平成二十二年十一月二十四日(水曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 田中眞紀子君
理事 佐藤ゆうこ君 理事 高井 美穂君
理事 松崎 哲久君 理事 村上 史好君
理事 本村賢太郎君 理事 下村 博文君
理事 馳 浩君 理事 池坊 保子君
石井登志郎君 石森 久嗣君
磯谷香代子君 大山 昌宏君
岡田 康裕君 奥村 展三君
金森 正君 川口 浩君
川越 孝洋君 熊谷 貞俊君
桑原 功君 小林 正枝君
斎藤やすのり君 笹木 竜三君
田島 一成君 高井 崇志君
高邑 勉君 津村 啓介君
中屋 大介君 野木 実君
野田 国義君 浜本 宏君
室井 秀子君 笠 浩史君
あべ 俊子君 伊東 良孝君
遠藤 利明君 河村 建夫君
塩谷 立君 田野瀬良太郎君
永岡 桂子君 古屋 圭司君
松野 博一君 富田 茂之君
宮本 岳志君 城内 実君
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文部科学大臣 高木 義明君
文部科学副大臣 笹木 竜三君
文部科学副大臣 鈴木 寛君
文部科学大臣政務官 笠 浩史君
文部科学大臣政務官 林 久美子君
会計検査院事務総局第四局長 金刺 保君
政府参考人
(文部科学省生涯学習政策局長) 板東久美子君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 山中 伸一君
政府参考人
(文化庁次長) 吉田 大輔君
文部科学委員会専門員 佐々木 努君
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委員の異動
十一月二十四日
辞任 補欠選任
奥村 展三君 斎藤やすのり君
金森 正君 小林 正枝君
川口 浩君 石森 久嗣君
瑞慶覧長敏君 野田 国義君
田村 謙治君 高邑 勉君
高野 守君 桑原 功君
土肥 隆一君 岡田 康裕君
古屋 圭司君 伊東 良孝君
同日
辞任 補欠選任
石森 久嗣君 川口 浩君
岡田 康裕君 土肥 隆一君
桑原 功君 高野 守君
小林 正枝君 金森 正君
斎藤やすのり君 奥村 展三君
高邑 勉君 高井 崇志君
野田 国義君 瑞慶覧長敏君
伊東 良孝君 古屋 圭司君
同日
辞任 補欠選任
高井 崇志君 田村 謙治君
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本日の会議に付した案件
会計検査院当局者出頭要求に関する件
政府参考人出頭要求に関する件
展覧会における美術品損害の補償に関する法律案(内閣提出第一四号)
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○田中委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
この法案で創設される美術品損害国家補償制度は、展覧会主催者の保険料負担が軽減され、展覧会の水準の向上、企画力の充実につながるほか、広く全国ですぐれた展覧会が開催されるなど、国民の美術品鑑賞機会の拡大につながり、賛成できるものと考えております。
問題は、保険料負担が軽減されれば多様な展覧会を全国各地で開催することができるのか、その主体となる美術館、博物館が今どうなっているのかを見る必要があると思うんです。美術館、博物館の現状は、財政難、指定管理者制度、独立行政法人化など、激変をしております。
日本経済新聞が出版した本でありますけれども、「日経 五つ星の美術館」という本では、「将来、美術史家たちは二十一世紀初めの日本のミュージアムが置かれた状況について、」「「美術館受難の時代だった」――。そう総括する声が出てきてもおかしくない。」と紹介しております。
日本学術会議が美術品国家補償制度を要望しているということも政府の説明からありましたけれども、二〇〇七年五月二十四日に発表されたこの学術会議の声明のタイトルは、「博物館の危機をのりこえるために」と題するものでありまして、この制度の実現だけを要望しているわけではなくて、博物館、美術館が深刻な問題を抱えていることを紹介しております。「現在、国公立の博物館をめぐる制度的環境は、昨今の行財政改革により激変している。」こう述べて、指定管理者制度、市場化テスト等々を挙げ、「日本学術会議は、学術・芸術・文化の蓄積・普及装置としての国公立の博物館が、その機能充実を目的とした改革ではなく、財政および経済効率を優先する改革に影響されて、社会的役割と機能を十分に発揮できない状況に陥る可能性があることを憂慮するものである。」学術会議もそう指摘しているわけですね。
美術館受難の時代と言われ、博物館、美術館が、日本学術会議の声明で指摘されているように、「社会的役割と機能を十分に発揮できない状況に陥る可能性がある」、これは文科大臣に、そういう現状についてきちっと認識がおありかどうか、お尋ねしたいと思います。
○高木国務大臣 日本学術会議が平成十九年に発表した声明、いわゆる「博物館の危機をのりこえるために」では、昨今の行財政改革による環境変化のために、博物館がその「社会的役割と機能を十分に発揮できない状況に陥る可能性がある」、こういう指摘がなされておることは承知をしております。
この状況を乗り越えるためには、この声明では、美術品政府補償制度の導入、これは今議論しておられる案件ですが、このほか、国立博物館、美術館の特性に配慮した個別の法人制度の構築や、指定管理者制度の適切な運用等についても提言をされております。
また、文化審議会ワーキンググループからは、一つには、行政改革等により、全国の博物館は経費削減を余儀なくされておること、あるいは資料購入予算がほとんどないこと、あるいは学芸員資格を持つ専門職員の減少がある、そして、指定管理者制度の導入により公立博物館としての機能低下、そういう課題が指摘をされておりまして、私はこれも重く受けとめております。
私も先日、国立の博物館、美術館を視察をいたしまして、もちろん作品の拝見はもとよりでございましたが、むしろ、それを点検、整備しておられる方々のところにも出てまいりました。大変な御苦労があるのだなと、こういうことも実感をした次第であります。
○宮本委員 問題点もるる述べられましたけれども、文部科学省が委託した二〇〇八年の博物館総合調査、これによりますと、「この十年余り、博物館は人的にも財政的にも厳しい状況に置かれてきた。」職員構成の調査を見ますと、「博物館の人的基盤は以前に比べ弱まっている。」「予算規模でも縮小傾向にあるものと見受けられる。」としております。
特に今私が深刻だと感じたのは、資料購入の予算なんですね。予算がなかったという博物館が博物館全体の実に五割を超えております。「「資料」は博物館の事業・活動の基礎である。資料購入のための予算が確保されないことのインパクトは、その基礎の揺らぎにつながり得る。」と指摘がされております。
博物館、美術館の基礎が揺らいでいるとの調査結果は極めて深刻に受けとめるべきだと思いますけれども、直ちに、こういった資料購入のための予算確保など、まさに基盤を、基礎を立て直すために国として必要な支援をすべきだと考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。
○高木国務大臣 平成二十年、二〇〇八年度の文部科学省が日本博物館協会に委託した調査によりますと、美術館を含む博物館の予算については、減っていると答えた館の割合は五〇%、資料購入予算がなかったと答えた館の割合が五七%になっております。このような、美術館、博物館の予算が減少している状況を私は非常に残念に思っておるところでございます。
私といたしましては、このような事態を重く受けとめておりまして、現在開かれております文化審議会の審議等も踏まえ、私としては、もちろん、今回のこの美術品の政府補償制度を初めといたしまして、特に我が国ではおくれておるといいますか不足といいますか、寄附税制などの充実をしなきゃならぬ、国としても当然ながら必要な予算の確保をしなきゃならぬ、こういうことを常々考えておりますけれども、今回のこの議論を通じて、さらにその充実に努めてまいる所存でございます。
○宮本委員 寄附ももちろん結構ですけれども、やはり、おっしゃったように、国の予算をきちっと確保するということが基本でありますから。
それで、公立の美術館、地方の美術館については、さらに一層深刻な事態があるんです。先ほどの日経の本の中に、「美術館を蝕む「蓄積疲労」」「地方文化の拠点は内側から少しずつ崩れ始めている。」という指摘がなされております。
美術館は、開館しているだけで経費がかかります。栃木県の県立美術館、紹介されていますが、展示室の監視員の人件費や光熱費で一日二十万円かかるが、予算の削減でやりくりがきかず、もう打つ手がないとして、開館日を減らすことになったと言われております。
埼玉県立近代美術館、展覧会をするにも、「遠方の美術館から作品を運ぶ輸送費がないため、県内の美術館などから無料か低額で借りられる作品を選び、学芸員自らが車を運転して運ぶ。」こういう話ですね。「大型の充実した企画展をつくるのは不可能」だと担当者はこの本で述べておられます。
それから長野県諏訪市美術館、作品の保管、修復も美術館にとって大事な役割だが、収蔵品が展示にたえられないレベルになっても、年間十万円しか修復費がなくて何もできないなどなど、公立の美術館では、開館日数を減らす、展覧会が開けない、作品が修復できないなど、既に美術館としての体をなしていない現状すら見られるわけです。
この点、地方の美術館、博物館に対して国としてどういう支援を考えておられるか、支援すべきだと思うんですが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
○高木国務大臣 私も、委員指摘のとおり、特に地方における美術館、博物館、展覧会、これの開催が非常に重要だと思っております。東京を初め都会ではそれなりの受け皿がございますが、地方においては非常にそういうのは厳しいという認識を持っております。
そういう中で、平成二十一年度からは、地方、地域連携のみならず、国際的な視野も含めて、展覧会の開催や体験型の事業やシンポジウム等への支援を目的としております美術館・歴史博物館活動基盤整備支援事業、これを実施しております。平成二十一年度の予算額は一億九千八百万、平成二十二年度の予算枠は一億七千八百万、少し減少して残念でございますが、そのような状況になっております。
また、いわゆる美術館、博物館を支える人、人材、これまた非常に重要でございまして、特に、学芸員とかあるいは管理運営の担当者、こういった方々を対象にする各種の研修事業等を実施しております。
これらの施策を通じまして、今後とも、とりわけ地方の公立美術館、博物館の予算、人員の支援を努めてまいりたい、このように考えております。
○宮本委員 一億九千万というのでは大変心もとないわけですし、しかも、それがさらに二千万減らされているというのは本当に困ったことだと。やはりしっかりと確保していただく必要があると思うんですけれども、公立の美術館や博物館が厳しい状況にあればこそ、やはり国立の果たす役割はより大きいということになろうかと思いますね。
それで、国立の美術館、博物館は二〇〇一年から独立行政法人化されております。
そこでお伺いしたいんですが、独法化後の運営費交付金の推移、そして職員の人数がどう推移しているか、ちょっとこれ、お答えいただけますか。
○高木国務大臣 運営交付金の件でありますが、国立美術館については、平成二十一年度五十七億七千三百万、平成二十二年度が五十八億五千九百万、また、国立博物館につきましては、二十一年度が五十六億二千百万、平成二十二年度が五十四億五千二百万、このようになっております。
○宮本委員 それはふえているということですか。
○高木国務大臣 今、私は意図的に説明をしたわけではございませんが、もっと前から言いますと、例えば平成十八年度は六十七億七千九百万、これは国立美術館、それから、国立博物館は六十一億三百万、こういうふうになっておりますが、それからすれば減少しております。
○宮本委員 そうなんですね。独法化する前と比べれば、これは明確に減少しているわけなんです。予算としては三割減、職員数でいいますとほぼ横ばいなんですけれども、この間に、博物館でいえば九州国立博物館が新たにオープンしました。美術館も国立新美術館がオープンしておりますから、それで横ばいということは、結局、一館当たりでは減少したということになります。
国立博物館や美術館は、既にかなり効率化を進めてこられているんですね。国際比較を今回調べてみましたけれども、職員一人当たりの入場者数は、日本の国立博物館は二・三万人、国立美術館は四万人入館者があります。イギリスの大英博物館はわずか〇・六万人であります。職員一人当たりの展示面積、日本の国立博物館は百四十二平方メートル、職員一人当たりです。美術館の方は、二百六十六平方メートルに対しフランスのルーブル美術館は、職員一人当たり約四十平方メートルにすぎないわけです。予算も人もふえないという現状で、効率化も限界に来ているというふうに思います。
毎年とにかく予算を減らす、人はふやさないというやり方はやめて、やはりしっかりと予算も人も確保すべきだと考えますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
○高木国務大臣 質問もございましたように、単純な比較は困難であると私は思いますが、先ほど述べられたように、世界の、例えばルーブル美術館、大英博物館と比較がありましたけれども、少ない予算、職員数で我が国は運営をしておる、したがって、こういった財源の方も、また職員、陣容についても、減少傾向にあるということは言われると思っております。
このような状況でございます。独立行政法人をめぐる問題はいろいろ多いわけで、極めて厳しい状況にもあることは御承知のとおりでありますけれども、その中にあって私どもは、まさに文化大国、芸術大国、そういう目標を持ちながら、必要な予算の確保あるいは職員の充実、これについて努めてまいりたい、このように決意をいたしております。
○宮本委員 運営費交付金が減らされる中で、国立美術館の美術品の収集にも陰りが出ていると言わざるを得ません。
国立美術館の美術品の収集について、美術館の昨年度、二〇〇九年度の外部評価で指摘がされております。「運営費交付金が年々減額されていく中にあって、美術作品等の購入、寄贈が、継続的に行われていることを評価する。」としながら、「欧米諸国においてそれぞれの国を代表する美術館にくらべると、日本の国立美術館のコレクションが充実していないことは残念ながら否定できない事実である。」「国の政策として抜本的な取り組みが求められる。」これが外部評価でも指摘されていることなんですね。
それで、国としてこのコレクションの充実のためにしっかりと策を打つべきだと思うんですが、この点、大臣、どうお考えでしょうか。
○高木国務大臣 御指摘のとおり、日本の国立美術館、博物館のいわゆる収蔵品、コレクション、これは諸外国と比較して十分と言えないと思っております。例えば収蔵品については、国立美術館が約三万三千点、国立博物館が約十二万二千点あるのに対して、大英博物館は約八百万点、ルーブル美術館は約三十五万点であります。
先ほどの御指摘のように、博物館のコレクションの充実については、本年の四月の事業仕分け第二弾でもこれがテーマになっておりますが、この中では、国の負担をふやさないとしつつも、機動的な美術品購入が可能になる仕組みと適切な制度のあり方を検討すること、こういう評価を受けたところでありまして、私どもとしましては、今後の望ましい運営のあり方についてことしの九月に、国立文化施設等に関する検討会、これを設置をいたしました。
有識者、専門家の皆さん方の御議論を今精力的に行っていただいておるところでございまして、もう来月にもこの論点整理がある予定でございますので、引き続き、御指摘のとおりの検討をしてまいりたいと思っております。
○宮本委員 最後にお伺いするんですけれども、美術史家であり評論家でもある高階秀爾さんが、展覧会の開催についてこういうふうにお書きになっております。
展覧会は、必要な調査に始まる準備段階から作品借用の交渉、調整を経て実現に至るまで、何年もかかるのが普通だと。特に、最も重要な作品の借用に関しては、国内外の美術館や個人の所蔵家から十分な信頼感を得ることが絶対的な条件となる。作品を貸す方にしてみれば、信頼の置けない相手に貴重な作品を預けることができないのは当然の話だと。だから、そういう信頼関係というのは一朝一夕に形成されるものではなく、多年にわたる実績やさまざまの交流、協力を重ねることによって築き上げられるものだと。この点で、近年問題になっている指定管理者制度というのは、美術館の活動にはなじまないことの大きな理由の一つなんだと。やはりきちっと公的に責任を持つ必要があるということを高階さんも指摘をされているんです。
私、ここで最後にお伺いするんですけれども、公の施設を民間に明け渡す指定管理者制度というものについては、そのものも問題ですけれども、美術館、博物館、図書館など社会教育施設には指定管理者制度はやめるべきだと私は思いますけれども、最後に大臣の御見解をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
○高木国務大臣 指定管理者制度については、民間のノウハウが活用できて、運営自体が非常に活力が出てくるんじゃないか、そういうメリットも言われておりますが、一方で、指定管理者制度が数年ごとにかわって、長期的な見通しやあるいはまた後継者の育成ができない、そういう意見も出ております。
そういう意味で、私たちは、ことし六月の文化審議会の部会の報告においては、「国として博物館が指定管理者制度を導入する際のガイドライン等を作成する必要がある。」こういう提言もいただきました。
したがいまして、私たちは、地域の実情に応じた適切な対応ができますように私たちとしては働きかけをしていきたいと思っております。
以上です。
○宮本委員 指定管理者制度はやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。