平成二十二年四月二十二日(木曜日)
午前九時二分開議
出席委員
委員長 池坊 保子君
理事 石井登志郎君 理事 小野塚勝俊君
理事 黒田 雄君 理事 佐藤ゆうこ君
理事 園田 康博君 理事 菅原 一秀君
理事 松浪 健太君 理事 高木美智代君
網屋 信介君 石森 久嗣君
大山 昌宏君 川島智太郎君
川村秀三郎君 京野 公子君
小林 正枝君 斎藤やすのり君
平 智之君 道休誠一郎君
初鹿 明博君 皆吉 稲生君
室井 秀子君 山崎 摩耶君
山本 剛正君 柚木 道義君
あべ 俊子君 小渕 優子君
馳 浩君 宮本 岳志君
吉泉 秀男君
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参考人
(淑徳大学総合福祉学部教授) 柏女 霊峰君
参考人
(明星大学教育学部教授) 高橋 史朗君
参考人
(日本社会事業大学専門職大学院准教授) 宮島 清君
参考人
(全国児童自立支援施設協議会会長) 須藤三千雄君
衆議院調査局第一特別調査室長 湯澤 勉君
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委員の異動
四月二十二日
辞任 補欠選任
打越あかし君 皆吉 稲生君
大泉ひろこ君 石森 久嗣君
京野 公子君 川村秀三郎君
道休誠一郎君 斎藤やすのり君
同日
辞任 補欠選任
石森 久嗣君 大泉ひろこ君
川村秀三郎君 川島智太郎君
斎藤やすのり君 道休誠一郎君
皆吉 稲生君 平 智之君
同日
辞任 補欠選任
川島智太郎君 京野 公子君
平 智之君 網屋 信介君
同日
辞任 補欠選任
網屋 信介君 打越あかし君
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本日の会議に付した案件
青少年問題に関する件(児童虐待問題)
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○池坊委員長 次に、宮本岳志さん。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
本日は、四人の参考人の先生方、貴重な御意見を伺わせていただきまして、本当にありがとうございました。
まず、私どもの委員会は「こうのとりのゆりかご」の視察にも行かせていただいて、そして、御紹介のあった検証会議の最終報告についても私は読ませていただきました。結論のところで、「ゆりかご事例から見えるのは、社会のありようの一面であり、現代社会の子育てにおいて個人や個々の家庭だけでは背負いきれないものが形として噴出している状況である。」と指摘されていることを本当に重く受けとめましたし、その点では、きょうお話にあったように、やはり一人一人の親にとってもきめ細やかな対応が求められていると思うんですね。この報告書の中でも、実は「妊娠・出産・子どもの養育をめぐって、相談体制の充実や緊急時の一時保護など「トータルな支援体制の整備」が十分でない」という指摘もされております。
それから、先ほど宮島先生のお話の中でも、市区町村と児童相談所の現状というのは決して十分ではないというお話が資料の中にもついておりました。
私は、ここを本当に強めることが大事だと思っておりまして、実は欧米の事例を、こういう相談体制がどうなっているかと国立国会図書館に調べていただいたんです。
そうしたら、イギリスの例でありますけれども、国家資格を持つソーシャルワーカーが配置をされております。イギリスでは、一人当たりの平均的な相談件数というものは、児童虐待チームでは十件から十五件、あるいは家族委託チームでは十五件から二十件、なぜそういう数なのかと聞けば、専門実務を行うことが可能である範囲にすることを原則にしている、これが国立国会図書館の御回答でありました。
日本は、いかにも、五万人から八万人という人口基準で児童福祉司を配置するという基準のまま、ずっと変わっていないんですね。
そこで、柏女参考人と宮島先生にお伺いするんですが、こういう基準をしっかり見直して、もっときちっと充実させるという点についてのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○柏女参考人 児童相談所の児童福祉司をふやしていくということについて、現状は少な過ぎますので異論はないのですけれども、果たして都道府県の職員をふやしていくことに意義があるのだろうかという思いも一方ではいたします。
分断されているのは、市町村と都道府県が分断されていて、市町村は母子保健や子育て支援を行っているわけですので、市町村にそうした専門職をふやしていくということをやはり考えていかないと、県のレベルを強化するだけではうまくいかないのではないか、そんなふうに思っております。
○宮島参考人 恐縮ですけれども、お配りしました私のパワーポイントの資料の後ろから八ページ目を見ていただければありがたいと思います。
これは、最近亡くなった岸本瑠奈ちゃんという子どもさんの事件です。一歳の子どもさんがかなりひどい状態にあって、シェークンで、頭を揺らされて死んでしまった。この記事は産経新聞の記事からとったものなんですが、十三回も訪問していたというふうに書かれています。十三回もとありますけれども、これは月一回にも満たないというペースです。非常に頑張って行っているとは思いますけれども、月一回である。この事例であるとすれば、週一回から週二回は訪問しなければ、何が起こっているかわかりません。また、玄関先の対応ではだめです。中に入って話を聞かなければわかりません。
全くこれに近いような事例を私は担当したことがあります。しかし、このときには、二回行きましたけれども、かなり大変だったです。しかし、それを実現するためには、今の人員体制では全く足りません。当然、今の現状は低過ぎますので、柏女先生がおっしゃるとおり、児童相談所の職員をまずふやさなければいけないと思います。
また、これも柏女先生と全く同意見ですけれども、市区町村の職員をふやさなければ、しかもきちんとした職員を置かなければだめです。要保護児童対策地域協議会ということができましたけれども、そのコーディネートをしている職員が、この方が全く何も見えていなければ、せっかく何十人もの人が集まっても、そこで行われている議論は無意味だというふうに思います。
私は今実際に何カ所かの市区町村に、事例検討に伺っていますけれども、大変なケースだと思うということで協議を受けます。時間がないので、ではこれで終わりましょう、一件残っていますがという話があります。その事件、気になるから聞かせてくださいと話します。その事例が一番重かったりするんですね。実際に見えていないということが起こっているわけです。それを見える職員を置かなければならない。必ず市区町村にその職員を置かなければだめだと思います。
○宮本委員 ありがとうございます。
やはり体制の整備をしっかり進める、そして、もちろん都道府県も市区町村も双方しっかりしていく必要があると思うんですね。
それで、どうしても順々にお聞きしていきますと、四人目の須藤先生に余り質問を前の方々もされておられないようですので、私、ちょっと須藤先生の方に質問をさせていただきたいと思っております。
それで、先日の委員会でも取り上げたわけですけれども、この間、政府から地方分権改革推進計画というものが出されて、そして、児童自立支援施設というものの職員に対する規定を、施行令を変えて、都道府県の職員でなくてもよろしいというふうに変えるという方向が打ち出されたわけです。
それで、お話を聞いておりまして、児童自立支援施設というものが相当専門的なお仕事だということもよくわかりますし、私も現場をぜひとも見せていただきたいというふうに思っておりますけれども、まず、都道府県の職員でやるべきだというこの中身について、須藤参考人の方からお考えがあればお聞かせいただきたいと思っております。
○須藤参考人 先ほどのお話のように、二十一年十二月十五日の閣議決定により、児童自立支援施設職員の身分規定が廃止されることになりました。今後、各自治体の判断に基づき運用されるというふうに理解していますが、公設民営化については、先ほど後半の部分で忙しくお話をさせていただきましたけれども、児童自立支援施設が抱える課題や解決すべき問題が多岐にわたっています。慎重な検証や検討がなされた上で総合的に判断されて、決定されるものであると思います。公としての責任を安易に放棄すべきものではないと思っています。
また、各自治体が有する民間資源も、置かれている状況も異なることから、もし、よしんば他県で児童自立支援施設が民営化されたからといって、安易に導入すべきものではないというふうに思っていますし、原点に戻りまして、公設民営化の問題は、児童の最善の利益とは何かを原点に据えて、長期的視点を持って考えるべき問題だ、そういうふうに私は思っております。
○宮本委員 ちょっと事実関係を須藤先生に教えていただきたいんですが、既に民間で運営されている二施設というものがございます。今度その施設をひとつ見せていただこうかという議論にも当委員会でなっているんです。
民間で既にやっているところもあるではないかというような御議論もあるやに聞いているんですけれども、これについてはどのように考えればよろしいんでしょうか。
○須藤参考人 地域で児童自立支援施設を民間で運営しているというところが実際にあります。あるかないかといったら、あるんですけれども。
児童自立支援施設の民営化は、各自治体の選択の機会を広げることであり、各自治体がそれぞれの事情をしんしゃくして適正に判断すべきであるというふうに言われているかもしれないですけれども、百年を超える長い歴史を公設民営で運営してきた児童自立支援施設にとっては、ほかの児童福祉施設や少年院などと役割を分担して、期待される役割を担ってきました。
ただ、民間の私たちの児童自立施設も百年を超える施設というふうに先ほど御紹介しましたけれども、施設長さんともよくお話をさせていただきますが、運営は非常に御苦労があると思っています。これは個人の情熱とか、そういうことだけに頼る事業ではありません。やはり公として子どもの社会的な自立を守る、そういう厚い支援が必要というふうに思っています。民間の二施設は非常に御苦労がある、見ていても非常に大変さがわかる、そういうことでございます。
○宮本委員 おっしゃるとおりで、本当に長い歴史を持つ施設だというふうに伺っているんですね。
それで、そもそも児童福祉法ができるはるか前から、この民間施設はもう民間でやっておられた。ですから、これを口実に、民間で十分やっているじゃないかという議論は全く当たらないのであって、今お話があったように、この専門的な、そして子どもたちにとって本当に大事な児童自立支援施設を安易に民営化するということがあってはならないというふうに思っているんです。
既に、厚生労働省はこれについて研究する研究会を設置して、研究会報告書というものが出ております。これもこの前の委員会の質疑で厚生労働省や福島担当大臣にもお伺いをしたところですけれども、この研究会の報告書では、民営化を視野に入れる場合には、少年非行対策へのスタンス、公としての責任や対応、民営化する場合の施設機能の維持、強化などの検討がきちっとされる必要がある、安易にしてはならないということがはっきり定められているわけですよね。
にもかかわらず、今回、そういう方向が出たので、私も驚いているんですけれども、聞くところによると、全国児童自立支援施設協議会として、ここに私が持ってきたのは佐藤前会長のときの意見書でありますけれども、しっかりこの点の検討がなされていないということでいろいろ御意見を上げていただいているようであります。このあたりのところも、ぜひ須藤参考人からお伺いしたいと思っております。
○須藤参考人 全児協からすると、先ほど話した少年非行対策へのスタンス、公としての責任、対応、児童自立支援施設の役割、民営化する場合に施設機能を維持、強化する仕組み、民間と協働する場合にはどのような仕組みがあるかなどを検討することが必要であるというふうに思っていますが、検討されたというふうに認識してはおらないですね。
特に、現行と同等以上の支援の質を確保するための人的配置、公的支援、連携のシステム、先ほど委員さんがおっしゃってくれたとおり、専門性の非常に高い施設でございますので、もし民間で受けてくれる施設ということがあれば、同時期に新しい職員と今の現場の職員とが複数年数一緒に仕事をして、私たちの専門性をぜひ理解する形でなければ、なかなか御理解は難しいというふうに思いますし、入所している子どもの人権を守る、そういうことを最優先にした検討会が必要でありますし、そういう支援者が今後も必要かというふうに考えているところでございます。
○宮本委員 前回の質問で、私の問いに対して、厚生労働省は明確に、この研究会の報告書は尊重する、このとおり進めますということであるんですけれども、今お話があったように、その検討や検証をやった形跡は私もないと思うんです。
なぜ、ないのに、この地方分権改革推進計画はもう閣議決定されたんですか、おかしいじゃないですかという議論になったんですが、それは個々の施設を民営化するときに検討すればよいんだというような答弁が出まして、それは研究会の述べていることと随分違うじゃないか、研究会は、民営化を視野に入れる場合にも、そういう検討をきちっと検討会を置いてやるべきであるということを言うているわけであって、その検討をされないまま見切り発車するというのは余りにもひどいということを私からも申し上げた次第であります。
それで、昨年お出しになった意見書というものを見せていただくと、「本年二月」、つまり昨年ですから昨年二月に、「本協議会の役員会に貴省の担当官が出席しこの問題についての検討会を設置する旨の説明をしたにもかかわらず、こうした検討や検証を一切捨象して、公設民営化への道を開くことについては、極めて遺憾でありとても容認できるものではないと考える。」こう述べておられまして、大分詳しいいきさつまで協議会として出された意見書には触れられております。
このあたりのいきさつについても、もしおわかりであれば、お話しいただければありがたいと思っております。
○須藤参考人 その辺については、残念ながら存じておりません。
○宮本委員 いずれにせよ、何度もお話があったように、児童自立支援施設というものは高度の専門性を持つものでありますし、そして厚労省も、この質疑の中でも、ケアの質を絶対に下げてはならない、やはり子どもたちに本当に最高の教育と生活を保障するということが何よりも求められるということは認めておられるわけですね。その点で、私どもも、しっかりと児童自立支援施設というものの意義について学んでいきたいと思いますし、安易にこれが民間委託されることのないように委員会としても力を尽くしていきたいと思っております。
本日は、四名の参考人の方々には大変ありがとうございました。皆様方の御意見を今後とも委員会の審議に役立てるということを私もお誓い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。