平成二十三年八月十日(水曜日)
午後一時一分開議
出席委員
委員長 田中眞紀子君
理事 糸川 正晃君 理事 金森 正君
理事 高井 美穂君 理事 野木 実君
理事 松崎 哲久君 理事 松宮 勲君
理事 下村 博文君 理事 馳 浩君
理事 池坊 保子君
石井登志郎君 大山 昌宏君
奥村 展三君 川口 浩君
木村たけつか君 城井 崇君
熊谷 貞俊君 笹木 竜三君
瑞慶覧長敏君 高野 守君
中屋 大介君 平山 泰朗君
村上 史好君 室井 秀子君
本村賢太郎君 山田 良司君
笠 浩史君 和嶋 未希君
あべ 俊子君 遠藤 利明君
河村 建夫君 柴山 昌彦君
田野瀬良太郎君 永岡 桂子君
古屋 圭司君 松野 博一君
富田 茂之君 宮本 岳志君
城内 実君 土肥 隆一君
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文部科学大臣 高木 義明君
文部科学副大臣 笹木 竜三君
経済産業副大臣 池田 元久君
文部科学大臣政務官 笠 浩史君
会計検査院事務総局第四局長 太田 雅都君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文教施設企画部長) 辰野 裕一君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 山中 伸一君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 藤木 完治君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 布村 幸彦君
政府参考人
(文化庁次長) 吉田 大輔君
参考人
(大学共同利用機関法人自然科学研究機構核融合科学研究所所長) 小森 彰夫君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
八月十日
辞任 補欠選任
塩谷 立君 柴山 昌彦君
同日
辞任 補欠選任
柴山 昌彦君 塩谷 立君
同日
理事松宮勲君同日理事辞任につき、その補欠として金森正君が理事に当選した。
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八月九日
教育費の無償化など費用の大幅な軽減を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第二二一六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の辞任及び補欠選任
会計検査院当局者出頭要求に関する件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
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○田中委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず冒頭、大事な問題を二つほど聞きたいと思います。
一つ目は、公立学校の施設整備の問題です。
市町村から、今年度に空調設備の設置、学校給食施設の工事を行う事業計画などが出されているにもかかわらず、八月の半ばになろうというのにいまだに採択がされていない事業があるとお聞きをいたしました。
いまだに採択がされていない事業はどういった事業で、幾つの市町村の幾つの事業なのか、国費で幾ら足りないのか。これは文部科学省の方から、事務方からお願いします。
○辰野政府参考人 平成二十三年度の公立学校施設整備事業のうち、未採択となっている主な事業の内容について申し上げますと、老朽改修事業、約百事業。空調設備設置事業、約七百事業。トイレ改修事業、約四百事業。太陽光発電導入事業、約三百事業。屋外教育環境整備事業、約百事業。プール整備事業、約百事業。給食室整備事業、約百事業。これら未採択事業の総計は約二千事業。関連する自治体数は約五百市町村であります。
また、これらに必要となる国費は約二百億円となっております。
○宮本委員 学校の工事は、ほとんど夏休みを利用して行われるわけです。東京都内のある市では、ことしと来年にかけて二カ年で空調の設備工事を行う計画を立てて、申請を出したにもかかわらず、いまだに採択をされておりません。市債の発行も国による事業採択が前提になっておりますので、何も前に進まないという状況があるわけです。
このままでは計画を見直さざるを得ない、こういう状況ですね。
それで、先ほどから、平成二十三年度における歳出の削減という議論も交わされておりましたけれども、三党合意などというものには我が党は加わっておりません。大企業減税や政党助成金など、歳出の削減、見直しをすべきものもありますけれども、少なくとも文部科学省の分野は、足りないんですよ、採択すらできないという状況になっているわけですよ。
そして、耐震化事業というものはもちろん進める必要がありますが、それ以外の事業も後回しにしてよいわけではありません。
災害対応の点から考えても、先ほど少し議論がありましたが、学校の空調、クーラーの設置、洋式トイレの設置などの環境改善は、避難所の機能の強化にもつながります。学校給食施設の設置も、災害時には避難所で炊き出しを行うために重要な機能を発揮することが今回の震災で明確になりました。
そもそも、市町村が行いたいと言っている事業にすべてこたえられるようにするのが国の責任だ。二百十億足りないから、とめる、未採択というわけにはいきませんね。二次補正には使い道がまだ決まっていない予備費八千億円があるわけですから、直ちに二百十億円をそこから使って採択すべきじゃないですか、大臣。
○高木国務大臣 宮本委員にお答えをいたします。
現在、未採択となっておる事業は、いずれについても、良好な教育環境を整備するためには重要な事業と認識をしております。
御指摘のいわゆる当該予備費については、これは東日本大震災に係る復旧及び復興に関する経費でありまして、予備費の性格上、予見しがたい予算の不足に充てるための予算であることから、活用は困難であると思います。
しかし、今後、この未採択になった事業が採択可能になるように、私どもとしましては、これは最大限の努力、検討をしてまいりたい、このように思います。
○宮本委員 三次補正では遅い。一刻も早く採択できるように、全力で取り組んでいただきたいと思うんですね。
次に、私学の復旧、再建の問題です。
先月、宮城県にある航空整備士を養成する専門学校にお伺いをして、被害状況や国への要望を聞いてまいりました。
仙台空港近くにあるこの学校は、津波により、二棟の実習棟が土台を残して丸ごと流失、汚泥や近隣の工場から流されてきた自動車等々によって、実習室や学生寮が破壊されました。
さらに、実習に欠かせない飛行機やヘリコプターなど七機が、格納庫内で海水をかぶり、使用不能となるなど、被害総額五億三千万円に上る、こういう甚大な被害をこうむったわけです。
そもそも、専修学校、各種学校は激甚災害法の適用外でありましたので、一次補正で二分の一の国庫補助が今回初めて実現をいたしました。学校関係者からはこの措置に安堵しているという声も出されておりますけれども、問題は残り二分の一の費用をどう工面するか、これが大問題なんですね。
専修学校、各種学校も含めて、私学の復旧、再建のために国庫補助を二分の一からかさ上げする必要があると私どもも考えますけれども、大臣の御見解をお伺いいたします。
○高木国務大臣 今は、御指摘の、委員が視察をされた、いわゆる東日本航空専門学校について触れられました。
私どもとしましては、私立の専修学校あるいは各種学校の災害復旧につきましては、学校法人または準学校法人立の専修学校、各種学校に対しては、まず一つは、災害復旧事業費の二分の一の国庫補助、十七億円措置をしております。二番目には、日本私立学校振興・共済事業団の五年間の無利子、そしてその後の低金利の教育融資、こういったことを行って支援をしておるところであります。
これらの費用につきましては、もう御存じの第一次補正予算で措置をされておりまして、今それを執行するように精力的に進めておりまして、こういった指摘の学校も含めた専修学校の復興についても最大の努力をしていきたいと思っております。
○宮本委員 各種学校、専修学校の予算措置も、学校法人と準学校法人立の専修学校と外国人学校だけが対象になっておって、個人立、財団立などは対象外になっております。復旧にかかわる費用のめどが立たない専修学校も本当に少なくないわけですね。
現在、学校法人格の有無を問わず、広く専修学校、各種学校の施設復旧に補助すること、さらには、専修学校、各種学校も含む私学の施設復旧の補助をかさ上げする法案が参議院に提出されたとお伺いをしております。これは一日も早く成立させるべきだということを申し上げておきたいと思います。
次に、スポーツについてお伺いしたい。
去る八月四日、サッカーの元日本代表の松田直樹選手が練習中に心筋梗塞を発症して倒れ、三十四歳という若さでお亡くなりになりました。私は、松田選手の御逝去に対し心より哀悼の意を表したいと思います。
ワールドカップでも活躍したトップアスリートの悲劇は、健康管理や安全対策という点でスポーツ界に警鐘を鳴らす出来事だと思います。
二〇〇三年、コンフェデレーションズカップで、カメルーンのフォエ選手が、ピッチ上で心臓発作を起こして急死した。この事件を教訓に、国際サッカー連盟、FIFAは、AED、自動体外式除細動器の配備、あるいは選手の心機能検査を推進してまいりました。国内でも、Jリーグが二〇〇四年から各クラブにAEDの設置や携行、心電図検査などの報告を義務づけたと聞いております。
そこで、スポーツ・青少年局にお伺いします。
JリーグにおけるAEDの設置状況、及び、今回の松田選手のチームである松本山雅が所属する日本フットボールリーグや、なでしこジャパンで話題になっている日本女子リーグでのAEDの設置状況はどうなっておりますか。
○布村政府参考人 お答えいたします。
Jリーグにつきましては、先生からお話がございましたとおり、二〇〇四年から、試合会場と練習場にAEDの携行、設置を義務づけているという状況です。
また、日本フットボールリーグ、JFLにおきましては、これまでAEDの携行、設置を指導していたが義務ではなかったという状況でございましたけれども、今後、JFLがAEDをレンタルし、リーグの十八チームに対して配付することを決定したと伺っております。
また、日本女子サッカーリーグにおきましては、これまでAEDの携行、設置を指導するにとどまっておりましたけれども、今後、義務化する方向で検討していきたいと伺っております。
○宮本委員 その松田選手が倒れた練習場所にはAEDが設置されておりませんでした。それで早速、JFLが全十八チームへのAED配置を決定したことは一歩前進だと思います。
なでしこリーグはもちろんですけれども、他のスポーツ団体についても、文部科学省としてAEDの携行、設置の推進などについて、やはり通知等も出して指導すべきだと私は思うんですが、これは大臣にちょっと御答弁をいただきたいと思います。
○高木国務大臣 委員からは、サッカーの松田選手の死去についてお触れになりました。私も、私の立場からお悔やみを申し上げたいと思っております。こういうことを防ぐために最大限の努力を誓うものでございます。
スポーツ団体がスポーツ活動を実施する際に、スポーツを行う者の安全確保の観点から、AEDを速やかに利用できる状況にしておくということが極めて望ましい。
先般公布されましたスポーツ基本法において、「国及び地方公共団体は、スポーツ事故その他スポーツによって生じる外傷、障害等の防止及びこれらの軽減に資するため、指導者等の研修、スポーツ施設の整備、スポーツにおける心身の健康の保持増進及び安全の確保に関する知識の普及その他の必要な措置を講ずる」ことと規定をされておりまして、私どもは、その精神にのっとり、御指摘のように、スポーツ団体に対して、AEDの積極的な活用も含めて、事故を未然に防ぐ体制の整備を促していくこととしたいと思います。
○宮本委員 ぜひ、そういう方向で、きちっと選手の安全を守っていただきたいと思うんですね。
それで、FIFAは、AEDの配備だけでなくて、心機能検査の推進も求めております。ですから、サッカーに限らず、日本のアスリートたちが定期的に健康チェックをちゃんと受けられる体制にあるのか、あるいは競技団体はトレーニングドクターを配置しているのかというような問題もしっかり見ていかなければならぬと思うんですね。
これは聞こうと思いましたが、もう時間がありませんので。とにかく、やはりそういう状況をしっかり掌握して、とるべき対策をとる必要があると思うんですよ。
私どもは、この際、選手の定期健康チェック体制やトレーニングドクターの配置、あるいは過度の試合日程に対する規制措置が講じられているかどうか、選手の治療、病休に対する補償制度、保険制度は整備されているのか、こういう現状を文部科学省として一度きちんと調査して、問題があればしかるべき措置や援助をすべきではないか、また、そういう健康管理体制の整備に関する助成などについても検討すべきではないかと考えますが、大臣の御答弁をお願いいたします。
○高木国務大臣 いわゆるトップアスリートの健康管理体制に関しては、国としては、国立スポーツ科学センターにアスリート専用医療施設を設けるとともに、オリンピックや世界選手権へのチームドクターの帯同に対する助成の支援を行っております。
また、健康管理体制のさらなる充実のために、マルチ・サポート事業において、医師やトレーナーが日常的にトップアスリートの体調管理を支援できる、いわゆる携帯端末を利用した遠隔診断システムの開発に今取り組んでおります。現在、女子マラソンの強化指定選手を対象にしてシステム開発の実用化実験に取り組んでおりまして、来年度、早い時期にも実用段階に至ると考えております。
このようなシステムを効果的なものにするためには、御指摘のように、選手の健康管理の実態をしっかりと把握する、このことが必要でありまして、システムの活用法等の周知に努めることはもとより、トップアスリートが日常的にメディカル面でのチェックを受けることができるような体制を努めていきたいと思います。
○宮本委員 せっかく基本法をつくったわけですから、しっかりとやっていただきたいと思うんですね。
スポーツの基本法の議論のときには、スポーツと比べて文化予算は多いという議論があったんですが、文化の問題を次に、最後に触れたいんですが、これはなかなかそういう状況にないわけです。
先日、沖縄県の沖縄市で、シンポジウム「沖縄の振興と文化芸術の役割」、こういうものが開催をされました。このシンポジウムは、国会の超党派の議連である音楽議員連盟と沖縄県議会の超党派の議連である文化議員連盟、それに日本芸能実演家団体協議会、いわゆる芸団協、さらには沖縄の沖縄県芸能関連協議会、沖芸連の四者が共催したものでありました。開催地である沖縄市の東門美津子市長のごあいさつの後、芸団協、能楽の野村萬会長、沖芸連、三線の照喜名朝一会長という、人間国宝が二人そろってあいさつをされるというシンポジウムでありました。
昨年十月二十七日の当委員会で、私は高木文科大臣と、芸団協が取り組んできた「もっと文化を!」という署名、国家予算に占める文化予算の割合を現行の〇・一一%からせめて〇・五%に、この署名について議論をいたしました。あのとき、大臣は私の問いに、文化芸術の振興にかける関係者の切迫した思い、熱い思いを重く受けとめると答弁し、平成二十三年度の文化庁予算の概算要求額は一千五十二億円だ、そのうち、文化芸術の振興は三百六十九億円と増額要求となっていることを示して、昨年よりとにかくふやしていく、こう答弁をされました。
それで、これは事実を聞くんですが、事務方でいいです。
芸術文化の振興予算に限って、ことしは一体幾らなのか、今年度予算は。そして、これは昨年からふえておりますか。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
平成二十三年度文化庁総予算は一千三十一億円でございまして、対前年度に比べまして十一億円の増となっております。
文化庁予算は、芸術文化の振興のための予算と、文化財等の保護、活用のための予算に大別できますけれども、そのうち、芸術文化振興のための予算につきましては約三百五十一億円ということでございまして、対前年度で十二億円の減という形になっております。
○宮本委員 芸術文化の振興予算は去年に比べて十二億円の減なんです。熱い思いを重く受けとめるとおっしゃったわけですけれども、現実は減っているわけですよね。
これは沖縄のシンポジウムでも怒りが沸騰して、民主党から参加をされていた横光克彦音議連幹事長やコーディネーターを務められた平田オリザ内閣官房参与は、ちょっとお気の毒なぐらいでありました。
大臣、あれほど文化芸術立国にふさわしい予算を確保するとおっしゃったけれども、現実は減っているわけですよ。これはどういうことですか、大臣。
○高木国務大臣 今のお尋ねの平成二十三年度の文化芸術予算につきましては、これはもう私が言うまでもなく、厳しい財政状況の中で、昨年の政策コンテストにおいてその重要性は説明をしてまいりましたが、事業仕分けの結果に即した圧倒的な予算の縮減が行われていないという行政刷新会議の指摘もあって前年度より減額となったところでございまして、私の力不足であります。
しかしながら、文化芸術への支援をより効果的に行うことがまた重要になってきまして、私どもとしましては、芸術団体の経営努力へのインセンティブが働くような支援の仕組みを見直したり、また、諸外国のアーツカウンシルを参考に、計画、実行、検証、改善のいわゆるPDCAサイクルの確立を図る、こういった仕組みを導入することによって予算の新規計上をしておりますし、この内容の充実についての工夫もさせていただいたところでございます。
御指摘の趣旨については、今後とも、文化芸術の予算確保、支援の充実については努めてまいりたいと思います。
○宮本委員 力不足ということでありますけれども、実は沖縄では、「もっと文化を!」の請願署名、全国で六十三万筆集められた中で、十万筆を目標に取り組んで、八万二千筆をお集めになりました。
同時に、同規模で、県立郷土劇場の早期再建の陳情というものにも取り組まれて、これは六月七日に県議会あて、知事、教育長あてに提出されましたけれども、現地の沖縄県議会の文化議員連盟の超党派の議員たちの奮闘で、十月十四日、会議で陳情として採択をされております。
沖縄県議会の陳情が採択されたんですが、実は、六十三万筆の署名はどこにあるかといえば、当委員会に付託をされているわけであります。
力不足と大臣はお答えでありますけれども、文化芸術振興基本法を制定した国会の意思として、やはりもっとこれはふやすべきだという国会の意思をしっかり示すということが求められていると思うんですね。
だから、これはもちろん立法府の判断でありますけれども、大臣、もしこの国会がそういうことをきちっと採択すれば、それは大臣の応援になると私は思うんですが、いかがですか、一言。
○高木国務大臣 御指摘のように、請願の採択というものを踏まえて、これは国会の意思でございますから、この意思を踏まえて、私たちは最大限努力をすることが私たちの責務であると思っています。
○宮本委員 私は、あくまでこの請願というものをしっかりと議論することが大事だとかねてから申し上げてまいりました。ぜひ請願についても、この際委員会として、委員会を開いて審議すべきだと思いますが、委員長、理事会で御協議を願いたいと思います。
○田中委員長 では、そのように取り計らいたいと思います。
○宮本委員 引き続きこの問題についてもしっかり議論するということを申し上げて、私の質問を終わります。