平成二十二年九月八日(水曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 池坊 保子君
理事 石井登志郎君 理事 小野塚勝俊君
理事 黒田 雄君 理事 佐藤ゆうこ君
理事 園田 康博君 理事 菅原 一秀君
理事 松浪 健太君 理事 高木美智代君
大泉ひろこ君 大山 昌宏君
京野 公子君 小林 正枝君
道休誠一郎君 初鹿 明博君
平山 泰朗君 室井 秀子君
谷田川 元君 山崎 摩耶君
山本 剛正君 柚木 道義君
あべ 俊子君 小渕 優子君
北村 茂男君 宮本 岳志君
吉泉 秀男君
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国務大臣 荒井 聰君
内閣府副大臣 大島 敦君
総務副大臣 渡辺 周君
厚生労働副大臣 細川 律夫君
内閣府大臣政務官 泉 健太君
文部科学大臣政務官 高井 美穂君
厚生労働大臣政務官 山井 和則君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 樋口 建史君
政府参考人
(警察庁交通局長) 石井 隆之君
政府参考人
(法務省民事局長) 原 優君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 石井 淳子君
政府参考人
(厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長) 生田 正之君
衆議院調査局第一特別調査室長 金子 穰治君
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委員の異動
九月八日
辞任 補欠選任
打越あかし君 平山 泰朗君
馳 浩君 北村 茂男君
同日
辞任 補欠選任
平山 泰朗君 谷田川 元君
北村 茂男君 馳 浩君
同日
辞任 補欠選任
谷田川 元君 打越あかし君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
青少年問題に関する件
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○池坊委員長 次に、宮本岳志さん。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
前回に引き続き、児童虐待防止の対策についてお伺いをいたします。
さきの大阪市西区のあの事件がございまして、大阪府の橋下知事はみずから、虐待の疑い事例も含め、二十四時間体制での通報を呼びかけるとともに、八月の九日から三十一日まで大阪府作成の二種類のテレビコマーシャルを放送いたしました。テレビの効果は絶大でありまして、通報が劇的にふえたと聞いております。
コマーシャルの始まった八月九日から三十一日までの通報件数を把握しておられるでしょうか。
○細川副大臣 お答えする前に、先ほどの高木委員の質問の中で、私、社会福祉士と申し上げましたが、あれは児童福祉司の間違いでありましたので、訂正させていただきます。
今、宮本委員の方から御質問のありました件数でありますけれども、これは大阪府の方に確認をいたしましたところ、八月九日のテレビのコマーシャルの開始から八月の末までに、二百八十三件の虐待通告があったということでございます。
○宮本委員 二十二日間で二百八十三件ですから、一カ月に換算すると三百八十一件になると思います。昨年の八月が百十四件、比べると三・三倍にふえる計算になります。
これはもちろんよいことでありまして、おそれも含めてどんどん通報していただくことは大事なことなんです。ただ、その間の職員体制について、これは厚生労働省、把握しておりますか。
○細川副大臣 お答えいたします。
大阪府の児童相談所、これは六カ所ありますけれども、そこにおけます職員の配置状況は、平成二十二年四月一日現在で、児童福祉司が百三十七名、児童心理司が三十九名となっているところでございます。
○宮本委員 それはもともとの体制なんですけれども、とにかく通報がどんどんふえていっているんだが、その体制の方がどうふやされているのかと私は現場の方々からもお話を聞きました。
大体一時窓口というのは、大阪の中央子ども家庭センター、ここ一元で受けているというんですね。これは、一時保護所があるところで、そこが二十四時間の体制をとっているから、そこに電話がかかればとれるだろうという話になっておりまして、そして、そこには、結局、二十四時間虐待通報体制のための正規職員が配置されていない。通報を受けたら、実際に子どもを保護に走るのは、大阪府下の各子ども家庭センターの職員が電話で連絡を受けて行くんですけれども、それはまさに善意とボランティアで行くんだ。だから、携帯電話を持って、いつ電話が入っても出かけられるような体制をとっている、拘束されているというふうに聞きました。
テレビコマーシャル、もちろんいいことでありますし、そして厚労省は、四十八時間以内、目視での確認ということを徹底する通達をお出しになられた。これも重要な、大事なことであることは言うまでもありません。
ただ、そうやって三・三倍に通報はふえるわ、厚労省は四十八時間以内に目視でやれというふうに言うわ、しかし体制の方はこういう形でふえていないということになれば、それこそ職員は死ぬまで働けと言われているのに等しい状況になります。
前回の委員会で山井厚生労働大臣政務官は、視察に行った足立区の児童相談所で相談員の増員を求める声を聞いたというふうに答弁でも言われましたね。今回の概算要求で、これは抜本的にふえるということになるんでしょうか。
○細川副大臣 宮本委員御指摘のように、相談件数がどんどんふえてきている、そうすると現場の職員がそれに対応しなきゃいかぬ、これは、そういう職場の体制をしっかりと充実していくということについては、私どももしっかり認識をしているつもりでございます。
そこで、これまでも、先ほどから申し上げましたように、いろいろと数なんかもふやしてまいっておりますけれども、二十三年度の概算要求に加えましては、これまでのあれに加えまして、児童福祉司のサポート職員、これは児童福祉司のOBとかあるいは保健師などの皆さんでありますけれども、こういう人たちを配置いたしまして、児童相談所の個別のケースの対応や市町村に対する指導、支援を行う体制を強化する。
それと、それに加えまして、子どもや保護者に対する相談支援体制を強化するために、児童家庭支援センターの箇所数の増加。これは現状では七十一カ所でありますけれども、二十三年度予算では百八カ所にしたい。それから、将来的には、二十六年でありますけれども、百二十カ所という目標で今取り組んでいるところでございます。
先生が御指摘のとおり、しっかり職員体制はやっていかなければということで、厚生労働省としてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。
○宮本委員 今、サポート職員というのを置くということでありますが、何人配置することになりますか。
○細川副大臣 二百五人ということでございます。
○宮本委員 各児童相談所に一名ということですから、二百五人ということになるんですね。
この児童家庭支援センターの方もたった四カ所の増。サポート職員というのもOBを二百五人ふやすというだけでありまして、これでは、今言っているような三・三倍にもふえてきつつあるような状況、そして、四十八時間以内にということで、今現場に求めている状況から見たら、やはりなかなか受け皿としては心もとないと言わなければならないと思います。やはり人の配置、その予算の確保、これはしっかりと求めておきたいというふうに思うんですね。
それで、ことしの六月に我が党の大阪府委員会が、大阪で続発する児童虐待問題を受けまして、子どもの虐待問題を考えるシンポジウムというものを開催させていただきました。
ケースワーカーやスクールソーシャルワーカーなど現場の専門家の方とともに、本委員会でも大変御活躍をいただいた石井郁子前衆議院議員がここで報告をされております。私も石井先輩の報告を学ばせていただきました。ここで石井さんは、児童虐待防止法の成立、改正にかかわってきた者として、人の配置、予算の確保など必要な体制をしっかりとるということとともに、大事なのは、発生させないこと、未然に防ぐことだというふうに述べられております。
それで、私ども取材をさせていただいた北海道大学の松本伊智朗先生も、同じように、この大阪の事件についてこう述べておられるんです。
事件の母親が無責任のかたまりのような報道もされましたが、最後の局面ではそうだったかもしれませんが、そうなる過程はこの母親だけの特異なものではなかった
今の日本の社会は、子どものことは親次第、親に何かあったらそれっきりという状態です。今回のケースはその典型ですし、これからもこうしたケースは起こりうるでしょう。子育ての責任を親だけに押し付けていては、問題は解決しません。
一般的な「子育て支援」というより、生活の基盤が危うくて、人と人との関係をつくることが非常に困難な、社会の底辺で流動し分散し孤立化している、傷つけられた人たちをどうするか、そうした人たちへの手厚い支援が必要です。
こういうふうに指摘をされているわけですね。
ですから、調査によれば、虐待につながりかねない家庭のリスク、これは、一人親家庭であるとか親族、近親からの孤独であるとか経済的困難、こういうものが一つのリスクとして指摘をされているわけですから、また、不安定就労というのも指摘をされておりますから、それらが複雑に重なり合って、背景にあって問題が起こっているということだと思うんですよ。
そこで、一人親家庭等々に対する特別の手厚い社会的な支えが必要だということを石井さんもこのシンポジウムで指摘されておりました。
一つは、貧困に対する支えが要るということですね。OECDの調査によりますと、我が国の一人親家庭、とりわけ母子家庭の貧困率は五七・九%に上っております。OECDの平均は一九・九%ですから、母子家庭の貧困率が日本は突出していると言わなければなりません。平均年収は二百十三万円、こういう状況でありますから、全世帯の平均五百六十四万円に比べても四割以下程度ということになっています。
ですから、まずこういう貧困にしっかり対応する。生活を支えるという点で、例えば生活保護というものについても、必要なところには出すということをきちっとさせていくことも必要でしょうし、生活を支えるさまざまな施策が要ると思います。
もう一つは、保育所の役割というものも大きいと思うんですね。今回の事件を見ておりまして、子どもを保育所に入所させているという事例がほとんどないんですよ。保育所に通っていた子どもというのはほとんどないんですね。もしも保育所に通っていたらこの子どもの状況をつかめたかもしれない、保育の関係者はみんなそういうふうに言っているわけです。
その点で、これは厚生労働省にしっかり聞きたいんですけれども、一つは、一人親家庭に対する貧困生活の支え、これはどういうふうに考えているかということ。もう一つは、保育所にきちっと優先的に、社会的に一人親家庭の子どもたちをしっかり見ていくという点で、保育所の活用ということをどういうふうに考えておられるかという点、この二点、お答えいただけるでしょうか。
○細川副大臣 日本の貧困率について政府が昨年初めて公表いたしまして、一人親家庭の相対的な貧困率が五四%ということで、大変高い水準であったということがはっきりいたしました。
母子家庭などの一人親家庭に対する支援につきましては、母子及び寡婦福祉法など、これは平成十四年に改正されまして、四つの柱でこれまで総合的な支援を行ってきております。
一つは子育て生活支援、これはおっしゃられた保育所への優先入所とかあるいは公営住宅への優先権、こういうこと。それから就業支援策、これは、看護師になるならばこれに対しての職業訓練をやっていただいて資格を取ってもらう、これに対する支援を行うとか。あるいは、三つ目として養育費の確保策ということをやっておりまして、四つ目は児童扶養手当などの経済的な支援策、この四つを柱としてやってきております。
そこでまた、平成二十二年度予算では、子どもの貧困に着目して大きな二つの政策をとりました。一つは、昨年の十二月に復活をさせていただきました生活保護の母子加算の継続でございます。二つ目が、これまで支給対象ではなかった父子家庭への児童扶養手当の支給ということをやらせていただきました。
それに加えまして、中学校修了までの子ども手当も貧困に対する一つの施策というふうに私ども考えておりまして、これもやらせていただきましたところでございます。
さらに、ことし一月に策定されました子ども・子育てビジョンにおきましても、この四本柱に沿った取り組みを盛り込むとともに、二十六年度までの数値目標、これは詳しく申し上げますと時間がたちますので省略いたしますが、数値目標もしっかり設定いたしまして、子どもの貧困の対策をやっていくところでございます。
○宮本委員 もう時間が来ましたけれども、やはり、保育所にしっかり入れて、子育てそのものを支えるということが大事だと思っておりまして、確かに、平成十五年に「保育所の入所等の選考の際における母子家庭等の取扱いについて」という通達が出ているんです。ただ、これは就労という観点なんですね。だから、仕事をするのに優先的に母子家庭の場合は配慮するということであって、そうじゃなくて、今回のように、親として子どもを育てる力というものがまだまだついてない、そういう親御さんの場合に、しっかり地域の保育所で支えていくということが大事だと思います。
最後に、大臣から、前回も言いましたけれども、こういうものはリーダーシップを発揮して、政府として省庁横断的に取り組む、この決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
○荒井国務大臣 そのとおりでございまして、ですから内閣府という、あるいは特命担当大臣というポスト、役職がございますので、その点を認識の上、しっかりやっていきたいというふうに思います。
そして、何よりも、最も必要なのは、経済状況が悪化をして格差をどんどんつくり上げていった、そこが最大のネックだと思いますので、政府は今般緊急経済対策をやりますけれども、経済をどう盛り上げていくのかということにもまた力を注いでいきたいというふうに思っております。
○宮本委員 終わります。ありがとうございました。