平成二十二年二月二十五日(木曜日)
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平成二十二年二月二十五日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
議院運営委員長松本剛明君解任決議案(逢沢一郎君外二名提出)
衆議院議長横路孝弘君不信任決議案(谷垣禎一君外四名提出)
公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後二時十六分開議
○宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、高校無償化法案について文部科学大臣に質問をいたします。(拍手)
昨年度の公立高校の初年度納入金は十二万四千四百五十円、私立高校の初年度納入金は平均七十万九千七百九十円に上っています。我が国では、高校生や父母はこのような高い学費が押しつけられ、学費が払えずに高校を中退せざるを得ない、こういう悲劇が繰り返されてきました。
世界の大勢が高校教育無償化に向かう中で、我が党は、一貫して高校無償化を主張し、その実現のために全力を挙げてきました。我が国でもようやく、新制高校発足以来六十二年目にして、高等学校教育無償化の方向が打ち出されたことは、国民の粘り強い運動の成果であり、当然のことだと思います。
私は、さらなる無償化推進のため、幾つかの問題について質問いたします。
第一の問題点は、公立高校の授業料を不徴収にする一方で、私立高校の授業料については一定額の補助にとどまり、公私間の格差を助長しかねないことであります。
私立高校は、我が国の公教育の重要な部分を担っています。生徒数も全体の三割を超え、建学の精神に基づき、多様な高校教育を保障してきました。まさに私立高校なくして我が国の後期中等教育は成り立ちません。ヨーロッパなどでは、私立高校の大半が公費で運営され、学費は無償あるいは低額であります。その意味では、私立高校の無償化をなし遂げて初めて文字どおりの高校教育無償化と言えるのであります。
私立高校の生徒について、年額十一万八千八百円の補助では、年収三百五十万円以上の家庭の生徒は、初年度納入金で差し引き六十万円ものお金を支払わなければなりません。余りにも大きな負担が残るではありませんか。この負担の格差は不平等だと思いませんか。見解をお伺いいたします。
日本共産党は、私立高校について、当面、年収五百万円以下の世帯については、授業料はもとより、入学金、施設整備費についても無料にする、年収八百万円以下の世帯に対しては、その半額補助を行うべきだと提言をしてきました。こうした方向で学費軽減を図るべきだと考えますが、見解を伺います。
同時に、国から私立高校へ支援金が行くようになるからと、これまで自治体が行ってきた私学授業料減免に充てていた予算を減額してしまう動きが広がっています。
長野県では、一億七千万円の授業料助成の県単独予算が組まれていましたが、それがわずか二千七百万円に減らされました。千葉県でも三億円が八千三百万円に、愛知県に至っては六十八億円が三十二億円に、実に三十六億円もの減額であります。約三分の二を超える道県が減額となる見通しです。新潟県では、結局、保護者負担が昨年とほとんど変わらなくなってしまいました。これでは父母負担の軽減にはなりません。
これらの県がこれまでと同額の減免予算を確保すれば、年収三百五十万円から五百万円の世帯も実質無償にできるではありませんか。自治体は学費軽減の事業を縮小すべきではありません。大臣の見解を求めます。
公立高校の授業料を不徴収としても、決して父母負担がなくなるわけではありません。先日、文部科学省が公表した子供学習費調査によれば、授業料、修学旅行費、通学費などの学校の教育費の平均は三十五万六千九百三十五円にのぼっています。たとえ授業料の十一万八千八百円が不徴収となっても、依然として二十三万八千百三十五円もの父母負担は残されたままであります。こうした父母負担を軽減することは急務と言わなければなりません。
昨年八月の自公政権下の概算要求ですら、四百五十五億円の、高校生を対象にした給付制奨学金の創設が盛り込まれておりました。ところが、鳩山新政権の本予算案では、これ自体がなくなりました。なぜ給付制奨学金の創設をやめたのか。貧困の広がりの中で、返還の必要のない給付制奨学金制度を創設すべきではありませんか。大臣の決断を求めます。
高校実質無償化を専修学校や各種学校にも広げ、我が国に置かれている外国人学校にも適用するのは当然です。どの国の子供に対しても学ぶ権利を保障するのが国際ルールです。特定の国の外国人学校を排除すべきではありません。見解を求めます。
次に、無償化実施の財源として、所得税、住民税の特定扶養控除の十八歳以下の上乗せ分を廃止しようとしていることについてです。
通常の授業料よりも低い定時制、通信制や特別支援学校に子供を通わせている家庭や、そもそも高校に通っていない子供を持つ家庭では、増税による負担増だけが残ります。高校無償化の代償として、増税による負担増など絶対に生み出してはなりません。政府は、二〇一一年の実施までに適切な措置を講じるとしていますが、どのような措置を講じるお考えか、見解を求めます。
アメリカでは、早くも一八二七年にマサチューセッツ州で高校教育無償化に踏み出し、南北戦争以前に既に六州で高校教育無償化を図りました。イギリスも一九一八年に、トルコでは一九二六年から無償です。諸外国では早くから高校教育までの無償化が常識となってきました。なぜ、日本はこんなにおくれてしまったのでしょうか。総教育費支出のGDPに占める割合は、OECD諸国の平均四・九%を下回り、わずか三・三%にすぎません。
○副議長(衛藤征士郎君) 宮本岳志君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡潔に願います。
○宮本岳志君(続) 三十カ国中、下から二番目です。余りにも教育に対する公的支出は貧困だと言わねばなりません。
教育に対する公的支出を世界の水準まで引き上げ、高校無償化を私学にも広げ、そして大学の学費も段階的に無償化に向かうべきであります。そして、世界にたった二カ国だけに残った、国際人権規約の段階的無償化条項の留保などという恥ずかしい現状を直ちに正して、留保を撤回すべきではありませんか。
世界一高い学費から学生たちを解放し、経済的理由で学業をあきらめる若者を一人も出さない、これこそが我が国の豊かな発展の基盤をつくる確かな保障でもあります。大臣の御決意を伺って、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣川端達夫君登壇〕