平成二十四年四月十八日(水曜日)
午前九時一分開議
出席委員
委員長 石毛えい子君
理事 金森 正君 理事 田島 一成君
理事 永江 孝子君 理事 松本 大輔君
理事 村上 史好君 理事 馳 浩君
理事 松野 博一君 理事 池坊 保子君
石井登志郎君 石原洋三郎君
大山 昌宏君 岡本 英子君
奥野総一郎君 奥村 展三君
川口 浩君 川村秀三郎君
城井 崇君 桑原 功君
笹木 竜三君 瑞慶覧長敏君
杉本かずみ君 高井 美穂君
高野 守君 高橋 昭一君
橘 秀徳君 中屋 大介君
浜本 宏君 室井 秀子君
本村賢太郎君 山岡 達丸君
笠 浩史君 和嶋 未希君
あべ 俊子君 甘利 明君
遠藤 利明君 河村 建夫君
下村 博文君 田野瀬良太郎君
永岡 桂子君 古屋 圭司君
富田 茂之君 宮本 岳志君
三輪 信昭君 土肥 隆一君
…………………………………
文部科学大臣 平野 博文君
外務副大臣 山口 壯君
文部科学副大臣 奥村 展三君
文部科学副大臣 高井 美穂君
文部科学大臣政務官 城井 崇君
文部科学大臣政務官 神本美恵子君
政府参考人
(総務省自治行政局選挙部長) 田口 尚文君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文教施設企画部長) 清木 孝悦君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 布村 幸彦君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 板東久美子君
政府参考人
(文部科学省研究振興局長) 吉田 大輔君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 久保 公人君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
四月六日
辞任 補欠選任
高井 美穂君 三日月大造君
同日
辞任 補欠選任
三日月大造君 高井 美穂君
同月十八日
辞任 補欠選任
笹木 竜三君 川村秀三郎君
高橋 昭一君 浜本 宏君
室井 秀子君 桑原 功君
山岡 達丸君 橘 秀徳君
同日
辞任 補欠選任
川村秀三郎君 笹木 竜三君
桑原 功君 室井 秀子君
橘 秀徳君 奥野総一郎君
浜本 宏君 高橋 昭一君
同日
辞任 補欠選任
奥野総一郎君 山岡 達丸君
同日
理事高井美穂君同月六日委員辞任につき、その補欠として永江孝子君が理事に当選した。
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三月十九日
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(石津政雄君紹介)(第三二一号)
同(北村誠吾君紹介)(第三二二号)
同(佐藤ゆうこ君紹介)(第三二三号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第三二四号)
同(谷川弥一君紹介)(第三二五号)
同(松木けんこう君紹介)(第三二六号)
同(宮島大典君紹介)(第三二七号)
同(加藤勝信君紹介)(第三四二号)
同(井戸まさえ君紹介)(第三五八号)
同(秋葉賢也君紹介)(第三六四号)
同(山尾志桜里君紹介)(第三七〇号)
同(今津寛君紹介)(第三七八号)
同(赤嶺政賢君紹介)(第四四〇号)
同(馳浩君紹介)(第四四一号)
同(吉泉秀男君紹介)(第四八六号)
教育格差をなくし行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(坂本哲志君紹介)(第三二八号)
教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善を求めることに関する請願(和田隆志君紹介)(第三五七号)
学費の負担軽減、高等教育予算増額を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第三六二号)
東日本大震災の被災地の全ての子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(秋葉賢也君紹介)(第三六三号)
同(赤嶺政賢君紹介)(第四四三号)
同(笠井亮君紹介)(第四四四号)
同(穀田恵二君紹介)(第四四五号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第四四六号)
同(志位和夫君紹介)(第四四七号)
同(塩川鉄也君紹介)(第四四八号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第四四九号)
同(宮本岳志君紹介)(第四五〇号)
同(吉井英勝君紹介)(第四五一号)
三十人学級の早期実現、私学助成の削減撤回・大幅増額等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四二八号)
同(笠井亮君紹介)(第四二九号)
同(穀田恵二君紹介)(第四三〇号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第四三一号)
同(志位和夫君紹介)(第四三二号)
同(塩川鉄也君紹介)(第四三三号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第四三四号)
同(宮本岳志君紹介)(第四三五号)
同(吉井英勝君紹介)(第四三六号)
全ての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(小野塚勝俊君紹介)(第四三七号)
同(塩川鉄也君紹介)(第四三八号)
行き届いた教育に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第四三九号)
教育予算の増額、教育費の無償化、保護者負担軽減、教育条件の改善に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四四二号)
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(福井照君紹介)(第四八七号)
四月二日
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五二〇号)
同(小野寺五典君紹介)(第五七七号)
同(梶山弘志君紹介)(第六一〇号)
同(田中和徳君紹介)(第六三〇号)
東日本大震災の被災地の全ての子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(小野寺五典君紹介)(第五七八号)
三十人学級の早期実現、私学助成の削減撤回・大幅増額等に関する請願(阿部知子君紹介)(第六一一号)
同月五日
教育費の無償化、子育てにかかわる費用の大幅な軽減、安全な学校施設を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七四〇号)
同(笠井亮君紹介)(第七四一号)
同(穀田恵二君紹介)(第七四二号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第七四三号)
同(志位和夫君紹介)(第七四四号)
同(塩川鉄也君紹介)(第七四五号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第七四六号)
同(宮本岳志君紹介)(第七四七号)
同(吉井英勝君紹介)(第七四八号)
学費の負担軽減、高等教育予算増額を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第七四九号)
全ての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(小泉龍司君紹介)(第七五〇号)
学費負担軽減と私大助成の大幅増額を求めることに関する請願(下村博文君紹介)(第八一七号)
教育格差をなくし、全ての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(井上信治君紹介)(第八六三号)
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(赤松広隆君紹介)(第八六四号)
同(井上信治君紹介)(第八六五号)
同(石森久嗣君紹介)(第八六六号)
同(川島智太郎君紹介)(第八六七号)
同(高野守君紹介)(第八六八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
政府参考人出頭要求に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
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○石毛委員長 次に、宮本岳志さん。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、授業、部活を含めて、学校教育活動下における柔道事故の問題についてお伺いをいたします。
四月から、中学一、二年生の保健体育の授業で、柔道など武道が必修化されました。そこで、柔道を選択する予定としている公立中学校はどのぐらいあるか、お答えいただけますか。
○久保政府参考人 今年度からの武道必修化に当たりまして、公立中学校を対象に抽出調査を行いました。その結果、調査対象の公立学校のうち約六四%の学校で柔道を選択するという結果でございました。
○宮本委員 多くの学校で、秋以降、武道の授業が始められるということであります。生徒が安心して授業を受けられるよう条件整備を急ぐ必要があります。
そこで、武道場の整備や体育館で行う場合の畳といった最低限の準備、それから、柔道経験のない体育教員への研修、外部指導者の導入状況、安全対策等々はどれだけ進んでいるのか、報告をいただきたいと思うんです。それとあわせて、予算措置がどうなっているか、お答えいただけますか。
○久保政府参考人 文部科学省の調査によりますと、武道場の整備状況につきまして、平成二十三年五月一日現在、公立中学校で四九・八%、私立中学校で五四・九%でございます。また、用具等の整備に関しましては、各学校で柔道や剣道等からどの種目を行うかを決めて、学校の設置者がそれぞれ整備されているものと考えております。
なお、文部科学省におきましては、武道場整備に当たりまして二分の一の国庫補助を行いますとともに、用具等につきましても地方交付税措置するなど、武道必修化の条件整備を促進してきているところでございます。
また、教員への研修、外部指導者の導入状況等の安全対策につきましては、先月の三月九日付で通知を出しまして、指導者や指導計画等の対応につきまして学校と教育委員会等で再点検をしていただきまして、その結果を文部科学省に報告していただくこととしておりまして、その中である程度把握できるものと考えているところでございます。
○宮本委員 財政措置、予算措置がどうなっているか、お答えいただけますか。
○久保政府参考人 財政措置につきましては、武道場の整備につきましては二分の一の国庫補助で補助をいたしております。その結果、繰り返しになりますけれども、今、整備校数が公立では四九・八%まで進んできているという状況でございます。
それから、武道用具の整備につきましては、地方交付税の中で、二十一年度から二十三年度までの三カ年、二千四百五十九億円を地方交付税の中で積算されているところでございます。さらに、二十四年度からの今後十年間の新たな教材整備計画の中にもその内数として積算しているところでございます。
○宮本委員 柔道については重大な事故が相次いでいるということで、指導に当たる現場の教員、保護者の方々からも不安の声が上がっております。
そこで、中学生、高校生の柔道事故の実態ですけれども、どのようになっているか、御報告いただけますか。
○久保政府参考人 中高校生の柔道事故の実態でございますけれども、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付の給付実績を見ますと、中学校におきましては、体育の授業における柔道の死亡事故は、平成元年度から平成二十一年度まで、報告はございません。他方、運動部活動の事故については報告があるという状況でございます。また、高等学校におきましては、体育の授業における死亡事故の報告はございますけれども、授業中より運動部活動の方の事故が多いという実態でございます。
○宮本委員 今答弁にありましたけれども、重篤な柔道事故は部活動が主で、授業ではほとんどないということを強調するわけですけれども、ここには大きな問題があると私は思っております。
一つは、部活動でなら事故があっていいのかという問題であります。部活動ももちろん学校教育活動の重要な一環であることは言うまでもありませんね。確認いたしますけれども、学校教育活動に部活動はちゃんと含まれますね。
○久保政府参考人 現在の学習指導要領におきましては、生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動につきましては、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として行うというように示されているところでございます。
○宮本委員 ですから、部活動で頻発している重篤事故も含めてきょうはお伺いをするわけです。
そこで聞くんですけれども、あってはならないことでありますけれども、子供が授業や部活動など学校管理下で、不幸なことに命を落とすような事故が発生したという場合、大臣、これは全て文部科学省に報告が来るということになっておるんですか。
○平野(博)国務大臣 私は、先生にこういう御質問をいただいたことについて、はっと感じたわけですが、現実の事実としては、国への報告が来ることにはなってございません。
私は、課題認識として持っておりますが、現実は、なっておりません。
○宮本委員 これは、一体いつからそのようになったのか、そして、どういう理由で報告義務というものがなくなったのか、大臣、お答えいただけますか。
○平野(博)国務大臣 では、いつから来ないのかということでございますが、平成元年十二月二十日の臨時行政改革推進審議会の国と地方との関係に関する答申を受けまして、平成元年十二月二十九日の閣議決定におきまして、それまで求めていた体育活動の事故に関する国への報告を廃止した、こういうふうに承知はいたしております。
○宮本委員 その文書をここに持っております。平成元年十二月二十九日付の閣議決定、国と地方の関係等に関する改革推進要綱というものでありますけれども、確かに「児童生徒の体育活動中の事故に関する報告を廃止する。」こう書いてありますね。
しかし、私は、もちろん、全ての事故を逐一文部科学省に報告させよと言うつもりはないんですよ。しかし、生徒が命を落としたり重篤な障害を負うような重大事故、それが数え切れないほど起こっているというんだったら大問題なわけでありますから、年間、それほど多くはないはずであって、そういうものをきちっとつかめなくて、対策などとれるわけがないんですよ。
大臣、これはぜひ改善していただきたいんですけれども、全国の学校で不幸にして発生した、死亡はもちろん重篤、重大な事故については、きちんとその状況や原因など、実態を正確に報告させる、そして対策を立てる。これを機にちょっとそういう点は改善をいただきたいんですが、いかがですか、大臣。
○平野(博)国務大臣 先ほど久保局長からも、事故の状況については、スポーツ振興センターの災害共済給付の実績から事故が上がる、こういう件数、数値についてはございますが、御指摘のように、やはり学校で発生した事故については状況や原因を把握する、こういう分析は私は重要である、こういうふうに思っております。
このために、文科省としては、昨年度に、体育活動中の事故防止に関する調査研究協力者会議を設置いたしておりまして、体育活動の事故の分析や防止対策等について検討を今現実に進めております。
さらに、柔道につきましては、先生御指摘ございます、いろいろなお方からの安全に対する御心配を頂戴いたしている、こういう観点から、学校と教育委員会等が指導者や指導計画等の対応を再検討した結果による報告を五月にいただこうと思っております。
したがいまして、その意見交換、情報交換会を六月ぐらいに開きまして、事故の発生状況等の報告をいただきたいと思っておりますし、今後、情報の収集、検証の体制の改善も含めて、私は万全を期したい、こういうふうに思っております。
○宮本委員 そのセンターのものしかないので、改めて御紹介申し上げたいんですが、内田良名古屋大学大学院准教授が、日本スポーツ振興センターの災害給付件数をもとに集計した数字がございます。
センターが公表している「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点」というものをずっと集計してくださったところ、一九八三年度から二〇一一年度までの二十九年間で百十七名の中学生、高校生が亡くなっている。柔道固有の動きに伴って障害を負った中学生、高校生は、同じ八三年度から二〇〇九年度までで二百七十五人にも上っております。それをもとにして内田准教授が作成したのが、きょうおつけした資料の一番なんですね。
それで、この調べでは、二〇〇〇年度から二〇〇九年度の十年間で、中学校の部活動での死亡確率は、陸上や野球、サッカーなどでは十万人当たり〇・二人程度などに対して、柔道では二・三人となっております。剣道ではゼロであることと比べれば、柔道だけが突出していることがおわかりになると思います。高校で見ても、陸上や野球、サッカーなどでは〇・六から〇・八人、剣道で一・二人程度なのに対し、柔道は三・四と、こちらもやはり高いですね。もちろん、高校の場合は、私もやっておりますラグビーというのが一番高い結果になっております。
文科省は、二〇一〇年七月に「学校等の柔道における安全指導について」という依頼を出しておりますけれども、その後も、二〇一〇年十二月に中学生が亡くなり、二〇一一年六月―八月には高校生三人が亡くなる事故が起きております。柔道はけがや事故の多い種目と言われてまいりました。私もラグビーをやっておりますからわかるんですけれども、けががつきもののスポーツというものは確かにあります。しかし、死んだり重い障害が残るようなことだけは絶対にあってはならないし、その防止に全力を注ぐということは当然のことであります。
ラグビーでは、毎年ルールを改正するなど、随分そういう努力もやられてきたところですけれども、柔道について言えば、発生確率が高いまま、三十年近くもの間、死亡事故や重大な障害を負う事故が起き続けてきたわけですね。ここが最大の問題だと言わなければなりません。
そこで大臣にお伺いするのですが、なぜこういう状況が続いていると思うか、大臣のお考えをお聞かせいただけますか。
○平野(博)国務大臣 委員のお示しをいただきました死亡事故件数、死亡事故の確率ということは、これは事実であるというふうに思っております。
いずれにしましても、私どもとしては、中学校、高等学校の体育の授業等における死亡、重度の障害について見ると、先生御指摘のように、陸上競技や水泳などの発生件数が多いんですが、運動部活動におきましては柔道が最も多い。次いで野球、バスケットの順になっている、こういうことでございます。
しかし、運動部の活動というのは、教育内容や指導方法が学習指導要領に十分に示されていなかったという点、また、各学校において指導が委ねられていた、こういうこと。文科省としては、運動部の活動の安全対策についても、これまで種々いろいろな通知を発出してまいりましたけれども、まだ十分でない、こういうことでございます。
したがいまして、今回、スポーツ基本法また教育における武道の必修化、こういうことから、今までのことを十分に検証しながら、より、もともと必修化する趣旨を十分生かしていただいて、安全対策最優先、こういう考え方でこの問題については対処していかなければならないと思っています。
○宮本委員 その原因ですけれども、やはり、重大事故が起こっても、正確に情報を集め、徹底的に原因を分析し、教訓を明らかにして、直ちに再発防止策を講じるということを怠ってきたからだと言わなければならないと思うんです。
授業の開始はほとんどが秋以降だと。とはいえ、既に必修化は始まっております。二〇一一年、昨年六月一日の当委員会で、私の質問に対して、当時の高木文科大臣は、体育活動中の事故防止に関する調査研究というものを行い、事故の分析や防止策を検討し、安全確保に努めていくとお答えになりました。
この調査研究はどこまで進んだのか、柔道の安全対策についてはどのようにしていくのか、これは事務方でいいので、お答えいただけますか。
○久保政府参考人 御質問のございました体育活動中の事故防止に関する調査研究につきましては、昨年度、有識者から成ります協力者会議を設置しまして、これまでの体育活動中の事故の分析や防止対策等につきまして検討を進めてきていただいたところでございます。
このうち、現在、不安の声が上がっております柔道につきましては、特に一つの重要な課題として取り上げて検討いただきまして、三月末には、その結果を踏まえまして、文部科学省でわかりやすい参考資料を作成して、全国の教育委員会や中学校に配付するとともに、文部科学省のホームページにも載せたところでございます。
それ以外の、もう少し範囲を広く、体育活動中の事故防止全般につきましての調査研究協力者会議としての報告につきましては、現在、最終的な取りまとめ作業が行われているところでございまして、まとまり次第、公表したいと考えているところでございます。
○宮本委員 事故の再発防止のためには、事故の正確な状況把握や原因の分析のほか、再発防止策などの公表が欠かせません。遅きに失したとはいえ、調査研究を行ったこと自体は評価をしたいと思います。しかし、これで終わりというようなことには到底なりません。
先日、昨年六月、部活動中に、市立高校の生徒がとうとい命を落とした柔道事故を引き起こした、そして、それをきっかけに柔道安全指導検討委員会を立ち上げた名古屋の市教委にお伺いをして、話を聞いてまいりました。
名古屋が立ち上げたこの柔道安全指導検討委員会は、弁護士や大学教員、頭部外傷に詳しい医師、知多市の中学校で指導者をしている柔道家など、第三者で構成されており、事故の検証、分析にとどまらず、授業や部活動での指導内容の見直しまでを議題にしております。市教委の担当者は、安全に関する指導も行っていた学校で事故がなぜ起きたのかをはっきりさせたいと私にも述べて、四月末にもまとめる提言を全国でも生かしてほしいと話しておられました。
名古屋市は、この提言を踏まえて、頭部へのダメージが死亡事故につながるとし、頭を打つ危険性のある大外刈りを授業で扱うことを禁止することや柔道用投げ込みマットの使用など、安全策を盛り込んだガイドラインを作成して、学校に示していきたいとしておりました。
それで、マスコミの報道によって、この間、頭部や頸部への外傷が死亡事故や重篤な障害につながることが明らかになってまいりました。これらの重大事故を根絶するためにも、今こそ国として、名古屋市に任せるんじゃなくて、過去の事故の原因究明や分析、医科学的な立場に立った安全対策の検討、公表を行う第三者的な機関、検討会を立ち上げるべきではないかと思いますが、これは大臣の御答弁をいただきたいと思います。
○平野(博)国務大臣 柔道に限らず、学校の体育の授業や部活動において発生した重大な事故については、状況や原因等を科学的に分析し、その原因究明並びに事故の防止につなげていく、こういうことは極めて重要であるというふうに認識をいたしております。
そのためにも、調査研究協力者会議におきまして、体育活動の事故の分析や防止対策について、検討を今現在しておるところであり、公表いたします。
さらに、今後、医学的立場に立った、そういう対策も含めて検討をしてまいりたい、こういうふうに思っておりますし、特にスポーツ振興センターの災害給付のデータをベースにこのことを検討したいと思いますが、この検討の結果も含めて学校関係者に公表してまいりたい、かように思っています。
○宮本委員 ぜひ、しっかりと進めていただきたいと思います。
同時に、安全対策とあわせて、外部指導者も含めた指導者のあり方が大きく問われていると思うんですね。
昨年、私の質問に対して、当時の高木文科大臣は、しごきや体罰など、人権を侵害するとか、健康、安全を害することは絶対あってはならないと明確に答弁をされました。これは大臣も同じだと思うんですね。しかし、残念ながら、そういう事例が後を絶たないんです。
私は、先日、全国柔道事故被害者の会の方々と直接お会いをして、子供たちが事故に遭った状況をお伺いいたしました。幾つか紹介をしたいと思います。
経験一年足らずの息子は、部活動で講道館杯優勝経験を持つ顧問との乱取りで何度も投げられ、急性硬膜下血腫を発症。さらに、七分間に二回も気管を絞めるわざをかけられた。神奈川県中三男子。
ぜんそくの持病を抱える初心者の息子に、部員も顧問も過度に無謀な練習を課し、顧問に投げられて死亡。病院に運ばれたときは、体じゅう、あざだらけだった。滋賀県中一男子。
百六十センチ、六十五キロの息子と、百七十五センチ、八十キロの生徒同士の授業中の試合で頸部負傷。親への連絡に二時間もかかり、親が駆けつけて救急車を呼んでもらったが死亡。どの体育教師でも同じ判断をしたと説明された。静岡、高一男子。
これらの指導者に共通するのは、行ったことの重大性ももちろんですけれども、その後も、事故の現実、事実に向き合おうともしない姿勢なんですね。大臣、こういう、指導者によるいじめやしごき、体罰などというものは絶対に許されません。このようなものは虐待や暴力そのものであって、スポーツでもなければ武道でもないと言わなければなりません。
子供たちの命と安全を守ることを最優先に指導できる人こそ指導者とすべきでありますけれども、少なくとも、学校での柔道の指導者には暴力や人格を否定する言動は絶対認めない、この立場を大臣として明確にするのは当然だと思いますが、大臣、ぜひその立場を表明していただきたいと思います。
○平野(博)国務大臣 武道というのは道ということを書くわけですが、その道をきわめるというのはやはり人格をきわめていくということになるわけでございます。
したがいまして、今議員御指摘の、例示をいただきましたが、武道に限らず、指導者たるものは、しごきや体罰などあってはならないのは当然であります。これは、道という、道をきわめていく武道の一番の原点でございますが、そういうことをわきまえてやっていただかなくてはならないと思います。
特に武道は我が国固有の文化でありますし、中学校において、武道の学習を通じて、技能という観点のみならず、我が国の伝統の文化を尊重するという、道をきわめていく、礼にあって礼に終わっていく、この精神を養ってもらうことが期待されるものでありまして、しごきや体罰は絶対にあってはならないものと私も思っております。
○宮本委員 本当に当然のこととして、こういうことは根絶をしていただきたい。
さて、そういうしごきや暴力が一掃されれば問題は全て解決するかといえば、実は、まだ問題は残ります。
私は、全国柔道事故被害者の会との懇談で、先ほど紹介した名古屋市の高校生の御遺族にも直接お話をお伺いしました。
この高校の柔道部の指導者は、常日ごろから安全喚起や声かけも行い、保護者にもけがが多いことも説明していたというんです。つまり、しごきや体罰とは無縁の指導者だったと御遺族自身も語っておられました。それでも事故は起こっているわけです。
何が欠けていたかといえば、柔道によって頭部がダメージを受けること、また、そのダメージで命を落とす可能性があるという知識が欠けていたんだ、もし知っていたら事故は防げていた、無知は罪だという切実な訴えを聞きました。
なるほど、文科省の柔道授業マニュアルでも全日本柔道連盟の「柔道の安全指導」第三版においても、加速損傷などに関する記述が行われ、初めて指導に当たる教員の中で認識が広がっております。
しかし、私は、初心者の教員だけでなく、むしろ、柔道経験のある教員や、学校で授業や部活動の指導に当たっている外部指導者にこそ、加速損傷、セカンド・インパクト・シンドロームを初めとする頭部損傷の危険性を認識させる講習会、あるいは事故が起きた場合の救急対応を学ぶ研修などが必要だと思うんですね。
この点、文部科学大臣、どう思われますか。
○平野(博)国務大臣 委員御指摘のように、初心者にあってはもちろんのことでありますが、むしろ、なまじっか柔道を経験しておられる、こういう方についても、うっかりということがあって、さらにそういう問題を引き起こす可能性も実はないとは言えません。
したがいまして、より、頭部の損傷に関する医学的な知識や緊急時における対応、これは柔道の指導を行う者にとっての一番の知識として持っていただかなきゃならない、このことは非常に重要な指摘だと私も思っております。
また、こういった点につきましては、機会を捉えて、教育委員会を通じて研修等の充実を図っていただく、こういう要請をしてまいりたいと思いますし、また、全柔連の方に対しましても、外部の指導者研修を行っておられますが、その研修においても、特に頭部のけが、緊急時の措置等についてもぜひ取り扱っていただきたい、かようにお願いをするとともに、そういう研修会に積極的に参加をしていただくように要請をしてまいりたいと思います。
委員御指摘のように、これはこの四月からということでございます。安全を十分に担保することによって私は慎重に所期の目的を達成するための施策を講じていきたい、かように思っております。
○宮本委員 フランスでは柔道指導者は国家資格なんですね。それで、講義、実技、柔道クラブでの実習を合わせて千二百時間が必要とされております。それでもなお、三年ごとの更新制をとっている。フランス柔道連盟のジャン・リュック・ルージェ会長は、最新の医科学的知見を身につけてもらうために三年ごとの更新をしているんだとテレビの取材に語っておられました。
加速損傷など頭部損傷の危険性についての知識を身につけなければならないという点では、初心者も経験者も違いはないんです。これはスタートラインなのだから、絶対に授業開始前までには徹底する必要がある、このことを強く求めておきたいと思います。
最後の質問ですけれども、武道の必修化によって、新たに女子生徒も全員柔道を行うことになります。今まではダンスとの選択であったこともあり、多くの女子生徒も、指導する側もそうですし、大半が初めての体験ということになります。
そこで、資料二を見ていただきたいんですけれども、内田准教授の調査によれば、中部、北陸七県の中学校の授業で起きた頭部外傷の割合は、男子の一〇・三%に比べ女子は一三・四%と女子の方が高くなっております。男子と比べ体格や筋力差がある女子の場合は頭部損傷に至る可能性が高いことから、内田准教授は性差を考慮した安全対策を講じる必要性があると述べられておりました。
これは非常に重要な指摘であると私は思いますけれども、文科省として対策はとられておりますか、大臣。
○平野(博)国務大臣 平成二十年三月から、学習指導要領の改訂によりまして、武道については、武道またはダンスとして選択を実施していたものを、中学一、二年で必修、こういうことで、男女問わず全ての生徒が履修をする、こういうことに相なりました。
御指摘のように、女子も学ぶことを考えますと、体力差や性差ということも十分に考慮していただく必要性があると認識をいたしております。
三月九日には、文科省から全中学校に配付した柔道の安全な実施に向けてという手引におきましても、生徒の経験や体力等を踏まえた指導を行うよう、さらに具体的には、女子に対して基本動作を中心に無理のない指導をしていただくように、指導計画の中にも紹介をさせていただいてございます。
今後とも、女子を初め、生徒の学習段階や個人差を踏まえた無理のない段階的な指導が適切に行われるように徹底をしてまいりたいと考えております。
○宮本委員 性差というものをしっかり踏まえて、万全の体制をとっていただきたいと思います。
ラグビー事故の調査研究の草分けとも言える畠山一男元成蹊大教授は、一九七一年の論文でラグビーについて、競技の特質からある程度の傷害発生はやむを得ないとしても、致命的重傷や死亡事故は絶対に起こしてはならないし、過去の経験からこれは防ぎ得るし、また防がなければならないと述べるとともに、殊に重大事故が指導者の指導方法の誤りや理解不足などに起因している場合は、単に一競技の発展を阻害するというような問題ではなく、人道上の問題にまで及ぶことになると指摘をしております。
部活動でも授業でも、指導者の無知や不理解から人道上の悲劇を絶対に生むことがないように、あらゆる手だてをとり切ることを強く求めて、私の質問を終わります。