平成二十四年六月二十日(水曜日)
午前十時三十分開議
出席委員
委員長 石毛えい子君
理事 金森 正君 理事 田島 一成君
理事 永江 孝子君 理事 松本 大輔君
理事 村上 史好君 理事 馳 浩君
理事 松野 博一君 理事 池坊 保子君
石井登志郎君 石原洋三郎君
大山 昌宏君 岡本 英子君
奥村 展三君 川口 浩君
城井 崇君 笹木 竜三君
瑞慶覧長敏君 杉本かずみ君
高井 美穂君 高野 守君
高橋 昭一君 高橋 英行君
中屋 大介君 室井 秀子君
本村賢太郎君 山岡 達丸君
笠 浩史君 和嶋 未希君
あべ 俊子君 甘利 明君
遠藤 利明君 河村 建夫君
下村 博文君 田野瀬良太郎君
高木 毅君 永岡 桂子君
長島 忠美君 古屋 圭司君
富田 茂之君 宮本 岳志君
三輪 信昭君 土肥 隆一君
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参議院文教科学委員長 野上浩太郎君
参議院議員 鈴木 寛君
文部科学大臣 平野 博文君
文部科学副大臣 奥村 展三君
文部科学副大臣 高井 美穂君
文部科学大臣政務官 城井 崇君
政府参考人
(文化庁次長) 河村 潤子君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
六月二十日
辞任 補欠選任
笠 浩史君 高橋 英行君
遠藤 利明君 長島 忠美君
同日
辞任 補欠選任
高橋 英行君 笠 浩史君
長島 忠美君 高木 毅君
同日
辞任 補欠選任
高木 毅君 遠藤 利明君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
劇場、音楽堂等の活性化に関する法律案(参議院提出、参法第二一号)
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○石毛委員長 次に、宮本岳志委員。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
この法律は、文化芸術振興基本法の議論のときから、劇場、音楽堂、劇団、オーケストラなどの文化芸術団体が議論を重ねて、政府でも検討がされてきたものですね。先ほど議論がありました、超党派の音楽議員連盟がまとめ上げた結果として出されております。私もそのメンバーの一人でありますけれども、音議連幹事長としてその取りまとめの中心になって御苦労いただいた鈴木議員に、心から感謝を申し上げたいと思います。
この法律案は、文化庁の検討会では、一部に、劇場を、つくる劇場、見る劇場、交流施設など分類、階層化し、つくる劇場に集中投資するといったものにするとの報道もあり、小規模施設が切り捨てられるという反発も強かったんです。しかし、本法律案は、そのような劇場の階層化は盛り込まれておりません。
私ども日本共産党は、今回の法制化に当たっては、文化芸術の活動の自由をきちんと守りながら国が財政的に下支えをするよう明記することが必要だと考え、この間、音議連の総会などの場で意見も述べさせていただいてまいりました。
そこで、本法律案では、文化芸術の活動の自由についてはどのように規定されているのか。国、地方公共団体の文化行政との関係はどのように規定されているのか。これは法案提案者にお答えいただきたいと思います。できるだけ簡潔にお願いいたします。
○鈴木(寛)参議院議員 おっしゃるとおり、文化芸術活動は、まさに表現活動でありますので、憲法上、非常に重要視されなければいけないというふうに考えております。
そうしたことを受けて、この法案の中でも、第一条におきまして、文化芸術振興基本法の基本理念にのっとるべきであるということを規定いたしました。
また、第四条及び第五条におきまして、劇場、音楽堂等を設置し、または運営する者や実演芸術団体等に対しては、それぞれの実情を踏まえつつ、自主的かつ主体的に、実演芸術の水準の向上等に積極的な役割を果たすよう努めるものとするというふうにしております。
それから、第八条第二項におきましては、国及び地方公共団体が施策を策定し、及び実施するに当たっては、劇場、音楽堂等を設置し、または運営する者や実演芸術団体等の自主性を尊重するものというふうにしているところでございます。
○宮本委員 劇場や音楽ホールなどは、創造と鑑賞の両面から、芸術の発展になくてはならない場所となっております。
ところが、民間施設は大変苦境にあると言われておりまして、地方では、文化予算そのものの削減、公立文化施設も指定管理者制度などによって困難な状況に置かれております。
特に、私の地元大阪では、行政の側からオーケストラ、文楽への支援を削減することが表明され、関係者から猛反発が起こるなどの動きもございます。ある新聞は、この法律、この劇場、音楽堂法の制定が文楽の衰退を防ぐきっかけになればと願う、こう書かれておりました。
きょうは、大阪でのことそのものを論じるつもりはないんですが、この法律では、地方公共団体はどのような役割を果たすことが期待されているのか、お答えいただけますか。
○鈴木(寛)参議院議員 まさに、なぜ芸術を振興するのか。今回の前文にも入れさせていただきましたけれども、人々がともに生きるきずなを形成するための地域の文化拠点としてこうした劇場、音楽堂等を振興するわけであります。
七条におきましては、地方公共団体は、今申し上げましたような法律の目的を達成するために、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び当該地方公共団体の区域内の劇場、音楽堂等を積極的に活用しつつ実施する役割を果たすことが期待されているということで、先ほども御議論になりましたけれども、人々の共感と参加を得ることにより、新しい広場としての地域コミュニティーの創造と再生を通じて、地域の発展を支える機能、ここに、地方公共団体も積極的な役割を担っていただきたいというふうに考えております。
○宮本委員 地方公共団体も大いに文化芸術への支援を強化してもらいたいわけですけれども、やはり、この間の国の実演芸術に対する支援の姿勢が反映している面もあると思うんですね。
この間、文化予算全体はふえているんですけれども、実演芸術に対する公的助成はむしろ減少傾向にあります。特に、事業仕分けで短絡的な効率主義や成果主義を文化芸術に持ち込むやり方に、世界の通念からも非常識だと強い憤りと反対の意見が文化人から発せられたことは記憶に新しいところであります。
やはり、文化芸術への公的支援は、短期的な経済効率性を見るのではなくて、長期的かつ継続的な取り組みが何より大切だと私どもは考えます。この法律案では、国、地方公共団体が行う、劇場、音楽堂等への施策について、どのようにこの観点が規定をされておるか、お答えいただきたい。
○鈴木(寛)参議院議員 宮本委員の御指摘は本当にごもっともでございまして、この世界は、なかなか数値化できない、市場化できない価値というものが人々のきずなあるいは地域あるいは我々のアイデンティティーといったことに大変大事な役割を担っているというところが、もっともっと重視されなければいけないというふうに考えて、法制定をしております。
前文におきましても、国及び地方公共団体が劇場、音楽堂等に関する施策を講ずるに当たっては、短期的な経済効率性を一律に求めるのではなく、長期的かつ継続的に行うよう配慮する旨を明記しているところでございます。この前文は、法制定の理念を示し、解釈の基準となるものでありますので、御指摘の考え方を踏まえてこれから法律が運用されるものと考えておりますし、例えばこの指定団体等々の選定等についても、このような精神が生かされるものということを期待しております。
○宮本委員 次に、ちょっと文化庁に確認したいんですが、この間、文化予算の拡充をと、芸団協の皆さんが請願署名に取り組んでこられました。六十三万余筆の署名が国会に提出をされ、これは残念ながら採択とはならなかったわけですけれども、引き続き、今国会にも文化予算の拡充を求める署名が提出をされております。これは各党が力を合わせて、ぜひ今度こそ採択できるようにしなければならないと思うんです。
そこで、具体的な数字を聞くんですけれども、この間、文化予算全体は辛うじて増額をされておりますけれども、舞台芸術への重点支援、舞台芸術創造力向上・発信プランは減少傾向にあると思います。今年度予算と前年度の比較でどうなっているか、文化庁、お答えいただきたい。
○河村政府参考人 先生御指摘の舞台芸術創造力向上・発信プランは、三つの事業、トップレベルの舞台芸術創造事業、優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業及び日本版アーツカウンシルの試行的導入という三つの事業から構成されております。
舞台芸術への支援策はこのプラン以外にもあるのではございますけれども、今申し上げた三事業を合計したプランの額で申しますと、今年度予算は約四十七億でございます。前年度は約五十五億でございましたので、八億の減額でございます。
○宮本委員 舞台芸術に対する支援は毎年のように名前が変わっておりまして、簡単に比較しにくいんですけれども、実演芸術を担う団体への支援はこの間減少傾向にあると今お答えがあったとおりです。
今国会に芸団協の皆さんが提出された請願署名には、「芸術組織が、その専門性を発揮し、持続的に発展していける助成制度をさらに充実してください。」この請願項目がございます。文化予算の拡充、とりわけ劇場、音楽堂、実演芸術への支援をこの法律の制定を機に拡充へと転じることは当然だし、さらに、芸術団体や劇場、音楽堂にとって実際に役立つ新たな支援策もつくり出し、予算で目に見える形にすることが重要だと思います。
これは大臣の御決意をお聞かせいただきたい。
○平野(博)国務大臣 先ほど河村次長の方から、三つの観点から、減額になっているということです。これは極めて残念なことでございますが、昨年の場合には、特に震災、こういうこともございまして、残念ながら結果としては減額、こういうことでございます。
この法律の持つ趣旨を十分踏まえて文科省としても対応したい、かように思います。
○宮本委員 ぜひしっかり予算の裏づけをとっていただきたいと思うんですね。
劇場、音楽堂といっても、やはり実演芸術の創造、普及には人が大事であります。しかし、実際には、劇場、音楽堂にも大小さまざまなものがありまして、市町村では専門職員を配置することは困難だという意見もございます。この専門家の配置について、この法律の制定を機に国がやはり大いに支援をすべきだと私は思うんですけれども、これは文化庁、どのようにお考えになりますか。
○河村政府参考人 劇場、音楽堂等におきまして、企画制作、舞台技術、あるいは資金調達も含めました専門的な人材を確保することが重要であるというふうに考えております。
文部科学省としては、現在でも、企画制作の担い手となる専門的な人材の育成策として、アートマネジメントですとか技術の面に携わる職員の方々の研修会の実施を行っておりましたり、劇場、音楽堂等自身が行われます人材養成の取り組みに対する支援を行ったり、また、技術者等への国内外の実践経験、研修の機会の提供などを行っております。今後とも、これらの施策の充実に努めてまいりたいと存じます。
また、これとともに、先ほど来御議論になっております法律案第十六条の規定に基づく文部科学大臣の指針というものが予定されておりますけれども、この指針におきまして、専門的な人材の配置を促進するように、関係者の取り組みが進むような、こういったことも盛り込むことを検討いたしたいと存じます。
○宮本委員 ぜひ、やはり人材という点でも国の支援を強めていただきたいと思うんですね。
それで、劇場、音楽堂には、先ほどのような専門家の方々のほかに、舞台を支える技術者の皆さんもいらっしゃいます。
音楽議員連盟の総会の場で、真野純公共劇場舞台技術者連絡会会長からも話を聞いたんですけれども、地方自治体では劇場に指定管理者制度が導入され、さまざまな問題が指摘されているが、技術者の人材育成の面でも問題が指摘をされているわけです。
文化庁の検討会でも、日本舞台音響家協会理事長からは、いつ契約が切られるかわからない指定管理者制度による委託とか一括契約のスタッフでは、人材育成とか技術の継承はできませんという声が出され、また、日本照明家協会名誉会長からは、指定管理者制度が施行されてから大きな危機感を持っている、警備会社とか清掃会社が指定管理者に手を挙げる例というのが出てきている、一定の技術を持った技術者を雇用するとは限らないと訴えが出ております。
私どもは、そもそも指定管理者制度そのものが劇場や音楽堂などの文化施設にはなじまないというふうに考えるわけですけれども、指定管理者であっても技術者の人材確保、育成がきちんとされることが何よりも大事だと考えますけれども、この点、文化庁、どうお考えになりますか。
○河村政府参考人 指定管理者制度は、一般には、民間のノウハウによって公の施設のサービスの向上を図ろうとするものでございます。
この制度を活用した劇場、音楽堂等の活発な取り組みも一部に見られる、多くの例はございますけれども、しかし一方、指定期間が短くて事業の継続性が重視されないとか、専門的な人材の養成、配置が十分にできていない、こういう指摘もございます。
この指定管理者制度については、地域の実情を踏まえつつ、制度本来の狙いが実現されるような運用の工夫が必要であると考えておりまして、先ほどの十六条の規定に基づきます文部科学大臣が作成する指針につきましては、専門的な人材の位置づけも含めまして、地方公共団体や指定管理者等のよい取り組みが進むように検討してまいりたいと思います。
○宮本委員 専門家や技術者の配置、養成、指定管理者制度のあり方等々、劇場、音楽堂にどのような支援をしていくのかという中身については、この法律にある指針に盛り込まれる内容になってくると思うんですね。ぜひ、関係者の意見を広く聞いていただいて、しっかりそれが生かされるようにお願いを申し上げたいと思っております。
そこで、劇場、音楽堂を中心に実演芸術を振興させるというこの法律の具体化としての指針の策定に関してですけれども、指針の策定に当たっては、劇場、音楽堂等の関係者、それから芸術文化団体の意見を聞くのはもちろんのことでありますけれども、これは音議連の場でも出されていたことでありますけれども、見る側、鑑賞者の意見もぜひ聞くようにすべきだという声が出されておりました。
この点について、これは法案の提案者そして大臣、両方にお答えをいただきたいと思います。
○鈴木(寛)参議院議員 まさにおっしゃるとおりでございまして、いい実演芸術というのは、まさに劇場の設置運営者、そして芸術のつくり手、演じ手、そして鑑賞者あるいは支援者、この両者がというか全者が本当に相まって初めて、よい実演芸術というものはできるものであります。
したがいまして、当然、この指針を策定するに当たってはこうした声も聞いていただきたいというふうに思いますし、また、その地域でいかによき鑑賞者、よき支援者を育てていくのかということで、やはり、そうした鑑賞者を育成する教育者といった人たちの声も指針に反映されるべきだというふうに考えておりますので、そのことを受けて文部科学省におかれては御対応いただきたいと、我々提案者としては思っているところでございます。
○平野(博)国務大臣 具体的な意見聴取、こういうことですが、鑑賞者は含まれていないということでございますけれども、幅広くいろいろな方々の意見を聞くということが大事であろうというふうに思っています。
したがって、聞き方の方法論はいろいろあろうかと思いますが、今いただきました鑑賞者側の意見聴取に対する御意見も踏まえて、この法案が成立し次第速やかに、どういう聞き方がいいのかということについては検討してまいりたい、かように思います。
○宮本委員 やはり、こういう法律をつくるというのは、歴史に一つの画期をなす出来事だと思うんですね。その機会に、ぜひとも関係者の意見をしっかり聞いていただいて、また鑑賞者の意見も取り入れていただいて、本当に法律が目指す目的が達せられるように全力を挙げていただきたいと思います。
こういう機会ですから、やはり、長年、文化予算を増額してほしいと頑張ってこられた方々の声も実らせる必要があると思います。
もう会期末ということが言われておりますが、当委員会には、芸団協提出の、「国は、文化芸術の力を生かした震災復興と地域社会の活力を生み出す文化芸術政策を充実し、国の基本政策に据えてください」との趣旨の請願署名も付託されているわけでありますし、この中には、「フランスは国家予算の〇・八六%、韓国は〇・七九%を文化予算に充てていますが、日本は〇・一一%にしか過ぎません。」こういう事実も突きつけられているわけでありますから、ぜひとも今国会、今度こそ、この請願を各派の協力で採択することを心から呼びかけて、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。