平成二十四年二月二十一日(火曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 中井 洽君
理事 笹木 竜三君 理事 武正 公一君
理事 西村智奈美君 理事 鉢呂 吉雄君
理事 若井 康彦君 理事 若泉 征三君
理事 石破 茂君 理事 小池百合子君
理事 高木 陽介君
阿久津幸彦君 石関 貴史君
今井 雅人君 打越あかし君
江端 貴子君 大西 健介君
金森 正君 川越 孝洋君
岸本 周平君 櫛渕 万里君
小室 寿明君 近藤 和也君
佐々木隆博君 杉本かずみ君
玉木雄一郎君 仁木 博文君
橋本 博明君 花咲 宏基君
馬淵 澄夫君 村越 祐民君
室井 秀子君 矢崎 公二君
山岡 達丸君 山崎 誠君
山田 良司君 湯原 俊二君
渡部 恒三君 赤澤 亮正君
伊東 良孝君 小里 泰弘君
金子 一義君 金田 勝年君
佐田玄一郎君 柴山 昌彦君
橘 慶一郎君 野田 毅君
馳 浩君 山本 幸三君
東 順治君 古屋 範子君
笠井 亮君 宮本 岳志君
石田 三示君 内山 晃君
阿部 知子君 山内 康一君
中島 正純君 松木けんこう君
…………………………………
総務大臣
国務大臣
(地域活性化担当) 川端 達夫君
法務大臣 小川 敏夫君
外務大臣 玄葉光一郎君
財務大臣 安住 淳君
文部科学大臣 平野 博文君
厚生労働大臣 小宮山洋子君
農林水産大臣 鹿野 道彦君
経済産業大臣 枝野 幸男君
国土交通大臣 前田 武志君
国務大臣
(原発事故の収束及び再発防止担当)
(原子力行政担当) 細野 豪志君
国務大臣
(復興大臣) 平野 達男君
国務大臣 松原 仁君
国務大臣 自見庄三郎君
国務大臣
(防災担当) 中川 正春君
財務副大臣 五十嵐文彦君
農林水産副大臣 筒井 信隆君
財務大臣政務官 三谷 光男君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 板東久美子君
予算委員会専門員 春日 昇君
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委員の異動
二月二十一日
辞任 補欠選任
岸本 周平君 矢崎 公二君
櫛渕 万里君 阿久津幸彦君
湯原 俊二君 小室 寿明君
小里 泰弘君 柴山 昌彦君
東 順治君 古屋 範子君
笠井 亮君 宮本 岳志君
内山 晃君 石田 三示君
同日
辞任 補欠選任
阿久津幸彦君 櫛渕 万里君
小室 寿明君 川越 孝洋君
矢崎 公二君 岸本 周平君
柴山 昌彦君 小里 泰弘君
古屋 範子君 東 順治君
宮本 岳志君 笠井 亮君
石田 三示君 内山 晃君
同日
辞任 補欠選任
川越 孝洋君 湯原 俊二君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
平成二十四年度一般会計予算
平成二十四年度特別会計予算
平成二十四年度政府関係機関予算
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○中井委員長 これにて古屋さんの質疑は終了いたしました。
次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
先日来、当委員会でも、やっと実現した高校授業料無償化問題をめぐって議論が交わされました。高校無償化は、一層の前進が求められこそすれ、これをあたかもばらまきのように言って歳出を削減するような見直しをすることは絶対に許されない。そのことをはっきり申し上げた上で質問に入りたいと思います。
二月九日の当委員会で、我が国がいまだに留保している国際人権A規約第十三条の二項(b)(c)、つまり中等教育及び高等教育の漸進的無償化条項について、玄葉外務大臣は、その留保を撤回する方向で調整するように事務方に今般指示をしたと答弁されました。これは非常に大事な決断だと思うんですね。指示はいつされたのか、国連にはいつ留保撤回の意思をお伝えになるのか、具体的に御答弁ください。
〔委員長退席、笹木委員長代理着席〕
○玄葉国務大臣 ただいまの御質問ですが、国連の人権宣言に基づいて自由権規約そして社会権規約というものができて、七九年に批准をしているということですが、おっしゃるとおり、日本の場合は、この間、武正委員にも申し上げましたけれども、マダガスカルと日本だけが留保をしていたということでございます。
いつ指示をしたのかということでありますが、まさに、率直に申し上げれば、最近です。つまり、私も、状況を事務方から聞いて、そういうことであれば留保を撤回したらどうかという判断をして、指示をした。そして、この間、宮本委員も何回かこの問題で留保を撤回すべきだというふうに指摘をしていただいておられたということに対しても、敬意を表したいというふうに思います。
まさに先般のことでございますので、国連への通告については、具体的な期日について現時点で申し上げるのはまだ困難なんですけれども、所要の準備が整い次第、これは速やかに行いたいというふうに考えているところでございます。
○宮本委員 撤回をすべきだ、そういう決断に至った理由というのはどのようなことでございましょうか。
○玄葉国務大臣 これは、まず一つは、高校の授業料の無償化というのがやはり大きな弾みになったことは事実でございます。これが一つある。もう一つは、やはり大学生に対する奨学金の予算などが拡充傾向にあるということからして、そろそろこれは撤回の判断をすべきではないか、そう判断をしたところでございます。
○宮本委員 留保撤回ということになりましたら、私は、漸進的な無償教育の導入ということが国際公約になると思うんですね。ですから、これは撤回したらの話ですけれども、そうなった場合には、少なくとも無償化教育の漸進的導入はやりませんというようなことを世界に向かって口にはできなくなる、私はそう思いますが、外務大臣、それでよろしいですね。
○玄葉国務大臣 はい。これはやはり、留保を撤回するということは、無償教育の漸進的な導入ということに向けて努力をしていくということだと思うんです。一旦撤回したら、取り消すなどということは基本的にはできないというふうに私は考えています。
○宮本委員 無償教育の導入をやりませんとは言えない国際的責任が生じる、こういうことだと思うんです。
では、それをいかに進めていくかということなんですね。高校無償化からの逆行などということはもう論外でありますけれども、特に、私、不十分だと思うのは、高等教育、大学生及び院生の現状だと思います。
資料をきょうはおつけいたしました。見てください。この資料は、私が国会図書館に依頼して作成してもらったものでありますけれども、OECD加盟三十カ国の大学授業料及び奨学金の調査結果であります。多数の国では授業料は大学に至るまで無償、ほとんどの国で奨学金は返済の必要のない給付制というのが世界の流れになっております。
文部科学省にお伺いしますけれども、OECD三十カ国の中で、大学授業料の無償化もされておらず、かつ給付制奨学金もない、そういう国は日本以外にあるでしょうか。
○板東政府参考人 お答え申し上げます。
OECDの最新の調査報告書によりますと、データが整備をされている、確認をされている国におきましては、委員の御指摘のように、授業料が無償化されているか、あるいは給付型の奨学金があるということでございます。
ただ、我が国の場合には授業料の減免制度というのがございますので、一概に国の経済的な支援について比較しにくいというところはあるかと存じます。
以上でございます。
〔笹木委員長代理退席、委員長着席〕
○宮本委員 授業料の減免制度は昔からあるんですよ。それがもし無償化に当たるんだったら、今までなぜ撤回しなかったんですか。
○板東政府参考人 御指摘のように、授業料の減免制度は昔からあるわけでございますけれども、無償化の漸進に向けまして授業料減免自体も拡充してきておりますし、いろいろな経済的支援の充実につきましては拡充をしているという状況でございます。
○宮本委員 いろいろ言い逃れしても、それはこの表にはっきり出ているんですよ。日本以外に、授業料が無償化されておらず給付制奨学金もないという国は一つもないです。日本だけがバツ、バツと、皆さんの目の前に資料で出しているとおりであります。
それで、OECD三十カ国で見るとそういう状況でありますけれども、特に二枚目を見ていただければ歴然とするんですけれども、オランダの七二%を先頭に、給付制奨学金を受給している学生の割合も、それこそ過半数の学生が受けているわけですね。オランダ、アメリカ合衆国、それぞれ、これは授業料無償ではありません、有償でありますが、七割、六割以上の学生が給付制の奨学金を受けている。スウェーデン、ノルウェー、フィンランドに至っては、授業料が無償であって、なお給付制の奨学金を半数以上が受けているという状況なんです。
文部科学省は、ついに今年度、二〇一二年度の予算の概算要求では、返済の必要のない給付制奨学金を要求したわけです。これは、今日の経済情勢のもとで、借金となる貸与制の奨学金のみでは、やはり修学が困難な若者が存在する、教育の機会均等をなかなか保障できない、そういう認識を示したものだと受けとめてよろしいですね、大臣。
○平野(博)国務大臣 今回の部分につきましては、やはり、意欲と能力のある学生が経済的理由により修学を断念することのないように経済的支援の充実を図る、こういうことが必要であるというのが文科省の認識でございます。
そのような認識のもとに、大変財政的に厳しい状況でありますけれども、経済的困窮者の修学を支援すべき、こういう考え方のもとに、概算要求時には給付型の奨学金を要求した、こういう事実はございます。
○宮本委員 そうなんですよ。しかし、今回の予算案では給付制奨学金は削られました。給付制奨学金でなければ教育の機会均等を保障できない、こういう状況が広がっているときにこれを見送ったということは、こういう学生を見捨てるということになるんじゃありませんか。
これは財務大臣に聞きますけれども、なぜこの給付制奨学金を見送ったのか。財務大臣、お答えいただけますか。
○安住国務大臣 確かに、大臣折衝を行いました。だけれども、結果としては、これは、独法の日本学生支援機構の奨学金について、低所得世帯の学生等を対象に、所得連動返済型の無利子奨学金制度を導入することにした、それは二・五万人ふやして三十八・三万人となっております。
それで、先生の言っていることについて少し反論をさせていただいてよろしいですか。
これは、就職をして、その学生さんが多額の収入を得る人になったとした場合、それは返済をしてもらった方がよかろうというふうにも一つ考えたわけであります。それで、それは結果的には、それで返していただいたお金がまたさらに幅広い学生への貸与にも回るというのも一つの考え方ではないかなということで、私どもとしては、現時点での合意は至らなかったということです。
○宮本委員 今の学生の厳しい状況を本当にわかっているんですか。大学生が有利子奨学金の最高額である月額十万円を四年間借りれば四百八十万円の借金となり、利子を含めると総額六百五十万円もの返済が必要になるんです。大学を卒業して社会人となったその初日に既に六百五十万円もの借金を背負わせている、そんな国はないですよ。
大丈夫です、大卒者は一〇〇%正規社員で就職させております、やがて必ず返せます、そう言えるような状況ですか。大学生の就職内定率は七一・九%、七割そこそこ。それも、これ全てが正規ではないですよ。だからこそ、返済のことを考えるととても借りられない、返済が不安で奨学金をやめた、こういう事例が続出しているんです。
文部科学大臣、あなた方も、そういう現状があるからこそ給付制でということで概算要求したんじゃないですか。
○平野(博)国務大臣 基本的にはそういう考え方のもとに要求したわけであります。しかしながら、折衝の中でだめだという結論になって、それで手をこまねいているわけでありません。
したがいまして、先ほど財務大臣が申し上げましたように、所得連動型の返済方式の無利子の奨学金制度を創設して、一歩前進、二歩前進として対応している、こういうことでございます。
○宮本委員 所得連動返済型奨学金、これは、もちろんないよりはましであります。しかし、これは給付型奨学金のかわりにはならないんです。
イギリスでは、もともと全てが給付制奨学金でありました。それを、実は一九九〇年度に貸与制奨学金を導入し、一九九八年度からは、給付制奨学金を廃止して、今回あなた方が導入しようとしている所得連動返還型貸与制奨学金だけにしてしまったんですね。
文科省に事実関係を聞きますけれども、今日でもイギリスは、給付制奨学金はなく、所得連動型だけになっておりますか。
○板東政府参考人 お答え申し上げます。
二〇〇四年度の入学者から、ちょっと違う制度には変わっておりますけれども、低所得者の学生の生活費の支援に重点を置きました給付型の奨学金制度を復活させている。それまでは、先ほど御指摘ございました一九九八年までの間につきましては、授業料と生活費とに対する給付型でございますけれども、二〇〇四年度からは、生活費の方に対してという給付型の奨学金制度が復活しているということでございます。
○宮本委員 一旦やめたけれども、所得連動返済型の奨学金では低所得者層、貧困層の進学機会が保障されないということになって、二〇〇四年に改めて給付制奨学金が復活をしたと。私の資料にも出ているように、今、六二%の学生が給付型奨学金を受けているんです。あなた方文科省の方が調べた調査報告でも、はっきりそのことが出ております。
このイギリスの経験が示しているのは、所得連動返済型奨学金というものは給付型奨学金のかわりにはならないという事実なんですよ。
被災地宮城の学生からは、知り合いの学生が、津波で実家が全壊し、一年休学して学費と生活費をためている。被災した学生が安心して学業に打ち込めるように、給付制奨学金を実現してほしい、給付型なら返済を気にせず安心して学業に専念できるという痛切な訴えも私のところへ届いております。
深刻な状況は被災地だけではありません。親と離れて児童養護施設で暮らしている子供は、現在、全国に三万人おります。児童養護施設は十八歳までですから、高校を卒業したら退所しなければなりません。大学に進学すれば、たちまち学費も家賃も生活費も全て自力で何とかしなければなりません。大学進学率は一三%、一般の進学率と比べて四分の一という現状なんですね。
教育基本法第四条一項は、経済的地位による教育上の差別を禁じ、第三項で、経済的理由による修学困難者に対する国、地方公共団体の奨学義務というものが定められております。このような、子供や若者に奨学金と名づけて金を貸して、多くは利子まで背負わせる。これで本当に救われると、文部科学大臣、お思いになりますか。
○平野(博)国務大臣 議員御指摘のとおり、そういう意味では、文部科学省としては、何としても、経済的に困窮することによって学べる機会、こういうことは失わないように努力をしなきゃならない、こういうことでございますし、今回の予算につきましては、まずはそういうところについて一歩二歩前進をさせる、これが一つの一里塚だ、こういうことでありますし、これから、大変厳しい財務大臣でありますが、今後そういう、実現に向けて努力をしてまいりたいと考えております。
○宮本委員 二言目には財政的な制約というふうにおっしゃるわけですよ。
では、聞きますけれども、予算概算要求に盛り込んだ給付制奨学金の中身ですけれども、高校生に対する給付型奨学金事業というものと、大学等修学支援奨学金事業のうち給付型奨学金の分、それぞれ概算要求の要望額は幾らでしたか。
○板東政府参考人 高校の分につきましては、百二億円ということでございます。大学の関係につきましては、百四十七億円を概算要求案に盛り込んだところでございます。
○宮本委員 高校生向けで百二億、大学生、院生向けで百四十七億、合わせてもせいぜい二百五十億円なんですね。米軍思いやり予算千八百六十七億円の七分の一ですよ。新たに買い込むF35戦闘機、三機やめればおつりが来るんです。我が党以外の党が山分けを続ける政党助成金三百二十億円を回せば、すぐにでも実現できる額なんですね。
そもそも、大学、大学院など高等教育を受けようと志す若者には無償で教育を受ける権利を保障するのが世界の常識です。それを、国立大学で初年度納入金八十二万円、私学なら平均で百三十一万円などという法外な学費を学生と家計に押しつける。
世界では、奨学金といえば返済の必要のない給付制奨学金が常識なのに、日本では、どんなに経済的に困窮していても一切給付制はなく、全てが借金。しかも、その七割以上は有利子ですよ。利子まで上乗せし、最高なら卒業時に六百五十万円もの借金を背負わせる。こんなことをやっている国が一体どこにあるか。
直ちに予算を修正して給付制奨学金を実現することを強く求めて、私の質問を終わります。