮、矯正を含んだ、いわゆる法的な結果になってしまうだろうと思います。
ただ、いじめている子もいじめられています。いじめを子どもだけの問題にするのはむごい。必ず、いじめている子の背後には、いじめにその子を追い込んだいろいろな状況があると考えています。
そんな意味で、実は、これもぜひ先生方にお願いしたいのは、いじめが発生するのは中学校が非常に多いんです。実は、高等学校に行くと、先ほどいただいた資料にもあるとおり、激減します。
なぜか。理由は簡単なんです。高等学校は輪切りですから、同程度の人間に勉強がついていけるように教えることができるわけです。夜間定時制は小学校まで戻って教えますし、今、文科省が必死になっているサイエンスハイスクールなんというのは、超高度な大学的な教養まで入れる。
でも、逆を言えば、小中はそれができない。習熟度別授業を展開しようとすれば、それは差別だとおっしゃる方々もいる。でも、小学校四年で勉強がわからない状況で中学校に入って、四十五分、五十分の授業を六時間受けるというのは、もう地獄以外の何物でもない。
だから、六三制を含めた、あるいは補習等を含めた、もう少しそういった、教育的に子どもたちが喜びながら成長して学んでいける体制づくりも先生方にお願いしたいと思います。
○小森参考人 子どもたちは今、教室の中で自分が目立たないようにしなければいけないとか、周りのお友達と一緒でなければならないというふうに、とても気を使っているように思います。そういう部分で、昔とは比べ物にならないぐらい、緊張感があるのではないかと思っているんです。
周りと同じでなければならない、それは、誰かからいじめを一緒にやろうというふうに言われたときに、自分は嫌だということが言えない、そんなところにもつながっていると思います。
ですから、お互いの個性を認め合う、違いを知るというところを伝えなければいけないかなというふうに思います。
○宮本委員 ありがとうございます。
小森参考人が、二〇〇七年十一月、当委員会でかつて意見陳述をしていただいています。一応それも全て読ませていただきましたけれども、そこでは、ひきこもりや不登校やニートはいじめ問題と深くかかわっているというふうに指摘をされました。非常に大事な御指摘だと思うんですね。
実は、先日の質疑でも、私は、文科省の調査でひきこもりの原因というものを聞いているんですけれども、不登校になっている子どもたちの原因で、文科省がその原因でいじめとつかんでいる分がわずか二・三%なんですね。だから、いかにもう現実とかけ離れているか。
内閣府がやった別の調査、これは本人から聞いた調査では、四五・九%、ほぼ半分近く、こういうことになっているんですよ。これは、もうこっちの方が恐らく実態に近いだろうと。
これは、結局、本人から聞けば半分程度、半分以上というふうに出てくるものが、文科省が学校や教育委員会を通じてつかむと二・三%になっているという実態があると思うんですね。
ちょっとこの問題、不登校と、あるいはひきこもりといじめとの関係という問題について、小森参考人からお答えいただきたいと思います。
○小森参考人 学校の中に問題があるからこそ、家の中に引きこもって、学校から逃げている状況だと私は感じています。
よく学校の先生なんかは、家庭の中に問題があるんじゃないかとひきこもりの親御さんのことを言ったりするんですけれども、もしその子が家庭の中に問題があるのであれば、その嫌な家庭にずっと居続けるということは非常につらいことだと思いますので、そういう子は逆に、水谷先生の専門のそちらの方に出ていくんじゃないかなと思うんですね。
そういうあたりからしても、やはり学校の中に問題があるから、そこに行けないから次の場所を探しているのは、先生方が言っている、家庭に問題があるのではなく、学校の中に問題があるというところで間違っていないと思います。
○宮本委員 ありがとうございます。
非常に私たちは、子どもたちが今引きこもったり不登校になったりという、その背後にある、おっしゃったとおりの、学校の問題、教育の問題ということをしっかり自己分析的につかまないと、非常に見誤ってしまうというふうに思うんですね。
それで、次にお伺いしたいんですが、いじめで苦しんでいる子ども、あるいは傍観していると言われる子どもたちに対して、教師や親など大人に相談しなさい、相談すべきだというふうに言ってみたり、相談しない本人に問題があるかのように言ってみたり、それから、見ている者はけしからぬというふうに言ってみたり、さまざまな物の言い方があると思うんですけれども、これがさらに子どもたちを追い詰める結果になるに違いないと私は思うんです。
その点での先生方の御意見をお伺いしたいんですが、では、最後に、三人の参考人全てからこの点をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。十分まで、どうぞゆっくりと。
○稲津委員長 それでは、順次お伺いします。
○水谷参考人 今回の事件を見てみれば明らかですけれども、いじめられて亡くなった子、もう取り返しがつきません。一つのとうとい命が失われました。
いじめた子、それも曖昧なまま、これから法的制裁を受けるにしても、今現状、そのうちの何名かと私はかかわっておりますけれども、もう学校に行けない。親が離婚せざるを得なくて、もう夜逃げのように本当に別な県に逃げなきゃならない。今現にいる学校に通えなくて、夜間中学の方に何とか保護をしながら通わすしかない。これでこの子たちの一生にどういう影響が出てくるのか。
また、いじめを傍観していた子の中でも、アンケートで書いたけれども、あの中学から僕にメールが来るんです、いじめたことを先生に知っていたのに伝えなかった、私は生きていてよかったんでしょうかと。ここまで自分が傍観者でいたことで自分を責めている子どもたちまでいます。
もう取り返しのつかない状況になってきていますけれども、速やかにこれを健全化させないと、もっともっと重大な被害があの学校の内部で出てくると非常に憂慮しております。
○亀田参考人 いじめられている子どもたちは追い詰められているかと思いますので、その周りの子どもたちにアプローチしていくということが有効な方法ではないかと思います。それは、やはり大人が気づく、教師が気づく、そして保護者、地域もそうですけれども、周りの大人たちが気づいてあげるということがとても大事かと思います。
そういった意味では、我々大人の責任として、この問題をどうするか。先ほど幾つか提案させていただきましたけれども、現実を変えていくためには何をするのかということを考えていくことが必要だと思います。
○小森参考人 先ほども、傍観者は加害者だと大人は言いますけれども、実は傍観者も被害者だというふうに私たちは認識しています。
そんな苦しんでいる子どもたちに私たち大人が何ができるのかといったら、相談してもらえる大人になることだと思います。子どもたちに、何で相談できないのと聞いたら、どうせ相談したって解決できないでしょうとか、相談したことによって問題を大きくされるぐらいだったら、逆に現状維持のままの方がいいというふうにはっきり言われました。
そんなふうに、子どもたちに相談しなさいと言いながら、相談されても実は頼りがいのない大人たちなんだなというふうに、まず大人が自分たちを反省したいと思います。
そして、学校の先生は、学校の中のことは親はなかなか、外からボールを投げることしかできませんので、中での対応ができる学校の先生になっていただくように、夏休み中は頑張って研修していただくとか、あとは、今後は教職課程の中に、いじめというものに対する対応がきっちりできる先生を育てるような、そんなことをしてほしいなというふうに思っています。
○宮本委員 ありがとうございました。
以上で終わります。