平成二十二年五月二十日(木曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 池坊 保子君
理事 石井登志郎君 理事 小野塚勝俊君
理事 黒田 雄君 理事 佐藤ゆうこ君
理事 園田 康博君 理事 菅原 一秀君
理事 松浪 健太君 理事 高木美智代君
稲富 修二君 打越あかし君
大泉ひろこ君 大山 昌宏君
京野 公子君 小林 正枝君
道休誠一郎君 初鹿 明博君
室井 秀子君 山崎 摩耶君
山本 剛正君 柚木 道義君
あべ 俊子君 小渕 優子君
馳 浩君 宮本 岳志君
吉泉 秀男君
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国務大臣 福島みずほ君
内閣府大臣政務官 泉 健太君
文部科学大臣政務官 高井 美穂君
厚生労働大臣政務官 山井 和則君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 樋口 建史君
政府参考人
(消費者庁次長) 田中 孝文君
衆議院調査局第一特別調査室長 湯澤 勉君
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委員の異動
五月二十日
辞任 補欠選任
打越あかし君 稲富 修二君
同日
辞任 補欠選任
稲富 修二君 打越あかし君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
青少年問題に関する件
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○池坊委員長 次に、宮本岳志さん。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
まず、冒頭に一問聞いておきたいと思います。
去る五月の十八日に、衆議院でチャイルドライン支援議員連盟の総会がございました。私も出席をさせていただきました。民主党の小宮山先生が事務局長で、当委員会にもいらっしゃる自民党の馳先生が幹事長、当委員会の池坊委員長も幹事長代理、こういう議員連盟でございます。
ここに、当日配られましたポスターをお持ちいたしましたし、きょうは、皆様方のお手元にはパンフレットをお配りいたしました。〇一二〇―九九―七七七七、チャイルドラインの四つの約束、秘密は守る、どんなことも一緒に考える、名前は言わなくていい、切りたいときには切っていい。聞くことに徹して十年、毎日七百件、年間二十四万件以上、全国六十六拠点で二千人のボランティアスタッフが子どもたちの声を受けとめているという非常に大事な活動だと思います。
十八日の議連の総会で、NPO法人チャイルドライン支援センターの清川輝基代表理事のお話にもありましたように、財政的には、民間企業からの寄附なども募ってやっているけれども、このままではフリーダイヤルの無料電話も続けられないという逼迫した状況のお話がありました。
このポスターには、後援として文部科学省、厚生労働省、総務省という三つの役所が並んでいるわけですが、肝心の内閣府が抜けておるわけです。総会には泉健太大臣政務官も顔を出されておりましたけれども、これは、内閣府としても予算的支援も含めて大いに後援をしていくということで、ぜひお願いをしたい。これは党派を超えた議連としての要望だということで、ぜひ泉健太政務官から御答弁をいただきたいと思います。
○泉大臣政務官 ありがとうございます。
私も五月十八日に参加をさせていただきまして、そして、先ほど委員からお話ありましたとおり、池坊委員長、そして馳議員、小宮山議員、それぞれ本当に役員としても長い間頑張ってこられて、当初はこのチャイルドライン、キャンペーン期間中だけを電話の受付期間としていたりしていた時期もあったわけですが、今ようやく、日中ですが、三百六十五日受けられるような状態になってきている。大変喜ばしいことだと思っています。
その中で、私も清川さんにお話をさせていただいた際に、内閣府の後援が入っていませんねという話になった、宮本委員と一緒にその時間を過ごしていたわけですが。どうやらお話を聞きますと、まだ後援の依頼に来たことがなかったということでありまして、そういった意味で、御要請があれば、青少年育成の担当である内閣府、ぜひ快く後援をさせていただきたいというふうなことを今考えております。
ただ、資金的な面につきましては、よく相談をしてみないと、そもそも余り予算のない官庁でございますので、そこは御了解をいただきながら、まずは御後援ということについて大臣と相談しながら決定をしてまいりたいと考えております。
○宮本委員 議連を挙げて応援をいたしますので、ぜひよろしくお願いいたします。
去る五月十七日には、当委員会で横浜家庭学園を、そして、私は昨日、改めて四月に当委員会に参考人としてお越しいただいた須藤三千雄参考人が園長を務めておられる埼玉学園を見せていただきました。現場も見た上で、きょうは改めて、児童自立支援施設の公設民営化の問題、職員資格要件の緩和の問題について聞きたいと思います。
まず、これはもう釈迦に説法ですけれども、我が国も批准している子どもの権利条約第三条の一、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と明記をされております。
まず、大臣に確認しますけれども、児童自立支援施設のあり方を検討する際にも、当然、子どもの最善の利益が考慮されなければならない、これはよろしいですね。
○福島国務大臣 おっしゃるとおりです。子どもの最善の利益が優先されるべきです。
○宮本委員 当然のことだと思いますね。だからこそ、実は厚生労働省が置いた児童自立支援施設のあり方に関する研究会報告書も、最終的な結論では、児童自立支援施設は、子どもの健全な発達・成長のための最善の利益の確保を目指し、取り組むべき課題について着実に一つ一つ解決し、具体的な成果を上げることが期待されるというふうに述べているわけで、公設民営化を大いにじゃんじゃんやればいいという話じゃないんですよ。最善の利益ということをしっかり見きわめる必要がある。
それで、四月の八日の当委員会での私の質問に対して、厚生労働省は、地方自治体の主体性を尊重しつつ、児童自立支援施設における支援の質の確保について検討し、地方自治体に助言してまいりたいと答弁をいたしました。先ほど公明党の委員との間にもそういうやりとりがありました。ここでおっしゃる支援の質の確保の中身ですけれども、これは、まさに児童の最善の利益の確保、今と同等以上の人的配置、公的支援の方策、サポート体制、施設を維持継続できるような財政基盤の確保等々、責任を持ってきちっと見きわめるということでよろしいですか。
○山井大臣政務官 宮本委員にお答えを申し上げます。
この児童自立支援施設というのは、本当に一番社会的な支援が必要な、そしてまさに、そこでの生活がその子どもの人生を大きく左右する一番重要な施設であるというふうに思っております。にもかかわらず、財源的な部分、人員配置の部分、さまざま困難な中で、現場の職員の方が精いっぱい努力をされているということは私も重々承知をしております。
そういう中で、今宮本委員がお話しになったさまざまな課題について今後取り組んでまいりたいと思いますが、もちろん財源の問題もありますので、このことについてはどういう支援ができるか。とにかく何よりも、先ほどの答弁でも申し上げましたように、少なくとも今までの水準が低下することが絶対あってはならない、そういう方針でございます。
○宮本委員 知事会の要望というのは、コスト削減がやはり主な動機なんですね。だから、今よりも低下しない話であれば、そもそも要望の趣旨に沿わないことなんですよ。
それで、児童自立支援施設が極めて公共性の高い施設だということは、この前、視察に参加したすべての委員が実感されたことだと思います。
視察に伺った横浜家庭学園は民間だということでありますけれども、これは明治三十九年、一九〇六年に有馬四郎助氏によって創立されて以来、百年以上の伝統、歴史を持つ施設であります。
横浜家庭学園では、民間施設では、預かる子どもの数が減ると、当然経営的に打撃になるんだけれども、しかし、だからといって、例えば、非行に走る子どもをふやす努力をするような営業努力はあり得ないんだ。だから、減った場合には、歯を食いしばって施設の努力で耐えるしかないんだ、こういうふうにおっしゃっていました。
だから、そもそもこのような施設は、特別な歴史のあるこの二施設は別として、大体民間の営業努力というようなものにそぐわないわけであって、公設公営を原則とするというのは当然のことだと私は思うんですけれども、そう思われませんか。
○山井大臣政務官 宮本委員にお答えを申し上げます。
確かに医療、福祉、子育て、このような人に対する取り組みというのは、効率をアップしようとすると、人件費を下げるか人の数を減らすかということになりますので、おっしゃるように、営業努力という発想では非常に難しい点があるということは前提として私も思っております。
ただ、今回の児童自立支援施設の件につきましては、これは営業努力をするとかそういう趣旨ではなくて、これはもう釈迦に説法になるかもしれませんが、国がすべてを決めるという流れをやはりもう少し地方自治体に任せていくべきではないかという大きな分権の流れでありまして、その意味では、先ほど申し上げましたように、その判断を地方自治体にゆだねることによって、まさか子どものケアの水準が低下するというふうなことは私たちは考えておりませんし、そのために、今も委員御指摘のようなしっかりとした助言というものをしていきたいというふうに考えております。
○宮本委員 だからこそ、先ほど山井政務官がおっしゃったように、今以上のことをやるということを、そしてケアの質を落とさないということを守れば、はっきり言って公設民営化なんか進まないと僕は思いますよ。進むはずがないんですね。だから、これはもとからどだいむちゃな話なので、無理筋な話なのであって、こういう決定は僕は改めて見直すべきだというふうに申し上げたいんです。
それで、民営化が検討されていることについて、児童自立支援施設では深い憂慮の念を抱いていると須藤園長もおっしゃっておりました。
児童自立支援施設では、日々子どもと体当たりするような実践が続けられております。例えば、虐待体験を持つ子どもたちに多く見られる試し行動という行動があるというんですね。子どもから職員に対する限度を超えた反抗、あるいは乱暴な言動、不安定な精神状態からくる自暴自棄や自傷行為、こういうことが見られる。子どもたちは、まずそういう行動で職員の本気度を試す、そういう行動に出るというんですよ。逃げ出した子どもを迎えに行くと、うるさい、ばかやろうなどと悪態をついて暴れる。逃げ出したときに、その子が自分の顔を思い出してくれるかどうかが勝負だ、こういうふうに児童自立支援施設では語っておられました。我々の施設にはかぎはないんだ、子どもたちの心のかぎがすべてなんだ、我々と子どもたちの間に心のかぎがしっかりかかるかどうかがすべてなんだ、こういうお話が深く胸に突き刺さりました。
それに加えて、今、虐待体験がある、発達障害や知的障害を抱える子どもたちへの生活指導や自立支援を新たに行うことになりまして、職員は子どもたちのソーシャルワークにも時間を割かなければならないという状況です。ですから、今現場は教護院だったころ以上に仕事に追われる実態があるんですね。
私は、そんな公設民営化の検討をするよりも、むしろ、こうした実態をしっかり認識するならば、こういった施設が抱える人的な不足であるとか、まだまだ体制が不備であるとか、こういう課題や困難をまず解決すべきだと思うんですけれども、そう思われませんか。
○山井大臣政務官 宮本委員にお答えを申し上げます。
宮本委員のおっしゃる意味というのはよくよくわかります。ですから、今回の緩和というものとはある意味で切り離して、一番重要なお仕事をやってくださっている現場を支援していく、これはしっかりとやっていかないとだめだというふうに私は思っております。
私自身も、大学時代六年間、母子寮という児童福祉施設でボランティアをしていまして、一番最初に、ボランティアの学生で何も知らない大学一年生のときに行ったときに、小さな女の子から母子寮の入り口でつばを吐きかけられ、おまえ何しに来てんと言われて、何でこんなことをされるんだろうと。一緒に行った私の友達の学生は、お兄ちゃん、お姉ちゃんが来てよかったねと子どもからもっと温かく迎えてもらえるんだと思っていたのに、いきなりつばをかけられたり泥をぶち当てられたりして、意味がわからなくてやめていった学生がかなりいます。
しかし、後になって、そうする中で、本当にこの大人というのは自分を受けとめてくれるのかというのを試している。なぜ試すのかというと、今まで余りにも信じていた親やそういう人たちから裏切られ、暴力をされてきたから、もう怖くて大人を信じることができなくなってしまっている。
そういう意味では、本当に継続的な、人間的なケアが必要だということを、私自身もそういう学生時代の経験で重々感じておりますので、宮本委員の御懸念、地域主権改革、地方分権によってケアの質が下がるんじゃないかという懸念、それは私もないことはありませんが、しかし、そういうことがあってはならない。都道府県に任せる以上、そういうことにはならないだろうということで私たちもこの決断をしていることでありまして、先ほども言いましたように、間違ってもそういうことにならないように、しっかり助言をして、これからも責任を持って見守っていきたいというふうに思っております。
○宮本委員 現場の人はそうなると言っているんですよ。ならないと信じていると幾ら山井さんが言っても、現場の人は、そうなるに違いない、だからやめてくれ、こうおっしゃっているわけですね。
それで、大臣にお伺いするんですけれども、民営化などを論じる前に、まずこういうことを国がしっかり責任を持って、やるべきことは山ほどあると思うんです。
児童自立支援施設は、社会的養護を担う社会福祉施設にとって最後のとりでと呼ばれるわけですよ。大臣は、弁護士としても子どもにかかわる事件などにもかかわってこられましたけれども、この施設が持つ最後のとりでとしての重要な役割はもう重々認識されていると思いますけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○福島国務大臣 おっしゃるとおりで、教護院と言われたときから、子どもたちのある種の受け皿として大事な役割を真に果たしてきたというふうに思っております。
○宮本委員 私は、この間、現場を見てきて、この最後のとりでという言葉の持つ意味を改めて実感させられました。
児童養護施設などでは、手に負えない子どもたちを受け入れるという意味の最後のとりでというだけではないんですね。他の施設での処遇が困難とされ、問題行動の進んだ子どもを受け入れて、生活のすべてをともにすることを通じて、人間同士の触れ合いを通じた情緒の安定、健康的でリズムのある生活習慣の獲得、集団生活を通じての社会的自立の確保を進めてきているんです。子どもたちの成長と発達、それこそ、子どもの最善の利益を守る最後のとりでだというべき施設だと思うんですね。
これを可能としているのは、実は、現場へ行って見てみたら、公設公営であればこそのことなんですよ。
例えば、昨日お伺いした埼玉学園には、学園内学校として、上尾市立東中学校向原分校と上尾市立東小学校向原分教室が設置をされております。昨日は教頭先生にもお会いをしてきましたけれども、やはり公設公営であればこそ学校と学園の連携もうまくいっているというお話でありました。これが公設民営化されれば、片方は民間、片方は公立学校ですから、いろいろ難しい問題が生じかねない、これは率直に教頭先生の側からも懸念が出されておりました。
私は、児童自立支援施設の職員の身分規定の廃止、民営化というのは、子どもたちにとっての最後のとりでを崩すものだと言わざるを得ないと思うんですね。
そこで、大臣、昨年十二月にやった閣議決定は、そもそもやろうとしてもうまくいかないし、このようなものは改めて再検討すべきだと私は率直に思うんですけれども、大臣はそうお思いになりませんか。
○福島国務大臣 おっしゃることは十分理解できますし、また、改めて、須藤参考人のこの委員会における発言、御懸念もしっかり読ませていただきました。「特に、財政的基盤のあり方、現行と同等以上の支援の質を確保するための人的配置、公的支援・連携のシステム、とりわけ、運営に支障が生じた場合の設置者としての責任を持った立ち直りの方策」、ちょっと省略しますが、さまざま、このことについて克服できるか否かが検証にとって不可欠だということをおっしゃっていらっしゃるのは本当に重いというふうに思っております。
ですから、厚生労働省とも、その懸念が本当に当たらないようにどうしたらいいかというそもそも論も含めて、しっかり議論していきたいと思っております。
○宮本委員 残り時間も少なくなりましたので、まとめて一問でお伺いするんですけれども、最後に、人員の問題それから予算の問題についても伺っておきたいんです。
視察にお伺いした横浜いずみ学園でも、子どもたちの訴えにきちんとこたえられる職員配置が必要だが、現在の最低基準ではそれがかなわないという訴えがございました。
横浜いずみ学園では、欧米の同様の施設では子どもの数より職員数の方が多いのが普通だ、日本では本当に職員の数が足りないという声が出ているわけですよ。今のような基準じゃなくて、せめて子ども二、三人に一人の職員配置にしてほしい、こういう声が出ておりました。
今こういう方向での見直しをやっている、実態調査の最中だという話もありましたけれども、この見直しに当たっては、そういう方向での見直しをやっていただきたいという点が一点。
もう一つは、しっかりやろうと思っても、やはり財政が大変だという状況がありまして、地方を信じて地方の自主性を強化するというけれども、地方に財政がなければ、それはどんどん減るばかりなんですよ。地方にふんだんにお金があればこれほど心配しないんですけれども、地方は今お金がないんですから。
その点で、二言目には自治体の自主性発揮、応援というんですけれども、それならば、例えば心理療法担当職員を増員できるように緊急に予算措置をすべきだと思うんですね。それは予算をちゃんと確保してやるとおっしゃっていただけるのかどうか。これはぜひ大臣からお伺いできますでしょうか。
○山井大臣政務官 お答え申し上げます。
心理療法担当職員については、平成十七年の三百九十九カ所から平成二十年の五百七十四カ所にふやしました。
とにかく、やはりスキルのある職員の方でないと、心の傷を負った子どもたちの支援というのはなかなか難しいというふうに思っておりますし、そのことについては、平成十九年の社会的養護専門委員会の報告書の中で議論もされまして、今詳細な調査をして分析している最中でありますが、幾ら一人の人間であっても、少ない人間では難しいと思いますので、今後、調査を分析しながら検討してまいりたいと思っております。
○福島国務大臣 この委員会も、子どものためにやりたい、子どもの最善の利益でしっかり判断をしたい、とりわけ、困難を抱えている子どもたちの最後のとりでとしての場所を、政治で、行政で責任を持ってやるという点では共通項だと思います。
懸念の点が生じないように、青少年担当大臣として、厚生労働省としっかり協議してまいります。
○宮本委員 ありがとうございました。終わります。