平成二十三年八月二十六日(金曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 田中眞紀子君
理事 糸川 正晃君 理事 金森 正君
理事 高井 美穂君 理事 野木 実君
理事 松崎 哲久君 理事 下村 博文君
理事 馳 浩君 理事 池坊 保子君
相原 史乃君 井戸まさえ君
小原 舞君 緒方林太郎君
大山 昌宏君 奥村 展三君
川口 浩君 木村たけつか君
熊谷 貞俊君 笹木 竜三君
瑞慶覧長敏君 高野 守君
中屋 大介君 平山 泰朗君
松宮 勲君 村上 史好君
室井 秀子君 本村賢太郎君
山田 良司君 笠 浩史君
和嶋 未希君 渡辺 義彦君
あべ 俊子君 稲田 朋美君
遠藤 利明君 河村 建夫君
塩谷 立君 田野瀬良太郎君
徳田 毅君 古屋 圭司君
松野 博一君 富田 茂之君
宮本 岳志君 城内 実君
土肥 隆一君
…………………………………
参議院議員 橋本 聖子君
参議院議員 義家 弘介君
文部科学大臣 高木 義明君
財務副大臣 五十嵐文彦君
文部科学副大臣 笹木 竜三君
文部科学大臣政務官 笠 浩史君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文教施設企画部長) 辰野 裕一君
政府参考人
(文部科学省生涯学習政策局長) 板東久美子君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 山中 伸一君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 磯田 文雄君
政府参考人
(文部科学省高等教育局私学部長) 河村 潤子君
政府参考人
(文部科学省科学技術・学術政策局長) 合田 隆史君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 藤木 完治君
政府参考人
(経済産業省大臣官房技術総括審議官) 西本 淳哉君
政府参考人
(資源エネルギー庁電力・ガス事業部長) 糟谷 敏秀君
政府参考人
(資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官) 黒木 慎一君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
八月二十六日
辞任 補欠選任
石井登志郎君 緒方林太郎君
城井 崇君 井戸まさえ君
熊谷 貞俊君 相原 史乃君
永岡 桂子君 徳田 毅君
松野 博一君 稲田 朋美君
同日
辞任 補欠選任
相原 史乃君 熊谷 貞俊君
井戸まさえ君 小原 舞君
緒方林太郎君 渡辺 義彦君
稲田 朋美君 松野 博一君
徳田 毅君 永岡 桂子君
同日
辞任 補欠選任
小原 舞君 城井 崇君
渡辺 義彦君 石井登志郎君
―――――――――――――
八月二十六日
東日本大震災に対処するための私立の学校等の用に供される建物等の災害復旧等に関する特別の助成措置等に関する法律案(参議院提出、参法第二一号)
同月二十五日
私立幼稚園教育の充実・発展に関する請願(宮本岳志君紹介)(第二六九六号)
教育格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(永岡桂子君紹介)(第二六九七号)
同(西村智奈美君紹介)(第二六九八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
東日本大震災に対処するための私立の学校等の用に供される建物等の災害復旧等に関する特別の助成措置等に関する法律案(参議院提出、参法第二一号)
文部科学行政の基本施策に関する件
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○田中委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
私は、先日、東北大学青葉山キャンパスにお伺いをして、大学当局から東日本大震災による被害の状況を聞き取るとともに、大学内を御案内いただいて、現場を視察してまいりました。
東北大を視察して感銘を受けたのは、大学関係者がみずからも被災しながら、研究教育施設設備に甚大な被害を受けながら復旧もままならない中で、被災者のために、みずからの専門性を生かして復旧復興に大きな力を発揮してくださっているということであります。
例えば、東北大学総合学術博物館の皆さんは、その専門性を生かして、南三陸町歌津にある魚竜館の多くの魚竜標本の救援を初め、おしかホエールランド、マリンパル女川、岩井崎プロムナードセンターなどで標本の救出活動をしておられます。この救出活動は、文化庁が文化財レスキューの活動を始めるよりも前に独自に開始をしたとお伺いをいたしました。
東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターの皆さんは、福島市で、専門性を生かした農産物の放射性物質の調査、除染活動に当たっておられます。
大学病院も、震災直後から、被災患者の受け入れ、他の医療機関への支援などに取り組んできたとお伺いをいたしました。
みずからが被災しながら、その専門性を生かし、復旧復興に力を尽くしておられる大学関係者に本当に頭が下がる思いでありますけれども、まず、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
○高木国務大臣 宮本委員にお答えをいたします。
過日の東北大学の視察についてのお話がございました。私も、三月二十七日には福島大学など、そして五月十一日には東北大学を回ってきました。その際も、確かに、被災に遭われながらも、いわゆる被災者、犠牲者の救済あるいは支援活動、こういったものを、先生方が、また学生と協力をして本当にしっかりやっておられることもお伺いしましたし、こういうことについては非常に私も心を打たれたところでございます。
そういうことで、私のみならず、副大臣あるいは政務官も職員も大学を視察しておりまして、特に、大学においても地域復興センターを立ち上げていただいて、御尽力をいただいております。
私としても、こういった大学の真摯な活動、姿勢に敬意を表しておりますし、これからも、被災復旧復興については最大限の支援をしていく気持ちは持っております。
○宮本委員 このように復旧復興に大きな役割を果たしている大学を支援することは、国の責務だと思うんです。
しかし、震災から五カ月もたつにもかかわらず、実は、復旧は大きく立ちおくれております。
東北大学当局の説明によると、学舎の被害は、二十八棟が危険判定で使用不能、要注意判定は四十八棟、危険建物として使用できない建物は約四万平方メートルに上ると。極めて甚大で、施設等の復旧に約四百四十八億円、被害を受けた物品の被害については、約三百五十二億円に上るという説明でありました。
私は、特に被害の大きかった大学院工学研究科の電子情報システム・応物系の建物や理学部・理学研究科棟などを見て回りましたけれども、これらの学部や大学院では、建物もさることながら、研究室内にあった実験器具や研究機材が、数千万単位のもの、中には数億円もする高価なものもございます、建物に倒壊の危険があるため運び出すこともできない状況で、とりあえず高価な実験器具等を運び出すために、ひとまず倒壊の危険を回避するための応急工事が今行われておりました。
研究室によっては、実験ができないために研究が滞り、大学院生の修了がおくれるとの話もあり、一刻も早い復旧が必要だと思います。
復旧のためにかかる経費は第三次補正予算で措置されると聞いておるわけですけれども、既に、大学では多額の出費を強いられております。第二次補正予算の予備費八千億というものがあるわけですけれども、これを取り崩してでも直ちに手当てをする必要があると私は感じましたけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○高木国務大臣 御指摘のとおり、この東日本大震災では、国立大学の施設においても深刻な被害を受けました。もちろん、東北大学はその一つであります。特に、建物そのものもそうですし、中には貴重な研究資材がたくさんありまして、ある意味では高価なものと私は認識しております。
こういったハード、ソフトを通じて、これは一刻も早い復旧復興はもう当然重要でございまして、そのためには、私たちは第一次補正予算でいち早く計上しておりまして、まずはその執行をしっかりやっていくということです。
今後といたしましても、現在実施しておる復旧復興のためには、必要な措置、これについては適切に我々としては対応してまいりたい、このように思っています。
○宮本委員 現状は持ち出しになっているという話もお伺いしましたので、二次補正でせっかく八千億、これは震災対応ということで予備費を積んだわけですから、そういうものも取り崩して、やはり大学に負担がかからないようにすべきだと思うんです。
それで、先月の二十七日の私の質問で、震災で被災した私学の二重ローンの解消ということを大臣に問いました。御答弁で気になった点が一つあったので、指摘をしたいと思うんです。
あのとき大臣は、私学が、一般の事業者と違って、災害復旧費の補助や私学助成があるから、自己資金がなくとも復旧に当たれるかのような答弁をされました。しかし、これはひどい言い分だと言わなければなりません。
災害復旧費の補助があるのは当然でありまして、一般の事業者と比べるならば、大体、私学というものは、公共的な性格を持ち、営利を目的としているものではありません。私学助成というものは通常時でも受けているわけでありますから、災害復旧の補助や私学助成があるから二重ローンの解消が必要ないかのような答弁は、私は問題だと思うんです。
私は改めて、震災から私学が復旧、再建を進める障害となっている二重ローンの解消、特にその中でも、私学事業団の既存の債務の解消を行うことが必要だと思うんです。
民間金融機関の債権をどうするかが今議論をされて、二重ローンの解消ということが議論されていますけれども、他の省庁が所管している独立行政法人の貸し付けも、解消する方向での議論が進んでおります。文部科学省所管の特殊法人である私学事業団だけは何も行わないというのでは、おかしいではありませんか。
私学事業団の既存の債務の解消は、文部科学省がその気になれば行えることなんですから、すぐに行うよう決断すべきだと私は思いますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○高木国務大臣 今御指摘の日本私立学校振興・共済事業団のこの融資につきましては、現在、債務の返済を猶予する、このこともやっております。また、新たな貸し付けについては、五年間の無利子、そしてその後の低金利の長期融資を実施しておりまして、その融資条件についても、従来より増した、かなり緩和した弾力的な対応をしておる、このように私は認識をしております。
この私立学校の復旧につきましては、今御指摘の、融資のみに頼らざるを得ない一般の事業者とはこれは異なって、まず第一に、制度上、激甚災害法に基づく施設災害復旧費の補助、また第二に、教育研究活動の復旧のための経常費補助、こういったものを行っておりまして、当面、自己資金がなくても復旧に当たれるように、まずは第一次補正予算で措置をしております。
なお、どうしても津波によって移転をせざるを得ないほどの甚大な被害を受けた例えば私立幼稚園等については、これはまさに政府の関係府省とも連携をとりまして、いわゆる移転とかあるいは土地再開発とか、そういうことがありますから、これは自治体の意向と学校法人、そういった声を十分に聞きながら、まさに第三次補正予算における対応を含めて努力をしている、こういうことでございます。
○宮本委員 よくわからないんですね。今、参議院を通って衆議院に付託された法案、私学の復旧の助成のかさ上げということがやられれば、なるほど、自己資金がなくてもほとんどそれで賄われるということになるでしょうけれども、それは、残念ながらまだ成立するという状況になっていないですよね。ですから、返済猶予という、返済についてはしばらく時間を待ちましょうという話はあるんですけれども、少なくとも、残った額については、私学は自己資金を用意しなければならないわけです。
しかも、なるほど、猶予という制度があることはわかっておるんですけれども、今、二重ローンの解消で他の分野で議論になっているのは、債務の解消なんですね。つまり、前の債務についてはもう棒引きするという議論が今やられている中で、猶予してもらってもやがては返さなきゃならないという形でずっと残すというのは、他に比べてもバランスを欠くではないかと。文部科学省が決意すればやれることなんですから、その点はしっかりと検討してほしいということを申し上げているわけですよ。
もちろん、私学の復旧、再建を後押しするためには、国庫補助をかさ上げすることはどうしても必要です。半分は国庫補助があると言っても、残りの半分をみずから調達するということさえ困難な状況があるわけですから、私学の施設復旧の補助をかさ上げする法案、これを当委員会で審議し、成立を期すべきだということを私どもも申し上げておきたいと思います。
次に、一次補正予算でつくられた被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金、これについて聞きたいと思います。
特例交付金には、当初はなかったんですけれども、私立の専修学校、各種学校の授業料減免がつけ加わり、行われております。私も、四月六日、この委員会で質問をし、授業料減免を行うべきだと申し上げてきたので、これは大変よかったと思っております。
しかし、これまで、少なくない都道府県で専修学校、各種学校の授業料減免事業そのものが行われていないわけですから、全国で実施されるのかとの不安の声も寄せられております。
そこで、これは事務方に聞くんですが、現在の都道府県での実施状況を答えていただきたい。一人でも対象となる専修学校、各種学校の生徒がいればこれは実施するということになるのかどうか、お答えいただけますか。
○板東政府参考人 お答え申し上げます。
ただいま御質問の、一人でもいれば対象になるのかというお話につきましては、そのとおりということでございます。
そして、現在の状況の方でお話し申し上げますと、被災により家計急変をしたという該当生徒につきましては、今把握しておりますところで、二十九都道府県に、進学している、学んでいるという状況がございます。
そのうち、既に六月議会におきまして補正予算等で県が事業を対応しているというもの、それを受けて国が交付を決定しているものが二十三県ございまして、そのうち三県は、一人だけでも対象としているという状況でございます。
残りの県につきましても、秋の議会におきまして必要な対応をされるということで、それを受けて国の方としても交付を決定させていただくということでございます。
○宮本委員 ぜひ、一人でも対象者がいれば必ず授業料減免されるように今後も対応していただきたいと思っております。
この交付金は私立学校などの授業料減免にも活用されておりますけれども、こちらは従来の枠にとどまっているという話を聞いたんですね。
宮城県の場合、施設設備費の減免までは、既存のものにはないからという理由で、この交付金の対象にはなっておりません。専修学校、各種学校のように、これまでにない対応をしているものがある一方で、私立学校の授業料減免は従来の枠にとどまっている。授業料の減免だけではとてもまだまだ負担が残るということは、高校無償化法案の議論のときに私指摘をいたしました。
全国私立学校教職員組合連合の調査によりますと、宮城県では、私立学校の授業料は平均で三十二万四千九百四十七円です。たとえこれが修学支援金と合わせて減免されたとしても、それ以外に施設設備費が平均で三十万九千四百円かかり、こちらの方は減免をされません。これでは、泣く泣く学校をやめざるを得ない状況はなくなりません。やはり、この交付金で施設設備費まで減免できるように制度改善をすべきではないか。
これは大臣にお答えいただきたいと思います。
○高木国務大臣 今回の臨時特例交付金については、これまでも議論が出ました。各都道府県の既存の授業料減免制度において授業料のみを対象としている場合は、本事業においても授業料のみが対象となる。入学料または施設整備費等も対象としている場合は、これらも経費の対象となる。
いずれにいたしましても、被災した児童生徒等に対する就学機会の確保については、今申し上げました観点あるいは国と地方の役割分担、こういったものを考えながら、引き続きこの点についてはしっかり対応していきたいと思っております。
○宮本委員 いつもそういう答弁なんですよね。
それで、あなた方の「被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金」というこの説明の資料を見ますと、「私立学校」のところで、対象事業は「都道府県等において行う授業料等減免事業」となっているわけですよ。つまり、授業料の後に「等」という言葉が入っているわけですね。ですから、この「等」というところにきちっと施設設備費も読み込めば、決して施設設備費を新たに対象に加えることは不可能じゃないはずなんです。
以前からやっていればいいんだけれども、やっていないところはだめなんだと。そもそも、被災三県では以前とは全然違う経済状況が生まれているわけですから、当然柔軟な扱いにする、拡大することは必要だと指摘を申し上げておきたいと思います。
これを突っ込んで議論していきますと、そこは既存の高校生修学支援基金を活用して各県においてやってもらいたい、こういうことが出てくるんですよね。そういうことも想定して、この基金が一体どれぐらい使われているか、現状どうなっているかをお聞きしたいと思います。
これも事務方でいいんですが、今年度の執行見込み額、今年度末の残高の見込みは幾らになっておりますか。
○河村政府参考人 高校生修学支援基金は、平成二十一年度に各都道府県に対して総額四百八十六億円が交付され、創設されたものでございます。
各都道府県に問い合わせをいたしました結果でございますと、平成二十三年度末、今年度末までの執行見込み額が二百八十二億円になりまして、残高の見込み額が二百五億円ということでございます。
○宮本委員 この基金については、従来から、我が党だけでなくて、各党からも使い勝手が悪いという指摘がされてまいりました。大阪府も、国への要望の中で、非課税や家計急変等の所得層に限定されている補助単価増分に係る基金取り崩し対象を所得中位層まで拡大するなど、地域の実情に応じて活用できる制度とすること、こう要望書で言っております。
必要額の二分の一の取り崩しではなくて、全額取り崩し可能にしなければ活用できないということも申し上げてまいりました。事実、活用できないから二百五億円も残る見込みになっているわけですね。
この基金を活用すべきと言うのならば、まず国が、地方が使いやすいように全額取り崩し可能にするなど、制度を変えてからそう言うべきではないですか。大臣いかがですか。
○高木国務大臣 高校生の修学支援基金については、これは、授業料減免事業及び奨学金事業について、各都道府県ごとに、平成二十年度の対象生徒数を超える生徒数について必要な額、これは全額でありますが、充当することを基本としております。
これに加えまして授業料減免事業については、都道府県が、特に経済的支援を必要とする世帯、生活保護世帯などでありますが、これに対しては、補助制度を拡充する場合も基金から充当できるようになっております。
この場合、授業料減免事業が地域の実情に応じて都道府県の事業として行われるという国と地方の役割分担の観点から、また、既に手厚い補助を行っておる都道府県との公平性の観点、こういうことからも考えまして、所要額につきましては国と都道府県とで折半をしておるということでございまして、今、このような状況の中で、私たちは必要な高校生に支援をしていきたい、このように思います。
○宮本委員 新しい交付金は使えない、既存の基金も結局要件緩和しないというのでは、全然前に進まないわけですよ。ですから、本当にこれは制度を真剣に考えていただいて、子供たちがちゃんと救われるように、二百五億円も残すんじゃなくて、ちゃんと使えるように進めていただきたいと思います。
さて、去る二十四日に、公立学校施設の耐震改修調査の結果が公表されました。ことし四月一日現在で耐震化率は八〇・三%、前年度比で七・〇ポイント増の過去最大の伸びとなったとお伺いをしました。
今後、今回の震災もあって、耐震化を進めたいと考える市町村はさらにふえると思うんです。現在、市町村から来年度の事業計画として総額幾らぐらいの要望が上がっているのか、これも事務方でお答えいただけますか。
○辰野政府参考人 各地方公共団体において平成二十四年度に実施予定の施設整備事業の計画について現段階で取りまとめたところでは、耐震化や防災関連事業を中心に、国費所要額で約三千三百五十億円となっているところでございます。
○宮本委員 きょうは資料をつけておきました。「公立学校施設整備費予算額の推移」というものでありますけれども、今年度の予算では、当初予算で八百五億円、これは白い部分です、これに第一次補正予算で三百四十億円、緑の部分が追加されたんですが、それでも、今年度合わせて千百四十五億円ですよ。三千三百五十億円といえば、右端の斜線のグラフ、既にことしの三倍近い要望が市町村から上がっているわけです。大幅な予算増は必定だと言わなければなりません。
しかし、先日、財務省が各省に示した来年度予算の概算要求の目安では、やはり、今年度当初予算比で一律一割削減の方針が示されております。つまり、この白い部分は来年度さらに一割減らされるということなんです。
大体、今年度の予算でさえ二百億円不足して、必要な事業の採択もできなくなっている。前回の委員会で私指摘をいたしました。学校耐震化を含めて三千三百五十億もの要望が出されているのに、一律一割削減などできるわけがないんです。
昨年も大問題となりましたけれども、一律に削減させて残りをとり合う、こういう予算編成のやり方は、少なくともこの文部科学の分野では全くなじまないことは明らかです。ましてや、足りないのが明らかな公立学校の施設整備の予算を一律に削減するなど、絶対に認められません。
大臣、来年度予算編成はそんなやり方ではやれないと、これははっきりとおっしゃるべきではないですか。
○高木国務大臣 八月二十三日に財務大臣から示されました作業手順、これは、概算要求に向けた実務的作業の速やかな開始を図る観点から、暫定的に、しかも機械的な手順を示したものでありまして、予算の具体的な方向づけにつきましては、新体制のもとで対応されると承知をいたしております。
いずれにいたしましても、これまでも各党各会派から、とにかく我が国における教育予算、これは国際的に見てもそんなに褒められたものではないと。したがって私は、まさにこれまでも予算の増額について取り組んできた、そういう自負は持っております。
また、特に学校施設の耐震化などの整備についても、これはもう児童生徒、学生もそうですけれども、やはり、命、健康を守る重要な場所でございますから、何にかわってもこういったところの整備というのは着実にしなきゃならん、このように考えております。
こういった意味で、今後とも地方ニーズに合った対応をしていくこと、これが非常に重要であろうと思っています。
○宮本委員 時間がなくなりましたので、最後に高校無償化の問題についてお伺いしたい。先ほども議論がされておりました。
高校無償化法案の趣旨説明で当時の川端大臣は、「今日、高等学校等は、その進学率が約九八%に達し、国民的な教育機関となっており、その教育の効果が広く社会に還元されていることから、高等学校等の教育に係る費用について社会全体で負担していくことが要請されております。」こう述べられました。これは今も変わっていないと思うんです。
それで、この無償化の実施に当たって文部科学省は、「社会全体であなたの学びを支えます」とするこのチラシ、またポスターを作成し、現在もホームページにこれは掲載をしております。このチラシは、平成二十一年度、平成二十二年度、それぞれ全国で何万枚配付したか、お答えいただけますか。
○山中政府参考人 委員御指摘のパンフレット、高校の授業無償化と、それから高等学校等就学支援金制度、このパンフレットでございますけれども、平成二十二年四月のこの制度創設時に、国公私の高校生等の全員それから都道府県、市町村教育委員会、学校関係者等に対して、約四百万枚を配付したところでございます。
また、平成二十二年度、昨年度でございますけれども、八月には、国公私立の中学三年生それから関係者、それからことしの三月には、国公私立の中学校二年生と関係者に、合わせて約五百万枚を配付したというところでございます。
○宮本委員 ポスターもつくって張り出しているんですね。これはまさに「社会全体であなたの学びを支えます」と。これは、国と国民、とりわけ高校生との間の約束になっている。これはそれだけ配って周知したわけですから、そう思うんですね。
この約束を守ることは、国、文部科学省の当然の責任だと思いますが、これは大臣、よろしいですね。
○高木国務大臣 今お尋ねの冒頭の部分に、高校無償化の立法趣旨についてお触れになりました。そして、今お手元のポスターもお示しになりました。私どもとしましては、現在においてもその立法の趣旨については変更はないもの、このように考えております。
○宮本委員 「社会全体であなたの学びを支えます」というこの理念、考えに立てば、所得制限を入れるということにならないんです。
さらに国際的に見れば、アメリカでは一八二七年にマサチューセッツ州で高校無償化が初めて開始され、南北戦争以前には、既に六つの州で高校無償化に踏み出しております。多くの国では、早くから高校無償化をやっているわけです。日本では、ようやく二十一世紀に入ってから始まった。しかも二年目です。
国際的なおくれが非常に明らかなのは、国際人権規約の漸進的無償化条項を留保しているということにあらわれております。もう今や、マダガスカルと日本というたった二つの国しかこれを留保している国はない。やっと今回のこの無償化に踏み出して、留保撤回をという動きも出てきたわけでありまして、そして、今国会の冒頭、高木大臣も所信表明で、国際人権A規約における漸進的無償化条項の留保撤回も視野に取り組みを進めるということをおっしゃいました。
さらには、この無償化法案採決時の当委員会の附帯決議では、立法府の意思として、「国際人権A規約における中等教育の漸進的無償化条項の留保撤回を行うこと。」と、これは明確に決議をしたわけです。
先ほど来、三党確認書なるものによって高校無償化も見直しの対象とすることが明記されたという議論がやられておりました。我が党はこうした合意にくみしておりませんし、そもそも、歳出の見直しを行うのならば、米軍への思いやり予算や大企業減税、政党助成金などこそ見直すべきであって、教育の分野の公的財政支出の少なさは、国際的に見ても本当におくれているということを繰り返し申し上げてきたわけであります。
我が党は、高校無償化法については、民主党、公明党とともに三派共同修正案を提案いたしました。あのとき附則に加えた三年見直しというものは、質疑の中でも明らかにしたように、公立高校生でも授業料以外の負担があること、留年した場合には徴収されること、私立高校生の就学支援金も額が少なく、公私間格差があること、特定扶養控除の縮減により負担増となる世帯への対応、朝鮮学校を除外していることなど、不十分な点をさらに前進させようという趣旨でありました。
高校無償化の見直しを言うなら、こうした問題点を改善していくことこそ必要で、先ほどの質疑で出たような所得制限の導入では決してないと思います。
所得制限は、高校無償化の理念と相入れず、高校生に対して配付してきた「社会全体であなたの学びを支えます」という約束をほごにするものであり、国際的に見て恥ずかしいほど立ちおくれた国際人権規約の漸進的無償化条項の留保撤回にも逆行し、さらには、「国際人権A規約における中等教育の漸進的無償化条項の留保撤回を行うこと。」という当委員会の附帯決議の趣旨にも反するもので、絶対に認められないということを申し上げて、私の質問を終わります。