平成二十三年六月一日(水曜日)
午前九時三十一分開議
出席委員
委員長 田中眞紀子君
理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君
理事 野木 実君 理事 松崎 哲久君
理事 松宮 勲君 理事 下村 博文君
理事 馳 浩君 理事 池坊 保子君
石井登志郎君 大山 昌宏君
奥村 展三君 金森 正君
川口 浩君 木村たけつか君
城井 崇君 熊谷 貞俊君
笹木 竜三君 瑞慶覧長敏君
高野 守君 中屋 大介君
平山 泰朗君 村上 史好君
室井 秀子君 本村賢太郎君
山田 良司君 笠 浩史君
和嶋 未希君 あべ 俊子君
遠藤 利明君 河村 建夫君
塩谷 立君 田野瀬良太郎君
永岡 桂子君 古屋 圭司君
吉野 正芳君 富田 茂之君
宮本 岳志君 城内 実君
土肥 隆一君
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議員 奥村 展三君
議員 田中けいしゅう君
議員 藤村 修君
議員 遠藤 利明君
議員 塩谷 立君
議員 下村 博文君
議員 馳 浩君
議員 池坊 保子君
議員 富田 茂之君
議員 宮本 岳志君
議員 城内 実君
文部科学大臣 高木 義明君
文部科学副大臣 笹木 竜三君
文部科学大臣政務官 笠 浩史君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 山中 伸一君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 磯田 文雄君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 藤木 完治君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 布村 幸彦君
政府参考人
(厚生労働省医薬食品局食品安全部長) 梅田 勝君
政府参考人
(農林水産省大臣官房審議官) 雨宮 宏司君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 杉浦 信平君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
六月一日
辞任 補欠選任
松野 博一君 吉野 正芳君
同日
辞任 補欠選任
吉野 正芳君 松野 博一君
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五月三十一日
スポーツ基本法案(奥村展三君外十六名提出、衆法第一一号)
は本委員会に付託された。
六月一日
スポーツ基本法案(森喜朗君外五名提出、第百七十四回国会衆法第二九号)
は委員会の許可を得て撤回された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
スポーツ基本法案(森喜朗君外五名提出、第百七十四回国会衆法第二九号)の撤回許可に関する件
スポーツ基本法案(奥村展三君外十六名提出、衆法第一一号)
文部科学行政の基本施策に関する件
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○田中委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
いよいよ大詰めを迎えたスポーツ基本法案にかかわって、前回やり残した、スポーツの担い手などの人権、安全問題をまず聞きたいと思います。
来年四月から中学校での武道必修化、これを目前にしながら、依然として、授業や部活あるいは民間の教室などで柔道の事故が後を絶ちません。独立行政法人日本スポーツ振興センター発行の「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点」二〇一〇年度版には、部活動で乱取りの練習中、ある生徒が顧問に大外刈りをかけ、返しわざをかけられた後、意識不明となり容体が急変、病院に運ばれ、手術を受け治療を受けたが後日死亡というような事例がたくさん紹介されております。
柔道事故の事例を調べてみると、一九八三年度から二〇〇九年度までの二十七年間で百十人の子供が亡くなり、一九八三年度から二〇〇八年度までの二十六年間で、二百六十一人の子供が何らかの後遺症が残る重い障害を負っております。
こうした現状に、事故被害者家族や子供たち、あるいは関係者も危惧の声を上げておりますけれども、こういう紹介した事故には少なからず顧問がかかわっており、指導者という役割に照らしても、看過できない問題だと思うんです。
まず大臣に、こうした現実をどのように受けとめておられるか、お答えいただきたいと思います。
○高木国務大臣 宮本委員にお答えをいたします。
体育の授業において、平成二十四年度、来年度から中学校において武道が必修化になっておりまして、御指摘の事故はあってはならないものでありまして、各学校において、部活も含めて、安全の確保は最重要であろう、このように思っております。
そういう中で、昨年ですが、二十二年七月には関係機関に対して、柔道における安全指導、こういったものの文書を発出しておりますし、くれぐれもこの事故防止の注意喚起を怠らないように、そのようなことを指導しております。
特に、教育研究センターや武道関係団体とも連携をいたしまして講習会なども開催をしております。今年度は新たに体育活動の中の事故防止に関する調査研究を行いまして、事故の分析あるいは防止策、こういったものについて検討して、学校体育の安全確保に努めてまいりたいと思います。
○宮本委員 事故を医学的、科学的に解明をして、再発防止策を立てて、急いですべての指導者に研修を行って指導水準を向上させていく、あるいは体育館の床を一層安全なものにするなど、柔道事故をなくすための一層の取り組みを急いでいただきたいと思います。
同時に、こうした事故の背景に、練習や指導に名をかりたしごきや体罰があるという指摘がございます。
昨年、大阪市内の柔道教室で起きた死亡事故では、亡くなった小一の子供が初心者と知りながら、さらには体調不良を訴えていたにもかかわらず、根性をつけるためとして繰り返しわざをかけられ、死亡したという事例が起こっております。
一方、欧米では、子供たちが柔道によって命を落とすことはほとんどありません。
イギリスの例を紹介いたしますけれども、イギリス柔道連盟では児童を保護するためのガイドラインをつくっておりまして、けがをするとわかっていながらわざをかけることも、根性をつけるためと繰り返しわざをかけることも、勝利の価値を強調し過ぎることも、虐待であるというふうにガイドラインで定めております。イギリスでは、指導者になるためには、この研修は必修だということになっております。
柔道などの武道では、スポーツ活動を通して、相手への尊重と協同する精神、公正な規律をたっとぶ態度などを培っていく。そうした精神を指導者らの規範として確立していくことは、スポーツを担うすべての人々の人格、人権を守ることや、これからの我が国のスポーツの発展にとっても必要なことだと私は考えますけれども、大臣の御見解をお伺いいたします。
○高木国務大臣 スポーツの指導者の責務、役割というものは極めて重要でございます。したがいまして、しっかり講習会等も行いながら、安全確保のための資質を向上させていく、こういうことで努めていきたいと思っております。
今御指摘の、いわゆるしごきや体罰というテーマでございましたが、これは我々としては、まずは、武道というのは我が国の固有の文化でありまして、勝負の勝敗もさることながら、相手を尊重して試合を全うする、そして、勝負の終わった後はお互いに励まし合ってまた次を目指す。こういう、ある意味では武道の意義をこの授業においてはしっかり体得をしていただく。このことが一番重要なことでございまして、これをもって人権を侵害するとか、あるいは健康、安全を害すとか、こういうことが絶対あってはならない、このように思っております。
○宮本委員 柔道の事故の問題、引き続き本委員会で取り上げていきたいと思っております。
次に、どうしても聞いておかなければならない問題があります。五月二十七日に文部科学省が発表した「福島県内における児童生徒等が学校等において受ける線量低減に向けた当面の対応について」、この文書についてであります。
まず、校庭、園庭の表土除去による線量低減策について「設置者の希望に応じて財政的支援を実施する。」としたことは、この間、私も繰り返し要求してきたことでありまして、歓迎をしたいと思います。
これは、公立だけではなく、当然、私立学校・園も国庫補助の対象にし、全額国が出すようにすべきだと私は思うんですけれども、大臣いかがですか。
○高木国務大臣 先日、文部科学省あるいは福島県の調査を踏まえて、空間線量率が毎時一・〇マイクロシーベルト以上の学校などを対象として、線量軽減のための土壌の改善、このことについて、財政の支援をしていくということを決めました。
今御指摘の私立学校についてということでありますが、この私立学校については、原則二分の一の災害復旧費の補助に加えまして、いわゆる経常費の助成に対する補助、これを行うことによって、公立学校と同様、あるいは実質的な設置者の負担分は相当程度軽減される、このように認識をいたしております。
この件につきましては、私学関係者について先日もお伝えをしているところでございます。
○宮本委員 放射線被曝から子供たちを守らなければならないのは、公立も私学も違いはありません。公立は国がほぼ全額出すと言うのであれば、私学も同じようにすべきだと申し上げておきたいと思います。
郡山市のように既に表土除去を行ったところでは、その表土の処分先が見つからずに、校庭、園庭にはぎ取った表土を山積みしている。また、ビニールシートを敷き、埋設したところもあります。それらの撤去や搬出、処分費用についても、当然、国庫負担の対象にすべきだと思うんです。それから、はぎ取った表土の上に安全な新しい土をかぶせる、これにもぜひ国庫補助、国庫負担すべきだと思うんですが、いかがですか。
○高木国務大臣 御指摘のように、既に表土を削り取った場合、これは、処理が完了し、土壌に関する線量の低減が図られる場合においては、積み上げた表土を撤去、搬出、処分する費用についても、補助対象とする方向で検討をしております。
また、除去した後に必要に応じて行う土の補充、整地する費用についても、補助対象とする方向で検討しております。
これからも、現地、学校設置者などと十分連携をとって適切に事を運んでいきたい、このように思います。
○宮本委員 さて、これまで四月十九日に発表された「暫定的考え方」、ここでは、子供の年間被曝放射線量を二十ミリと定めて、校庭などの使用基準を定めました。ところが、五月二十七日の「線量低減に向けた当面の対応について」では、今年度、学校における児童生徒等が受ける線量について、「当面、年間一ミリシーベルト以下を目指す。」とされたわけであります。
子供の被曝線量を少なくすることはもちろん歓迎でありますけれども、一体、どういう根拠をもって年間一ミリシーベルト以下にするのか、まずお答えいただけますか。
○高木国務大臣 既に御承知のとおり、「当面の対応について」という五月二十七日の表明でございますが、これは、これまでも、「暫定的考え方」を踏まえて、国際基準である一ミリから二十ミリシーベルト、この目安、今後できる限り児童生徒の受ける被曝線量を低くしていく、こういうことを基本に立って示したものでございます。
実質的には、今、児童生徒の受ける量についてはかなりの低減をされておりまして、「当面、年間一ミリシーベルト以下を目指す。」こととしたものでございます。
既に現在、比較的に線量の高かった学校に積算線量計等を配付をして、教職員の方々に協力をいただいて携帯をしていただいて、実際の児童生徒の受ける積算線量を測定しております。その結果によりますと、年間積算線量は約〇・一一から約一・二六ミリシーベルト、こういう試算がございます。
このうち、積算線量の高い学校等でも、土壌の改良等を行うことによって、児童生徒が受ける線量が年間一ミリシーベルト以下に抑えられることは十分可能である。こういうことで、より安心感を持っていただくために、財政措置を含めて示したところでございます。
○宮本委員 実は、この「当面の対応について」、これは説明も受けましたし、今も大臣のお話がありましたけれども、これは、年間二十ミリが一ミリ以下に引き下げられたと世間が考えておられるのは、完全な誤解なんです。そういう話ではないんです。
今、大臣が紹介された線量、これは、子供を代表する教員が持っているポケット線量計の積算線量をもとに話をしている。そして、そもそもこの「当面の対応について」というのは、学校内での被曝に限っているわけです。「暫定的考え方」では、二十ミリという議論をやっていたときには、これは当然、二十四時間三百六十五日、一年間分の計算、学校内も学校外も含めた計算をしておりましたが、今、この一ミリシーベルト以下というふうに出されているものは、学校にいる八時間だけ、それも、休みを除いた年間二百日だけというものなんですね。だから、全く別の問題なんですよ。
これは、子供たちの学校外での残り十六時間の生活や学校に来ない百六十五日間の生活や活動はどうでもよい、こうお考えになっていると言わざるを得ないと思いますが、いかがですか。
○高木国務大臣 今お話がありました件については、私どもとしましては、主に、学校活動における子供たちが受ける線量率を可能な限り低減をさせるという努力、この一環として、先ほどから示した土壌の改良等、あるいは線量計の配付等、これを財政負担も含めて示したわけでございます。
子供たちは、おっしゃられるとおり、学校だけではありませんで、通学路や遊ぶところや、そしてまた家庭での生活、これがございます。こういったものについては、これはもう政府全体として取り組むべきものでございまして、当面、私たち、学校のグラウンドの線量率が高いということを何とかしなきゃならぬ、こういうことからこれまでそのような方策を練ってまいりまして、今回お示しをしたことになるわけであります。
○宮本委員 これまでの議論というのは、校庭の放射線量をはかって、それが三・八になればどうこうという議論をやったわけですよ。ところが、今のこの当面の対応の議論は、教師が持っているポケット線量計の積算線量の議論に変わってしまっているわけなんですよ。
あなた方の簡易型積算線量計、つまりポケット線量計のモニタリング実施結果というものを見ましたら、五月九日から十五日の一週間で見ると、時間平均でゼロから〇・七マイクロシーベルトと低かったと。当たり前なんです。私が前回指摘したように、現在は教師も子供も屋外にほとんど出ていない。鉄筋コンクリートの校舎内は、屋外に比べて十分の一程度の極めて低い放射線量なんです。そこにいる教師が持っているポケット線量計は低くなって当たり前なんです。
しかし、これからは子供たちが屋外に出ることになります。子供たちが屋外に出ると、このポケット線量計を持った教師と子供たちの行動とが本当に一致するかどうかが問われることになります。子供は校庭を走り回るでしょう。教師が子供と全く同じに振る舞うことは不可能です。子供は遊んでいても、教師は職員室にいなければならないこともあるでしょう。
まさに、このポケット線量計だけが低い値を示し、子供たちはそれ以上の放射線を浴びるということがあり得るんじゃありませんか。いかがですか。
○高木国務大臣 したがいまして、私どもとしましては、学校の活動については先ほど申し上げたこと、同時に、さきにロードマップを発表いたしましたけれども、原子力災害対策本部の「原子力被災者への対応に関する当面の取組方針」の中で、被災者住民の安心、安全のための取り組み、こういったものも盛り込まれておりますので、同本部のもと、私どもとしましては、関係省庁、これは一体となって線量の軽減に努めなきゃならぬ。
その最たるものが、一日も早く原子力発電所サイトの事態の収束を図ることに私は最大の課題があると思っておりますので、持てる全知全能、それぞれの皆さん方で力を合わせてそういう体制を図らなきゃならぬ、このように思っております。
○宮本委員 ちなみに確認いたしますが、この文書で、「今年度、学校において」一ミリシーベルト以下にとなっておりますが、この「今年度」というのは、ことし四月十四日の授業開始日以降ということでよろしいですね。
○高木国務大臣 五月二十七日の「当面の対応について」は、児童生徒の学校教育を受けることができるよう、まずは学校においての線量の低減策を示したものでございます。
したがって、「今年度、学校において児童生徒等が受ける線量」というのは、今年度、始業日以降に学校内において受ける線量という意味でございます。
○宮本委員 今年度の始業日は四月十四日ですよ。
お手元にお配りした資料を見ていただきたい。これは、文部科学省が五月十二日に発表した「校庭等の空間線量率三・八マイクロシーベルト毎時の学校の児童生徒等の生活パターンから推定される児童生徒等が受ける実際の積算線量の試算について」と長たらしい、そういう名前の文書に添付されていた、文部科学省がつくったグラフです。
グラフの、児童生徒が受ける線量では、Aという記号が打たれたこの間、つまり、三月十一日の震災時から四月十四日の授業開始時、学校開始時、この間にピークがある。そして、このピークの間に子供たちが受けた被曝線量は、二・五六ミリシーベルトと積算されているわけです。これがすっぽりと抜け落ちてしまっているんじゃないですか。いかがですか、事実関係。
○高木国務大臣 三月十一日以降、福島県内のほとんどの学校は休校状態でございまして、事故から学校の開始日までに学校生活等で児童生徒が受けた線量はほとんどないものと考えております。
なお、文部科学省では五月十二日に、児童生徒の生活パターンをもとに、実際に児童生徒が受ける積算線量について試算を発表いたしましたが、その中では、今御指摘のとおり、学校開始日の前日までの間の積算線量については、二・五六ミリシーベルトとしております。
私たちとしては、これからさらに線量の低減を図る努力をしていって、年間の線量について一ミリシーベルトを目指すという努力をこれからさらに強めていかなきゃならぬ、このように思っております。
○宮本委員 済みません、もう一問だけ。
原子力安全委員会の助言は受けられましたか。
○高木国務大臣 この件につきましては、五月二十六日に文部科学省から原子力安全委員会に対して、「当面の対応について」の方針に対して説明を行っております。
原子力安全委員会からは、学校生活での被曝量をALARAの原則に従ってできるだけ低いように下げていくということでありますから、そういう努力をするということは結構であろう、こういう趣旨のコメントをいただいております。
○宮本委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ICRPの基準は、子供であれ大人であれ、一日二十四時間、一年三百六十五日の積算被曝線量を問題にしているんです。あなた方は、その限度を二十ミリとしたことは撤回しておりません。そして、それを学校だけに限って、しかも、もう既に一ミリを超える二・五六ミリシーベルトも始業以前に被曝していること、これも事実であるにもかかわらず、こういう物の言い方で、まるで二十ミリを一ミリに引き下げたかのように受け取られるような発表をするというのは、私は、国民をたぶらかすものだと言わざるを得ない。
これは引き続き追及するということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。