平成二十三年六月十六日(木曜日)
午前十時開会
─────────────
委員の異動
五月三十一日
辞任 補欠選任
古川 俊治君 石井 浩郎君
六月六日
辞任 補欠選任
石井 浩郎君 藤川 政人君
六月七日
辞任 補欠選任
藤川 政人君 石井 浩郎君
六月十三日
辞任 補欠選任
石井 浩郎君 溝手 顕正君
六月十四日
辞任 補欠選任
斎藤 嘉隆君 蓮 舫君
溝手 顕正君 石井 浩郎君
六月十五日
辞任 補欠選任
横峯 良郎君 友近 聡朗君
蓮 舫君 斎藤 嘉隆君
熊谷 大君 宇都 隆史君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 二之湯 智君
理 事
神本美恵子君
藤谷 光信君
橋本 聖子君
水落 敏栄君
委 員
大島九州男君
斎藤 嘉隆君
鈴木 寛君
谷 亮子君
友近 聡朗君
林 久美子君
水岡 俊一君
石井 浩郎君
宇都 隆史君
上野 通子君
義家 弘介君
草川 昭三君
西田 実仁君
江口 克彦君
衆議院議員
発議者 奥村 展三君
発議者 田島 一成君
発議者 遠藤 利明君
発議者 馳 浩君
発議者 富田 茂之君
発議者 宮本 岳志君
国務大臣
文部科学大臣 高木 義明君
副大臣
文部科学副大臣 鈴木 寛君
大臣政務官
文部科学大臣政
務官 林 久美子君
経済産業大臣政
務官 中山 義活君
事務局側
常任委員会専門
員 古賀 保之君
政府参考人
内閣府経済社会
総合研究所総括
政策研究官 市川 正樹君
総務大臣官房審
議官 滝本 純生君
文部科学省スポ
ーツ・青少年局
長 布村 幸彦君
厚生労働大臣官
房審議官 唐澤 剛君
厚生労働省社会
・援護局障害保
健福祉部長 木倉 敬之君
観光庁観光地域
振興部長 田端 浩君
─────────────
本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○教育、文化、スポーツ、学術及び科学技術に関
する調査
(スポーツの基本施策に関する件)
(派遣委員の報告)
○スポーツ基本法案(衆議院提出)
─────────────
○橋本聖子君 自由民主党の橋本聖子でございます。
午前中の文教科学委員会スポーツ施策集中審議にも立たせていただきましたけれども、引き続いてこのスポーツ基本法案の質問をさせていただきたいと思います。
まず初めに、大臣、副大臣、もうお立ちでありますけれども、本当に感謝を申し上げたいというふうに思います。特に、超党派のスポーツ議員連盟の皆様方、今日は発議者としてここに出席をしていただいております衆議院の先生方に深く感謝を申し上げたいと思います。
私たちスポーツ界で生きていくものといたしましては、このスポーツ基本法、五十年ぶりの改正、そして前身であります大日本体育協会発足から百年というちょうどこの節目に、五十年、百年のこの歴史の節目にスポーツ基本法が改正をされるということを、本当に意義深く、そしてまた、これから身を引き締めて、スポーツ界もこのスポーツ基本法というものを皮切りに、一歩二歩、二十一世紀のスポーツというものを見据えていかなければいけないというふうに改めて思っているところであります。
この基本法は、二〇〇九年七月に自公で初めて提出させていただいたということですけれども、直後の解散・総選挙で廃案になり、いろいろなことを繰り返され、紆余曲折ありながらも、今日、このように審議をさせていただけるということを本当に敬意と感謝を申し上げながら、今日は四十分間お話しさせていただきたいというふうに思います。
嘉納治五郎先生がおっしゃっておりました、国の盛衰は国民の精神が充実しているか否かにより、国民の精神の充実度は体力に大きく関係するということであります。今、この国の盛衰というところを国民の意識、福祉というふうに読み替えるのであれば、もっと今の国民の皆さんには理解していただける。そして、スポーツというものが国を挙げて国家戦略としてしっかりとした政策を推進していくことこそが、福祉や医療や、あるいは教育、人づくり、こういったものにつながっていくんだということが今求められているもの、だからこそ、このスポーツ基本法の改正がもうすぐ成立されるものではないかというふうに思っているのでありますが、改めて遠藤先生にまずお伺いをしたいというふうに思います。
スポーツ立国を目指し、国家戦略として、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定するというふうにあります。改めて、このスポーツ基本法を提案された中心である遠藤先生に、スポーツのこの国における理念というものを是非お聞かせいただきたいと思います。
○衆議院議員(遠藤利明君) 大変御懇篤なお話いただきましたが、平成十九年の十二月に、超党派の議員連盟でありますスポーツ議員連盟、この中に、当初はスポーツ振興法制定プロジェクトチームと、こういうものをつくらせていただいて、橋本先生にも当初から御参加をいただき、そして多くの皆さんに御議論をいただきました。今回こうしてようやく三年数か月ぶりにまとまって、この法案が衆議院で全会一致で可決できたと、そして今日こうして参議院で審議をいただいていると、大変感激をしております。
この法案が日本のスポーツ振興に、そしてまた世界の中の日本という位置付け、あるいは世界貢献等に大きく寄与されることを大変期待しておりますし、先生方のお力添えをいただいてこの法案を是非成立させていただきたいと改めてお願いを申し上げる次第であります。
先ほど来、谷先生等からもお話ありましたように、医療費の削減効果とか、あるいは経済的な効果とかありますし、例えばコミュニケーション能力、そしてリーダーシップの育成などの青少年に対する健全な発達に資する、また地域の一体化、今希薄化しておりますが、そうした一体化をつくること、あるいはスポーツビジネスなんかも大変大きなものになってきておりますし、また、先ほど言いましたスポーツの国際交流あるいは貢献、そうしたことによって世界の人々との相互理解を促進できること、また国際的な友好とかあるいは親善に資すると。そして、国際競技大会等で、これは橋本先生や谷先生まさにそうでありますが、青少年に対する憧れをつくると、そしてそれによって国民が一体となると、こうした大きな効用をスポーツが持っていると思っております。
先ほどの友近先生のマンデラのことではありませんが、まさに国がスポーツに通じて一体化できる、その実は大きな力をスポーツが持っていると。こうしたスポーツの効用、役割を是非このスポーツ基本法の成立によってなお一層進めていきたいと思っております。
○橋本聖子君 ありがとうございます。
今、遠藤先生からお話がありました世界貢献、社会貢献、そしてスポーツはスポーツにとどまらない力を今こそ発揮しなければいけない。これは、国際社会においてスポーツがいかに重要であるかという話でありますが、そのためにはやはり、日本におけるスポーツ、特に国際大会等の誘致というのがやはり経済的な発展を遂げるにいたしましても非常に、子供たちへの本物を見せるという教育についても重要なものなんだというふうに思っているわけですけれども。
そこで、先生が考えますこれからのスポーツの外交というもの、このスポーツ外交というのは日々の努力が必要でありまして、誘致をしたからその誘致に対してどうするかというのではなくて、日々のやはり国を挙げたスポーツ外交というものを政府がしっかりと支えながら努力していかなければ実になるものではないというふうに思っているんですが、今後、これからこのスポーツ基本法が成立をされた後に、スポーツ外交というものが今国はどのようにしていかなければいけないのかというお考えを是非お聞かせいただきたいと思います。
○衆議院議員(遠藤利明君) 二〇一六年の東京オリンピック、パラリンピックの招致のときに、私たちは、日本という国がこのことによって盛り上がるとか一体感ができるとかアスリートの強化ができると、いろんな思いがあったんですが、ある方に言われてはっとしたのは、二〇一六年に東京オリンピック、パラリンピックが決まれば、世界のアスリートは、あるいは世界のスポーツ関係者はそれまでの何年間ずっと日本を向いていますよ、事あるたびに日本に訪れますよと。ですから、これは単なる日本という国だけのものではなくて、世界が日本の存在を認める、日本を注視すると、大きな効用がありますと言われて大変心を新たにした覚えがあります。
やっぱりスポーツ選手の存在、先ほど来申し上げましたように橋本先生あるいは谷先生、メダリストでありますが、かつてこうした議論をしたときに、例えば柔道の山下選手をロシアの大使にしたらどうだろう、プーチンは必ず会ってくれると。大使の一番の大きな仕事はその国の元首に会うことだと、あとは公使等でやればいいと。例えば、元気であったら王選手をキューバの大使になってもらったらどうかと、こんな議論もありました。なまじっかなどと言うと申し訳ありませんが、キャリアのもちろん外交官、キャリアのそうした能力ある人ももちろん大事ですが、スポーツ選手の持つ力というのは大変大きなものがあります。
海外から日本にそうした皆さん方が、スポーツの選手が訪れると、マスコミを含めて大変な注目、注視をされると。ですから、そういう意味で、このスポーツの国際貢献、そのためにこうして招致をする、さっきのラグビーのワールドカップもそうですし、サッカーも残念ながらワールドカップ招致は前回敗れましたが、そうした各種の大会を通じて招致をし、そして開催をして、それに伴って国際的な貢献、国際的な交流をしていく。そういう意味でも大変大きなものがありますし、私たちもそうした人材をしっかり育成していかなきゃならない。残念ながら、間もなくですか、IOCから日本の委員がいなくなります。多分来年にはまた復活をできるんでないかと期待をしておりますが、そうした国際的な活動をする人材の育成が若干日本では遅れているんだと思っております。
今、鈴木副大臣がWADAの常任理事をされていらっしゃいますが、私もかつてさせていただいたときに、海外の皆さん方は大体四、五年ぐらい同じポストを務めますから、最初から議論がもう会った瞬間から進んでいきます。日本は毎年ぐらいずつ替わっていきますからなかなか進まないと。そういう意味では、こういう国際大会の招致、開催とともに、そうした世界にスポーツの人材をしっかり育成していく、こういうことに是非これからも我々は取り組んでいかなきゃならないと思っております。
○橋本聖子君 政治という形の中で行きますとちょっと引かれてしまうところがあるんですけれど、政治家として出て行くと。元オリンピックアスリート、スケート連盟会長というとすんなり受け入れていただけるという、不思議なスポーツには力があるのかなということを私もここ何度か経験をさせていただきました。
外務副大臣を経験させていただきましたけれども、中東担当、そして東南アジアもそうですけれども、アフリカの担当でありました。そのときにスポーツの話で盛り上がって会談時間が長くなるということがよくあったんですけれども、さすがにそういった意味においては、国としてやはりスポーツの持つ力をもっといい意味で利用するべきなんだろうなということを改めて感じて、また、外務省と、そして文科省もしっかりとそういう意味では連携を日ごろから取っていくということ、これが誘致活動にもつながっていくんではないのかなということを思いました。
そしてもう一つは、やはりIOCのメンバーも含めてですけれども、これはやはり各国はもちろんですけれども、この日本が一番遅れているところは、各連盟が国際連盟に対して人を送り込むことの力が不足している。それはやはり、これは各連盟が努力をしていることはもちろんなんですけれども、それだけではなくて、政府がやはりここは人材育成のためにもこれからの国際社会におけるスポーツの在り方、あるべき姿をつくり上げていくためにも、この人材育成というものが必要であるからこそ世界に向かって各連盟に人材育成をするというその強化施策、これをまずしっかりとやっていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
また、そのスポーツの中で、十九条、国際交流、貢献盛り込んだことというのは非常にすばらしいことだというふうに思っております。我が国のスポーツ戦略としては本当に第一歩なんだろうというふうに思っているところなんですけれども、特にスポーツを通じた環境ですとかあるいはジェンダー、もう常に付き物であります。そして、貧困や教育、こういった国際貢献を実現するということに関しまして、特に環境ということを取り入れたということには大変大きな意味があるというふうに思いますけれども、これについて、大変日ごろからお力をいただいておりまして、宮本先生、是非、御所見をお伺いしたいと思います。
○衆議院議員(宮本岳志君) 大変高名なオリンピックメダリストでもあります橋本聖子先生に御質問いただきまして、大変光栄に思っております。
先生御案内のとおり、オリンピック憲章には、環境問題に関心を持ち、啓発と実践を通してその責任を果たすとともに、スポーツ界において、特にオリンピック競技大会開催について持続可能な開発を促進することと明記をされております。
また、衆議院文部科学委員会に参考人として御出席いただいた日本オリンピック委員会JOCの河野一郎理事からも、やはりスポーツは環境をしっかり十分に考えなければならない、オリンピック招致に当たっても、環境というのは非常に重要なテーマだとの御意見も出されました。
近年、地球環境保全の重要性の認識が高まり、スポーツにおける環境保全への留意は世界の流れとなっております。
そこで、スポーツの推進に関する基本を定める本法案にも地球環境の保全の考え方を取り入れ、十九条におきまして、国及び地方公共団体が、国際相互理解の増進及び国際平和に寄与するよう努める際の環境保全への留意、さらには二十七条におきまして、国が国際競技大会の我が国への招致又はその開催が円滑になされるよう必要な特別の措置を講ずる際の環境の保全への留意を明記したところでございます。
以上、お答えでございます。
○橋本聖子君 ありがとうございます。
IOCはもちろんでありますけれども、各国のNOCは既に環境委員会をしっかりと設立して、そして各大会での環境問題、あるいは環境への配慮、取組、こういうことを促しているわけでありまして、これはやはり国がしっかりとした形の中で指導もしていく、そしてそれを支援していく、これは重要なことだと思います。これは一つの教育にもつながっていきますので、是非お願いいたします。
もう本当に、環境でいいますと、私たちウインタースポーツは雪が少なくなり、そして氷は解けてしまうというような、今、そうですね、世界的にも、北海道でも天然のリンクというのはほとんどできなくなりました。そういったことによって、底辺の拡大が非常になされづらくなっているんですね。人工の氷でなければいけないということで、もう拠点が少なくなっている。
今回の大震災におきましても、今は八戸のリンクに頼っている状況です、東北は。下はずっともう、メッカであります仙台のリンクもいつ復活できるか分からない、そして、ずっと、福島もそうですけれども、茨城、栃木もですね。そういったところを考えると、今フィギュアスケートの会場となりますと、東北地方においては青森に今頼っているような状況で、今エネルギー問題があります。そういうことを考えますと、市が運営、そしてまた県が運営している施設がほとんどなんですね。今回の震災によりまして、国が三分の二、あるいは二分の一補助を出していただけるというような状況ではあっても、どうしても自治体が裏負担ができない状況にあって、エネルギーを一番使うと言われる氷づくりのスケートリンクは一番後になってしまっているというような現状が今実際に起きておりますので、是非そういうところにも配慮をしていただきたいなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、トップアスリートのキャリアの形成というところで質問させていただきたいというふうに思いますけれども、今世界の強豪国というのは、選手やコーチというのがもうフルタイム化しております。いわゆるもう職業というような状況なんですけれども、トップアスリートの高年齢化というのも進んでおりまして、競技に打ち込んでいる期間はもちろんですけれども、引退後に関しても不安を感じない、そして競技に専念できるというようなシステムがもう今早急に求められている課題なんでありますが、イギリスの文化スポーツ省、ここにはTASSというシステムがありますね。タレンティッド・アスリート・スカラシップ・スキームということで、これはアスリートのデュアルキャリア、よく日本はセカンドキャリアと言っているんですけど、世界はもうデュアルなんですね、デュアルキャリアでなければいけないと。競技と就学機会というものの形成を、これは社会が仕組みを構築していくことにしなければいけないということで、イギリスなんかはそういうシステムをしっかりともう導入されているわけなんですけれども。
今まで我が国というのは、競技スポーツは企業におんぶにだっこだったというふうに思います。その中で、これからこういった法案が成立することによってTASSのような仕組み、あるいは、これから日本が更に強くなるには、やはりまた企業にもしっかりと恩恵が被るような施策でなければいけないというふうにも思うんですけれども、そういった選手やコーチや、あるいは所属する企業に対してどのような支援策がこれから望ましいと思われるのか、富田先生にお聞きしてよろしいでしょうか。
○衆議院議員(富田茂之君) 先生が今御指摘のデュアルキャリア形成、またリアルキャリアですか、TASSのような制度というのは本当に必要だと思います。我々提案者の間でも何度もそういう議論もいたしました。
実は、今年五月二十七日の衆議院の文部科学委員会参考人質疑におきまして、学校法人了徳寺大学、また了徳寺学園、それぞれの理事長を務められる了徳寺健二さんが、自らの大学、学園で柔道のメダリストを育成する過程で、ほとんどの選手を大学院に進学させ支援したり、医療資格を取らせて独立できるように支援してきたと、そういう経験を踏まえて、このように言われていました。例えば、国際大会あるいは国内大会で勝った、あるいは成績でもって点数制をつくって、ある点数を超えた選手たちは優先的に教育の現場に入れるような体制を是非おつくりいただきたい、そうすれば選手たちはまた非常に安心して競技活動が続けられるというふうに陳述をされました。
この点、我々国会議員に突き付けられた宿題ではないかと思いますし、先ほど鈴木副大臣の方からも友近先生の質問に対して、こういう巡回指導とか体育の授業等の支援等、ここにしっかり予算を付けて、選手が安心して競技に打ち込めるようにという御指摘もありました。我々、各党一緒になって、そういった支援システムを是非つくっていきたいというふうに思っております。
○橋本聖子君 午前中、副大臣からも力強いお話いただきました税制の優遇ですとか、やはり企業がスポーツというものにより一層参加がしやすい、そしてまた、そこに更にその輪が広がっていくようなシステム、そういうものをよくアスリートファーストというふうに言いますけれども、やはり地域の活性化につながるようなスポーツ施策というもの、企業の発展につながるスポーツ施策というもの、これをしっかりと配慮してあげるということがより一層スポーツというもののやはり垣根を越えた中での広がりにつながっていくんだというふうに思いますので、是非企業への支援というのは惜しみなくよろしくお願いをしたいというふうに思います。
そこで、今、富田先生からもお話がありましたけれども、この法案においては、国民が地域や学校において安全で豊かなスポーツ環境を得るためには、知識と技能を備えた指導者を国や地方自治体が責任を持って養成するとされていますけれども、養成された指導者がスポーツ指導者として自立した社会生活を営めるには、やはり身分保障、そういったものが必要になってくるのではないかというふうに思いますが、この点についてどのように考えますか。
○衆議院議員(富田茂之君) 先生御指摘のように、国民が身近にスポーツに親しむことができるようにするためには、スポーツ指導者がその能力を十分に発揮して、全国各地域で活躍できる環境を構築していくことが重要だというふうに我々も考えています。
それを受けまして、実は法案の第二十五条の第二項に、国は、優秀なスポーツ選手及び指導者等が、生涯にわたりその有する能力を幅広く社会に生かすことができるよう、社会の各分野でできる知識及び技能の習得に対する支援並びに活躍できる環境の整備の促進その他必要な施策を講ずるものとするという規定を設けさせていただきました。これはまさに先生と同様の考えに基づくものであるというふうに我々は考えております。
○橋本聖子君 そのとおりなんですが、なかなか国が指導しながらしっかりとした支援策をしてあげない限り、その部分は、法案で書き込まれても実際にするとなると大変な難しい問題も出てくると思います。それにはやはり、各スポーツ界がその支援を受けながらしっかりとしたキャリア教育というものも同時にこれは努力していかなければいけないことであるのは当然なんですけれども、その部分の連携をこれからこの法案を機にしっかりとやっていきたいというふうに思いますので、是非よろしくお願いを申し上げます。
次に、障害者スポーツ、先ほどから谷先生が質問をしていただきました。午前中、私もこの問題については少し取り上げさせていただいたんですけれども、障害者スポーツを盛り込んでいただいた、これはもう本当に当然のことといいますか、世界は、オリンピック・パラリンピック委員会でありますから、招致委員会も含めて、オリンピックとパラリンピックはもう一体のものということであります。
ただ、一つ確認をしていきたいところがあるんですけれども、この二条における障害者というのは知的障害者も含まれているということの認識でよろしいですね。
○衆議院議員(馳浩君) 御指摘のとおりです。
○橋本聖子君 私自身のことで恐縮なんですけれども、日本知的障害者陸上競技連盟の会長を務めさせていただいております。知的障害者の陸上競技連盟、これはスペシャルオリンピックスというものに向かって頑張っている選手がたくさんいます。各施設で、授産施設などで働きながら、一生懸命にスポーツを取り入れることによってその授産施設の作業の発展につながっていくですとか、そこに福祉とスポーツと医療というものがもう結び付いているというような地域の実態があるわけなんですね。私は、そのスペシャルオリンピックに向かっていく知的障害者の選手、陸上選手の支援の一人でもあるわけなんですけれども。
そういう中で、スペシャルオリンピックスというのを少し御紹介をさせていただきたいんですけれども、これはIOCが承認をしているオリンピックの一つであります。御存じのように、一つは近代オリンピックです。そしてもう一つはジュニアのオリンピック、ユースオリンピックですね。そしてもう一つがスペシャルオリンピックス、これがIOC、スイスのジュネーブで承認をされました。元々、ケネディ家の財団が始めたこのスペシャルオリンピック、アメリカが発祥でありますけれども、オリンピックのロゴを使わせていただけるということでは知的障害者のオリンピックというものは本当に世界が認めるすばらしいものだと私は思って支援をさせていただいているんですけれども。今年もイタリアで九月から十月にかけまして障害者のグローバル大会という、これはINAS、国際知的障害者スポーツ連盟が主催となって、二年に一度の大会があります。
そういうことを考えたときに、是非、障害者の中にも、やはり知的障害というものも大事なスポーツの一翼を担っていただいているんだということを認識をいただきたいというふうに思いますが、改めて馳先生、どのようにお考えでしょうか。
○衆議院議員(馳浩君) ちょうど今日、衆議院で障害者基本法が全会一致で成立しましたけれども、法案にもございますとおり、障害者という言葉の定義は身体障害者、精神障害者、知的障害者ということで、障害者の方々が、今まではどちらかというとリハビリとか健康のためのスポーツという認識が国民の間にも多くございましたが、そうではなくて、障害者の方もスポーツを楽しむ、精神障害者も知的障害者も身体障害者もそれを楽しむ環境を整えていく、そのための施設も指導者も国も自治体も支援をしていくということが今回のスポーツ基本法で明確に明示されたことが、大きなこれまでのスポーツ振興法との違いではないかというふうに考えております。
○橋本聖子君 ありがとうございます。バリアがあるからこそチャンスなんだということを障害者の方はおっしゃいます。私は本当にすばらしいというふうにいつも感銘を受けているわけなんですけれども、この知的障害、そしてまた身体障害、全てがやはりスポーツを目標にすることによってその障害を乗り越えて、そしてすばらしい全人格的形成をされているという姿がこのスペシャルオリンピックにもパラリンピックにも見られますので、是非そこは一体のものとしてこの法案の中には取り上げていただければというふうに思います。
また、午前中も集中審議の中で話をさせていただいたんですが、いま一度確認をさせていただきたいのは、パラリンピックは厚生労働省、そしてスペシャルもそうだったというふうに思います。その中で、今の文科省のナショナルトレセン、これは障害者が使えないということでいろいろ御指摘がありますけれども、世界としては、世界に目を向けますと、もうパラリンピックの選手のためのナショナルトレーニングセンターというのは必要な時代になりました。
そこの部分については是非お考えいただきたいということと、もう一つは、パラリンピックあるいはスペシャルオリンピックの選手のそういった強化システムを構築する以前に、ふだんから各自治体、各地域で一生懸命に頑張っている車椅子の選手たちが日ごろから身近なところで練習する場所がない、ここから始めなければいけないんですね。いきなりナショナルトレーニングセンターをといっても、これはパラリンピックのトップアスリートに是非そういう機会を与えていただきたい、これは徐々にお願いしたいというふうに思うんですけれども、それ以前に、是非、今回の法案によってスポーツが一体となるんであれば、地域社会において一生懸命に障害を乗り越えて、スポーツを取り入れながら健康体を取り戻したいというふうにして頑張っている方たちのスポーツの施設というものも拡充をしていくということを、これを同時にやっていかなければいけないというふうに思いますが、その点についていかがお考えでしょうか。
○衆議院議員(馳浩君) まず、一点目のナショナルトレーニングセンターで障害者スポーツの方々もトレーニングすることができるようにというのは、一つの考え方であり、これは調整をすればできることだと思っていますし、我々の夢としては、パラリンピックのための、障害者のためのナショナルトレーニングセンターを造ることが一つの夢であるということは言うまでもありません。
二つ目の話ですけれども、やはり小中高校の地域の体育館の施設におけるバリアフリーを進めていくことと、もう一つは、そのためのクラブハウス、これもバリアフリーの施設として整備をしていくことによって、全国津々浦々におられる障害者の皆さんが身近でスポーツを楽しむことのできる、そしてそれを指導することのできる人がいるということが重要な環境整備だというふうに考えています。
○橋本聖子君 ありがとうございます。
今、学校の施設等の話がありました。車椅子のバスケットですと床が傷むので駄目だとかいろいろな規定があって、なかなか環境に難しいところで苦労していますので、その点について今お話がありましたので、学校施設を開放した場合の問題点というところで、宮本先生に、今の点も含めながらお話をお聞かせいただきたいのは、実態に応じて地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育団体等の各種団体との連携などを運営上の工夫を行うようにするということで、十三条に学校施設を一般のスポーツ活動のためにも活用していくということがあります。こういうところに関しては、障害を持った方たちがそういったところを活用させていただくことによりまして、子供たちに大変大きな一つの教育になっていくんじゃないかなというふうにも思いますが、その点を踏まえて御所見をお伺いします。
○衆議院議員(宮本岳志君) お答え申し上げます。
本法案第十三条は、スポーツの推進のための基礎的条件の整備の一環として、学校のスポーツ施設を一般のスポーツのための利用に供することを規定したものでございます。本法案十三条において、一般スポーツへの施設の開放は学校の教育に支障のない限りとの留保が付されているところでございまして、学校においては教育活動が優先されるべきであるのは当然のことだと思っております。
また、学校の部活動も現在教育活動の一環として位置付けられており、この点では一般のスポーツに優先されることになります。しかし、学校の部活動が教育活動にとどまらず、地域スポーツの一環として地域のスポーツ指導者が学校の部活動を指導する例も多数生まれてきております。また、学校教育としての部活動の適切な在り方が議論、検討される中で、地域のスポーツクラブとの関係も出てきているところでございます。
いずれにいたしましても、今後、学校のスポーツ施設の利用の在り方については、学校教育に支障が生じない範囲を前提にしつつ、使用時間の適切化、学校と地域との連携、指導者の位置付け、けがや事故への対策、利用施設や用具の整備、地域環境への配慮、利用者団体の運営の在り方、予算の問題などを検討する必要も生じてくるのではないかと思っております。
そういう中で、先生御指摘の障害を持った人たちへの学校の活用という問題についても大いに議論されるべきではないかと提案者個人は考えているところでございます。
○橋本聖子君 大変に難しい問題、現地、現場では抱えるようになる可能性も高いですけれども、やはり連携が何よりも大事ですので、そこは配慮しながら、是非障害者スポーツというものに対してもお考えを新たに持っていただければというふうに思います。
馳先生にお伺いしたいんですけれども、今この国、医療費が膨れ上がっています。まさにスポーツがこの医療費を削減するために何かを今こそ起こさなければいけないというふうに思っている中で、スポーツ界は今統合医療というものに踏み込もうとしております。西洋も東洋も、そして食、あらゆる観点から、薬を使えない、ドーピングコントロールがありますから、むやみに薬を使えない私たちのスポーツアスリートの体です。そのためには、自然治癒能力あるいは食ということで病気を治す。あらゆる観点から考えていく方策を今取っているところでありますけれども、それをやはり一般の方たちにも広めていくということは、これからこの国としての役割じゃないかなというふうにも思うんですけれども、馳先生がお考えになる統合医療というものの形、お聞かせいただけますか。
○衆議院議員(馳浩君) 二点あると思うんですが、まずアンチドーピング活動と統合医療の関係については、統合医療を進めることがアンチドーピング活動により有効なのかどうかという観点からやっぱり研究がまずされるべきではないかというふうに思っています。法案の第十六条でも、スポーツに関する科学的研究の推進等の中に医学というカテゴリーがありますので、その中においてまず検討されるべきだと思っています。
二点目のことを申し上げれば、統合医療を進めることがいわゆる西洋医療と東洋医療の融合であったり対症療法と原因療法の統合であったりというふうな考え方の中で、スポーツに取り組むことがいわゆる疾病を事前に未然に予防をするという考え方の中で進められていくということはとても有効な考え方だというふうに思っています。日本にも、もう五年ほど前でしょうか、代替医療学会もできて、その検討も始められておりますし、それとスポーツとの関係性もより深められていくべきだというふうに考えています。
○橋本聖子君 スポーツ界こそ今事前予防、あらゆる観点から予防医学というものに積極的に取り組んでいるものだというふうに思いますので、そういうようなところも是非考えに入れていただければ有り難いというふうに思います。
最後になりますけれども、スポーツ庁という話があります。そして、スポーツ界は、このスポーツ庁という設立に向けて悲願達成がもうすぐではないかというふうにも言われておりますけれども、一方で少し不安があります。それは、国が主導になることによって民間の活力というものが失われがちにならないんだろうかと、いま一つスポーツ庁の形がよく分からないというようなことを私たち質問を受けるんですけれども、スポーツ庁というものの理想といいますか、遠藤先生、最後にその形というものを少し見させていただけますでしょうか。
○衆議院議員(遠藤利明君) 当初、スポーツ省にならないかという、皆さん大変御意見がありまして、私もそんなふうに思っておったんですが、こうした行政改革の中で新しい省をつくるのはなかなか難しいと。まず取りあえず、取りあえずというのは恐縮ですが、スタートとしてスポーツ庁でいくかと。それも、なかなか法案に直接書き込むのは難しい。そういうことで、この附則の第三条に書き込みさせていただきました。
ただ、様々なスポーツの組織、現在もこれは羅列しますとかなり複雑になっています。ですから、こういうことを踏まえて、スポーツ庁をどうつくっていくか。縦割り行政とよく言われますが、厚生労働省あるいは経産省そして国交省等多数にまたがっているものがありますから、それを一体的に効率的に運営していく。そういう意味で、スポーツ庁として独立した方がいいと。先ほどの障害者のスポーツもそうですし、あるいは医療を伴わない運動なんて、もう当然健康もそうだと思いますし、そうしたものを一体とやっていく。
ただ、余り、多分一九八〇年のモスクワでのオリンピックに参加しなかったということが、スポーツ界の皆さんにとっての政治との間合いといいますか、この取り方の難しさを感じちゃっていると。トラウマがあるというような感じもいたします。ですから、スポーツ庁というのは本当に国としての基準を作ったり、あるいは国としてのまさに根源的な国のスポーツの形をまず考えると。そして、そこの具体的な施策の実施といいますか、企画立案から、それをもっと下って実施に至っては、まさに民間の皆さん方が中心になって担っていく。
例えば、オーストラリアにスポーツ・コミッションというのがありますが、スポーツ省、何とかスポーツ省とありますが、その下にオーストラリア・スポーツ・コミッションというのがあります。そこが具体的にいろんなスポーツ施策を研究し、開発し、また企画立案をしていく。そして、その中に実施機関として、日本でいえば体協やあるいはJOCやスポーツビジネスや学校体育やと、いろんな組織が連なるといいますか、そこに関連をしてくると。そして、そのスポーツ・コミッションが、例えばアンチドーピングもそうですし、それから情報の収集なんかもここで行うと。ですから、全て国が担うというんじゃなくて、国は本当に根幹的な基準を考え、そして大まかな政策を考えると。それに伴って、そうした次の機関が実際の企画立案、行動、情報収集等を担っていくと、そういうふうな形がふさわしいんではないかと。これはいろいろまだ議論がありますし、これから実際にスポーツ庁をつくる中で皆さん方から大変ないろんな議論をいただき、また役所にも御努力いただいて、まずはシンプルな、そして民間の皆さん方の力が有効に発揮できるような、そんな組織にさせていただければ大変有り難いと思っております。
○橋本聖子君 ありがとうございます。
先生が、最後の方にシンプルというお話がありました。是非、分かりやすいシステムでお願いしたいと思います。そして、そこに一番大事なことは、現場が一番だということであります。強化をするのも現場、そして頑張って成績を上げ、社会貢献、スポーツの国際交流、そういったもの全ては選手が行われているわけでありますので、現場がより一層活発化されるようなスポーツ庁をつくり上げていく、これを是非お約束をいただきたいというふうに思います。
近代オリンピックの前身は古代オリンピック、紀元前七三〇年、そこから千百六十九年も続いているんですね。そこには、スポーツということではなくて全人格的形成をつくり上げるということ、崇高な人間力をつくり上げるということが理念だったというふうに文献には書いてあります。
私たちは、やはり今、このスポーツ基本法というものを通すことによって、そして、よりスポーツというものがすばらしいものにつくり上げていく人材の育成、全てのものにおいてスポーツが基本となるんだというような気概の下でこれから現場は頑張ってやっていきたいというふうに思いますので、是非その点につきましても、これからこのスポーツ基本法によってより人類が健康であり、そして幸福度が高まる、そういう法案になればというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。