平成二十三年七月二十七日(水曜日)
午前十一時開議
出席委員
委員長 田中眞紀子君
理事 高井 美穂君 理事 野木 実君
理事 松崎 哲久君 理事 松宮 勲君
理事 下村 博文君 理事 馳 浩君
石井登志郎君 磯谷香代子君
稲富 修二君 大山 昌宏君
奥村 展三君 金森 正君
神山 洋介君 川口 浩君
木村たけつか君 熊谷 貞俊君
瑞慶覧長敏君 高野 守君
中屋 大介君 平山 泰朗君
村上 史好君 室井 秀子君
本村賢太郎君 山田 良司君
笠 浩史君 和嶋 未希君
あべ 俊子君 今津 寛君
遠藤 利明君 加藤 勝信君
河村 建夫君 北村 茂男君
齋藤 健君 塩谷 立君
田野瀬良太郎君 永岡 桂子君
松野 博一君 富田 茂之君
宮本 岳志君 城内 実君
土肥 隆一君
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文部科学大臣 高木 義明君
内閣官房副長官 福山 哲郎君
法務副大臣 小川 敏夫君
文部科学大臣政務官 笠 浩史君
経済産業大臣政務官 中山 義活君
会計検査院事務総局第四局長 太田 雅都君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 長谷川彰一君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文教施設企画部長) 辰野 裕一君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 山中 伸一君
政府参考人
(文部科学省科学技術・学術政策局長) 合田 隆史君
政府参考人
(文部科学省研究振興局長) 倉持 隆雄君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 藤木 完治君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 布村 幸彦君
政府参考人
(文部科学省国際統括官) 藤嶋 信夫君
政府参考人
(文化庁次長) 吉田 大輔君
政府参考人
(特許庁審査業務部長) 橋本 正洋君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
七月二十七日
辞任 補欠選任
城井 崇君 磯谷香代子君
遠藤 利明君 今津 寛君
河村 建夫君 齋藤 健君
永岡 桂子君 北村 茂男君
古屋 圭司君 加藤 勝信君
同日
辞任 補欠選任
磯谷香代子君 神山 洋介君
今津 寛君 遠藤 利明君
加藤 勝信君 古屋 圭司君
北村 茂男君 永岡 桂子君
齋藤 健君 河村 建夫君
同日
辞任 補欠選任
神山 洋介君 稲富 修二君
同日
辞任 補欠選任
稲富 修二君 城井 崇君
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六月六日
教育格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(今村雅弘君紹介)(第七八八号)
貧困と格差をなくす中等・高等教育の無償化と奨学金の拡充を求めることに関する請願(城内実君紹介)(第八三一号)
同(吉泉秀男君紹介)(第八三二号)
同月八日
国家予算に占める文化予算の割合を〇・一一%から〇・五%にふやすことに関する請願(高木美智代君紹介)(第八八一号)
同月十三日
国家予算に占める文化予算の割合を〇・一一%から〇・五%にふやすことに関する請願(逢沢一郎君紹介)(第一〇八九号)
同(柿澤未途君紹介)(第一〇九〇号)
貧困と格差をなくす中等・高等教育の無償化と奨学金の拡充を求めることに関する請願(服部良一君紹介)(第一二三八号)
同月十五日
教育格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(田島一成君紹介)(第一二六八号)
国の教育予算をふやし、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一二六九号)
国家予算に占める文化予算の割合を〇・一一%から〇・五%にふやすことに関する請願(下地幹郎君紹介)(第一三六三号)
同(斉藤鉄夫君紹介)(第一四八一号)
貧困と格差をなくす中等・高等教育の無償化と奨学金の拡充を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一四八二号)
同月十六日
教育格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(津村啓介君紹介)(第一五九一号)
同(笠井亮君紹介)(第一七二七号)
同(工藤仁美君紹介)(第一七二八号)
同(櫛渕万里君紹介)(第一七二九号)
同(渡部恒三君紹介)(第一七三〇号)
同(郡和子君紹介)(第一八四五号)
同(佐々木隆博君紹介)(第一八四六号)
同(浜本宏君紹介)(第一八四七号)
同(松木けんこう君紹介)(第一八四八号)
同(あべ俊子君紹介)(第一九八七号)
同(大串博志君紹介)(第一九八八号)
同(富岡芳忠君紹介)(第一九八九号)
教育格差をなくし行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一五九二号)
同(宮本岳志君紹介)(第一五九三号)
教育格差をなくし、行き届いた教育を求めることに関する請願(渡部恒三君紹介)(第一七二五号)
国の教育予算をふやし、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一七二六号)
国家予算に占める文化予算の割合を〇・一一%から〇・五%にふやすことに関する請願(河村建夫君紹介)(第一七三一号)
同(服部良一君紹介)(第一七三二号)
同(塩谷立君紹介)(第一八四九号)
教育格差をなくし、すべての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第一八五〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
会計検査院当局者出頭要求に関する件
政府参考人出頭要求に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
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○田中委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
文科省は五月二十七日に、今年度、学校において児童生徒等が受ける放射線量について、「当面、一ミリシーベルト以下を目指す。」こういう方針を打ち出しました。
私は、前回の質疑で、これは四月十四日の学校開始以降の、しかも学校内だけの目標であって、学校外も含めてトータルな子供たちの被曝線量の低減を図る目標を明らかにすべきだと指摘をいたしました。とはいえ、確かに、学校内の放射線量の低減が喫緊の課題であることは言うまでもありません。
文科省がその五月二十七日の「当面の対応について」の中で学校内における線量低減策として具体的に示しておられるのは、校庭の表土の除去、これがほとんど唯一のものになっているわけです。
五月十一日に表土除去の二つの方式を示してから、数えて二カ月ですよ、今。それから、五月二十七日に国がほぼ全額を負担するという財政措置を示して、きょうでちょうど二カ月。それで、今、二カ月たって、福島県内で校庭の表土除去の基準である一マイクロシーベルト毎時というものを超える空間線量を観測した学校が何校あるのか、そして、それぞれの学校の表土の除去はすべて終わったのか。これは事務方の方で結構ですので、お答えいただけますか。
○辰野政府参考人 今年六月初旬に福島県が実施いたしました福島県環境放射線モニタリング調査の結果によりますと、毎時一マイクロシーベルト以上を観測した学校等の数、これは国公私立、保育園等も含めた全体でございますけれども、三百七十二校となっているところでございます。
また、平成二十三年七月十二日現在で、福島県の公立学校において校庭等の土壌処理の国庫補助申請を予定している学校は三百十校ありまして、うち、工事が完了している学校は九十六校、工事中の学校は百十四校、今後工事を予定している学校は百校と把握しているところでございます。
○宮本委員 二カ月たって、まだ、終わったのが三分の一にも満たない九十六校、百校が未着工になっている。一体何をしてきたのかと言わなければならないおくれなんですね。
郡山市では、線量の高かった小学校九校、中学校六校、保育所十三園の計二十八校・園の表土の除去は、四月二十七日から五月二日までの一週間で表土の除去は終えているんですね。二本松市では、六月八日までに、市内小中学校と幼稚園、保育所すべての表土除去を終わっております。
一方で、白河市、須賀川市、南相馬市のように、完了ゼロという市も残されているわけでして、田村市に至っては、申請予定の学校は小学校たった一校なんですけれども、まだ着手さえされていないという状況になっております。
なぜこんなおくれになっているのか。これも事務方、お答えいただけますか。
○辰野政府参考人 土壌処理工事を今後予定している公立学校がある理由といたしましては、一つには、空間線量率の高い学校から順次計画的に今進めている、さらには、工事を授業のない夏休みに集中して行うと計画をしている、このような市町村側の事情によるものでございまして、したがいまして、夏休み明けにはおおむね完了するという見通しであると福島県から聞いているところでございます。
○宮本委員 今、理由を述べられましたね。高いところから順番に、工事は夏休みに、それから、執行する予算について議会の承認をと、三点挙がっているんですけれども、これだって、私が最初文科省に聞いた時点ではつかんでさえいなかったんですよ。すぐにつかんでくれと言って出てきたのがこの三つの理由なんですね。
線量が高い学校を優先するのはもちろんですけれども、一気にすべての工事を発注することだって可能なんです、やろうと思えば。土木関係の職員が足りないと言うんだったら、そういう職員の派遣も検討すべきです。
夏休みに実施というのも、表土の除去は一刻も早くやった方がいいに決まっているんですけれども、しかし、子供が休みに入る前に表土除去を行って土ぼこりが立ったら心配だという声があるとも聞きました。それならば、土ぼこりが立たない工法などの技術的な援助が必要なんです。
議会の承認の問題でいえば、それはもう後でいいんだということを国からきちっと通達すればいいわけですよ。
一刻も早く子供たちをこの放射線から守らなきゃならないわけですから、そういうことを一つ一つつかんで解決しなきゃならないですね。
それで、現場で突き当たっている問題として、はがした表土の処分の当てがはっきりしないということがあるということを聞きました。郡山市が、はがした表土を校庭の片隅に積み上げた。それを校庭に埋めるということに抵抗がある。子供たちがこれから未来にわたって学ぶ学校の校庭に、半減期が例えば三十年という放射性セシウムがずっと埋まったままだというのは、なるほど、父母にとってもそれはちょっと心配だということになるでしょう。
ですからやはり、最終的な処分の場所については国において責任を持ってきちんと決めるから、その暁には改めて掘り出してそこへ運ぶこともできるわけだから、一刻も早く表土を除去して、防水シートにでもくるんで、ひとまず子供たちに影響がないように地中に埋めるんだ、このことを上からはっきり、国から強力なメッセージを出す必要があると思うんです。国がそういうことをはっきり言うべきでありませんか。大臣いかがですか。
○高木国務大臣 校庭から削り取ったいわゆる土を学校外に持っていくことについては、これは、地域、関係者の理解を得ること、さまざまな観点から、現時点では慎重に検討する必要があろうかと思っております。郡山市の事例がその一つの例であります。
この処理については、したがって、学校内において処理をする方法によって線量を下げるという取り組みが進められておりますので、その状況を見ながら、学校内でやるにしても、しっかりした対応を専門家あるいはそういう仕事をされておる方々の協力をいただいてやるということが、まず、しっかりこれを徹底する。
そして、その後どうするのかということになるわけですけれども、これについては、関係省庁としっかり連携をしながら、これはもう大切な問題ですから、引き続き検討をしてまいりたいと思っております。
○宮本委員 郡山も、ついにシートにくるんで埋め始めたというふうに聞きました。だから、ひとまず校庭に置いておくよりは、やはり埋めるというか、子供たちから離さなきゃなりませんから、その先のことはいろいろ難しい問題があることはわかっているんです。しかし、どうするかということはいずれにせよ解決しなきゃならない問題ですから、ですから、どうするかについては責任を持って解決するから、とにかくぐずぐずせずに表土の除去をやれということを言って、上からきちっとやはりそこをチェックしないと進まないということですよ。
私、これは党派を超えた問題だと思うんです。私、これは、最後の一校まで私自身が見きわめるまで追及し続けるということはここで申し上げておきたいと思います。
次に、被災地の学校の再建の問題を聞きたいと思います。
まず、七月十五日の岩手日報によりますと、被災三県で建設予定となっている公立学校四十三カ所の仮設校舎のうち、着工されたのがわずか十二カ所にとどまっており、仮設校舎の使用開始が二学期に間に合わないという報道があるんです。これはなぜここまでおくれているのか。
これはちょっと大臣にお答えいただけますか。
○高木国務大臣 いわゆる仮設校舎の建設についてですけれども、ことしの七月二十六日、これは最新の状況ですけれども、岩手県、宮城県、福島県の三県で公立小中学校における応急仮設校舎の建設予定は四十六カ所ありまして、うち、既に完成もしくは工事に着手しているものは二十三カ所と聞いております。
これは、いまだに工事に着手できないものがあることはまことに遺憾でありますけれども、津波の被害を受けた地域では、安心、安全ないわゆる建設用地の選定に時間を要しておるということも事実でございまして、そういった理由が主なものとしてまだ工事の着手ができていない、このように聞いております。
私どもとしましては、まさにこれは児童生徒の教育環境でございますから、学校設置者の意見をしっかり聞いて、できるだけ早くこれは復旧に努めていきたい、このように今は考えております。
○宮本委員 まことに遺憾と言っていただいても、二学期に間に合わないというような事態は、これは本当にゆゆしい事態ですから、本当に一つ一つなぜそういうおくれになっているのかということもつかんで、その障害を取り除くということをやらないと、やれ、やれと言っているだけでいかないわけですから、しっかりとこれは見きわめていただきたいと思うんです。
それで、私は、東日本の大震災から四カ月となる七月十一日に、宮城県内の私立学校などの状況を見てまいりました。
沿岸部のある幼稚園は、四年ほど前に建てかえたばかりの園舎の中に汚泥や瓦れきが流れ込んできたと。幸い、建てかえや大規模な復旧が必要となるような被害はなかったんです。しかし、園児七人と教員一人が津波にのまれ園内で亡くなるという痛ましい犠牲が出たわけです。子供や保護者の気持ちを考えれば、また、子供たちの安全を考えれば、とても同じ場所で再開はできない。これは当然の判断だろうと思います。
その場合、これまでの原形復旧の考えでいきますと、つまり、同じ場所で同規模の建物をつくるという原則で対応すると対応できないわけですよ。理事長さんや園長さんらは、避難先で幼稚園の本格的な再開を心待ちにしている子供や保護者、幼稚園が大好きだった亡くなった子供たちのためにも、新しい場所での本格的な再開を、こういう思いを強く持っておられ、新たな園舎のための費用をどう工面するかと、これで悩んでおられました。
今回の大震災から学校施設の復旧復興を考えるならば、公立であっても私立であっても、原形復旧をしゃくし定規に当てはめるべきではないと私は思うんですけれども、大臣いかがですか。
○高木国務大臣 これは、津波によって、とりわけ幼稚園など私立の学校では大変な被害を受けておることは承知いたしておりまして、特に、高台移転なども必要なことが考えられております。
そういう復旧計画というのは、地域全体のこれは復興計画とも密接にかかわっておりますので、具体的な学校のあるいは幼稚園の再建計画の検討には、やはり若干時間を要するものと考えております。
そういった意味でも、関係省庁とも連携をとりながら、自治体の意向、そして学校法人経営者の要望をいただいておりますし、国会でもそういう議論があっておりますことを踏まえて、今後の補正予算において対応するように努力をしてまいりたいと思います。
また、いわゆる防災機能を新たにつけたという整備、原形復旧が原則である災害復旧事業として行うことは難しいものがございます。そういう意味では、今後、学校施設の教育機能だけではなくて、防災拠点としての整備を進めていくことが必要であろうかと思っておりまして、今後の補正予算の中身を含めて、対応してまいりたいと思います。
○宮本委員 三次補正で検討されるということだと思うんですけれども、そもそも原形復旧にこだわるというのは、僕はどう考えても道理がないということを申し上げたいんです。
大きな被害が出た学校は、いわば、今までの場所は危険な場所だったということが今度の大災害で証明されたようなものなんですよ。やはりもう少し高い場所でというのは自然な考えでありますし、それから、同じ場所で建てるとすれば、今まで二階建てだったものを今度は三階建てにと、これまで以上に強固なあるいは高い建物にしなければ、同じ場所で建てるとしたって、不安が残るわけです。
だから、原形復旧ということにこだわるということは、同じ危険な場所に同じような危険な建物をもう一度建てなさいと言っているような話であって、これはこだわる理由がない。
だから、今大臣おっしゃったように、一つは、高台へ移す場合に、この仕組みが当てはまらなければ、別の仕組みを活用して同じような支援がきちっとできるようにするとか、あるいは、同じ場所で建てかえる場合でも、防災機能をより強固にする場合には、それにもきちっと同じだけの支援率で支援できるようにと、これを三次補正でしっかり検討する必要があると思うんですけれども、再度、これは三次補正の検討事項でよろしいですね。
○高木国務大臣 その辺についても検討してまいりたいと思います。
○宮本委員 次に、私学における二重ローンの問題、これを聞きたいんです。
本会議でも私取り上げましたけれども、被災地では、マイナスからではなく、せめてゼロからの出発をというのが強い願いです。それは私立学校も同じ思いですね。
先ほど紹介した幼稚園の理事長も、生活の手段を失い、前の建物の借金が残ったままでは、新たに低利で融資を受けられますよと言われても、借りようという気にならない、こう話しておられました。
学校法人が抱える二重ローン、要するに、まだ前の債務が残っている、そこで被災した、新たに幾ら低利や無利子やということで貸してくれても、前の分が非常に重い。こういうことについてこれをどう解消するのか。
これは大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○高木国務大臣 御指摘のように、日本私立学校振興・共済事業団の融資については、現在既に借りている債務の返済を猶予する、また、新たな貸し付けについては、五年間の無利子とその後二十年で長期の低利の融資を実施しておりまして、その融資条件についても従来より緩和する、そういう弾力的な対応をしております。
この私立学校の復旧につきましては、融資のみに頼らざるを得ない一般の事業者とは異なって、まず一つに、激甚災害法に基づく施設災害復旧費の補助、二つ目には、教育研究活動の復旧のための経常費補助、これを行っておりまして、当面、自己資金がなくとも復旧に当たれるように、これは第一次補正予算で措置をしておるところです。
なお、この津波によって高台などに移転をせざるを得ないほどの甚大な被害を受けた私立の幼稚園等につきましては、今、関係者とも連携をして、自治体の意向もしっかり聞いて、また、学校法人そのものの要望も聞いて、できるだけ早期復旧ができますように、これまた第三次補正予算になるでしょう、そういうことの対応も含めて努力をしてまいりたいと思っております。
○宮本委員 相当被害甚大で、負担も重いんですよ。
ある私立の学校の状況、これも私は行ってきたんですが、この学校は、教室や図書館、保健室などが入っていた三階建ての校舎一棟全体が、液状化によって最大で一メートル沈下した。現場を見てきましたけれども、ぐんと沈んでいるわけですね。それで、校舎内を見せていただいたんですけれども、最も被害の大きかった一階は、窓枠がゆがみ、教室の床は中央部分が十センチ近くせり上がって、床全体がドームのように大きく変形しておりました。二階にある他校舎へ通じる渡り廊下は、この校舎の沈下に伴って十五センチぐらい段差が生じているという状況でありました。
使えなくなったこの校舎に加えて、その以前にあった耐震補強工事費の残金約四千万、排水関係の工事が一千三百万、昨年の猛暑の影響でかえたばかりの冷暖房機の費用が一千万、計六千三百万がこの校舎に関してまだ借金が残っていると。学校関係者は、この使えなくなった校舎の再建も含めて、少なくとも十億円の資金が今後必要になるという話でありました。
それで、なるほど、今おっしゃった私学事業団の融資というのが低利であるとか無利子であるとか、一般の金融機関よりも有利であることはわかっているんですよ、平時においては有利であることは。ところが、今、二重ローンの解消という形で全体として議論されているのは、例えば、我が党も昨日緊急提言を出しましたけれども、やはり返済できる範囲で返済するということで、一定これまでの借金については債務を免除するという中身が入っているわけです。
自公から提案されている二重ローン解消策を見ても、要するに、残金を含めて返せる範囲でやはり返せるようにしていくということで、前の借金はずっと残り続けるというスキームになっていないわけですよ。政府もそういう方向を検討しているというふうに聞きました。
少なくとも、そういう二重ローンの解消ということが議論になっているときに、それは、中小企業や農協や漁協を支えることは非常に大事ですけれども、そもそも、私立学校というのはもうけのためにやっているものじゃないわけですから、そういう学校の以前の債務についてきちっとその荷をしっかり配慮する、二重ローンの解消に対策をとる、これは必要だと思うんですけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○高木国務大臣 二重ローンの問題につきましては、この震災を踏まえてこれまでの国会でもかなり大きな議論になっておりまして、各政党、会派においてもそれぞれの提言も出されております。
まさに、政府全体としてこの二重ローンの問題は重要な案件の一つでございますから、しっかり期待にこたえられるものは何かというものを含めて、検討されるべきものと思っております。
○宮本委員 最後に、歴史教科書の年表の丸写しの問題について聞きたいと思います。
ことし検定に合格した自由社版の「新編新しい歴史教科書」の年表が、東京書籍の「新しい社会 歴史」二〇〇二年度版からの丸写し、盗用だという報道がなされました。きょうは資料におつけをいたしました。資料一を見てください。
歴史教科書に付された歴史年表ですけれども、東京書籍「新しい社会 歴史」二〇〇二年度版が左、そして右が、ことし検定に合格した自由社版「新編新しい歴史教科書」に付された年表です。「採集や狩りによって生活する」から始まって、「稲作、金属器の使用が始まる」、「銅鏡 銅剣 銅鐸 銅矛」、並び方も全部一緒。「六四五 大化の改新」、「公地・公民の制」そして「改新政治が進展する」に至るまでぴったり同じ。
調べてみたら、この後もずっと続いて、「一九九七 アイヌ文化振興法制定」までの百八十項目余りで出来事の選択がぴったり一致。うち、九項目を除いてはすべて表現まで一致しております。
これは明白な丸写し、つまり盗作、盗用ではありませんか。これは事務方、いかがですか。
○山中政府参考人 委員御指摘の自由社の歴史教科書の年表、これが、ほかの社、東京書籍の教科書の年表とほぼ一致しているということで報告を受けております。
自由社としても、この年表がほぼ引き写しであるということを認めて、編集物の著作権を侵害する行為に当たるということで、相手方である東京書籍の方に謝罪するとともに、対応しているというふうに聞いております。
○宮本委員 盗用をこれは認めているんですね。
資料二を見てください。わび状をつけておきました。自由社の教科書編集室長名で、「新編新しい歴史教科書」の年表の日本史部分が、株式会社東京書籍様発行の平成十四年使用版「新しい社会 歴史」の年表のほぼ引き写しであることが判明いたしました。これは、編集著作権を侵害する行為であり、東京書籍様には大変申しわけなく、先日弊社社長が同社を訪問陳謝したと書かれてあります。
まず私があきれるのは、この盗用が二〇〇八年度、二〇一〇年度と二回の教科書検定で発見されず、今回、市民団体によって発見されたということなんです。項目も同じ、表現もほぼ同じ、体裁まで似通っておる。真剣に見れば、だれでも盗用の疑いを持つはずです。一体、教科書調査官や教科用図書検定審議会は何を見てきたのか。これはいかがですか。
○山中政府参考人 教科書の検定は、指導要領等に基づきまして、審議会の方で学術的、専門的な審議を経ながら、その具体的な申請図書の記述について、学問的な成果とか適切な資料、そういうものに照らして欠陥を指摘するということで行っているものでございます。
この年表についての記述も、そういう正確性とか、そういうところをチェックするわけでございますけれども、まず、教科書に使う著作物といいますか、各著作者が著作権を侵害しないということをしっかりやらなきゃならないし、また、それを載せる出版社の方も、そういうことを著作者の方にしっかりと注意するというか、これは著作権法の侵害ということになりますので、そういうことをしないように十分注意しながら今までも教科書の編集もしてきた、あるいは著作もしてきたというふうに思っております。
まず、教科書に掲載いたします著作物の権利関係、これはもうまさに、モラルというよりも法律を守るということでございますので、執筆者、それから、それを掲載して出版する出版社においてしっかりとこれは注意してやっていくということで、審議会の方が記述についてしっかりと審査はいたしますけれども、そこの権利関係のあたり、例えば写真を教科書に掲載する場合、そのもとの写真の著作権の処理をしておくとか、そういうことは、当然、出版社の方でまず一義的に処理すべきものだというふうに考えております。
○宮本委員 前例があるかと聞いたんですけれども、記憶の範囲では前例はないというふうに聞きました。
それで、入学試験で例えば不正が発覚すれば、他人の答案を一部でも丸写しすれば、これは合格は取り消されます。その部分を訂正します、そんな話は通りませんね。競争的資金が出ている研究で論文の盗用事件ということが起これば、競争的資金の打ち切り、申請の不採択、資金の返還、資金の申請制限が行われる、こういうことになっています。
研究活動の不正行為の対応ガイドラインを定めた特別委員会報告書では、「不正行為に対する基本姿勢」として、「不正行為は、科学そのものに対する背信行為。研究費の多寡や出所の如何を問わず絶対に許されない。研究者の科学者としての存在意義を自ら否定するものであり、自己破壊につながるもの。研究者及び研究者コミュニティは、不正行為に対して厳しい姿勢で臨むべき。」だとしております。
そして、このガイドラインでは、論文の盗用など不正行為を行った者はもちろんですけれども、たとえ不正行為に関与したとまでは認定されなくとも、その不正行為があったと認定された研究に係る論文等の内容について責任を負う者として認定された著者は、認定年度の翌年度以降一年から三年の間は競争的資金の申請すら制限されるというのが、これは当たり前の学界の常識なんです。真理と正義を最も重んずるべき学術研究、教育の分野で論文の盗用などというのは、これくらい厳しく処断されるべき問題なんです。
自由社は盗用をはっきり認めております。わび状を出しております。それにもかかわらず、この教科書はお構いなし、合格のままでいいんですか。
○高木国務大臣 御指摘の点につきましては、当事者である自由社と東京書籍の間で話し合い、一定の合意がなされておると報告を得ております。
この問題については、一義的には当該教科書の発行者が適切に管理すべきものである、このように考えております。
○宮本委員 少なくとも、よいことではない、望ましい問題ではない、そういう認識は持っておられますね。
○高木国務大臣 このような文書が出ておるとおりでございます。
○宮本委員 そもそも、わびて済むような問題ではないと私は思うんです。
それで、育鵬社の教科書においても、図版の盗用があるのではとの指摘が既に出されております。私も見てみましたけれども、色遣いまでそっくりな資料が育鵬社の教科書にも見られました。同じ時期に検定を受けた教科書ならたまたまということがあるでしょうが、以前出た教科書と初めて出てきた教科書が似通っているというのは、いかにも問題があると言わなければなりません。
盗用などという行為は、真理と公正を最も尊重すべき教育の現場にあってはならないものです。不正があっても後から訂正すれば許されるというようなことが、子供たちが使う教科書において許されてよいはずはありません。
最後に申し上げますけれども、そもそも自由社や育鵬社の教科書は、太平洋戦争を自存自衛の戦争と描くなど、侵略戦争を美化する内容になっております。侵略戦争と植民地支配への反省と、その誤りや清算は戦後の日本社会の出発点であり、国際社会の一員としての絶対条件ともいうべきものでありまして、それを否定する教科書を検定合格という形で認めた政府の責任は重大だと言わなければなりません。日本の過去の誤りと誠実に向き合い、その反省の上に平和と民主主義を理念とする憲法があることを学ぶことは、子供たちが主権者として育つために不可欠だと思います。
我が党は、歴史教科書問題を初め侵略戦争美化の風潮を克服するために、広範な国民とともに力を尽くすことを申し上げて、私の質問を終わります。