平成二十三年五月十八日(水曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 田中眞紀子君
理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君
理事 野木 実君 理事 松崎 哲久君
理事 松宮 勲君 理事 下村 博文君
理事 馳 浩君 理事 池坊 保子君
石井登志郎君 石田 三示君
磯谷香代子君 小原 舞君
大山 昌宏君 奥村 展三君
川口 浩君 川越 孝洋君
熊谷 貞俊君 佐藤ゆうこ君
斎藤やすのり君 笹木 竜三君
瑞慶覧長敏君 高野 守君
高橋 英行君 中屋 大介君
平山 泰朗君 藤田 大助君
村上 史好君 室井 秀子君
本村賢太郎君 山田 良司君
湯原 俊二君 笠 浩史君
和嶋 未希君 渡辺 義彦君
遠藤 利明君 河井 克行君
河村 建夫君 北村 茂男君
塩谷 立君 田野瀬良太郎君
古屋 圭司君 松野 博一君
宮本 岳志君 城内 実君
土肥 隆一君
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文部科学大臣 高木 義明君
文部科学副大臣 笹木 竜三君
経済産業副大臣 松下 忠洋君
文部科学大臣政務官 笠 浩史君
厚生労働大臣政務官 小林 正夫君
政府参考人
(文部科学省高等教育局私学部長) 河村 潤子君
政府参考人
(文部科学省科学技術・学術政策局長) 合田 隆史君
政府参考人
(厚生労働省労働基準局安全衛生部長) 平野 良雄君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 中西 宏典君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 長尾 正彦君
参考人
(長崎大学名誉教授) 長瀧 重信君
参考人
(福島県伊達市長) 仁志田昇司君
参考人
(中部大学教授) 武田 邦彦君
参考人
(静岡県立静岡がんセンター総長) 山口 建君
参考人
(原子力安全委員会委員長) 班目 春樹君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
五月十八日
辞任 補欠選任
金森 正君 磯谷香代子君
城井 崇君 川越 孝洋君
熊谷 貞俊君 渡辺 義彦君
佐藤ゆうこ君 木村たけつか君
本村賢太郎君 高橋 英行君
あべ 俊子君 河井 克行君
永岡 桂子君 北村 茂男君
同日
辞任 補欠選任
磯谷香代子君 斎藤やすのり君
川越 孝洋君 小原 舞君
高橋 英行君 本村賢太郎君
渡辺 義彦君 石田 三示君
河井 克行君 あべ 俊子君
北村 茂男君 永岡 桂子君
同日
辞任 補欠選任
石田 三示君 熊谷 貞俊君
小原 舞君 湯原 俊二君
斎藤やすのり君 藤田 大助君
同日
辞任 補欠選任
藤田 大助君 金森 正君
湯原 俊二君 城井 崇君
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五月十七日
教育格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(高野守君紹介)(第六二〇号)
同(志位和夫君紹介)(第六七三号)
同(磯谷香代子君紹介)(第六七七号)
同(志位和夫君紹介)(第六八一号)
同(志位和夫君紹介)(第六八二号)
同(田中和徳君紹介)(第六八九号)
同(宮本岳志君紹介)(第六九〇号)
同(稲津久君紹介)(第六九二号)
同(志位和夫君紹介)(第六九六号)
同(磯谷香代子君紹介)(第七一一号)
同(西村康稔君紹介)(第七一三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
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○田中委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、四人の参考人の先生方には、貴重な御意見をまことにありがとうございます。私の方からも御質問を申し上げたいと思っております。
それで、当委員会で、私も繰り返し福島県における放射線の被害の問題を取り上げてきました。とりわけ校庭の基準値というものについても議論を重ねてまいりました。
おさらいになりますけれども、ICRPが定めた危機収束時の一から二十ミリシーベルト・パー・年というものを、子供が屋外に八時間、木造の屋内に十六時間いるということを想定し、割り戻して三・八マイクロシーベルト・パー・時間、一時間当たりというところを定めたわけですね。
これに対して、なぜ二十ミリという最大値をとったのか、こういう疑問と不安の声が繰り返し出されてまいりました。先日は日本医師会が見解を発表して、「一~二十ミリシーベルトを最大値の二十ミリシーベルトとして扱った科学的根拠が不明確である。」医師会もそういう見解を示されているわけです。
そこで、きょうは四人の参考人の方々全員にまず一言ずつ聞きたいんですが、この年間二十ミリという最大値を子供に対してとったということについて妥当と言えるのかどうか、それぞれお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○長瀧参考人 子供も含めまして、確実な科学的な証拠として放射線の影響が認められたというのは、やはり百ミリシーベルトであります。これは科学的な影響であります。
○田中委員長 何シーベルトですか。
○長瀧参考人 百ミリシーベルト。その中に子供も入っております。
それから、子供について本当に科学的なデータがあるといいますのは、放射線を大量に浴びた子供というのは、原爆の場合を除いては、チェルノブイリの場合はございましたけれども、直接の被曝というのは原爆ぐらいしかない。原爆について出たデータだけ言いますと、百ミリシーベルト以下はわからないといいながら、そのレベルで比較しますと、三十歳、五十歳、あるいは十歳ということで、危険率、危険の比率が出してございます。
三十歳と比べますと、十歳の子供は二倍ぐらいだというデータが出ております。そのデータをもとにしてICRPは、子供に対しては数倍と。その数倍という言葉が不明確だからということで議論して、たしか二、三倍という言葉になっていると思いますが、それは原爆のデータをもとにしたものでございます。それも百ミリシーベルト。
それ以下はわからないということでありますので、医師会の「科学的根拠」は、だれも今二十ミリシーベルトについて科学的根拠を言える方はいないはずなんですね。それだけのデータを持って、ちゃんと二十ミリシーベルトでこれだけのことが起こると言う方はいらっしゃらない。
むしろ、そういう科学的な根拠のない議論をするよりは、実際に学校の生徒がそれを避けるために、今後全部の学校が基準に戻るまで休校にするのか、あるいは全部ほかの県に行ってしまって避難するのか、そういうものとの比較をして議論される方が現在は正しいのではないかと思っております。
○仁志田参考人 年間累積二十ミリシーベルトが妥当かどうかということについて、私は判断する能力がありません。
ただ、とにかく少ない方がいいということは常識的にわかりますから、行政の長としては、そういう努力をすると言うしかありません。
○武田参考人 一年に二十ミリシーベルトでも大丈夫だと言う方は、どういう根拠を持って言われているのか全くわからないので、私は、神になった人だ、こう言っています。つまり、わからないことを言うわけですから。それも、人の健康にかかわることでわからないことを言うわけですね。
今もほかの参考人の先生が言っておられたように、一ミリシーベルトと二十ミリシーベルトの健康がどうなるかということはだれも言えないんですね。だれも言えないのに、二十ミリシーベルトで大丈夫だと言っている人がいるんですね。その大丈夫だなんというのはどこから出てきたんだと。
もしも今までのICRPの考え方に沿えば、それが唯一我々の指針ですけれども、学術問題以外では指針ですが、一ミリシーベルトに比べて二十ミリシーベルトは二十倍のがんの過剰発生があるということしか我々は言えないわけです。
それからもう一つつけ加えるならば、文部省の三・八マイクロシーベルトを私が計算しますと、子供は年間に約六十ミリシーベルト浴びます。それはどうしてかといいますと、お子さんは、そこの三・八マイクロシーベルトをはかっている場所によるんですけれども、土の上ではかっているのならいいんですけれども、あらかたは〇・五とか一メートルのところではかります。ところが、お子さんは運動場で腕立て伏せをしたりほこりにまみれたりします。それを計算に入れていないということですね。なぜこれを文部省が計算されなかったのか。学校における児童とか生徒の行動がわかっておられないのではないかと思います。
それからもう一つは、実は地産地消なんといって、福島のお子さんたちは本当にかわいそうなんですが、校庭で被曝し、砂ぼこりで被曝し、さらに地産地消で被曝し、地産地消のものというのは、規制値以下でも足し算になりますから、空間だけでいっぱいいっぱいの被曝を受けているお子さんがさらに足されるわけですから。コウナゴのときに、汚染されたときに、これを一年じゅう食べても規制値の〇・八倍になる、それはほかで被曝していないときに言えることでありますので、そういった専門家とかお国がそういうようなことをなさらない方がいいんじゃないかというふうに思います。
○山口参考人 科学的なデータが十分でないところですので、医師としての勘といいますか、そういうことになろうと思いますが、やはり二十ミリシーベルトを基準にしたことは高過ぎると思います。特に子供さんが生活をする大事な学校という場ということを考えますと、そのように考えます。
理由は、まず、やはり子供さんの感受性については、チェルノブイリでいろいろなことが起きたものが前もって想定されていなかった。何が起きるかわからない部分があると、一番感受性が高い。それからさまざまな数値の整合性、それから過去の幾つかの事例、そういうことを勘案して、やはり個人的には高過ぎると思います。
ただ、これはいろいろな政府の御答弁を聞いておりましても、ずっとそれでいくんだというお話は決してされておられなくて、これからどんどん下げていくということであれば、最初のスタートとしてはいたし方なかったのかなという気がします。
ただ、私たちが聞いておりましても、説明がやはり不十分だと思うんですね。なぜ二十で始めたか。それから、今後、データがどんどん集まっておられると思いますので、可及的速やかにどんどん値を下げていって、ICRPが言っているのは、そういう目標に向かって皆が努力することだということを明確におっしゃっておられますので、そういう努力、先ほど学校の表土の問題、そういう努力をすべてやって、ともかくできるだけ被曝する量を下げていくことじゃないかなと思います。
〔委員長退席、松宮委員長代理着席〕
○宮本委員 この問題をめぐって、一度この委員会が紛糾したことがございます。
最大の二十ミリというものを基準に三・八マイクロシーベルトという値を定めたわけですね。そして校庭の放射線量の計測をやっております。武田参考人がおっしゃったように、中学校は背が高いので一メーター、小学校以下は五十センチで判断するということでありましたけれども、実は五十センチも一メーターも、すべての小学校も中学校も両方ではかっているわけであります。
ある中学校で、一メーターの地点で三・八マイクロシーベルト毎時を超えていない、つまり文科省の基準で言う制限はかからないんですが、五十センチのところで四・一マイクロシーベルトという値が出ている中学校が、これは伊達市長のところではありませんけれども、他のところでございました。これが全く規制にかかっていなかったんですね。
三・八というぎりぎりの、いわばそれを一年間続ければ二十ミリになるようなところに定めておきながら、実はその運用を見たら、中学校は一メーター、小学校は五十センチ、他のところでどんなに高くても、その一メーターとか五十センチとかいうところだけがクリアならばいいですよ、オーケーですよ、こんなばかな運用があるかという議論をやりまして、実はこれは文科省と原子力安全委員会の答弁が食い違うということもこの場であった次第です。
ですから、私は非常に、こういうところにもやはり不安の原因があるんだというふうに思うんです。これほど科学的でないやり方はない。やはりどちらかでも、そういう定めた三・八を超えればこれはだめだというふうにすべきだということを申し上げて、今後は運用を少し検討したいという答弁をいただいたわけですけれども。
これは少し、医学の専門家である長瀧参考人そして山口先生お二人から、この点、当然、どちらかでも上回ればそういう運用をすべきだと私は思うんですけれども、お考えをお聞かせいただけますか。
○長瀧参考人 繰り返して申し上げますけれども、低い方がいいことは間違いがない。
ですから、その害として、例えば一ミリシーベルトというものを守ったときに、現在、福島県の学校は幾つ閉校、開けないかということを考える。そして、もう福島県の学校が全部その条件を満たさない場合に、では福島県の学校を全部休校にしてしまうのか、あるいは、福島県の子供を全部県外にやる、集団疎開させるのか、そういう議論を僕は一緒にしないといけないと思うんですね。
ただ二十ミリがいいのか一ミリがいいのかという議論は、全く一方的な、架空の、架空とは言いませんけれども観念的なものであって、問題は、学校を幾つ再開するのか、どの基準にしたらみんな小学生は学校に行けるのか、あるいは、もう全然行けなくて、ほかの県まで行かなきゃならないのかと。
そういうものとの比較で線量が決まるので、空間線量が云々というよりは、そういうファクターよりは、むしろ、学校が開けるのかどうか、子供たちが、少なくとも校庭で遊ばなくても学校の教室に行ければ子供たちにはいいのか、そういう具体的な議論がこの際私は必要ではないかなという感じがいたします。
○山口参考人 問われている、場所によってという問題を私は把握しておりませんので、お答えは避けたいと思うんですけれども、何が一番大事かというと、その一人一人の児童の被曝量をできるだけ少なくすることでありますので、それがただ単に学校の問題だけではないと思うんです。
当然、御自宅に帰られて夜は休まれるわけで、そういうところを、そこからどの程度の放射線を受けているかということも大切なポイントですので、そういうことを総合して、これは線量計を持たせれば代表的なあれがわかるわけですから、そういうことも勘案しながらやるべき問題じゃないかなと思います。
○宮本委員 おっしゃるとおりで、どういう影響が出るかということなんですが、そのときに厳密に私の言うように、どちらかでも三・八が出ればという運用をしたとしても、数校ふえる程度であって、そんな軒並み全部だめになるというわけじゃなかったんです。
だから、それをあえて数校減らすために、そういう五十センチで四・一出ているところまで、まあ一メーターじゃないからいいですよという運用は、余りにも不安をむしろ広げるものじゃないかという議論をやったわけです。
実態はどうかといいますと、これはきょうは市長お見えですから、なかなか現場はそう簡単でないとおっしゃるとおりなんですね。
前回の委員会で私は明らかにいたしましたけれども、今福島県内でこの三・八をいまだに超えて屋外制限がかかっているのは、ある中学校一つだけなんですね。ところが、今福島県内で何の制限もなく校庭を使っているという学校は、ずっと観測してきた五十六のうち一つもありません。すべてのところでやはり使っていません、普通どおりには。それは、だれも、この三・八を下回ったから、市長おっしゃったように、どうぞどうぞと言われて、よし、もう大丈夫と、こうは今なっていないんですよ。
なぜそうなっていないのか。ここはやはり非常に伊達市長も御苦労いただいているところだと思うんですけれども、私が福島県内のある自治体へ行ってつぶさに担当の方にお伺いしたところによりますと、市長がおっしゃるように、これは国が決めた基準なんだ、だからこれを守ってほしいということで、自分たちは専門家でないので、専門家の知見も聞いてそういう形で決めたんだから、これはもう国が決めたんだから守ってくれという説得をしてきたと、それは、行政の一部なんだから。
ところが、その政府の中から、涙を流して、これは危険なんだと言う人があらわれた日には、大丈夫ですかと問われて、大丈夫ですと答えるような立場すらもはや失う。だから、本当に今、不信感が現場に漂っているということを言われるわけですよ。
だから、私は、前回も大臣に、ここは仕切り直すべきだと。このまま突っ張ってみても、大丈夫だと言われているところでもやっていないわけですから、しっかりと、例えば伊達市長おっしゃったように、表土を取ればぐっと下がるわけですから、それで安全ですよというふうにしないと、三・八以下だったら大丈夫だという議論をやったって、もうだれも信用しない。本当にみんなが安心できる、納得できる知見をしっかりつくるべきだというふうに申し上げたんですね。
伊達市長、多分こういう点では非常に御苦労されているというふうに思うんですけれども、そういう点では、本当にみんなが安心できるような形でしっかりと国がもう一度基準を見直すという点についてはどうお考えでしょうか。
○仁志田参考人 その基準というものをどう考えるかということなんですけれども、それは、その基準というのはどこかに置かなくてはならない。
今議員からお話がありましたように、三・八で屋外活動に制限がかかる。では、三・八未満ではどんどん自由にやっていい。私も、ここの、ようかんを切ったみたいにいくのかなというところはあるんですけれども、基準というのはそうしたものなんだろうというふうに割り切るしかないとは思うんです。ですから、基準は下げられるならば下げて設定すべきではないかと。下げられないからそういう基準だというのは、やはりちょっとおかしいと思うんですね。
現実に、表土をはげば下がることはわかっているわけですから、それからそれ以外の方法もあるわけなので、そしてまた、他の参考人も言っておられますように、我々の近隣の市町村、もしくは伊達市内でも自主避難をしている人がいるんですけれども、いずれそういう人たちが帰れるかどうかというのは、そういう土壌あるいは生活環境からどれだけ放射線量が下がるのかということですから、あらゆる努力をしなければならないということであって、その一環として、学校という場においても、やれることはやっていくということではないかというふうに考えております。
〔松宮委員長代理退席、委員長着席〕
○宮本委員 表土をはげば放射線量が下がるということは、私も実は郡山に行って、この目で確認をしてまいりました。同時に、鉄筋コンクリートの校舎内の線量が外に比べて十分の一程度、つまりぐんと低いということも、この目で確認をしてまいりました。
そうしますと、きちっと運動場、グラウンドの方の表土の処理をしまして、そして鉄筋コンクリート、大半が今鉄筋の校舎ですから、子供たちにとっては、きちっとすれば学校の方がうちにいるよりもむしろ安全な場所である、あるいは、何もうちの近くの表土を取ってない公園でいるよりは、はるかに学校にいた方が安全な場所になるわけですよね。だから、これは非常に大事なことであって、親が、むしろ学校に行った方が安全だ、こう思えるというのはすごく大事なことだと私は思うんです。
そうなってまいりますと、では学校外をそのままにしておいてよいのかということになってまいります。ですから、子供たちは学校が終われば学校から出ていくわけですし、通学路の問題、あるいは近くの公園で遊んだ場合にどうなるのかと。つまり、地域ぐるみで線量を引き下げるための努力がこれから子供たちにとっても不可欠になってくると思うんです。
これは重ねて伊達市長にですけれども、そういう、子供たちが学校外で引き続きまだ放射線にさらされる、これについても、今後国もしっかり対応して、それをどう対処するのかということをしっかり示さなければならぬと思うんですけれども、この点についてはどうお考えでしょうか。
○仁志田参考人 それは先生の言われたとおりだというふうに思っております。
今、教育の場だけで三・八マイクロシーベルトという具体的な基準があるので、それに合わせる、合わせないというようなことで、そこのところは一生懸命やっておるわけですけれども、一般の、子供たちが帰った後のそういう生活の場における放射能の低減策というのは、現実には具体的に何も取り組まれていない実情にあることは間違いありません。
行政の長としては、そうしたことにも取り組まなくてはならない、このように思うところでございます。
○宮本委員 表土をはぎますと、僕もそのグラウンドを見てきたんですけれども、随分粗い土が下から、つまり、上のやわらかい土を取ると下が粗くて、郡山なんかでは、このままでグラウンドを使うとすぐに子供がけがをする可能性がある。だから、やはり上に少しやわらかな土をもう一度入れないと、はぐだけではちょっと危険だという現場の声もあったんですけれども、その辺の手当ては何か考えておられますか。
○仁志田参考人 現実の、表土をはいでいく場合には、そのようなことは起こるわけですね。
それから、校庭というのは、下に暗渠があったりして、つまり、排水をよくするためにいろいろな手だてをとっているところがありますので、砂利層があったりですね。そうすると、埋めたりすることも、必ずしもすぐにはできないところもある。ですから、ケース・バイ・ケースで対応しております。
○宮本委員 武田参考人に次にお伺いしたいんですが、お書きになった「驚くべき原子力村の常識」というような先生のものも読ませていただきました。
私は、今日までの日本の原子力行政というのは、本当に、安全神話の上に成り立ってきたということがやはり非常に大きな問題だと思うんですね。それで、これは我が党の元議員である不破哲三が述べていることですけれども、国会で原子力問題を追及して、本当に驚くべきことが多かったと後になって語っておるわけです。
例えば、電力会社がある土地にねらいをつけて、そこに原発を持ち込もうということになりますと、まず最初に、原発はいかに安全かという大宣伝をするんだと。つまり、もしも事故が起こったらこういうふうにします、あるいは、もし事故が起こった場合にはこういう対策がちゃんととられていますというようなことを言えば、事故が起こるのかと言われるので、事故が起こったときの話などというのは絶対やらないと。
だから、今回のような事態になったら全く何の備えもないというのが実態なんだということを指摘して、ここから脱却しなければ、やはり原子力行政というものは安全神話から抜け出せないというふうに指摘しているんですが、武田参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
○武田参考人 通常の原子力以外のものですと、すべての責任はプライベートカンパニー、私企業にかかってきますので、今度のような場合は、もちろん東電は福島県の土地を全部掃除しなきゃいけませんし、被害者に補償しなきゃいけませんから、たちまちつぶれますね。ですから、もしかすると、電力会社は原子力発電を選ばなかったのではないかとも思われます。しかし、実は国策として原子力発電をやってきた。
したがって、国が開発の面倒も見る、再処理の面倒も見る、それから、事故が起こったときは、面倒を見ていないんですけれども、見るという建前になっているということのもたれ合いが、原子力をやるときに、別に、電力会社が地元に安全だと言うのは当然だと僕はこの前言ったんですよ。だって、自分たちがやっているんですから、不安全だと思ってやるはずないわけですね。ですけれども、そのかわりに国がチェックしますよといったところが全部抜けている。
それから、事故が起こったら、実は国が何もやらない、僕はきょうは随分言わせていただきましたが。国側は、結局、国策としてやった原子力が、もともと危険な設計であり、事故が起こったときの、国民を救うという点で何のポリシーとか具体策を持っていなかったということは事実なので、できるだけ早く国が、今福島の方は、私も行きましたけれども、国の影がないですよ。例えば、国が行って除染しているとか、系統的に市町村と協力して片っ端から片づけているとか、全くないですね。もう二カ月たつわけですから。
ですから、電力会社の問題というよりかは、大変に言いにくいんですけれども、これはやはり、国が今まで進めてきたところに大きな基本的な欠陥があった。それが我々原子力をやっている人間に心のすきを与えて、そして徐々に危険な方向に行った。その一つの証拠が今度の福島原発の事故だというふうに思っております。
○宮本委員 そういう意味では、国の役割という点で非常に問題が多いと思うんです。
例えば、昨日も工程表というものの見直しが行われております。ただ、先ほども、既にメルトダウンがわかっていながら前回の工程表が出ているという御指摘もありましたけれども、実際、この工程表は東電がつくっているだけであって、結局、東京電力に危機収束の工程表づくりを丸投げして、政府は何ら責任ある対応をとっていないと思うんですよ。
こういう点では本当に、先生がおっしゃるように、政府が前に出てきちっと危機の収束の見通し、展望を示すということがなければならないと思うので、この点についても武田先生のお考えを。
○武田参考人 四月の中旬に東京電力が工程表を発表したときは、もちろん、その中にわかっていることを書かないという問題がありましたけれども、それ以上に、あの日に政府側も今後の方針を発表しましたが、何ら工程表のようなものは出てこなかった。
つまり、少なくとも、東京電力という会社はよきにつけても悪きにつけても存在するけれども、日本国というのはないんだなと思いました。というのは、もう現実に被曝している人が一カ月苦しんでいるにもかかわらず、いつから片づけるのかということすらプランを示せないということは非常に大きな問題だったんじゃないかと思います。
それは、今度政府が発表されましたけれども、やはり非常に抽象的であるということで、これは責任上もう一歩踏み込まなきゃいけないというふうに思っています。
○宮本委員 山口参考人にお伺いするんですけれども、前々回の委員会で、さっき言った五十センチ、一メーターということも大紛糾したんですが、もう一つ紛糾したテーマは、子供たちに対する内部被曝の影響についてなんです。
文科省は一貫して内部被曝の影響はごく軽微である、全体としての影響のうちのわずか一%、二%程度にとどまるのでということで、実は、先ほどの三・八マイクロシーベルト・毎時という計算の中には、内部被曝の影響は全く考慮されておりません。これはもう、空間からの外部被曝の影響のみで論じているわけです。
しかし、先ほど武田先生も、内部被曝がゼロだということは考えられないという話が出ましたけれども、多分伊達市でも、保育所や幼稚園の表土を三・八を下回っていても取るのは、幼児はそれを直接口に入れる、そういう可能性大だということがあるからこそのことだと思うんです。
原子力安全委員会も、実は、ダストの影響を軽視してはならないという指摘もつけているわけですけれども、いまだに内部被曝については考慮されていないんです。山口先生、この点についてはどうお考えでしょうか。
○山口参考人 やはり、過去の例を参考にしますと、ヨード131による内部被曝、これは体の中で生物学的な濃縮が起きますので非常に慎重に取り扱わなければならないと思います。
ただ、時間がたっておりますので、最初の水素爆発ですか、そこで出たヨードというのはもうかなり減衰していると思うんですけれども、数値を見てみますと、福島市の空間線量は余り変わっていない。ということは、やはり少し出てきているのではないか。となると、ヨードは少しながらでも届いている。
したがって、内部被曝として非常に重要なヨード131の状況がどうなっているか、この点をしっかり調べた上で議論をすべきだと思います。
○宮本委員 親たちは本当に心配な思いで見ているわけでありまして、私は、これはやはり、低ければ低いほどいいというのはもう衆目の一致するところでありますけれども、しかし同時に、こういう事態のもとでありますから、そこはまさに、先生がおっしゃるようにしっかりと、子供たちに対する影響とそれを避けるために起こる状況とをきちっと見分けていくということは必要なことだと思うんです。
しかし、今の時点では、明らかにされないまま考慮から外され、大丈夫だという議論がまかり通っている。本当に大丈夫なのかと不安に思っていたら、政府内部からでさえ、これではだめだという声が出て、行政はもう説明に窮して困っているという、これは本当に、人災というか政治の責任が大きいというふうに思っております。
時間が参りましたので、最後に伊達市長にお伺いするんですけれども、私は、今回のこの前例のない原子力災害に対応するためには、国が責任を持って原子力災害の応急対策、復旧対策、復興対策を一元的に進める体制の確立が急務だと。その点では、そのための特別立法を定める。
これは福島県知事からも要望が出ているんですけれども、現行法でカバーできることはもちろんやるけれども、現行法でカバーできない問題について、しっかりと特別立法して、これは国が責任を持って、この対応、対策、復興まで責任を持つ必要があると思うんですが、伊達市長のお考えをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
○仁志田参考人 私たちも未曾有の体験をした、体験中だということで、そういう意味では、例えば、校庭の表土をはいでも、まだ降ってくるという状態だと、またはぐのかということも実は心配としてはなきにしもあらずということなんです。
そして、今回、私もそうですけれども、シーベルトとかベクレルとかいう単位も初めて知った次第であります。それに、恥ずかしながら、先ほど申し上げました、市の、安心しなさい、放射能は距離の自乗に反比例するというようなことも現実に書いたけれども、きょうの参考人の意見の中にも、そんなことはない、降ってくるのは全然関係ないと言われますと、不明を恥じるばかりでありますけれども、つまり、そうした社会体制そのものといいますか国家体制が、そういうものを想定していない。
ですから、先ほど国民保護法を議論したときに、あれは放射能とは直接関係はないですけれども、やはり大規模なこうした災害とか、対応を迫られるような、あるいは避難が、市町村外どころか県外にも行くというふうな、避難しなければならないといったときの体制というのは、これはやはり現行法の中で対応するというのは不可能なのではないか。
そしてまた、あえて言わせていただくと、岩手県、宮城県の被害というのは確かに大きなものがありますけれども、しかし、避難所の皆さんの表情というのは、もちろんいろいろな悲しみはあるでしょうけれども、天災だからもう仕方がない、これから頑張ろうというふうなことだと思うんですね。
福島県の場合は、まだ災害が定まっていないことと、それから、人災というような言葉が出ましたけれども、完全な天災ではない、どこかに何か原因があったのではないかという、もしこれがなかりせばというような部分があるわけですよね。
ですから、非常に暗いと言うとちょっと表現が適切ではないんですけれども、だれかが視察に行かれると、宮城県とか岩手県の場合は、復興を頑張るから支援をよろしく頼むですけれども、福島県の場合は、何とかしてくれ、我々はなぜここにいなきゃいけない、いつまでいなきゃいけない、そういうことだと思うんです。
そういうことを考えますと、これはやはり何らかの新しい立法あるいは体制づくりというものを考えなければならないのではないか、このように考えているところでございます。
○宮本委員 ありがとうございました。時間ですので、終わらせていただきます。