平成二十三年三月九日(水曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 田中眞紀子君
理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君
理事 野木 実君 理事 松崎 哲久君
理事 松宮 勲君 理事 下村 博文君
理事 馳 浩君 理事 池坊 保子君
石井登志郎君 大山 昌宏君
奥村 展三君 笠原多見子君
金森 正君 川口 浩君
城井 崇君 菊池長右ェ門君
熊谷 貞俊君 小室 寿明君
佐藤ゆうこ君 笹木 竜三君
瑞慶覧長敏君 高井 崇志君
高野 守君 竹田 光明君
土肥 隆一君 中屋 大介君
浜本 宏君 平山 泰朗君
村上 史好君 室井 秀子君
本村賢太郎君 山田 良司君
笠 浩史君 和嶋 未希君
渡辺 義彦君 あべ 俊子君
秋葉 賢也君 遠藤 利明君
河村 建夫君 塩谷 立君
田野瀬良太郎君 永岡 桂子君
古屋 圭司君 松野 博一君
富田 茂之君 宮本 岳志君
城内 実君
…………………………………
文部科学大臣 高木 義明君
文部科学副大臣 笹木 竜三君
文部科学副大臣 鈴木 寛君
財務大臣政務官 吉田 泉君
文部科学大臣政務官 笠 浩史君
文部科学大臣政務官 林 久美子君
会計検査院事務総局第四局長 太田 雅都君
政府参考人
(公安調査庁次長) 寺脇 一峰君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 山中 伸一君
政府参考人
(文部科学省研究振興局長) 倉持 隆雄君
政府参考人
(文部科学省国際統括官) 藤嶋 信夫君
政府参考人
(文化庁次長) 吉田 大輔君
政府参考人
(特許庁審査業務部長) 橋本 正洋君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
三月九日
辞任 補欠選任
石井登志郎君 高井 崇志君
熊谷 貞俊君 渡辺 義彦君
中屋 大介君 浜本 宏君
松野 博一君 秋葉 賢也君
同日
辞任 補欠選任
高井 崇志君 石井登志郎君
浜本 宏君 小室 寿明君
渡辺 義彦君 笠原多見子君
秋葉 賢也君 松野 博一君
同日
辞任 補欠選任
笠原多見子君 菊池長右ェ門君
小室 寿明君 中屋 大介君
同日
辞任 補欠選任
菊池長右ェ門君 竹田 光明君
同日
辞任 補欠選任
竹田 光明君 熊谷 貞俊君
―――――――――――――
三月九日
海外の美術品等の我が国における公開の促進に関する法律案(古屋圭司君外四名提出、第百七十六回国会衆法第一二号)
は委員会の許可を得て撤回された。
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本日の会議に付した案件
会計検査院当局者出頭要求に関する件
政府参考人出頭要求に関する件
海外の美術品等の我が国における公開の促進に関する法律案(古屋圭司君外四名提出、
第百七十六回国会衆法第一二号)の撤回許可に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
海外の美術品等の我が国における公開の促進に関する法律案起草の件
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○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、臨時教員問題について質問いたします。
大臣は所信で、「子供一人一人の能力を最大限に伸ばす上で、教員の質と数の充実が最も重要であることは論をまちません。」こう述べられました。ところが、質や数以前の問題として、教員が確保できず、教育に穴があくという信じがたいことが学校の現場で起こっております。
一月の十日付朝日新聞は、「教員が産休・育休や病気・介護休暇に入った際、代わりの教員が間に合わないケースが、各地の公立小中学校に広がっている。」と報じました。朝日新聞が全都道府県、指定都市の教育委員会に取材したところによると、昨年度八百件に上り、手当てのつかないこまを自習にするなど、現場に混乱が起きているというものであります。大変な事態だと思うんですね。
こうした教育に穴があくという事態について、文部科学省は状況をつかんでおられますか。
○高木国務大臣 宮本委員にお答えをいたします。
今御指摘の新聞報道にありましたように、代替教員が間に合わずに一定期間欠ける実態があるということについては、幾つかの教育委員会から聞いております。
○宮本委員 私の地元大阪では、二〇〇九年度に三十六の市町で三百八十一件、二〇一〇年四月、五月に二十市で七十一件、こうした事態があったということです。
そこで、私も、この間教職員から直接聞くなど、調査をしてまいりました。東大阪の中学校では、一昨年十月、数学の先生が突然死で亡くなるとともに、養護教諭、三年生の理科を担当する教諭が病休になりました。かわりの先生を探してもなかなか見つからず、そのため、三年生の理科の授業を一年生の理科担当の先生が行い、一年生は新たな先生が来るまで理科の授業ができず自習になってしまいました。結局、一年生は理科の授業を三月までに終えることができず、二年生になって穴埋めをしたということであります。さらに、四月になっても理科の正規教諭がおらず、やっと臨時の先生が来たのは何と六月になってからだったということでありました。
教育委員会に、かわりになる臨時、非常勤の先生をお願いしても、講師登録者の名簿は底をついていると言われ、学校では、校長先生を初め、すべての教職員があらゆる知り合いを探してやっと確保しているのが現状だとお伺いをいたしました。
こうした状況について、大臣はどのようにお感じになりますか。
○高木国務大臣 子供たちに適切な教育を行うとともに、他の教員の勤務負担を軽減する観点等からは、必要に応じて代替措置が行われることが重要であります。各教育委員会においては、適切に対処をしていただきたいと考えております。
例えば、今御指摘にありました大阪府の教育委員会の取り組みのための聴取をしたところ、増加する退職教員のうち、再任用を希望しない者について、しっかりとつなぎとめて代替教員としての協力を呼びかけるよう市町村に指導しておる、こういうことをやっております。
いずれにいたしましても、任命権者である教育委員会において、きっちり対応をするようにお願いをしております。
○宮本委員 先生が配置できずに授業ができないなどというのは、あってはならないことだと思うんですね。ところが、こういう信じがたいことが現場で起こっているわけです。
マスコミの報道でもこれだけ深刻な事態が指摘されているわけですから、幾つか聞いていると大臣はおっしゃいましたけれども、この際、やはり文部科学省として、全国的にきちっと実態をつかむ調査を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○高木国務大臣 教職員の配置につきましては、御承知のとおり、任命権者である教育委員会がその職務、責任のもとにおいて人事管理をする問題である、したがって、各教育委員会において適切に地域内の実態を把握して対応していただきたいと思っております。
いずれにいたしましても、さまざまなケースがあるわけでありまして、ぜひ関係の市町教育委員会でしっかり対応していただきたいと思っております。
○宮本委員 いや、適切に対応できていないから、今申し上げたような事例が起こっている。新聞報道でもそういう指摘がされているわけですから、適切になっていたら問題ないんですよ。穴があくというような事態まで起こっているわけですから、ぜひ調査をしていただきたいというふうに思うんです。
さて、なぜこんな事態になっているのかということを私たちも調べてみました。その背景にあるのは、昨日の毎日夕刊に大きく掲載された、非正規教員の激増ということがあるというふうに思います。
私は、先日、横浜市の先生たちから現場の状況もお伺いをいたしました。横浜では、昨年五月の一日現在、小学校では病気休暇の代替が見つからずに、六十一日間、三十九日間、十四日間と三件の欠員が続きました。また、産休代替が見つからず、三十五日間、二十五日間と二件の欠員が続いたとお聞きしました。中学校でも長期の欠員が三件も発生をしております。
その原因は、本来、正規の教員で埋めるべき定数内教職員を臨時の教職員にお願いしていることから、代替の臨時教職員の待機名簿がなくなってしまった。先ほど底をついていると言いましたけれども、既にもう全部、待機名簿者全員に当たり尽くしてしまったと。横浜市では、今年度で三百四十六人もの臨時教員を定数内教員として任用しております。
毎日の報道では、「非正規教員 最多一五%」という見出しが躍りました。文部科学省の調査結果を報じたものでありますけれども、早速その調査結果も、私、昨日いただきました。
正規教員が五十八万八千七百九十四人で、常勤講師、つまり臨時的任用教員が五万九千百五十人、非常勤講師が実数でいうと四万九千八百三十五人、その他、再任用短時間勤務者等というのが千七百八十八人、正規教員以外の非正規教員を足し合わせると十万八千九百八十五人となります。昨年五月一日現在の公立小中学校の教員数は約七十万人でありますから、実に一五・六%を非正規教員が占めている、これがこの報道でありましたけれども、これは、文科大臣、間違いないですね。
○高木国務大臣 毎日新聞の記事にあります平成二十二年五月一日現在の公立小中学校の教員数については、誤りはありません。
○宮本委員 同時に、非正規教員の比率は年々増加をしてきたということであります。
二〇〇五年度からの六年間で、正規の教員は何人減ったか、これが一つですね。そして、非常勤講師を換算数でなく実数で足し合わせた場合のいわゆる非正規教員、つまり臨時的任用教員及び非常勤講師、さらには再任用短時間勤務者等の合計数と、全教員数に占めるその率を、二〇〇五年度から二〇一〇年度まで、年度ごとに答えていただきたいと思います。
○高木国務大臣 平成十七年度の正規教員の数は約五十九万七千人、平成二十二年度の正規教員の数は約五十八万九千人となっております。六年間で、約八千人減少しております。
また、全教員に占める非常勤講師を含む非正規教員の割合については、平成十七年度一二・三%、平成十八年度一三・二%、平成十九年度一三・八%、平成二十年度一四・三%、平成二十一年度一五%、平成二十二年度は一五・六%となっておりまして、なお、これは各年度、五月一日現在の非正規雇用の教員などの数であります。
○宮本委員 大臣、数はおっしゃいませんでしたけれども、二〇〇五年度八万四千三百五人だった非正規教員が、その後ふえ続けて、十万九千という先ほどの数にふえているわけですね。それで、率も一五・六%、今や公立小中学校の教員の六人から七人に一人が非正規教員になっております。
まず、現状認識を聞くんですけれども、このように多くの身分不安定な非正規教員によって運営されている学校教育の現状を大臣はこれでよいとお考えになりますか。
○高木国務大臣 学校教育を適切に行っていくためには、教育活動の状況あるいは地域の実情に応じて、各教育委員会において、正規教員や臨時的任用教員、非常勤の講師を適切に配置していただくことが必要であると考えております。
また、文部科学省といたしましては、今国会提出の義務標準法の改正案によって、小学校一年生については、三十五人以下学級に基づく教員定数が児童数に応じて自動的に配置されることになるために、計画的な教員採用が行いやすくなる、このように認識をしております。
○宮本委員 また適切という言葉を口にされるわけですけれども、適切な状況になっていれば、こんな一五・六%になるわけないので、私はこれは適切とは言えないんじゃないかとお尋ねしたつもりなんですが、大臣、もう一度お答えいただけますか。
○高木国務大臣 適切な状況について、各都道府県教育委員会ともに、私どもは努力をしていかなければならないと思っています。
○宮本委員 本当に今の状況というのは、先ほど言ったように穴があくような事態まで現場で起こっているわけですから、ぜひともしっかりつかんでいただいて、そして、やはり本当に適切になるように努力をしなければならぬと思うんですね。
私は、きょうただしたいのは、常勤講師、つまり臨時的任用教員、いわゆる臨時教員の問題なんです。
今回の文科省調査によると、各都道府県の教職員定数に対し正規教員数だけで定数を上回っているのは財政に余裕のある東京都だけであり、他の道府県はすべて、正規教員数は定められた定数にも足りていない。つまり、もとから定数を正規教員でない臨時採用で埋めなければ成り立たないという状況に東京以外の道府県がなっているということが毎日の報道でも書かれております。
埼玉県のある市立小学校では、教職員四十八人中臨時教職員が十九人で、全体の何と四割を占めております。二十八学級のうち七学級は臨時教員が学級担任を引き受け、正規教員と全く同じ仕事をしております。全体の四割、学級担任の四分の一もが臨時教員というのでは、もはや臨時でも何でもないわけですよ。常時教員と言わなければなりません。
そして、定数内臨時採用などといって臨時教員を常時の教育に使ってしまっているから、冒頭紹介した、朝日が報じたように、病休代替、産休代替など、本当に臨時教員の出番だというときに、もう臨時教員が残っておらず穴があくという事態になっているわけです。結局、そのしわ寄せを受けるのは子供たちだと言わなければなりません。
そして、子供たちと同じく、臨時教員の先生方もつらい思いをしています。臨時的任用の教員は、正規教員と同じように学級担任を持ち、授業をし、日々子供たちと接しています。しかし、任期は長くて一年、次の四月からどうなるかわからない。
私が直接お話を聞いた中でも、学級崩壊を立て直して、保護者からは来年も担任にと言われたけれども、一年限りの任用で別れなければならないとか、高校の臨時教員の方からは、離任式の日に子供から、先生がいてくれたから学校やめぬと来てたのにと告げられ、本当につらいという話も伺いました。
この臨時教職員制度の改善を求める全国連絡会が出版した「教育に臨時はない」という本の序文に、次のような短歌が掲げられております。「指を折り 春休み待つ 子どもらに その日が別れと 今日も言えずに」。終業式が終われば直ちに離任式。保護者とあいさつをする間もなく、次の学校へ。まさにこの三月を、子供たちも臨時教員もそんなやるせない思いで過ごしているわけであります。
今や、学校現場に欠かせない教育の一端を担っているのが非正規、臨時の教員の人たちでありますから、学級担任など必要な教員はやはり原則的に正規で雇用されるべきではないか、私はまずそう思うんですけれども、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
○高木国務大臣 例えば学級担任が産休とか育休の場合、その代替として臨時的任用教員が採用される場合もありまして、学級担任に正規職員を充てるか、臨時的任用教員を充てるか、先ほど委員もいみじくも原則としてという話がございましたが、その学校の状況等に応じて校長が適切に判断していただくことが必要である、このように考えております。
○宮本委員 私がきょう問題提起しているのは、適切でない現状があるということを申し上げているんですね。先ほど紹介した学校で、そうしたら、学級担任の四分の一がみんな妊娠しているわけでもなければ、病休なわけでもないわけですよ。事実上、臨時教員によって正規の授業が支えられている。そもそも、定数よりも正規教員の数が少ないという状況が現場で広くあるんだ、これは異常ではないか。やはり正常な、学級担任などの本来の教育業務は正規教員によって担われるべきだということを指摘しているわけです。
それで、この「教育に臨時はない」という本を読ませていただくと、新潟県で臨時教員をやっている方の文章が出ております。そんな一年とか二年とかという話じゃないんですよ。二十年、三十年、臨時教員でやられている方がいっぱいいるわけです。
一九七五年四月から二〇〇五年三月まで、三十年間の臨時教員生活は、辞令百十四枚にも及んでいる。その間赴任した学校は、小学校十四校、中学校四校、高校四校、特殊学校四校であり、その他に事務員や寄宿舎指導員、予備校講師も勤めてきた。そのうち、在宅、つまり失業期間は千百八十六日、夏休みと任期切れが重なったときもあった。臨時教員として同じ学校にいた経験、同じ学校でずっと臨時教員をやった経験も、特殊学校で十一年、小学校で四年間やったこともある。リアルに体験を語っておられます。この方は三十年やっているんですね。
しかし、それでも任期が一年で区切られ、次の仕事、任用の保証がない。来年どうなるかわからない。だから、管理職や教育委員会に盾突くかのように見られたくないから、なかなか言いたいことも言えないという状況もあると聞きました。時には、一年の任用を約束されていても半年で雇いどめに遭うこともある。さらには、臨時の先生の臨時はないわけです。つまり、臨時教員が妊娠したり、まさに出産ということになると、その臨時というのはないんですね。そのときはやめるしかないんですよ。かわりの人に来てもらうときはやめなければならない。だから、たとえ病気をしてもけがをしても、無理をして、休むことなく働くのが臨時教員の姿だと臨時教員の方はおっしゃっていました。
これは非常勤講師の例でありますけれども、非常勤の講師の状況はさらに深刻です。
横浜市の場合、教科指導、生徒指導、学校サポートなどの非常勤講師は、週六時間勤務で年収五十五万円、週二十二時間勤務で百八十万円。こういう低賃金ですね、年収ですよ。そして、埼玉県では、生活保護を受けながら非常勤講師を続けている方もおられると聞いております。こんなひどい低賃金で教育活動を担わせている、まさに安上がりに教育を行うことではないかと言わなければなりません。身分の不安定、劣悪な賃金、労働条件など、教育活動上の力を発揮する上で大きな制約となることはもう明白です。
大臣、こういう状況を放置しておいていいのかと私は思いますが、大臣、そう思われませんか。
○高木国務大臣 非常勤講師というのは、言うまでもなく、時間当たりで報酬が支払われるわけでありますので、その勤務時間によっては収入が低い場合があるということは承知をしております。
なお、非常勤講師の授業一こま当たりの地方交付税上の単価は二千六百五十円となっております。非常勤講師の報酬や労働、勤務条件については、労働基準法に基づいてこれまた適切な対応をすべきものだ、このように思っております。
○宮本委員 本当に適切なものになっていればいいんですけれども、適切にしていただきたいと思うんですね。
それで、臨時教員や非常勤講師の任用や雇用の根拠ですけれども、臨時教員の任用根拠とされるのは地方公務員法二十二条二項であります。臨時的任用が許される条件として、緊急の場合、臨時の職の場合、任用候補者名簿がない場合の三つに限定しております。さらに、臨時的任用の期間は六カ月以内としており、現状のような定数内臨時採用教員の根拠になり得ないことは明白だと思います。
また、非常勤教職員の雇用根拠とされるのは地方公務員法第三条三項三号でありますけれども、その職の例として、臨時または非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらに準ずる者と限定的に列挙しており、主たる収入が別にある者を想定しているわけであります。言うまでもなく、教育基本法第九条「教員」の二項では、教員の身分の尊重、適正待遇が明記をされております。
少なくとも定数内採用については、臨時採用ではなく正規教員を配置するのが法の趣旨だと私は思いますが、これは大臣、お認めいただけますでしょうか。
○高木国務大臣 正規教員をどのように配置するかは各都道府県教育委員会において適切に判断をされるべきものだと思っております。そういう中で、今国会提出の義務標準法の改正案によっては、小学校一年生については、三十五人以下学級に基づく四千人の教職員定数が児童数に応じて自動的に措置されることになります。各都道府県においては計画的な正規教員の採用が今以上に行いやすくなる、このように考えております。
○宮本委員 何度も言いますけれども、地方において適切になっていないからこそ、国がしっかり実情をつかんで、国のイニシアチブを発揮すべきだということを私は申し上げているわけですね。
しかも、このように臨時教員が激増してしまったのは、その原因を単に地方の責任に転嫁できるものではありません。原因は、文科省がさまざまな制度改革、改編でいわゆる定数崩しを可能にしたことにあります。
二〇〇〇年以前の臨時教員の配置事由は、産休、育休、病休の後補充の臨時教員、高校の時間講師と限定的なものでありました。それが、二〇〇〇年以降、非常勤、短時間雇用の臨時教員が小中学校に広がってまいりました。それは、学級編制の標準、教職員定数の改善が長年据え置かれ、義務教育費の国庫負担率が二分の一から三分の一へと切り下げられ、義務教育国庫負担金制度に総額裁量制を導入することによって定数崩しというものが行われ、そして低賃金の臨時、非常勤教員の配置が拡大されてきたからにほかなりません。
そもそも、総額裁量制の導入については、当時、この委員会でも大きな議論になりました。私ども日本共産党は、当時から、非常勤の教職員をふやすことになるのではないかと問題点を指摘していましたし、民主党も、教育の質の低下につながるのではとの指摘をしておられました。
私、ここに平成十六年三月十七日の本委員会の会議録を持ってまいりましたが、民主党の城井崇議員の質問に対して、当時の河村文部科学大臣は、「安易に安い非常勤講師をどんどんふやせばいいとか、そんなことによって教育の質が下がるのではないかという懸念、そういうことは懸念としてある」と認めながらも、地方に適切にやっていただきたいと言うのみで、デメリットはないと言い切っておられます。大臣と同じように、地方に適切にやっていただきたい、このときも大臣はそう答弁をされました。しかし結果はどうだったか。
昨年七月の中教審初等中等教育分科会の提言「今後の学級編制及び教職員定数の改善について」でも、「近年、学校に配置される教職員のうち、臨時的任用職員や非常勤講師などが増加する傾向がある。」と指摘した上で、「いわゆる非正規の教職員については、研修などによる中長期的な資質向上の取組が不十分となるなどの課題が指摘されている。」と述べ、正規教職員の配置促進を中教審も提言しています。
結局、当時指摘された懸念が現実のものとなっているわけですよ。この総額裁量制というもの、そもそもそれを見直しすべきだと私は思いますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
○高木国務大臣 正規教員や臨時的任用教員、非常勤講師をどのように配置するかというのは、申し上げておりますように、各都道府県教育委員会で、地域あるいは学校の事情によって判断されるものと私は考えております。
ただいま指摘がありました総額裁量制の導入前で調査結果がある平成十四年度以降からも、非正規教員が増加傾向にあったことを考えますと、この制度の導入が非正規教員増加の直接の要因になったということは必ずしも認識をしておりません。問題意識としては私もそのように持っております。
○宮本委員 それは、地域は財政的に大変な状況でありますからね。このときの議論でも、こういう制度を入れればそういう方向に向かうんじゃないかということが随分議論されているわけですよ。
それで、子供の教育に臨時はない、まさにこの本の表題どおり、教育に臨時というものはありません。子供の発達にも臨時というようなものはないわけでありまして、教師と子供との関係にも臨時というものはないわけであって、にもかかわらず、専ら財政的な観点から、本来正規教員で充てなければならない仕事を臨時採用教員で充てるから矛盾が生じるわけであります。学校現場は、そのことによって子供たちの小さな胸を痛めつけ、臨時採用の先生たちにもつらい思いをさせているわけです。
先ほど紹介した中教審の昨年七月の提言では、「必要な教職員が確実に学校に配置されるよう、その財源を国の責任で担保することが極めて重要」として、義務教育費国庫負担制度の堅持とともに、国庫負担率の二分の一への復元を検討するよう求めております。
大臣、義務教育国庫負担の二分の一への復元、これはやるべきではありませんか。
○高木国務大臣 国庫負担率の引き上げについては、国、地方の役割分担、税財源配分のあり方に極めて大きな影響を与えていくために政府全体として検討すべき課題である、このように私は認識をしております。
現在の義務教育費の国庫負担制度は、義務教育費の大半を占める教職員給与費について、国と地方の負担によりその全額を財政措置するものであって、教育の機会均等などとその水準の維持向上を図るという意味では、義務教育制度の根幹は維持されておるもの、このように私は考えております。
一方で、最近の厳しい地方財政と相まって、教職員数は確保されているものの、国庫負担の限度額まで教職員給与費を確保できていない県が増加傾向にあるなどの課題があるものと認識をしております。
文部科学省としましては、平成二十二年の七月の中教審の提言、御指摘の提言でありますが、これなどを踏まえて、国庫負担率のあり方について今後とも議論を深めてまいりたいと思います。
○宮本委員 正規教職員の配置促進というのは中教審が求めているものでありますから、これを受けて、臨時教員の解消を図るとともに、非常勤教員の賃金や労働条件の改善を図ることを求めておきたいと思うんです。
例えば、オーストラリアの例を御紹介申し上げます。オーストラリアでは、非正規教員の賃金は同一労働同一賃金を基礎とした均等待遇になっておりまして、週三日勤務ならば、賃金、休暇、退職金も五分の三を保障しております。また、六カ月の契約を四回繰り返した後には事実上正規雇用化する、こういうルールになっているわけですね。
日本でも、私たちは問題が多いと見ている現状の労働者派遣法でさえ、三年も同じ仕事を続けた場合にはその仕事はもう臨時でも一時的でもない、こうみなされて、直接雇用の申し出義務が課されているわけでありますから、これは道理ある話でありまして、臨時教員の場合、年度末に必ず一日契約期間に間をあけるようなことをやっておりますけれども、これは一種の偽装派遣みたいなことになるわけですよ。
そんなやり方は改めて、臨時採用を一定年数繰り返せば、やはりこれは一時的でも臨時的でもないということで正規教職員とする、せめてこれぐらいのことは検討すべきだと思うんですが、大臣、いかがですか。
○高木国務大臣 現行の地方公務員制度においては、正規任用と臨時的任用等の非正規の任用では、その採用の仕組みが異なっております。非正規の任用で一定年数を繰り返したとしても、正規任用とはなりません。地方公務員法の二十二条の中にもありますが、「臨時的任用は、正式任用に際して、いかなる優先権をも与えるものではない。」という条項もございますが、御指摘のような仕組みを検討することは、公務員制度を含む労働法制全体にかかわる事柄でありますので、文部科学省だけの判断で直ちに回答することは困難と考えております。
○宮本委員 現状の制度がそういうふうになっているということは重々わかって聞いているわけでありまして、しかし、まさに政治のリーダーシップということも言われているわけですから、現状がこうなっている、現に担任も持ち、定数内の仕事を担っておられる、しかも三十年の長きにわたって本当に全く一般の正規教員と同じ仕事をやっている臨時採用教員がいらっしゃる、そういうことをしっかり踏まえて、やはり制度設計を再検討することは当然だと私は思います。
次に、教員免許制度について、残った時間で聞きたいと思います。教員免許更新制ですね。
この教員免許更新制が実施されて二年目に入りました。教員にとって大切な時間が割かれ、しかも余り効果がないということをこの間も私は指摘をしてまいりました。
まず聞きますけれども、そもそもこの免許更新制導入の目的、これはどういうものでありましたか。
○高木国務大臣 教員免許更新制の目的は、その時々に教員として必要な資質、能力が確実に保持されるよう、定期的に最新の知識、技能を身につけること、これにより教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得るようにすることである、こういう目的でございます。
○宮本委員 では、免許更新制が今おっしゃったその目的を達しているかが問われるわけですね。
文部科学省は、昨年、教員免許更新制の効果検証に係る調査を実施いたしました。その調査結果では、教員としての自信と誇りの高まりについて、効果がとてもある、あるいはややあると答えた教員は合計で何%だったか。また、効果が余りない、全くないと答えた教員は合計で何%だったか。
さらに、社会からの教員に対する信頼、尊敬の念の高まりという項目について、今度は保護者の回答で、効果がとてもある、ややあると答えた保護者の合計は何%だったか。また、同じく、余りない、全くないと答えた保護者は合計で何%だったか、お答えください。
○高木国務大臣 御指摘の調査は、平成二十一年四月から、制度導入から一年経過した時点で、教員免許更新制の効果について、更新の時期にはない教員や、学校長、保護者等も含め、幅広くアンケート調査を行ったものであります。
その結果においては、教員免許更新制の効果として、教員としての自信と誇りの高まりがとてもある、ややあると答えた教員の割合は一五・三%であります。また、余りない、全くないと答えた教員の割合は六三・三%となっております。
また、教員免許更新制の効果として、社会からの教員に対する信頼、尊敬の念の高まりがとてもある、ややあると答えた保護者の割合は三一・一%であります。また、余りない、全くないと答えた保護者の割合は四二・八%、このようになっております。
○宮本委員 教員が自信と誇りを持つことを目的とするというんですけれども、効果がないという回答が、教員で半数以上いる。社会の尊敬と信頼を得るといいながら、保護者からも、効果がないという回答が、効果があるよりも上回っているわけですね。全然目的を達していないことは明らかです。
先ほどの調査でも、免許更新制の課題として、多忙な中で参加しにくい、講習の受講時間が多い、受講費用が高いとかの課題が言われております。免許失効の不安があることも三割近くの人が挙げています。しかし、効果がなければ、受講させられる教員には徒労感しか残らないわけであります。免許失効でおどし、受講させるようなことはやめるべきだ、今の制度をそのままにすることはすべきではないと思うんですね。
大臣、受講する、しないで教員免許失効につなげることは私はやめるべきだと思いますが、そうお考えになりませんか。
○高木国務大臣 教員免許更新講習を実際に受講した教員による評価は、平成二十一年度、二十二年度とも、受講者の約九割が、講習内容に対して、よい、大体よいとの好意的な評価をしております。教員免許更新制はその目的に沿った運用がなされていると考えられます。
また、御指摘の教員免許更新制においては、更新講習を受講、修了しないまま修了確認期限を経過した場合は、免許は失効することになります。このため、第一グループの教員については本年三月三十一日に修了確認期限を迎えることから、一昨年以降五度にわたり、特に第一グループの教員については、更新講習を修了し、本年一月三十一日までに都道府県教育委員会に更新の申請を行う必要があることを周知しておりますし、関係者に適切な対応をお願いしているところでございます。
○宮本委員 時間ですので、また追ってこれはやりたいと思いますけれども、それは、受けた先生が高評価をするということはあると思うんですね。しかし、大体保護者が、効果がないというのが上回っている。つまり、子供たちの親御さんの中では歴然と、効果がない方が上回っているということも見る必要があると思うんです。
大体、民主党は、マニフェストで教員免許更新制の抜本的見直しを公約したんですよ。その公約した政権のもとで、見直しを行わないまま免許失効者が出るような事態だけはあってはならないと私は思います。せめて、免許失効者が出ないように、直ちに救済策を講じるべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。