平成二十三年五月十九日(木曜日)
午前九時三十一分開議
出席委員
委員長 高木美智代君
理事 岡本 英子君 理事 川村秀三郎君
理事 城井 崇君 理事 高井 美穂君
理事 湯原 俊二君 理事 池坊 保子君
稲富 修二君 小野塚勝俊君
大山 昌宏君 金子 健一君
川口 浩君 橘 秀徳君
橋本 博明君 初鹿 明博君
松岡 広隆君 山田 良司君
横粂 勝仁君 吉田 統彦君
宮本 岳志君 吉泉 秀男君
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政府参考人
(内閣官房内閣総務官室内閣総務官) 原 勝則君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 徳久 治彦君
政府参考人
(文部科学省科学技術・学術政策局次長) 渡辺 格君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 石井 淳子君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 木倉 敬之君
参考人
(独立行政法人放射線医学総合研究所理事長) 米倉 義晴君
参考人
(国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)専門職職員)
(NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン現地事業アドバイザー(無償ボランティア)) 千田 悦子君
参考人
(日本大学専任講師) 野口 邦和君
衆議院調査局第一特別調査室長 金子 穰治君
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委員の異動
五月十九日
辞任 補欠選任
神山 洋介君 稲富 修二君
初鹿 明博君 大山 昌宏君
同日
辞任 補欠選任
稲富 修二君 神山 洋介君
大山 昌宏君 初鹿 明博君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
青少年問題に関する件(東日本大震災による子どもへの影響)
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○高木委員長 池坊さんの質疑は終了いたしました。
次に、宮本岳志さん。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、有益で大変貴重な御意見をお聞かせいただいた三人の参考人の皆さんに、私からもお礼を申し上げます。
四月の十九日に政府と文科省が「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」というものを発表いたしました。
ここでは、国際放射線防護委員会、ICRPが示す危機収束時の一般公衆の参考レベル、一年間に一ミリシーベルトから二十ミリシーベルトという基準を採用した上で、その最高値である年間二十ミリシーベルトを校庭の利用判断の暫定的な目安にした、このことが大きな議論を呼んでまいりました。
なぜ子どもたちに大人も含めた一般公衆の参考レベルの最大値を適用するのかといった疑問が噴出し、去る五月十二日には、日本医師会も、「この一~二十ミリシーベルトを最大値の二十ミリシーベルトとして扱った科学的根拠が不明確である。また成人と比較し、成長期にある子どもたちの放射線感受性の高さを考慮すると、国の対応はより慎重であるべき」だと指摘をしております。
先ほど池坊先生の方から、三・八マイクロシーベルト毎時についての御見解の質問がありましたけれども、私はまず、そもそも年間二十ミリシーベルトと最大値をとったことに関するそれぞれの参考人の御見解、これは千田さんも含めてお三方、どう思われるか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
○米倉参考人 先ほど私の方で説明をしましたように、緊急時には二十から百ミリシーベルトというレンジが与えられていて、そしてそれが定常的に落ちついたときには一から二十。これは何を意味しているかというと、今回のように事態が刻々と変わっていくときには、当然その値はどんどん変わっていっていいものだと思います。
そういう意味では、私としては、二十ミリシーベルトというのは苦肉の策でとられた値であろうというふうに推測しておりました。当然、それに対して、今後速やかに一ミリシーベルトに持っていくという努力が必要なんだろうということです。
○千田参考人 今回、この被災において、子どもたちは一生分以上の学びというか、本当にすごい、物すごい体験をされたと思います。
その子どもたちにこのレベルの災害の値を持ってきたというのは、さらに被災を深めることになって、実際、先ほど申し上げましたように、ドイツの原子力発電所で働いている方たちの、これは計算したら大体五倍から六倍ぐらいになるんですけれども、この値を日本がとるということに関して、私も全く理解がいきません。
○野口参考人 先ほども言ったことですけれども、子どもというのは、非常に放射線感受性が高く、しかも残りの人生が非常に長いわけです。そういう点でいえば、決して大人と同じように扱って線量上限値を決めてはいけないというふうに思っています。
そういう点で、大人を含めた公衆の参考レベルの最大のところを持ってきて一緒に扱う、これは私自身は非常に疑問に思っておりますし、子どもについてはもっと低くしなければいけないというふうに思います。
○宮本委員 実は私、文部科学委員会でも、これは野口先生の御本を引用させていただいて、ICRPが定める線量限度遵守の原則というものについて触れさせていただきました。つまり、二十ミリシーベルト・パー・年、これは線量限度に当たるわけですけれども、これは、ここまで被曝してもよいという値ではなく、これ以上は絶対に被曝してはならないという上限値である、もともと許容線量という言葉を使った時代もあったが、ここまで被曝してもよいというような誤解をなくすために線量限度という言葉を使うことにしたのだと、これは野口先生の本から学んだことですから、もうこの場では野口先生にはお伺いをいたしません。
米倉参考人、これは間違いないですね。
○米倉参考人 間違いないかと言われますと、実は間違っております。
線量限度というのは、法律上で決める、これ以上は絶対にだめだという線量でありまして、これは職業人等の被曝管理のときに用いられております。
緊急時に関しまして、ICRPは線量参考値という言葉を使っています。この参考値というのは、そこから上が危険で、そこから下が安全だという閾値ではないということをしかも述べておりまして、一つの目安として使うということになっております。
そういう意味では、ちょっと申しわけございませんけれども、正しいかと言われますと、最近の新しい勧告ではそこが変わっていると思います。
○宮本委員 ちょっと戸惑いましたが、文科委員会では、原子力安全委員会の久住安全委員がそのとおりでございますと言下に肯定をされましたので、原子力安全委員会はそのように扱っていると私は理解をしております。
それで、文科省の言う年間二十ミリシーベルト、毎時三・八マイクロシーベルトという基準は、専ら空間線量、つまり外部被曝の影響しか考慮されておりません。本来ならば、外部被曝と内部被曝の両方の影響を勘案しなければならない。これは、放射線医学総合研究所が「放射線被ばくに関する基礎知識 第六報」という形で東京都民の被曝線量を仮計算したものを見ても、相当丁寧に内部被曝の影響をきちっと計算して足し合わせてあるわけですね。
しかし、今回、文科省は、子どもたちへの内部被曝の影響はせいぜい二、三%しか影響しない、こう言って完全に無視をしております。このことに関して、原子力安全委員会には放射線医学総合研究所が行った試算が示されたと聞いております。
米倉参考人、これを無視してよいとする根拠は何ですか。
○米倉参考人 私どもが出しましたデータは、こういう仮定に基づいたときにはこういう線量になりますよという計算を出させていただきました。それのみであります。最終的な決定は原子力安全委員会がしている、文部科学省がしているという状況でありまして、私どもが出したデータは、あくまで、こういう線量のもとでこういう仮定で出したときにはこういう内部被曝の線量になりますよということをお話ししております。
ただ、内部被曝がどの程度あるかというのは、皆さん非常に御懸念のあるところなんだと思います。今回の試算では、土壌からの舞い上がり、これから吸入するものを中心にしております。そして、問題となるのは、恐らく食物が入ってくる部分、ここの部分が非常に大きな関与をするというのがチェルノブイリ事故のときの一つの教訓ではないかと思います。これに関しましては、現在いろいろな食品に関する規制がかけられているというもとでの考え方からいいますと、余り大きくないというふうに考えています。
○宮本委員 五月十二日の原子力安全委員会の場でも、放医研の試算について一定の理解を示しつつも、ダストの影響は無視できない、そこはきちんとフォローが必要だという意見が出されたと聞いております。
また、昨日、文部科学委員会の参考人質問で話を伺った伊達市長は、一つは、小学校、中学校については三・八マイクロシーベルトを上回ったところの表土を除去するということをやっているのだが、幼稚園、保育所については、幼児はそれこそ土の上に寝転んだり口に入れたりということがあるので、これは土壌の放射線量にかかわらず、すべての幼稚園、保育所の表土を除去することにした、こういう判断を示しておられました。
これは野口参考人にお伺いするんですけれども、内部被曝の影響ですけれども、今の放射線医学研究所の見解も踏まえて、私はやはり影響を無視できないと思うんですが、いかがお考えでしょうか。
○野口参考人 食べ物で暫定規制値を設けて規制をしている、ですから外部被曝より超えるはずはないと私も思いまして、暫定規制値で全身で年間五ミリ、そこのところで規制値をつくっているものですから、二十ミリシーベルトという年間の中で、最大でも五ミリしかいかない。しかし、ゼロではないわけですから、少なくとも、私は、学校などについて適用するのであれば、その部分を引いた上で当然計算されて求められるべきであるというふうに思います。
○宮本委員 原子力安全委員会の議論でも、決定される以前ですけれども、そして、後には個人的見解ということになってしまいましたが、ある原子力安全委員は、内部被曝の影響を考えれば半分ぐらいが妥当だろうという見解もお示しになった。
私はやはり、線量限度というものは、超えてはならない、こういう値であり、しかも、ドイツなどに比べたらそれは非常識だというきょうの参考人の御発言もあるようなことからすれば、やはり、二十ミリという年間の値にとったということは非常に不安の原因になったというふうに思うんですね。
だから、今、この基準が守られていないんですよ。先ほど野口参考人も少し口にされましたけれども、私、文科委員会でも明らかにいたしました。実は、現状で、毎時三・八マイクロシーベルトを上回っている学校というのは既に中学校一校になっております。今、継続的に空間線量を測定している学校が五十六校あるんですけれども、実は、その一校以外の、つまりもう既に下回っているところ、五十五校全部、これはここに資料がありますけれども、普通に屋外活動している学校は皆無、ゼロであります。
ですから、現場では残念ながらこれは信用されていない。そして、なかなか、そういっても親御さんの理解が得られるような話になっていない、こういう声もございました。
野口参考人は、この間、何度も現地を訪れて実際に校庭の放射線量の測定などもしてこられました。現場へ行って、この点についてどういう実感をお持ちなのか、野口先生からお答えいただけますか。
○野口参考人 とにかく、文科省は校庭について五カ所で測定をしているようでありますけれども、五カ所ではなくて本当に何十カ所と、一校のグラウンドだけで、そこを歩きまして、大分、線量率、二倍三倍変わってきますので、そういう点で、一つの値で代表させるというところにやや問題があると思いました。
それから、現場ではやはり、三・八マイクロシーベルト毎時、信用されておりません。できるだけ低くしたい、思いは同じなんですよ、保護者も先生方も。
ですから、私は先ほど、安全だけでなくて安心も与えないといけない、これは行政の施策だと思いますので、そういう点で、安心というところで、やはりちょっと抜かりがあったように思っております。
○宮本委員 おっしゃるとおりでありまして、こういうものは本当に、親であれば、自分の子どもの健康ということについてはだれもが過敏なぐらいに気にするというのは、当たり前のことだと思うんですね。
それで、昨日、文部科学委員会の参考人質疑で、静岡がんセンター総長の山口建参考人は、内部被曝に関し、沃素131が体内で濃縮することを指摘いたしまして、沃素はかなり減衰していると思われるものの、福島市の放射線量が余り変わっていないこととあわせ調査の必要性があるというふうにおっしゃっておりました。
それから、米倉参考人は、百ミリ以下のところでは疫学上のデータがないというふうにおっしゃいました。そのとおりだと思うんですけれども、だからこそ、データがないからこそ、今、福島で起こっているこの事態に際して、本当に子どもたち一人一人の健康調査をしっかりとやって、そして長期にわたってしっかりフォローしていくということが必要だと思うんですね。
この点についての米倉参考人の御見解をお聞かせいただけますか。
○米倉参考人 最初のところで私もお話ししましたように、こういった子どもたちの長期間の調査、これは絶対に必要であるというふうに考えています。
そのときに、基本的には県を中心とした枠組みで動かすとしても、日本全国がそれを支えるシステムが必要になります。原爆被爆者がおられたころとは違って、現在、日本じゅうどこにでも動く時代になっていますので、ぜひ、こういう方々のデータが、日本のどこの病院に行って、どこで診断を受けてもそれが見られるような仕組み、こういう仕組みを新しくつくることによって、私たちは多分、医療システムを全く大きくつくりかえるということも可能だと思いますし、それによって、実は、きょうは全くお話をしませんでしたけれども、医療で受ける被曝というのがございます。こういったものも含めて、私たちが評価をしていくということをきちっとやるべきだというふうに私は考えています。
○宮本委員 絶対に必要だというお話であります。
これは、きょうは文部科学省に来ていただいております。子どもたちの沃素の蓄積も考慮した計画的な健康調査をできるだけ早く行うべきだというふうに私ども思っておるわけでありますけれども、文部科学省の御見解、政府内での検討の状況、御答弁いただきたいと思います。
○渡辺政府参考人 地域住民の方々が受けた放射線量の実態の把握やその適切なフォローアップというのは重要であるというふうに私どもは考えているところでございます。
先生御指摘の内部被曝について、特に注意を要する小児の甲状腺被曝に関しては、これまで、ゼロ歳から十五歳までの千八十人について、三月下旬に測定を行ってございます。その場合は、スクリーニングレベル、毎時〇・二マイクロシーベルトを超えた者はいなかったということでございます。
現在でございますが、政府原子力災害対策本部におきまして、放射線量の推定や将来の健康管理等について検討が行われているところであります。福島県や関係市町村の御意見を踏まえつつ、調査が行われることになるものと認識しておるところでございます。
文部科学省としても、先ほど申しましたように、子どもの健康調査は重要と認識しておりますので、今後とも、放射線医学総合研究所あるいは大学などの能力を生かしながら、協力してまいりたいと思っております。
○宮本委員 やはり、一刻も早く子どもたちにとって安心、安全な状況をつくり出すということが非常に大事だと思っておりまして、その点では、現地ではグラウンドの、校庭の表土を取るという作業が始まっておりますし、野口参考人から御紹介があったように、文部科学省も、福島大学の附属幼稚園と中学校で表土を取ったり、また上下を入れかえるということによる放射線量の低下という実証実験もやって、これには効果があるということも明らかになってきております。
ただ、私も現場でお伺いをして、これは、校庭によっては、その学校、学校において、そう一律でないという話もお伺いをいたしましたし、それから、郡山では、全部この表土をはいだはいいんですけれども、やわらかい表面の土をはぎますと、下はざらざらの土になっておりまして、このままでは子どもを表に出すわけにはいかない、放射線は下がったけれども、上にまたやわらかい表土を入れなければ危ないというような話もお伺いいたしました。
現場でそういう相談にも乗ってこられた野口参考人に、そういった学校ごとのさまざまな対応、柔軟な対応、それから、こういうことが大事じゃなかろうかとお気づきになっている点をひとつお話しいただきたいと思っております。
○野口参考人 安達地方と呼ばれる二本松、本宮、大玉、これは、二本松は一・九マイクロシーベルト毎時を超えたところははがすんだ、大玉村はもう全部の学校についてやるんだと、まちまちです。ですから、そのあたりの判断は、私などが言うことではなくて、それはやはり、そこで慎重に検討されて決定されればいいことであるというふうに思っております。
それと、一つ感じたことは、どの会場でもこういう質問がありました。今、長ズボン、長靴で、そしてマスクをして、帽子をかぶって登校しています、これから暑い夏を迎えるのに、いつまで私たちはこういう格好をして生徒に登校させなければいけないのかという質問がありまして、私は、その対応は三月であれば間違っていなかったけれども、現段階では、放射性物質が空気中を漂っている状況ではありませんので、もう半ズボン、半そで、帽子も要らないしマスクも要らない、ただし、風が強いときについては、やはり子どもについては吸入摂取の問題があるので、そういう場合にはマスクが必要でしょう、教室の窓を閉めっ放しで今学んでいるんですけれども、それも暑ければどうぞあけてくださいと。
空気はもう漂っていないので、三月の対策と今の対策は変えなきゃいけない、アドバイザーがいるにもかかわらず、そういう説明がきちっとされていないということで、少し驚きました。
○宮本委員 ありがとうございました。
やはり科学的で正直な政策ということが、こういう原子力災害に当たって非常に大事だと私どもは思うんですね。二十ミリシーベルト、三・八マイクロシーベルトの問題でも、私、文部科学大臣に率直に申し上げたんですけれども、僕が現場で聞いて一番ショックだったのは、現場の市町村は国が決めたことだからといって一生懸命説明してきた、理解してくれというふうに言ってきた。ところが、その国の中で、内閣官房参与が涙を流して、これは危ないんだと記者会見された日には、もう何の説明の立場もなくなったと。
だから、私、申し上げたんだけれども、本当に仕切り直さなきゃならない、ボタンをかけ違っている、いろいろ議論はあるけれども、結局、今だれも信用しないという状況になっている。そういう点では、私は、やはりもっと早く科学的な情報をつぶさに公開すべきだったし、そして、改めて本当に内外の科学的知見を集めてしっかり信頼される対策を講じるべきであるし、そのためには、間違った場合には勇気を持って引き返す、そういう勇気も必要だということを申し上げたところであります。
本日参考人からお伺いしたそういう貴重な御意見もしっかり踏まえて、今後ともそういう方向で頑張りたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。