平成二十三年五月二十七日(金曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 田中眞紀子君
理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君
理事 野木 実君 理事 松崎 哲久君
理事 松宮 勲君 理事 下村 博文君
理事 馳 浩君 理事 池坊 保子君
石井登志郎君 打越あかし君
大山 昌宏君 奥村 展三君
金森 正君 川口 浩君
木村たけつか君 城井 崇君
菊池長右ェ門君 熊谷 貞俊君
笹木 竜三君 瑞慶覧長敏君
高野 守君 中屋 大介君
平山 泰朗君 村上 史好君
室井 秀子君 本村賢太郎君
山田 良司君 笠 浩史君
和嶋 未希君 あべ 俊子君
遠藤 利明君 河村 建夫君
塩谷 立君 田野瀬良太郎君
永岡 桂子君 古屋 圭司君
松野 博一君 富田 茂之君
宮本 岳志君 城内 実君
土肥 隆一君
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文部科学副大臣 笹木 竜三君
文部科学大臣政務官 笠 浩史君
参考人
(総合型地域スポーツクラブ全国協議会幹事長) 小倉 弐郎君
参考人
(公益財団法人日本オリンピック委員会理事) 河野 一郎君
参考人
(学校法人了徳寺大学理事長)
(学校法人了徳寺学園理事長) 了徳寺健二君
参考人
(学校法人タイケン学園スーパーバイザー) 佐伯年詩雄君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
五月二十七日
辞任 補欠選任
熊谷 貞俊君 菊池長右ェ門君
瑞慶覧長敏君 打越あかし君
同日
辞任 補欠選任
打越あかし君 瑞慶覧長敏君
菊池長右ェ門君 熊谷 貞俊君
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本日の会議に付した案件
文部科学行政の基本施策に関する件
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○田中委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、参考人の先生方から貴重な御意見を伺うことができました。まことにありがとうございます。
早速質問に入るんですけれども、まず私は、スポーツと地球環境保全との関係をお伺いしたいと思うんです。
オリンピックやワールドカップなどの国際競技大会は、世界を網羅する規模に達しておりまして、環境への影響、これも非常に大きいものがあります。オリンピック憲章にも、「環境問題に関心を持ち、啓発・実践を通してその責任を果たすとともに、スポーツ界において、特にオリンピック競技大会開催について持続可能な開発を促進すること。」と明記をされております。
それで、まずこれはJOCの河野一郎参考人にお伺いするんですけれども、JOCでは、「スポーツと環境」ということをホームページでも掲げておられまして、「オリンピックは、地球以外で開催できません。」こう書くとともに、この「IOCスポーツと環境・競技別ガイドブック」、これは、世界の中で初めてJOCが訳本を製作した、こういう非常に熱心な取り組みをされているわけです。
まず、河野参考人から、このスポーツと地球環境の保全という問題についてどうお考えか、お聞かせいただけますか。
○河野参考人 ありがとうございます。
先ほど私の発表の中に、オリンピックがサバイバルしてきたということをちょっと申し上げました。実は、IOCと言っていいと思いますけれども、IOCも、特に冬の競技で、いわゆる自然を、言えば破壊する形で競技をしたらどうか、あるいは競技をしようという時期がございました。しかし、それではとてもとても国民の、あるいは世界の人々の賛同が得られないというようなところを経過して、今、いたくいたく、IOCを含めて、あるいはスポーツ界を含めて、やはりスポーツは環境をしっかり十分に考えていかなきゃいけないということをみんなが思っております。
そういった中で、日本オリンピック委員会としては、今お示しいただいたような活動に積極的に取り組んでいるところでもございますし、JOCとしては、各競技団体にもぜひこれをしっかりやっていただきたいということで、今般、日本水連が表彰されるところまで参りました。
というところで、今おっしゃられたように、オリンピック招致にあっても、先般もそうでございましたけれども、環境というのは非常に重要なテーマだと思っておりますし、特に、日本においては環境に関する技術はかなり進んでいると思っておりますので、いい意味で強みとしながら、スポーツ界がさらに取り組んでいく必要があるというふうに思っております。
○宮本委員 私どもは、二十一世紀に向けてスポーツ基本法と名前のつく法律をこのたびつくるとすれば、やはり地球環境の保全という問題をしっかりと基本法の中でも位置づけるべきだということを御提案申し上げているわけです。
二十一世紀のスポーツ政策について造詣の深い佐伯年詩雄参考人に、改めて、スポーツに関して、国際貢献、国際平和などと並んで、やはり地球環境の保全ということが世界での一つの常識になっているというあたりのところをお聞かせいただきたいと思います。
○佐伯参考人 IOCが環境問題に最初に取り組まざるを得なくなった一番最初のケースは、札幌オリンピックでございます。
札幌オリンピックの開催に際して、スキー連盟が定めている滑降の高さと距離がありますが、残念ながら日本には、北海道にはそれを満たす山がありませんでした。それで、少し上積みを、スタート台を上に持っていって何とかカバーしたわけです。そういうことから、森林を伐採したり、万博と同じように、それをちゃんと後で戻しましょうということからスタートしたわけですね。
確かに、そういう意味では、国際的には、排ガス規制という問題を常に考えながら、環境保全と矛盾しないようにスポーツを享受するというのは、共通のスタンスになっております。
さらに、環境だけでなくて、サステーナブルディベロップメントするスポーツですね。スポーツを通じて持続可能な発展、成長、これを国際的なスポーツは今目指しているところでございますので、環境だけではなくて、グローバル課題にどういうふうにスポーツが貢献できるかということは、やはり国際的なスポーツ界自身が非常に重要なテーマにしていることでございます。
それから、もう一つちょっとつけ加えれば、そういう取り組みがまだ上部の組織のレベルでいろいろ議論されたり行われたりしている段階で、必ずしもスポーツを実際に行っている人のところにまできちんとおりていない、こういう問題はどこにでもございます。
それから、もう一つ非常に重要なのは、コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー、CSRと特に業界で言われている言葉があります。
コーポレートというのは、企業だけを意味するんじゃなくて、そのまま一番最も正しい意味は、法人です。つまり、法人と言われるものすべては社会的責任を負っている。それは、企業が今非常に環境、排ガス問題をまじめに取り上げておりますが、その問題は、企業だけじゃなくてすべての法人、国際オリンピック委員会もそうですし、国際サッカー連盟もそうですし、日本体育協会もそうですね。こういうすべての法人が、コーポレートとして果たすべき社会的責任の一部としてグローバル課題の解決に貢献する、とりわけ今差し迫っている環境問題に対してきちっとした対応をするということは、共通のスタンスになっているというふうに考えていいと思います。
○宮本委員 ぜひとも、スポーツ基本法の中に地球環境の保全という問題をしっかりと位置づけたいというふうに思っております。
次に、了徳寺健二参考人にお伺いしたいんです。
実は、前回の委員会で、私は、高い水準にある選手への支援の問題ということを取り上げました。先ほど参考人からは、今後の課題ということで、セカンドキャリア対策についてもお触れになったと思うんです。
実は、前回の議論で、高木文科大臣は、まさに高水準のスポーツ選手の育成については、現行法上の位置づけは必ずしも明確ではないんです、こういうふうにお認めになりまして、しっかりこの点での支援策を抜本的に強化する必要があるというふうに私たちは考えております。
日本共産党としては、高水準のスポーツの健全な発展を目指すための支援として、高水準の競技者が、オリンピック等国際的な競技大会で活躍を目指す活動については、スポーツ団体等の要請に基づき、必要なトレーニング、遠征、派遣、大会への出場などに対し支援が講じられる必要がある。さらには、オリンピックに出場したなどの競技実績は顕彰されるとともに、スポーツの文化的発展の遺産として、指導、研修などを通じて社会に還元される必要がある。さらには、高度な水準を目指す競技者の養成強化は、選手の安全と人権の尊重、心身の健全な発達に即した医科学的なトレーニングの享受、諸民族との相互理解を促進するものとして奨励されなければならないと。
こういう中身を提案させていただいているわけですけれども、ぜひ、了徳寺参考人の、高水準のスポーツ選手に対する支援策についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○了徳寺参考人 ありがとうございます。
先ほど来申し上げていますように、今までの私どものチームでは、まだオリンピック選手でメダリストは出ておりませんけれども、この日本の、私は柔道の世界しかよく知りませんけれども、例えば、四月に、第一土日に毎年福岡で行われます全日本選抜柔道大会というのがあります。これはオリンピックや世界選手権の最終選考会になります。これに出場できる選手というのは、各階級八名しかいません。つまり、ベストエイトから、準々決勝からスタートします。
私は千葉県にずっと住んでおりますけれども、毎年千葉県では高校のチャンピオンが男女十四名ずつ出ますけれども、過去二十年間にこの大会に出た選手はいないというふうに記憶しておりますけれども、それぐらい、選ばれることは大変な名誉であり、難しいことでもあります。したがいまして、このあたりから見ても、そういう選手を支援するということは、非常に価値があるといいますか、それでも少しの選手たちになるというふうに思います。
したがいまして、オリンピックとなりますと、またさらに少なくなるわけでございまして、何としても、こういうオリンピック出場あるいは世界選手権出場、そしてまた国民に誇りと勇気を回帰させるような活躍をした選手には、国でもって、セカンドキャリア対策として、明確な位置づけ、あるいは方向性をぜひつくっていただきたいというふうに願っております。よろしくお願いいたします。
○宮本委員 次に、佐伯参考人にまたお伺いするんですが、私どもも、先生が強調されたように、スポーツの自主性、自立性というのは、これはまさに命だというふうに思っております。
そこで、私ども、スポーツ基本法の制定プロジェクトチームでも提案をさせていただいて、競技者や指導者、スポーツ団体等の関係者や学識経験者で構成した第三者機関をきちっと設置すべきであるということも提案をさせていただいているんですね。自主性や自立性をしっかり守る上で先生はどういうことが大事だとお考えになるか、お聞かせいただきたいと思います。
○佐伯参考人 スポーツのガバナンスは、基本的に民間がやる。それを、国あるいは社会がサポートする。これがやはり望ましい体制だと思います。ガバナンスを国家がやるというのは、基本的には、かつての共産主義の国か、あるいは本当の新興国しかないわけですよ。それでいいのかということなんですね。
日本がどういう国家かというのは、どんな法律をつくるかということが一つの品格の表現になりますので、そういう意味では、私は、スポーツのガバナンスは民間に任せる。そのかわり、国が適切なサポートをし得るように、おっしゃるような機関を設置する必要があるだろうというふうに思います。
○宮本委員 次に、小倉弐郎参考人にお伺いしたいと思います。
総合型地域スポーツクラブの課題として、財源の確保ということを強調されたと思うんです。
それで、私たちは、サッカーくじの収益による事業というのでは、各団体への配分がくじの売り上げに左右されるということになりますので、また、これはちょっと、きのうあたり流れたニュースで紹介しますけれども、韓国のKリーグ、韓国のサッカー界ですけれども、サッカーくじの巨額の配当金を得るためにプロのKリーグ選手を買収し八百長をさせたとして、ブローカー二人を逮捕、金を受け取った選手二人が拘束令状を請求された。Kリーグで八百長が判明したのは初めてで、朝鮮日報は、韓国スポーツ界最悪のスキャンダルだ、こう報じているという、非常に問題の多いことであります。
ですから、くじというよりも、やはりしっかりと国が財源を保障することが必要だと思うんです。
そういう点では、財源保障ということだと思うんですけれども、このあたりの小倉参考人のお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。
○小倉参考人 Kリーグの話は、私も、ちょうどテレビを見ておりまして、それは残念に思っておるところでございます。
クラブの財源ということでございますけれども、やはりクラブは、基本的には、自主自立のクラブということを念頭に置いております。したがって、財源保障というのは大変ありがたいお言葉でございますけれども、逆に、保障ということになりますと、これは自立性の妨げにもなりかねないリスクもはらんでいるというふうに私は考えているんです。
クラブがこうしてでき始めて十数年たちまして、先ほども申し上げましたように、やっと国民の中、住民の中に、スポーツにも、やりたい人は自分でお金を出して楽しむんだという姿が醸成されてきた中で、私としては、そういう考え方というのは非常に問題もあるのかなというふうには考えております。
ただし、クラブが育つまでは、やはりそれなりの保障といいますか支援をお願いしたいなというふうに思っております。ややもすると、保障が妨げになって、会費も集めないままいって、財源の支援が途絶えた途端にクラブがしぼんでしまうというようなケースも見受けられますので、支援のある間にクラブが育つということは重要な課題でありますので、そういった思いを持っているところです。
ちょっとお話が長くなりますけれども、今回の震災に関して、やはり私は、総合型クラブの底力を見たというふうに思っておるんです。ややもすると、目立つのはアーティストであったりアスリートであったりいたしますけれども、クラブは、いち早くトラックを借りて九州から支援物資を積んで乗り込んだとか、いろいろな話がございますし、総合型地域スポーツクラブ全国協議会というのは全国規模のネットワークでございますので、その中でそういった支援活動も、地味ではありますけれども、今一生懸命やっておるところでございます。
そういった意味においては、自主自立ができるようなバックアップをぜひお願いしたいなというふうに思っております。
○宮本委員 自主自立をしっかり担保することは大賛成でありまして、ただ、お金がなくてやれないという人が出てくることが考えられますから、そういう点での手当てというものはしっかりしないと、スポーツをだれもが楽しむ権利という点では非常に大事な問題だと思うんです。
それで、時間がなくなったので、最後に二問まとめて佐伯先生にお伺いをいたします。
一つは、今の予算にもかかわるんですけれども、我が国のスポーツ予算は、イギリスやフランス、韓国などと比較して極めて低い水準にある。この委員会でも、この前、大臣と質疑をやりまして、人口が半分ぐらいの他国が我が国よりも予算が多いんですね。もっともっとしっかり財源を確保していく、この点で先生はどうお考えか。
もう一つは、先ほど、高い水準の競技選手の話をいたしましたけれども、競技者が持つエンターテインメント性を保障して支援していくということが二十一世紀のスポーツの発展に不可欠だと思うんです。この点で我が国が非常に立ちおくれている、この点についてどうお考えになるか。
この二点を聞かせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
○佐伯参考人 先ほども申し上げましたように、国がスポーツをサポートするということを法律上きちんとうたうのであれば、そのサポートの内実として、財務的な支援、これをきちっとうたわなきゃいけない、これは当然です。
ただ、スポーツのサポートというのは、実は非常に複雑な形で、いろいろな形でなされています。ですから、金額だけを見てどうかということも単純にはなかなか言えないところがあります。
例えば、どの国もいろいろなことがあるんですけれども、スポーツ予算というのはスポーツ庁だけでコントロールしているものじゃない。例えば、日本の場合も、かつてはスポーツに関する出費が一番大きかったのは国土交通省だったわけです。文部科学省は主管省庁でしたけれども、残念ながらそういう意味で一位ではなかったわけです。だから、いろいろな形でサポートはできるわけです。
ただ、それが政策として一本化されることは非常に重要であって、やはりそういうことを工夫することは当然であり、ですから、先ほど河野さんもおっしゃっていたように、やはり、スポーツについてチーム・ジャパンをつくるためには、チーム・ジャパンにふさわしい、少なくともスポーツ庁ぐらいは設置すべきであろうというふうに思います。
それから、ちょっと基本法について申し上げますと、私は非常に複雑過ぎると思います。もっと単純にして、個別的に必要に応じて、例えば障害者スポーツ振興法であるとかトップアスリート支援法であるとか、こういうふうな形でつくった方がいいんだろうと思いますね。
それで、私たちが希望したいのは、全会一致、超党派、これがやはりスポーツが期待することでございますので、ぜひ先生方には御努力いただきたいというふうに思います。
ありがとうございました。
○宮本委員 どうも貴重な御意見をありがとうございました。しっかりと先生方の御意見を参考にして、よりよい法案を練り上げていきたいと思います。
本日はありがとうございました。