平成二十四年八月三日(金曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 稲津 久君
理事 川村秀三郎君 理事 竹田 光明君
理事 道休誠一郎君 理事 柚木 道義君
理事 あべ 俊子君 理事 松浪 健太君
理事 黒田 雄君 理事 池坊 保子君
石井登志郎君 磯谷香代子君
稲富 修二君 川口 浩君
近藤 和也君 高井 崇志君
富岡 芳忠君 永江 孝子君
初鹿 明博君 松岡 広隆君
室井 秀子君 山崎 摩耶君
小渕 優子君 棚橋 泰文君
岡本 英子君 小林 正枝君
宮本 岳志君 吉泉 秀男君
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内閣府副大臣 後藤 斎君
法務副大臣 谷 博之君
文部科学副大臣 高井 美穂君
内閣府大臣政務官 園田 康博君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 岩瀬 充明君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 布村 幸彦君
衆議院調査局第一特別調査室長 横尾 平次君
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委員の異動
七月四日
辞任 補欠選任
松岡 広隆君 中野渡詔子君
同月六日
辞任 補欠選任
笹木 竜三君 松岡 広隆君
中野渡詔子君 黒田 雄君
三宅 雪子君 岡本 英子君
八月三日
辞任 補欠選任
橘 秀徳君 稲富 修二君
森山 浩行君 近藤 和也君
山田 良司君 磯谷香代子君
同日
辞任 補欠選任
磯谷香代子君 山田 良司君
稲富 修二君 高井 崇志君
近藤 和也君 永江 孝子君
同日
辞任 補欠選任
高井 崇志君 橘 秀徳君
永江 孝子君 石井登志郎君
同日
辞任 補欠選任
石井登志郎君 森山 浩行君
同日
黒田雄君が理事に当選した。
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本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
青少年問題に関する件(いじめ問題)
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○稲津委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
冒頭報告のありました大津市中学生いじめ自殺事件についてお伺いいたします。
私からも、とうとい命を落とされたこの生徒に対して、心からの哀悼の意を表明したいと思います。
今回の事件をめぐっては、国民の怒りは、学校と教育委員会の側に、いじめ問題に対する対応力がなく、隠蔽的な状況があること、これに向けられております。
そもそも、学校は、当初はいじめをいじめと把握してもいませんでした。生徒の自殺後に生徒へのアンケートを行ったけれども、そこには、お金をとられていた、自殺の練習などの記述があったにもかかわらず、教育委員会は、事実確認ができないことを理由に公表せず、いじめの存在は認めたものの、自殺との因果関係は不明とし、調査さえ打ち切ってしまいました。警察も、三度にわたって父親の訴えをまともに扱わなかったということが明らかになっております。これらはいずれも、弁明の余地はないと言わなければなりません。
二〇〇六年十月十一日、福岡県の中学二年生の生徒が、いじめを苦に、遺書を残し、自宅の倉庫内で首をつって自殺するという事件が発生いたしました。この年、北海道でもいじめ自殺がありました。
これらの事件を受けて、文部科学省は、十月十九日付で、銭谷初等中等教育局長通知「いじめの問題への取組の徹底について」を発出しております。この通知では、子どもを守るべき学校、教職員の認識や対応に問題がある例や、自殺という最悪の事態に至った後の教育委員会の対応が不適切であった例が見られ、保護者を初め国民の信頼を著しく損なっていることを指摘し、実際にいじめが生じた際には、保護者や地域住民の信頼を確保することが重要であり、事実を隠蔽するようなことは許されないとはっきり述べているわけですね。
しかし、今回の大津市の事件を見ますと、結局、同じ過ちを繰り返していると言わなければなりません。
そこで、高井文科副大臣に聞くんですけれども、なぜこのような隠蔽が繰り返されるのか、どうお考えか、お答えください。
○高井副大臣 厳しい御指摘、しっかり受けとめたいと思っております。
御紹介があったとおり、この取り組みに対して通知を出し、いじめの問題を隠さず、しっかり対処していくべきというふうに通知もしてきましたし、隠蔽するような対応は決して許されないということは、現場に徹底してきたつもりであります。それにもかかわらず、こうした事案が起こった。
今回、アンケート結果を、一部は公表したものの、事実確認ができなかった部分を非公表としたということなども含め、やはり、事実関係をしっかり確認し、できるだけ迅速に対応するということに対して、少し感性が、感度が低かったのではないかということや、事実確認をどこまでしっかり、生徒との信頼関係、保護者また地域との関係の中できちんと対応していけたのかどうか。個人情報の問題も当然ありますし、事実関係が確認できない中で全て出すということも確かに軽々にはできませんけれども、しかし、やはり、御指摘があったとおり、感性において、迅速さにおいて少し緩かったのは間違いないというふうに思っております。
このような事案の再発防止のために、今度、子ども安全支援室というものを設けましたので、今回のそういう御指摘も踏まえて、しっかり検討して指導もしていきたいと思っております。
○宮本委員 我が党は、この平成十八年の初中局長通知が出された直後、十月の三十日に、我が党の志位委員長が質問で、この通知を、文部科学省のこの方針はこの限りではそのとおりだと評価をしつつ、いじめの件数が多いか少ないかで学校と教員を評価するやり方が、いじめの実態を見えなくさせ、隠蔽の一つの原因となっていると厳しく指摘をしたわけですね。当時の自民党政権の答弁は、隠蔽は教員の規範意識の問題であって、数値目標を持っていじめを減らすやり方自体は悪くない、こういう答弁にこのときは終始をしております。
しかし、今回の事件で私ははっきりしたと思うんですね。幾らこの十八年通知で、問題を隠すな、事実を隠蔽するような対応は許されないと強弁してみても、それだけでは隠蔽はなくならなかった。やはり、そこにはシステムの問題があるのではないか。
私は、これは非常に大事な問題だと思うんですが、高井副大臣の御答弁をお願いいたします。
○高井副大臣 学校評価そのものは、みずからの教育活動などの学校運営の状況を的確に、不断に検証することによって組織的な継続性や改善を図るということを目的にやっておるわけであります。
教員評価ということも、求められる職務遂行能力をどの程度発揮できたのか、本人があらかじめ設定した目標をどこまで達成したかという、能力評価や業績評価をしっかり評価していくというものであって、生徒指導上の課題についても、問題が多いか少ないかだけではなくて、どういう対応をきちんとできたのかということ、十分に必要なことを行ったのかどうか、目標をしっかり達成していけているのかどうか、そういう観点からしっかり評価をしていくというものでありまして、数が多いから評価が下がるのではないかとか、そういうことで決して学校運営に問題が起こったりしてはいけない、それによって厳しく評価されるということだけであってはいけないというふうには考えてきました。
なので、評価するというか、目標を設定したり、しっかり継続的、組織的に改善をやっていくということの大事さと、今回の隠蔽体質につながるということとは、直接には関連しているかどうか、私はそこは言いがたいところはあると思いますが、しかし、この委員会で先ほどから話があったとおり、やはりいじめをきちんと認知して、明らかにして、積極的に対応していくんだという点からも、数が多いということに対して決して否定的ではないということで、我々もぜひ細やかに認知するようにということでやっていきたいと思っておりますので、ぜひその点は御理解をいただければと思います。
○宮本委員 片方で、あなた方は、どの学校でも、どの子でも起こり得ることだと言いながら、そういうことが起こった、いじめの数が多ければ評価が低くなるんじゃないか、そういう危惧が現場にはやはりあるわけですから、この問題を本当にしっかり見る必要があると思うんですね。
答弁を聞いておりますと、文科省の言い分は、もうこの通達で既に出してきたんだ、しかし現場の感度が鈍っていたというものが多いんです。しかし、果たして本当にそういう問題で済むのか。
そこで聞くんですが、最新の文科省の調査で、六五%の小学校が一年間に一度もいじめはありませんという結果になっている。これは、一昨日の参議院決算委員会で我が党の井上哲士議員が追及をして、そもそも六五%はないというのはおかしいじゃないか、こういうふうに言いました。それに対して、初中局長も、なるほど、日常的な実態把握のための取り組みの状況が低いという答弁もあったわけです。
問題は、この調査全体が本当に実態を把握しているかということだと思うんですね。
例えば、この調査では、不登校の調査もしております。現在、小中学校で約十一万五千人の不登校の子どもたちがいるんですね。この調査は、「不登校になったきっかけと考えられる状況」という項目があるんですよ、不登校の子どもたちの状況を聞いているんですよ。
この回答で、不登校のきっかけがいじめだ、こういう原因だとなっているのは何%出ておりますか、高井副大臣。
○高井副大臣 小中学校において二・三%となっております。
○宮本委員 文部科学省のこの調査では、今あったように二・三%、全体のわずか二・三%だというふうになっているわけです。これは、関係者の方々、子どもの近くにいる関係者からは、何を見ているのか、とても信じられないほど低過ぎると、あきれ顔の声が返ってきているんですね。
そこで、内閣府にきょうは来ていただいています。副大臣に聞きますけれども、内閣府が行った高校生活及び中学校生活に関するアンケート調査、ここでも不登校の原因について調査をしております。
ここでは、最初に学校を休み始めた直接のきっかけとして、一番に挙げられているのは何で、どのぐらいの割合になっておりますか。
○後藤副大臣 先生御指摘の調査は、平成二十一年二月から三月に、平成十六年度に高校を退学した者及び同年度に中学校三学年で不登校であった者に対して、学校生活等に関する意識調査を郵送調査したものであります。
先生御指摘の、最も多い回答は、友人関係、いじめ、けんかなどが四五・九%であります。
○宮本委員 四五・九%になっているんですね。
それで、この調査は、原因となったものを複数回答できるようになっております。今答弁のあった友人関係以外にも、クラブ、部活動、いじめられた、他の部員と仲が悪くなったという理由も一七・四%を占めております。これは重複回答ありですから、重複があり得ますけれども、単純に足せませんけれども、半数程度、半数以上は何らかの人間関係のトラブル、いじめなどが不登校の原因になっているんですね。
高井副大臣、なぜこんなに大きな差が出ていると思いますか。
○高井副大臣 恐らく、調査の形式の違いであったり、いろいろな点はあろうかと思いますが、先ほど来、統計やデータの違い等の問題もあり、学校現場でどれほど把握ができているのかという、聞き方の問題、また、事実関係の認定の問題等の差もあるんだろうと思います。
ただ、やはり、推測するとおり、かなりいじめというものは認知件数としても多いわけですから、恐らくどんな状況でも原因の一つとなっているんだろうというふうな御指摘は、それはそうだと思いますので、しっかり踏まえて取り組みたいと思います。
○宮本委員 このいじめが半分以上という内閣府の調査は、不登校になった本人に直接聞いたものなんですね。それに対して、文部科学省がやっている調査というのは、学校、教育委員会を通じて行っているものなんです。つまり、学校、教育委員会を通じて調査したら、半分程度のものが二・三%になっている。まさに実態からかけ離れていると言わなければなりません。こういう統計をずっと認めて、そして垂れ流し続けていること自体が、現場のいじめに対する感度を鈍らせていると私は言わざるを得ないと思うんですね。
それで、今回の事件を受けて緊急調査を行うということで、既に私の手元にもその緊急調査の文書が届きました。読ませていただきました。それで、この調査をどのようにして子どもに書かせていくのか、掌握していくのかというのが問われるわけですよ。
私が聞いたある学校では、これはもう既に事前調査、これに基づくものではない、既にやったところですけれども、教室で子どもに配って、教室で書かせているという話を耳にしたんですね。これは、教室で配って子どもに書かせると、いじめる子がいる教室でいじめられている子が書けるということはあり得ないわけでありまして、そもそも、書いているということを見られるだけで、またいじめられるということになるわけですね。
この文書を見ると、そういうことに対する配慮というのはどこにも書かれていないんですよ、この実施要綱その他には。当然、こういうことに留意するのは当たり前のことで、周知する必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
○高井副大臣 今回のアンケートは、二十四時間いじめ相談ダイヤルへの相談件数がぐっとふえたことによって、しっかりこの状況を緊急に把握するということのために発出をしたものでございます。
ただ、児童生徒が置かれている状況は本当に学校によって違うと思いますし、把握の方法も学校や先生方によって違うと思います。先ほど来、学校の多忙化の話もありましたので、やはり先生が一番学校として把握しやすいやり方で、もちろん直接の聞き取りも結構ですし、学校によっては、アンケートというものをまず集めた上で、問題がある児童に当たるかもしれません。
やはり、現場でまず主体的に、夏休みであることから、登校日や、また、そうしたアンケート、出したものを見てみて、どういうふうに把握するのか、いろいろな把握の方法については現場に工夫するようにお願いをしているところでありますので、その趣旨を踏まえて、定期的にきちっと児童生徒に対して、きちんと見ているんだよ、状況を教えてほしいんだ、困っていることを言ってほしいんだということを日ごろから各学校において適切な方法でやっていくということが大事だと思っておりますので、その点、実情に応じて適切な方法によって把握をしていくということを進めていきたいと思っています。
○宮本委員 一昨日井上議員も指摘したように、私どもはやはり、この背景には、教職員の多忙化、教員評価、学校評価など、学校の仕組みそのものに原因があると言わざるを得ないと思っております。
今回の事件の真相を徹底究明するとともに、学校現場にどんな問題があるのか、社会全体として取り組むべき課題は何か、これを明らかにして、子どもたちを守ることに政治も全力で取り組むことが必要だということを指摘して、私の質問を終わります。