本分科会は平成二十三年二月二十三日(水曜日)委員会において、設置することに決した。
二月二十四日
本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
大串 博志君 金森 正君
城井 崇君 渡部 恒三君
馳 浩君 山内 康一君
二月二十四日
城井崇君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成二十三年二月二十五日(金曜日)
午前八時開議
出席分科員
主査 城井 崇君
阿知波吉信君 大串 博志君
大西 健介君 金森 正君
白石 洋一君 中林美恵子君
森山 浩行君 吉田 統彦君
渡部 恒三君 谷 公一君
馳 浩君 山内 康一君
兼務 加藤 勝信君 兼務 竹本 直一君
兼務 池坊 保子君 兼務 宮本 岳志君
…………………………………
文部科学大臣 高木 義明君
文部科学副大臣 笹木 竜三君
文部科学副大臣 鈴木 寛君
農林水産副大臣 筒井 信隆君
経済産業副大臣 池田 元久君
内閣府大臣政務官 阿久津幸彦君
内閣府大臣政務官 園田 康博君
文部科学大臣政務官 笠 浩史君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 岡田 太造君
政府参考人
(警察庁交通局長) 石井 隆之君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文教施設企画部長) 辰野 裕一君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 山中 伸一君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 磯田 文雄君
政府参考人
(文部科学省高等教育局私学部長) 河村 潤子君
政府参考人
(文部科学省科学技術・学術政策局長) 合田 隆史君
政府参考人
(文部科学省研究振興局長) 倉持 隆雄君
政府参考人
(文部科学省研究開発局長) 藤木 完治君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 布村 幸彦君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 篠田 幸昌君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 唐澤 剛君
政府参考人
(厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長) 生田 正之君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 朝日 弘君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 小林 裕幸君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
予算委員会専門員 春日 昇君
―――――――――――――
分科員の異動
二月二十五日
辞任 補欠選任
金森 正君 阿知波吉信君
渡部 恒三君 白石 洋一君
馳 浩君 谷 公一君
山内 康一君 柿澤 未途君
同日
辞任 補欠選任
阿知波吉信君 吉田 統彦君
白石 洋一君 中林美恵子君
谷 公一君 馳 浩君
柿澤 未途君 山内 康一君
同日
辞任 補欠選任
中林美恵子君 森山 浩行君
吉田 統彦君 金森 正君
同日
辞任 補欠選任
森山 浩行君 大西 健介君
同日
辞任 補欠選任
大西 健介君 渡部 恒三君
同日
第二分科員竹本直一君、第三分科員池坊保子君、第五分科員加藤勝信君及び第八分科員宮本岳志君が本分科兼務となった。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
平成二十三年度一般会計予算
平成二十三年度特別会計予算
平成二十三年度政府関係機関予算
(文部科学省所管)
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○城井主査 速記を起こしてください。
御出席を要請いたさせましたが、質疑予定者の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。
宮本岳志君。
○宮本分科員 日本共産党の宮本岳志です。
大臣は、先日の衆議院文部科学委員会における所信表明で、厳しい経済状況が続く中、子供が家計の状況によって学業を断念せざるを得なくなることが懸念されますと述べ、すべての意志ある人が希望する教育を受け、みずからの能力を高める機会を確保することは社会全体の責務です、本人や家庭だけが経済的負担を負うのではなく、社会全体として支え合うことが必要ですと述べられました。これは間違いないですね。
○高木国務大臣 間違いありません。
○宮本分科員 この言葉自体は本当に大事なことでありまして、私も賛成であります。問題は、現在審議されている予算案がそういうものになっているかどうかということだと思います。
この予算委員会で、先日、大臣に私は新卒者の就職難問題で質問させていただきました。昨年来、この問題で学生と懇談を重ねてまいりましたけれども、その中で出されたのは、就職難とともに奨学金の問題が出されてまいりました。
一社だけ最終面接に進んだが、内定はまだない、月に奨学金五万四千円を受給し、来年から十年かけて約二百六十万円を返済することになっているが、返せるかどうか不安ばかりの毎日だ、高校から大学まで六百万円の借金、院に行けば七百万円返さなければならなくなるから、大学院進学をあきらめたなど、学生や院生の肩に奨学金の返済問題が本当に重くのしかかっているのを肌身で感じました。就職ができなければ奨学金が返せないのは当然であって、これは当人たちに何の罪も責任もないわけであります。
そもそも政府は、今、就職採用活動について、卒業後三年以内の者を新卒者扱いとするということを企業に要請し、それにこたえる企業も出てきております。ならば、卒後三年新卒扱いで就活している期間は奨学金を返済猶予とするのは当然だと思うんですが、いかがでしょうか。
○高木国務大臣 宮本委員にお答えいたします。
今、御指摘のように、独立行政法人日本学生支援機構の行う奨学金貸与事業については、失業や低所得等の経済困難者については原則五年間を上限として返済猶予を認めております。
議員は、卒業後三年以内の未就職者に対しても奨学金の返済猶予をすべきではないか、こういう御指摘でございます。そのとおり、卒業後三年以内の方でも、このことに当てはまることについては本返還猶予制度の中で猶予をいただき、後、しっかりとした生活基盤の確立を目指していただきたい、このように考えております。
○宮本分科員 現行制度に最長五年の猶予期間があることはよく知っておるんです。私たちは、そもそもこの最長五年という制度自体に異論がありますけれども、それは後で議論するとして、仮に現行制度の枠内で考えてもこれはおかしいことになるんですね、大臣。
年収三百万円未満、最長五年の返済猶予期間というものは、大体、就職後五年間ぐらいたてば年収三百万円に達するだろう、こういうことを前提として組み立てられていると思うんですね。
しかし、三年間新卒扱いで就職活動をやるならば、三年後に就職した場合でもこれは新卒就職ということなわけですから、そこからやはり最長五年間返済猶予というものがなければ制度の整合性が成り立たない。私は、この三年間というものは、五年にカウントすることなくやはり猶予すべきだということを先ほど提案したんですが、いかがでしょうか。
○高木国務大臣 奨学金については、いわゆる多くの方々がこれを受けたいという希望も多いわけでございます。次なる人へもそういう寄与をしなきゃなりませんので、ある意味での限界については今の状況の中ではやむを得ないのではないかと。しかし、その中で、私どもとしてはいろいろな方法をもって修学のために御支援を申し上げたい、このように考えておるところであります。
○宮本分科員 次なる人に新たに貸し付けなければならない、これは当然のことでありますけれども、だから返せない人からも返してもらわなければならないというふうになるのが問題であって、やはりそういう新たな方に貸し付ける分の財源をきちっと確保することが必要だと思うんですね。
そもそも、現在、奨学金の返済に延滞が生じているという事態がありますけれども、それは中には返せるのに返さないという人もいるかもわかりませんけれども、圧倒的には、未曾有の就職難や非正規労働の蔓延など雇用環境の悪化に伴って、奨学金を返す気も十分あるが、返したくても返せないという人たちがふえているということが背景にあるわけですよ。
そこで、お答えいただきたいんですが、昨年十一月に、日本学生支援機構は「平成二十一年度 奨学金の延滞者に関する属性調査」というものの結果を発表いたしました。この調査結果で、「(一)本人の職業」では何と述べられているか、また「三、本人の年収について」の「(一)本人の年収」では何と述べられているか、お答えいただけますか。
○高木国務大臣 御指摘の調査は、日本学生支援機構の平成二十一年度における奨学金の延滞に陥っている方の属性に関する調査でありまして、本人の職業について及び年収についてということで整理をいたしております。
ともに、経済的な状況が相当厳しい方が延滞に陥っているという結果となっております。アルバイトの方やあるいは休職中の方、あるいは、ある意味では二百万なり三百万未満の方々、こういう方が延滞の大きな背景となっております。
○宮本分科員 この結果によりますと、延滞六カ月以上の方の場合、無延滞者と比べて正社員の割合が低く、アルバイト等や無職、休職中の割合が高くなっている。延滞六カ月以上の方の場合、三百万円未満と答えている者は八七・五%で、百万円未満の者に限っても四〇・七%であるのに対して、無延滞者の場合、三百万円未満との回答は四八・一%であることから、延滞六カ月以上者には低所得者が多く存在していると考えられる。
実に九割近い方々が三百万以内、そして年収百万未満が四割という結果が出ているわけですよ。もしそのような人から年二十万も三十万も返させるとしたら、逆に、その方が憲法二十五条の生存権にもかかわる問題となりかねません。延滞者の実に九割近くが年収三百万未満という状況で、これは十分、先ほど申し上げた猶予基準内に入る人たちなんですね。
この人たちは、決して返せるのに返していないのではありません。返したくても返せないというのが実態なわけです。しかも、その中には、高木大臣が所信で我が国の成長の最大のエンジンと位置づけた若手研究者が含まれております。
私は、先日、大学の非常勤講師の方々から直接赤裸々な状況をお伺いいたしました。ある私立大学の非常勤講師の方は、年収約百六十万、年収の低さから返済猶予とされてきたけれども、二年前に五年の猶予期限が切れて返還を求められている。その方の返還金支払い振り込み票を見せていただきましたけれども、六十二万七千円払えとなっておりました。延滞した二年間分の返済金が総額五十七万、これに何と延滞金一〇%が上乗せされて六十二万七千円というものであります。
大臣にお伺いしますけれども、年収百六十万円という生活保護水準以下という方で、六十二万七千円という額が払えると思われますか。
○高木国務大臣 かなり厳しいと思っております。
○宮本分科員 こういう非常勤講師の方々は、大学で授業を受け持っておられる学生たちから見れば、みんな先生です。今の年収は生活保護を受けようと思えば受けられる水準だが、できるだけそうはしたくない、でも、どう逆立ちしても奨学金を返済するお金は出てこない、こうおっしゃっておりました。
別の非常勤講師の方は、大学でフランス語を教えておられます。四十代の方ですけれども、日本の大学院博士課程を修了後フランスに渡って、フランスでフランスの博士号を取得して帰国をされた、大変優秀な方です。現在、三つの私立大学で計六こまの授業を受け持っておられますけれども、年収はおよそ二百万前後。大学院博士課程修了時まで受けた約五百万円の奨学金を月々約三万二千円ずつ返還することになっているが、二百万の年収では国民健康保険の一万六千円を支払うのがやっとだと話しておられました。今は返済猶予を受けているが、切れたらもう滞納しかないとのことでありました。この方にも私は直接お会いしましたけれども、我が国の学術を担う立派な研究者でした。
大臣、猶予期間を五年とか八年とか期間で区切るというところにもはや限界があるわけですよね。もちろん、理由をしんしゃくすることは必要だと思うんだけれども、このような正当な理由がある場合は、返済できるようになるまで、例えば年収三百万円に達するまでは猶予する、また、現在三百万円を超えている方でも、三百万円を割り込んで未満ということになればまた新たに猶予を受けられるようにする、所得証明をつけて申請すれば猶予する、こういう制度にするのは当たり前だと思うんですが、いかがでしょうか。
○高木国務大臣 委員も御承知かと思いますが、今、失業や低所得の方については原則五年間の猶予期間を持っておりまして、その後、奨学金の返済ができるようしっかりとした生活基盤の確立をしていただく、こういうことで考えております。
なお、災害とかあるいは疾病、生活保護などの理由によって、それらに該当する場合には、その理由が続く間、五年を超えて返還を猶予できることとしております。
現時点で返還猶予の期限を見直すことは考えておりませんが、経済的理由により返還が困難な方への柔軟な対応として、本年一月から、毎月の返還額を減額することで返還者の負担軽減を図る減額返還制度を導入し、きめ細かい返還が可能になるようにしたところであります。
○宮本分科員 大学で学生たちに先生と呼ばれ、大臣が我が国の成長のエンジンと言われる、まさに日本の未来を担う学術を担っている非常勤講師の方に、生活保護を受けた場合には猶予しますよと言ってみたって、当人たちは、できるだけそうはしたくない、しかし我々の生活実態もしんしゃくしてくれ、制度自身がやはりおかしいんじゃないかという声を上げておられるわけですよ。
私が先ほど申し上げたように、大体五年たったら三百万に達するだろうというこの見通しは、終身雇用で年功序列型で雇われるのが当たり前だった時代にはそれは一般論とし得たでしょうけれども、今の雇用状態というのはそういう状態じゃないわけですよ。五年たとうが十年たとうが、やはりそこまで達しないという働き方が蔓延しているわけであって、今、本当にこの制度設計そのものを見直さなければならないというふうに私は思います。
それで、今、首都圏でいいますと、私立大学は非常勤講師が大学教育を担っていると言っても過言ではありません。大学によっては、授業の六割を非常勤講師が担っているという大学さえございます。この先生方がこのような低賃金にあえいでいるのは、御本人の責任ではないんですよ。これまで大学院教育と大学教員養成制度のひずみがつくられてきた、そのことの結果としてこういう方々が残されてきたわけですね。
イギリスの例を紹介しますが、イギリスでは、年収三百万円以下の場合は返済猶予、卒業後二十五年経過あるいは満六十五歳で返還義務が消滅する、こういう仕組みになっています。そのリスクは国が負担するということになっております。
それから、先ほど大臣が述べられた、十年間に返済期間を延長して半額に下げるという、ことし一月から導入された制度ですね。これは、半額に仮に減らしたとしても、先ほど申し上げたように、年収百六十万とか二百万という状況では、その半額でさえ簡単に返せる状況じゃないんですね。
それで、イギリスでは返済額は所得の三・八%を上限にする、オーストラリアでは所得の八%を上限にして、所得から返済額を決めるというふうにしているわけですよ。所得と無関係に定額で、何があろうが返せ、こういう制度は諸外国はとっていないんですね。
私は、やはり、正当な事情があり、返済意欲はあるのに返済できないという人については、定額返済方式だけでなく、諸外国のように、ちゃんと収入に応じて、返還者と返済額を相談して、そして払える額をきちっと払っていただく、納めていただく、こういう弾力的な返済制度に切りかえるべきだ、見直すべきだというふうに思いますけれども、大臣、そうじゃありませんか。
○高木国務大臣 御指摘の収入に応じた返還制度、いわゆる所得連動型と言っていいんでしょうか、今、イギリスやオーストラリアの例を挙げられました。そのための前提として、我が国の税制などさまざまな制度との調整が必要になってまいります。したがって、直ちにこのことを実施することは困難になる、このように考えております。
いずれにいたしましても、減額返還制度を着実に実施することなどによって、個々の事情について可能な限り柔軟に対応していきたい、このようには考えております。
○宮本分科員 ぜひ検討はしていただきたいと思うんですね。実態をちゃんとつかんでいただいて、そして、きちっと払えるだけを払っていただくということも大事なことですし、御当人たちも、払える額であれば払いたいというお気持ちを持っているわけですから、ここは定額でなければまかりならぬというんじゃなくて、きちっとやはり誠意を持って話し合い、そしてそういう弾力的な制度を検討するということはお願いをしたいと思います。
それで、延滞したらどうなるかですよ。私、日本学生支援機構が出しているパンフレットを見て驚きました。延滞三カ月で個人信用情報機関に個人情報が登録されるとあります。これはブラックリストに載せるということですね。御丁寧にもパンフレットには、「登録されると、クレジットカードが作れなくなったり、住宅ローンを組めなくなる場合があります。」と、おどしのような言葉が書いてあります。
今では、カード会社が賃貸住宅の大家と連携してカードで家賃を決済するというケースがふえておりますから、そうなると賃貸住宅さえ借りられなくなるわけです。延滞四カ月になると民間債権回収会社、サービサーからの執拗な回収が始まり、延滞九カ月で法的措置。二〇一一年度からは、延滞率の高い学校名の公表も行われるわけですよ。これでは、もはや奨学金制度ではないですよ。町金の取り立てみたいなものではありませんか。
諸外国では、勉強しようという若者には、本来、給費制、返済の必要のない奨学金で支えるというのが常識なんです。国の成長の最大のエンジンというんだから、当然それは給費制で支えるというのが精神だと思います。にもかかわらず、金を貸して利子を取り、延滞すれば一割もの高利を押しつけて、ブラックリストに載せて追い立て回す、そんなことをやっている国がどこにありますか。
直ちにこんなやり方はやめるように求めたいと思いますが、大臣、いかがですか。
○高木国務大臣 今、現下の厳しい経済情勢の中で、雇用情勢も深刻であります。ただいまの個人信用情報機関の活用ということについては、言うまでもなく次の学生への貸与の原資となる、その返還金の回収促進ということも考えられるものでありまして、また、このことは、延滞者に対する各種ローンの過剰貸し付けを抑制するとか、あるいは多重債務化への移行を防止するとか、いわば教育的な意義もないでもない、私はこのように思っております。
その運用についてですけれども、これは本人の同意を得た上で三カ月以上延滞した者に限られておること、これが一つ。また、返還が延滞している者の中には、経済的理由等により真に返還が困難な者と、返還ができるのにしない者と、双方がいることから、真に返還が困難な者については返還猶予制度により猶予を認め、その者については個人の信用情報機関への情報提供はしないことにしております。
このような制度の趣旨及び返還猶予制度の十分な周知徹底を図ることがまず何よりであります。また、返還相談体制の充実というのも、これは親身になってやらなきゃなりません。いずれにしても、学生や返還者の不安の解消については取り組んでまいりたいと思います。
○宮本分科員 次の人に貸さなければいかぬからやるというのは本当にひどい話であって、次の人に貸すためのお金というのは当然公的に準備するものであって、そのためにどんな取り立て方でもやっていいんだという話にはならないわけですよ。ましてや、教育的な意義があるというのは余りにもひどい言い方だ。これは、この場で決着がつくまでできませんので、引き続き文部科学委員会でも大臣とぜひ論戦を続けたいというふうに思います。
さて、次のテーマですけれども、この間、授業料の滞納など経済的貧困が理由で学校を卒業できない、いわゆる卒業クライシスというのが問題になってきました。
これを受けて政府は、今年度から公立高校の授業料の不徴収と私立高校生への就学支援金の制度をスタートさせました。しかし、これで卒業クライシスがなくなったと思ったら大きな間違いなんですね。私立学校の授業料の高さに比べて就学支援金と都道府県が実施する減免制度が貧困なために、多額の学費負担が残るという状況が放置されたままになっています。
全国私立学校教職員組合連合が昨年九月末段階で実施した調査結果を見ますと、三カ月以上の学費滞納者数は就学支援金制度実施前とほとんど変わりがありません。
ことし一月三十日と二月六日に実施した私立高校生卒業・学費問題緊急ホットライン、この中身を聞かせていただくと、母子家庭で高三の子を持つ母、約十万の月給と母子手当で学費を払ってきたが、雪で収入が減り、十二月は五万七千円、一月は二万七千円の収入しかなかった、就学支援金を引いた授業料六カ月分、約八万円を滞納しているが、二月十日までに納入しないと卒業できないとか、高三の担任、収入が少なく自分のバイト代も学費に入れているけれども、一年時からの滞納が八十万円ある、救済できるかなど、昨年同様、切実で深刻な声が寄せられました。
今月、厚生労働省は授業料滞納についても生活福祉資金による貸し付けを決めたことで、胸をなでおろしている家庭も関係者も多いです。しかし、これは厚生労働省のやった仕事なんですね。
本人や家庭だけが経済的負担を負うのではなく、社会全体として支え合うことが必要と言いながら、これでは本人や家庭に経済的負担を押しつけたままだということになるのではありませんか。大臣、この認識をお伺いしたいと思います。
○高木国務大臣 私立高校生の教育負担については、昨年の四月から就学支援金の支給を開始しております。特に、低所得者世帯の生徒には支給額を増額し、手厚く支援をしております。
また、国は、授業料減免補助や奨学金事業を行う都道府県に対して、国庫補助、地方交付税措置や高校生修学支援基金による支援を行っておるところであります。
さらに、先ほど議員も御指摘ありましたように、厚生労働省においても、昨年度に引き続き、各都道府県社会福祉協議会の行っている生活福祉資金において、高校生の授業料等の滞納についても貸与対象とする旨決定されたところであります。
これらを活用して、学ぶ意欲のある高校生が経済的な理由によって修学を断念することがないように、各都道府県に対して、これからも支援策の周知徹底、また、生徒、家庭の事情に応じたきめ細かい対応について、文部科学大臣政務官名で通知をしておるところでございます。
○宮本分科員 去年も、修学支援基金を最大限活用してと川端前大臣も述べられたわけですよ。
では聞きますけれども、修学支援基金は現在全体でどれだけ残っておりますか。さらには、執行率の高い二県、低い二県の執行状況を残金と執行率でお答えいただけますか。
○高木国務大臣 高校生の修学支援基金の総額は約四百八十六億円であります。平成二十一年度の取り崩し額は約五十億円であります。また、今年度の取り崩し額は、現時点では明らかではありませんが、平成二十二年の九月三十日現在で各都道府県が算出した執行見込み額によりますと、百十七億円程度となっております。したがいまして、平成二十二年度末の基金残高見込み額は三百十八億円程度である、このように承知をいたしております。(宮本分科員「執行率の高いところと低いところは」と呼ぶ)
また、都道府県別の基金の執行額の割合については、平成二十一年度実績では、最も高い県は千葉県、次いで富山県であります。それぞれ三三・八%、三一・八%となっております。一方、基金に対する執行額の割合が最も低い府県は大阪府と新潟県であって、両県とも三・五%となっております。
○宮本分科員 高いところは、私は京都と富山だと思うんですね。京都と富山の残金をお答えいただけますか。
○高木国務大臣 京都と富山の残金はゼロという報告を受けております。
○宮本分科員 ゼロなんですよ。京都と富山にはもうお金はないんですね。
それで、これをやはりしっかりと活用することが求められていると思うんですね。しかも、活用しようと思えば、ゼロのところには新たに基金を積まなきゃなりません。これを活用してとおっしゃるけれども、やはり基金を新たにどう積むのかということも考えなきゃならないし、なぜこれが活用されないのかというその理由にもメスを入れなきゃならないと思うんですが、その点、大臣、どうお考えになっていますか。
○高木国務大臣 この件につきましては、修学支援基金の取り崩し見込みを精査いたしまして、各都道府県において充実されるように、こちらからとしても指導をしてまいりたいと思っております。
○宮本分科員 これは、使い勝手が悪い理由ははっきりしているんですよ。それは、結局、二分の一負担というものを地方に求めているからなんですね。
それで、おととしは、二十三道府県から、もっと都道府県負担をなくしてほしいという要望が出されました。そしてこの間も、大きく使い残した大阪府からは、授業料や入学料の減免に係る所要額への全額充当など、地域の実情に応じて活用できる制度とすることを求める要望書が出されております。新潟県や京都府も、都道府県が新たな補助要件を新設した際の都道府県二分の一負担を撤廃してほしいと要望しているわけですね。
そこで、最後に大臣に聞きますけれども、この二分の一負担の要件を撤廃するということ、それから大阪が求めているように、授業料減免の取り崩し要件を例えば五百万円に緩和すれば、そういった家庭や子供たちがぐんと救われると思うんですよ。こういう改善をするべきだと思いますが、大臣の答弁をいただきたいと思います。
○城井主査 高木大臣、簡潔にお願いします。
○高木国務大臣 二分の一の地方負担をなくすことについては、授業料減免補助が地域の実態に応じ都道府県の事業として行われておる、国と地方の役割分担の観点から、また既に手厚い補助をしている都道府県との公平性の観点から、困難であると考えております。
○宮本分科員 ぜひ大臣のお言葉どおりの政治をやっていただくように、引き続き文部科学委員会でも議論をしたいと思います。
以上で終わります。